転生二日目—午前 仲間に出会い、名付けられる。
「お早う、朝ですよ。起きてください」
「ん? もう朝……ってうわあああああああああああああああああああああああああああああああああ化け物ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「……もう化け物でいいよ……」
「あああああああああああああああああああああああああ!」
「落ち着け! 一旦冷静になれ! 深呼吸! はい、吸って……吐いてー」
「すぅーはぁーすぅー……はぁーーー。はぁはぁ、すみません。驚いてしまって……」
「やっぱり。君……僕の言葉が解るのか」
「はい。それが何か……ん? え、もしかして貴方も……?」
「そうです! 僕も元は地球に居ました」
ふふ。やはりか! まさかこんな所で転生仲間に出会うとは! 僕が転生してから、まだ一日しか経っていないぞ。
「本当ですか! ……貴方も、トラックに撥ねられたんですか」
「……はい」
交通事故が多発していることが分かった。
「私は本を読んでて、赤信号だって気づかずに横断歩道を渡ってしまって。まぁ……自業自得な死に方ですよね」
「僕は…………あれ?」
「どうしました?」
僕は何で死んだんだ? それよりも……僕の名前は、何だ?
「思い……出せない」
「……はっ! もしや、記憶喪失!? 名前思い出せないんですか!?」
「……何でそんなに嬉しそうなんですか……」
「あ……す、すいません! 失礼ですよね! わ、私、本とかが大好きで……ファンタジーとか好きで……そのせいで死んだんですけど」
轢かれた時に読んでいた本とは、ファンタジー小説だったんだな。
「だからこの世界に転生できてすっごく嬉しいんです! ……って、そうじゃなくて。記憶喪失とかって、過去に何か有ったりすることが多いじゃないですか。謎が有っていいなーって思いませんか!?」
「いや、分からん」
「あ、そうですか……」
寂しそうな顔でチラチラこちらを見ないで頂きたい。記憶を失っている側としては良いなとは思わないだろ。
「……あ、そうだ。私はういです。初と書いてういです!」
変な名前だな。
「あ、今絶対変な名前って思いましたよね!? 親が考えに考えぬいてつけてくれた大事な名前を嗤いましたね!? それなら! 今日から貴方は“ゴブ男”です! 私と同じように皆から嗤われれば良いんだぁー!」
「分かった。悪かった。だから、ゴブ男は絶対に止めてくれ」
……前世で名前、からかわれていたんだな。でもゴブ男はないだろう! 自分がそう呼ばれることを想像してみろ! 寒気がする。
「はぁっ、はぁっ、ふぅ。すいません、取り乱しました」
「お、おぉ、落ち着きましたか」
「はい。いやぁ私、名前のことに触れられるとどうも冷静で居られなくなるみたいで……」
「自分で元に戻れるなら良いですよ」
「そう言ってもらえると助かります。ゴブ男さんには迷惑をかけるとおもいますが、これから一緒に頑張りましょう!」
…………ん?
「ち、ちょっと待ってください。これから一緒に?」
「え? 駄目ですか? 一緒に居た方が安全ですし、それに人化のコツも教えて欲しいですし」
「……人、化……?」
「…………え?」
…………………………何だ、それは?
ヒューと風が吹いて行った。