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妹の妹による妹のための家庭  作者: 棚から銀髪子猫(求)
1/6

妹でも愛想さえあれば関係ねっぞ

結構シリアスなラブコメにしようと思ってます。


「お兄ちゃん、飯!」


「分かった分かった、ちょっと待ってろ」


いつもの食卓、いつもの会話、いつもの日常。


__いつもの毎日が今日も広がってる。


「お~ 今日の晩飯は何かな♪」


「ああ、キノコ添え豚ロースソテーにコンソメスープ、茄子のバジル炒めサラダに漬物だ」


と言うと妹は途端に顔をしかめると共に反義を翻してくる。


「えぇ~、お兄ちゃん私の嫌いなものくらい知ってるでしょ?」


「知っててやったに決まってるだろ?」


「ひどくない__ッ!?」


「そういうお前の嫌がる顔もいいZE☆」


「し、趣味悪いぞッ!」


そう言って妹の律奏は床をのたうち回る。あまりにも可愛い妹についつい意地悪をしてしまう。


こいつは妹の律奏。自由気ままに自らの空間を制す傍若無人な態度、中程度の上背に僅かに肉付きめがあるワガママボディ、普段のヒキコモリ体質が仇となった壊滅的な運動能力の皆無さ、そして今年で16歳にになろうとするのに対し今日進行形で甘えん坊な性格を所有する常軌を喫した理想像塵芥な妹___とまでは評さない。


寧ろ、現状に不満の無い良い妹だ。挨拶・尊重の出来る礼節、兄妹の欲目を排除した容姿の良さ、兄を足蹴にすること無い懇篤な人情ある兄想いな妹に育ったことは何よりの重畳だ。



これが俺たち千野家。他愛の無い会話に花が咲き、刻々と時が過ぎる。


「ちゃんと認知してたからこそ、お前に配慮してバジルで炒めてやったんだから、好き嫌いせずサラダも食べろ」


「いや~、律奏は肉食系だから……」


「す・き・き・ら・い・し・な・い!!」


「あうぅー。お兄ちゃんが意地悪するよ~」


そうして鼻を摘まみながら食べる。


__大袈裟すぎだろ。だが、そこが可愛いので中々叱責出来ないのがこいつだ。


フォークを口に近付け、大きく頬張り、ゆっくり咀嚼し始める。


「結構いけるよお兄ちゃん!」


「だろー? 時間掛けた甲斐があったなぁ_____って、ソテーの方かよっ…………」


フォークに刺さっていたのはキノコを避けてある豚ロースソテーの方だった。だから大きく頬張ったんだな。


視界に入り次第、反射的にがっくりする。同時に失念が沸き起こる。家族のために試行錯誤して作ったのに気に入ってもらえないどころか、食べてもらえないのはどこの家庭でも辛いだろう。


「ごめんごめん、サラダの方も美味しかったよ」


「最初からそう言ってくれ……」


そしてまた食べ始める。


「そういえば話変わるけど、お兄ちゃん。最近仕事ばっかだけど休みはあるの?」


「まあ、一様そこそこは。芸能界なんてそれがザラなブラック企業だからな」


「そうだけど、2ヶ月前から全然帰ってこないじゃん。今やってるドラマだって収録終わったばかりなんでしょ」


「これでも何個か断ってるさ。同時進行のドラマとかな。」


その通り俺は俳優を生業としている。今年で16歳。芸能界でのキャラ設定は24歳で通しているが、まだまだガキの範疇だ。


子役俳優から成り上がった9歳の時、学校との両立によりなかなか人気が出ず、ある事故の後、機転して歌手活動しつつ配役もこなし始めた15歳からというもの爆発的に名が売れ始め、今ではそれで妹一人養えている状況だ。当時から童顔俳優として通っていたため歳の疑惑が浮上してくることはなかった。


「それにしても今話題のイケメン俳優がお兄ちゃんとは、つくづく世界は狭いねぇ? 16歳でそないな女が……童顔とは恐ろしいよ」


「おい、今女顔って言おうとしたか?」


「い、いえいえ____ッ!!」


反対の念を出し、顔を勢いよく横に振る。


「あ、危ない危ない……そういえばこれ禁句だったわ。危うく、お兄ちゃんの沸点にシャバドゥビタッチするところだった!」


そういって、気を紛らすようソテーにかぶり付く。


別段、俺は女々しい比喩をされることに嫌悪感は持ち合わせていない。よく昔から諭されるし、それも俺の精髄とも思っている。


理由は分かっている。あいつだって只の冗談だと言うことも。弄られたって、罵詈雑言だって良い。妹にこの容姿を肯定されたくない。客観的には意味不明だが、それだけだ。




実際、今の俺はそう見える状態の方なわけで仕方ないことも無いことも無いが___


「あ、でもマネが仕事減らしてくれるっぽい」


「マネージャーってたしか背の高い人だったよね? 確か名前は………」


「大和 睦月さんだよ。俺の専属マネの」



ズズッとお茶を飲み、話を続ける。


「2年前からめっちゃ仕事回してきて大変だった訳だ。それで、当初の仕事量の代わりこれからお前が大学行くまで平日もそこそこ休暇とってくれる様子だが…………」


と、わざとっぽさが残らないよう全力の演技力で謀る。


「_____それにしてもどうも引っ掛かるんだよ……」


「え、何で?」


「お前明日で瀬戸学園に進学するだろ? モデルとかCMとか新しい仕事が来る多忙なY氏に、わざわざ中高生の為に3年間減らすなんて合理性が欠けているとしか思えない……」


「おお、言われてみればそうだね! そして軽く自慢!」


と、今さらのように合点がいったようだ。


「いつもぐうたら生活している妹とはいえ、一般的には明らかに高校生なら一人でもやっていける程度の問題の筈なのだが、この配慮は何かと不自然だ。水面下で俺に秘匿している事情がある気がするな」


「お兄ちゃんも一緒に入学できたらよかったのにね」


「冗談言え、16歳とはいえ既に卒業資格保有者だぞ。法的に不可能。」


俺はある都合上、中学1年の秋よりある校舎で僅か2年弱で履修科目を全て終えた。日本にそのような制度は無かったのだが政府にまで影響力をもつ三大御家の筆頭である薄氷家からの要望と言うより命令によって公認として許可されて、勤学期間を飛び級をした。ので、もう大学まで卒業済みと言う事になっている訳だ。


その為、色々と学園生活を謳歌出来ず、栓無き事だが家系の事故事情でそうせざる負えなかった。


___だが今回は違う。


こちらとて隠し事はしたくないが、サプライズもまた一興だろう。今のところ律奏はまだ気付いていないようだ、しめしめ。


「とりあえず今日は早く寝るぞ。明日入学式なんだから保護者として俺も在席する義務が発生している。」


「むむむ~、ちょいとお待ち、とりあえず高校時代最初のネット徘徊とアニメの消化を…………」


と言ってこちらを何度もちらつく。


まあ、今日くらいはいいか……と半分諦めの声音で言う。


「…………そんじゃ俺も一緒に見るかね…………」


「りょーかい! 大好きお兄ちゃん♪」


「はいはいワロスワロス…… 全く、調子の良い奴め」


そうして律奏は30分もせずに寝てしまうのであった。

二話目も待たれよ。

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