俺の戦い
カタリナの大声を聞いた盗賊たちは、見張りを残して出ていった。小屋の中には5人の男たち。装備を見る限りだとそこまでレベルは高そうではない。俺はじいちゃんに言われた通り、リボンのついた弓矢を準備していた。
青は突入、黄色は待たれよ、赤は問題あり。だったな。俺はじいちゃんの作戦を頭の中で反芻し、今できる仕事をきっちりとこなす。中にいる盗賊たちは自分たちの勝利に確信しているのだろう。外の様子も見ようとせず、油断し談話しているようだった。空に向かって青色のリボンの矢を放つ。静かな風切り音とともに矢が深い森に吸い込まれて、待つこと数分。小屋の裏手側にじいちゃんが現れた。
「相手はどの程度じゃ?」「中に5人、住人たちは装備を取られて横になってるよ。見た感じたと、剣士が3人、槍使い1人 シーフっぽいやつが1人かな レベルはみんな高くないと思う。カタリナさんはどうだった?」俺の監視している場所ではカタリナさんの様子は見えない。アジトから出て行った、お頭と呼ばれる頭巾の男と、その側近と思われる大男はこの小隊の中でも明らかに格が違った。
一人だけならまだしも高レベルの二人を目の前にして、ましてやプレイヤーキラーの集団たちにも囲まれてあるだろう、カタリナさんを思うと聞かずにはいられなかった。俺はあの笑顔が似合う女剣士を悲しみの表情にはさせたくない。
「そうか。よくやった。カタリナはよく戦っておる。」
じいちゃんはアジトの概要だけ聞くと、俺に詳しい内容を話す時間が惜しいのか即座に小屋に駆け出していた。小屋のドアを開けたかと思うと、窓からは黒いじいちゃんと思わしき人物の残像が見える、10秒も経たないうちに少しだけ敵の返り血をつけた爺ちゃんが姿を現した。中からはあまりの出来事のせいか悲鳴すらも聞こえない。稽古では見かけることのないじいちゃんの殺気に俺も尻込みをしてしまう。
「中の村人の解放を任せたぞ」そういうと、瞬く間にカタリナのいる方角へと駆け出していた。
俺のじいちゃん・・・マジつえぇ・・・初めての実戦で俺は、ただ見ているだけしかできなかった・・・