入学式前にペチャクチャ喋ってんじゃねえぇぇえ!
「サーキットさんの本校の入学志望をお答えください」
「サーキット言うなし………というか何で面接仕様?」
「分かった、一緒に面接しようね♪」
「そっちの“面接しよう”じゃないから!!」
鈴鹿はそう言って的確なツッコミを決めてくるカウンターアタックタイプだ。ツッコミに慣れているかのようなそんな感じだ。
自己紹介のように涼香は口を開くと、
「私は、昔からこの学校の小等部でずっといるんだ。だからエスカレーター式で上がってきたの」
「この学校そういう人結構居るからねー。開校以来、全国から生徒が募ってるからね」
お兄ちゃんメモによると、漆ヶ丘学園は創立18年で、唯一無二の能力制総合学校だ。前に話した通り7年前までは漆ヶ丘大学は無かったそうだが、高校だけでも開校当初から絶大な人気を誇る学校だったらしい。
能力制ということで、絵画や音楽のような芸術、サッカーや野球のようなスポーツ、工業・農業といった産業知識・技術に秀でている者達が集い、育成していく校風だ。
通常とは逸した採用方法なので基準の成績を保持しておれば、意欲と能力のある者なら誰でも入学することができるという。
よって、全等部含む総生徒数1万2000人。高等部だけで4千人在籍している。40クラス制で、1クラス100人位と馬鹿げた数値になっている。
高等学校設置基準にも合法的になり、文部科学省にも許可されている為、授業数は他校と比較してもかなり少ない。
しかし全国の各科目ごとのスペシャリストが在籍しており、全国模試成績もトップ100全て独占。
そんなキチガイで規格外な学校なのである、と記載されてある。
お兄ちゃんの母校でもあり、小等部から通っていたらしい。
が、中等部から例外的な飛び級により僅か3年足らずで漆ヶ丘大学まで卒業している為、そこまで思い入れは無いようだ。
その後も博士号まで獲っていると、もはやチートなのである。
「でも、私も中等部からここに居るよ?」
「まあ、たくさん人が居るし、会わないのが普通かもね」
「そういえば、小等部から通っていたお兄ちゃんもそう言ってなぁ」
それを聞いた鈴鹿はピクリと肩を震わせて反応した。
私が総生徒数を聞いたとき“友達100人出来るかな♪”を歌うと……“友達100人出来ても、その内のほとんどが知らない人か忘れた人”とシニカルにお兄ちゃんが言っていた位だ。
___あんまりいても気持ち悪いがね!
という結論に至った。そんな数、ネットフレンドで十分だね。
そう思考を切らしていると、鈴鹿が訝しむように隣からまじまじとこちらを見つめている。
なにか意味ありげな様子だ。冷静にしているつもりだろうが顔に焦燥の色が微かに残っている。
「ど、どうしたの?」
「いや、苗字聞いたときにも考えたんだけど……。そのお兄ちゃんって、もしかして___」
『__間も無く、入学式を始めます。在校生、新入生の皆さんは静かにお待ち下さい』
どうやら入学式が始まったようだ。
さっき鈴鹿さんが何か言い掛けていたけど、何だったんだろう。落ち着いたら尋ねてみようと思う。