じいちゃんが強すぎて辛い
全世界中で空前絶後の販売記録を更新しつづけている「クルセイド・オンライン」
このゲームの最大の売りであるヴァーチャル世界は今、現実世界を超える仮想世界として全世界で30億ダウンロードを超え
常時接続人数は20億を超えているまさに桁違いの記録を更新し続けている。
そんな世界にまた、新たなプレイヤーがこの地で名声をあげようと鍛錬に明け暮れている。
「いてててて」
「そんな事でどうする。かずきはまだまだ一振り目の後の隙があまりに大きすぎる、これじゃ今の下位モンスターは倒せても、2つ先の森のピクシーすら倒せんぞい」
「じいちゃんが強すぎるだけだって」
ポツンと森の奥深くにある、ロッジの前で棒切れ片手に俺は土を舐めされていた。
俺は今このゲームを販売日に並んで買った 鹿児島のおじいちゃんに稽古をつけてもらっている。
「相手を見て 剣を振るったら、振ってる最中に相手の次の手と自分の手を考えるんじゃ 学校の剣道でも習うじゃろう? どうして仮想世界で同じことができんのじゃ?」
「学校の剣道はそこまでしないよ爺ちゃん せいぜい素振りくらいだよ」
「なんじゃ 今の剣道はつまらんのう・・・」
「それに爺ちゃんがホント強すぎなんだって・・・」
それもそのはず、なんたってこの爺ちゃん 発売日からほぼぶっ通しでゲームをしているせいか
この世界で唯一「剣聖」の称号まで持っている。ちなみに剣聖などの上位称号は誰かが一度取得すると、そのプレイヤーが引退するまで誰も取得できない。
つまり、この「クルセイド・オンライン」で唯一無二の「剣聖」保持者が、この80を超えた僕のおじいちゃんだ。
称号を伝承する事もできるが、このじじいは自分より弱いヤツに称号を与える気はないと言っているので、この先当分は剣を使った戦いでこの爺さんに勝てる人は現れないだろう。
全プレイヤーの平均レベルがやっと40今越えようとしているときに、じいちゃんのレベルは98 このゲームで70レベルを超えてるプレイヤーが4人しかおらず、レベルが90代に達しているのはじいちゃんだけだからどれほど狂ったようにやり込んでいるかがお分かり頂けるだろうか。
そして今日もまた、どこかで噂を聞きつけたのか、高レベルのじいちゃんの助言を求める旅人がやまない。
「あのー すみません、こちらに剣聖様がいらっしゃるとお聞きしたのですが。」
「はて? ここにいるのは剣聖でもなんでもないただのしがない祖父と孫ですが、いかがされましたか?」
じいちゃんは俺以外に自分が剣聖の称号を持っていると話さない。話すとひっきりなしに称号を貰おうとする人で溢れるし、殺してでも奪おうとするプレイヤーがこの世界には多すぎる。。。だから毎回名乗らず、まず相手の目的を聞き出す事にしていた。
「私は3つ隣のココロ村からやってきましたカタリナと申します。すみません。私も風の噂だとは思いましたが、剣豪様に助けてもらえばと藁をも掴む気持ちでやってきましたのですが、宜しければ私の町のお話だけでも聞いていただけないでしょうか」
カタリナは1週間程かかるであろう道のりを歩き続け疲れているだろうに、自らの使命を果たそうと、しっかりとした口調で話し始めた。
そして、その緊迫した表情がこの先の話の重さを予感させていた-------
「実は------」
数ある小説の中から読んでくださり、ありがとうございます。
人生で初めて書いた処女作です、拙い文章で読みづらいところ、お目汚しになる部分が多々あるかとは思いますが、どうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします。