銀の狼
僕は奴らが隠れている場所をスキル 「気配隠し(ハイディング)」で森の中から観察していた。中の人数は8人。中に村人と思われる人数が24人。
みんな紐で繋がれ衣服は最低限、意識があるのが数名。他はみな意識がないであろう横たわっていた。俺は今すぐにでも助けたい衝動に駆られるも、じいちゃんに言われた通り約束の時間を待った。
みんな遅くなってごめん・・・カタリナは村長として、初めてココロの村を作った事を思い出してた。
元々カタリナは中堅ギルド「ココロ」の女団長「真紅のカタリナ」として始まりの都市で名を馳せていた。初めてこのゲームをプレイしたプレイヤーたちにオススメの狩場を教えたり、武器の適正などを教える初心者チューターとしての活動の一方、都市周辺にごく稀に湧く凶悪モンスターの討伐などを行っていた人気ギルドの中心人物だった。
やがて都市が大きくなるにつれ、かつて初心者だったプレイヤーが都市郊外のモンスターを狩れるほどに成長した時。ココロの新たな活動場所を探そうとカタリナたちは都市を飛び出し、自分たちのギルドで郊外に村を作り始めたのであった・・・
最初は何もなかったフィールドに自分たちで家を建て畑を耕し、まさにヴァーチャル世界で悠々自適に過ごしていたところに、突然訪れた盗賊たち。ココロの団員たちはモンスターを中心に討伐していたギルドであり、また始まりの都市でカタリナの人柄に共感し入ったばかりの初心者プレイヤーも多い。一方「銀の狼」はプレイヤー狩りを中心に行っていたギルド。その両者が激突した結果がどうなったのかは言うまでもない。
カタリナ以外の村人はすべて拘束され、村の収益金と武器をすべて渡さねば、殺戮と陵辱をプレイヤーが引退するまでし続けると。みんなを助けるために目先のお金を渡しては、私たちと同じ犠牲が生まれてしまう。王国に行って騎士を派遣するには、時間が足りない。最寄りの都市から義勇兵を集めていたら、それこそ村の収益以上に報酬を払うことになってしまう。
私は、盗賊のお頭と呼ばれる頭巾を被った男とお金を下ろすまでの時間を交渉し、村の噂で聞いていたおじいさんの家に向かっていたのだった。剣聖ではなくても、勝利したときは報酬は私の剣だけで済むかしら。みんなは私の想いを理解してくれるかしら。どの道この戦いに負けたら私は責任を持って引退ね。
カタリナの第二の故郷を巡る戦いが今始まろうとしていた。。。