戦いの前に・・・
「それはまさか日本刀ですか・・・?」そういうとカタリナはおじいちゃんと刀を交互に確認し目を丸くした。それは目の前の高齢のじいちゃんが所持しているには不釣り合いなアイテムだからだ。このゲームにおける日本刀のレアリティは非常に高い。一番下の刀でもランクはA級。しかし非常に繊細なメンテナンスが必要で怠ると武器は破損するし、目利きができなければ日本刀は他の武器と違い見た目上の区別がつきにくく、持ち味を活かせないため、日本刀の使い手は非常に少ない。
しかしそのデメリットに見合うだけのメリットもある。それは属性を内包できるということだ。通常の属性武器は、外側に属性が反映された状態で外見だけで属性の判別がつく。
例えば炎属性の場合は火が見えるし、氷属性の場合は冷気が見える。刀の場合は無属性なのか属性ありなのかが切られた時にしかわからない。それが多重属性の場合はなおさら、切られた人ですら属性がわからないまま絶命する事も多い。
まぁ属性武器自体がレアリティが高いから、そもそも あまり目にすることはないけど・・・
「そんな、見ず知らずの人にそこまでさせられません! その刀があればなおのことです! 」
このゲームはプレイヤーが負けると経験値を失う。そしてその亡骸はゲーム上に数日残り続けて、その期間はログインができなくなる。
つまり、倒した側は倒された側の追い剝ぎ行為が可能なのだ。しかし、じいちゃんは躊躇うことなく愛刀を装備した。つまり負ければ相手に長い月日を共にした相棒も奪われるということだ。
「例えこのままお主を残して帰っても、儂に心残りができてしまう。それならば 家族そして友人と共に散るだけじゃ もうカタリナさんと儂の立派な友人じゃろう?」
カタリナはその言葉を聞くと膝から崩れ落ちた。
「必ず・・・必ず・・・ご恩返しさせて頂きます。」
僕たちの目的が一つになったとき、荒廃と化した町に夜明けの光が訪れた。。。
盗賊たちのアジトの場所が分かったところで僕たちは改めて自分の装備を確認していると、じいちゃんが見張りの数や地形を確認して満足そうに言った。
「儂の考えた作戦があるのじゃが、少し聞いてもらえんかの?」