カタリナの戦い
「銀の狼のお頭と呼ばれる男!出てきなさい!」村の郊外にある掘っ建て小屋にカタリナの声が響く。
見張りの男が3人、さらにお頭に続いて6人の男が付いてきた。
「言っていた金は用意できたか?」「それより先に村のみんなの容態の確認が先よ!まさかお前たち手を出してはいないでしょうね」お頭と呼ばれる男がニヤついて、カタリナの姿を見て厭らしい舌舐めずりをする。
「金を手に入れて、お前の後に楽しもうと思ってな」ゲスな表情をしているお頭がそう言うとすぐに、全身鎧に包まれた配下の大男がカタリナとお頭の間に身を乗り出した。「おい。あまり傷めつけるなよ」そう言うと配下に任せて他の取り巻きたちが距離をおく。
カタリナもすぐに戦闘態勢に入る。しばしの膠着を破り、初めに行動を起こしたのはカタリナの方だった。真紅の異名に恥じない火属性のレイピアが大男の顔めがけて連続で放たれる。その高速とも呼べる突きを軽々と躱した大男の表情に笑みがこぼれる。「真紅のカナリナと呼ばれる女よ。噂ではもっと強いと聞いていたが、拍子抜けだな」今度は大男の両手に構えた大鎚が下から上へと突きあげる。カタリナが間合いから離れようとしたとき、「大地飛ばし(アースバラージ)」金色に光った大鎚は大地をえぐり、無数の岩つぶてがカタリナを襲う。
避けられない!そう判断したカタリナは致命傷を避けようと急所を自らの手で塞ぐ。大鎚の衝撃でより鋭利になった石たちが乙女の柔肌に無数の切り傷を刻む。刹那、腹部に何か大きな衝撃が走る。反撃を許さない、大男の容赦ない蹴りだ。それからも途切れることのない大男の追撃に思わず、声にならない悲鳴がカタリナからこぼれる。
勝負はすでにあったように見えた。未だ完全防備に覆われた大男、立つことすらままならいように見える満身創痍のカタリナ。
「しぶといな」普通ならとっくに倒れてもおかしくない攻撃にもかかわらず倒れない真紅の剣士に嫌気をした大男からトドメの一撃が見舞われる。この一撃で勝負が決まる。カタリナは最後の力を振り絞り敵の懐に一気に詰め寄る。大男は予想外の行動に一瞬対応が遅れる。刹那、カタリナの手から炎の閃光が走る「紅蓮突き(フレイムポーク)」レイピアにまばゆいばかりの炎の竜巻が絡みつき大男の急所めがけて光速の突きが見舞われる。
勝負あった。元々火属性のレイピアに火の付帯魔法。例え致命傷を避けれていても、業火の炎でプレイヤーは確実に死に追いやられる。
「これで残りは貴方たちね」カタリナはそういうとすぐに、怪我だらけの身体で、お頭とその配下たちに目を配る、しかし戦闘力では上位であったはずであろう大男を倒しても銀の狼たちのメンバーから焦りの表情が見えない。
その瞬間、カタリナの足を何かが掴んだ。次に気がつくとカタリナの天地が逆転していた。そこには、ゲスな笑みで真紅の女剣士を見つめる大男の姿「なぜ・・・だ・・・?」上下逆さに吊り下げられたカタリナに大男の手から先ほどの戦闘で役目を果たしたのであろう、火除けのペンダントを見せつけられる「これがなかったら確実に死んでただろうが、詰めが甘かったな。真紅さんよぉ!」そう言いながら、未だにレイピアを離そうとしないカタリナの腹部に容赦のない拳を振り下ろす。覚悟を決めたカタリナが目を閉じたその時。
「すまん 待たせたなカタリナ」黒いマントに包まれた男が突如、カタリナと大男の間に割って入った。