転生三日目 仲間と共に、人化を目指す。
「……夜が明けちゃいましたよ……」
「……はっ! オレはどうしてこんなところに……そうだ! あの化け物は……」
「ゴブ男さんは化け物なんかじゃありません! ただちょっと方向性を間違っちゃっただけです!」
ういさん、それ慰めになってない。
「……あの化け物……死んでないか?」
「死んでませんよ! ただ魂が抜けちゃってるだけです!」
ういさん、それもう死んでる。
「もう! 昨日貴方がゴブ男さんを化け物呼ばわりするから、ゴブ男さん落ち込んじゃって、ずっとあのままなんですよ! どうしてくれるんですか!」
「す、すまん」
「はは……良いんですよ、僕が化け物であることに、変わりは無いんだから……」
「ゴブ男さん……」
「……それなら、人化を目指したらどうだ?」
人化……? ういさんも言ってたような……
「あ……成程! そうですよ、ゴブ男さん。一緒に人化しましょう!」
「人化とは?」
「人化とは字の通り人でないものが人と化す術だ」
「……ういさん、人化したら、僕は化け物じゃなくなりますかね……?」
「はい! 顔は元からイケメンなんですから、人間になれば絶対に本当のイケメンになれますよ!」
本当のイケメンて。……でも、
「イケメンじゃなくても良いから、人間に……この姿から変わりたい……!」
「ゴブ男さん! はい! 頑張りましょう!」
「で……肝心の人化する方法は分かっているのか?」
「「……」」
「分かってないんだな……」
そりゃあ、転生してからまだ三日しか経ってないし、そもそもゴブリンだからな。周りから得る情報が何もない
「よし。じゃあオレについて来い! 良いところに案内してやるよ」
そう言って歩き慣れているのか森をズカズカ進んで行く。
「かっこいいですね。イケメンとはあんな人のことを言うんですかねー」
「あの人、女性じゃないのか?」
「「え!?」」
「……え、気付いてなかったんですか?」
ういさんは気付いてなかったのだから驚いても不思議ではないのだろうが、何で……えーっと……
「ああ、オレの名前はシアンだ」
そうそう、シアンさんも驚いているんだ? って、今さらっと心を読まれた?
「驚いた。オレを初見で女だって見抜いたのはあんたが初めてだよ」
成程、それでか。……普通に女性だって分からないのか? シアンさん、名前の通りシアン色の美しい髪と瞳をしていて、とても綺麗だと思うけどな。
「親もオレが女だって知らなかったらしくてな。オレが生まれた時、親族全員が驚いたらしいぜ」
……何で女だって分からなかったんだ?
「オレは別に男でも良かったんだが……親がどうもオレを女らしくしたいようでな。鬱陶しかったんで家出したんだ。で、今向かっているのはオレが世話になってる家の大家のところだ」
そうなのか。ところで……さっきからういさんが全く動かないのだが。俯いて黙っている。
「す……すみません! わ、私、女性の方だって気が付かなくってっ! と、とても失礼なことを……」
「いいんだよ。慣れてるしな」
「うぅ、本当にすみません……申し訳ないです……」
「いいっていいって。気にするな」
そう言われてもなお、ういさんはペコペコ頭を下げて居る。
「……と、着いたぜ。ここだ」
と言ってシアンさんが指さしたのは、
「……テント?」
「占いの館みたいです」
「おお、良く分かったな。まあ館じゃないけど」
「「……え?」」
紫の布に、白い糸で無数の星がある大きなテント。サーカスのテントみたいにも見える。
「ここがオレの大家の家、『テルティアの占い屋』だ!」