第10話 ◆・・・ 春遠からじ ② ・・・◆
山脈街道を此処まで登って来たのはカズマとマサカゲの他、アスランとその臣下達を含めて七十名余り。
この七十名余りで編成された別動隊は、本体に先駆けてカグツチの街から東西の街道へ数人ずつに分かれて出た後。
そこから北街道の途中に在る本陣までのやや遠回りな道程は、しかし、街を出て程なくヨシミツが用意していた馬に跨ると、移動に然程の遅れた感も無く。
全員が概ね予定時刻には本陣での再合流を果たしている。
日付けが変わるまでは残すところ二時間程度。
この時間帯にカズマの道案内でアスラン達は本陣へ到着したが、これも予定通りである。
そのアスラン達の到着よりも一時間ほど早く一番先に到着したマサカゲは、此処で自ら本陣の兵達に討伐作戦の概要を伝えると、必要な打ち合わせも細かな指示も全てを終えて待っていた。
支度と準備を終えた本陣の兵達は、日付が変わる前に五百ずつの四隊に分かれると、特に地理に明るい者達を先頭に雪が降る夜陰の中を、松明一つ灯さずに目的地へ。
四つの隊は、それぞれがアイーダ山脈への山道を付近に持つ四ヶ所の村へと向かったのである。
別動隊も兵達が動き出すのに合わせて出発すると、此方は山脈街道に最も近い村へと急いだ。
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――― 砦に至る山道が複数ある ―――
この事が明らかになったのは、それは作戦を練る段階でだった。
とは言え、マサカゲもカズマもそうだが。
代官のヨシミツでさえ、ギルドから届いた追加の詳細が無ければ知る由も無かった。
まぁ、正しくは山道ではなく『獣道』と呼ばれている道は、傍近い村の者達なら当然と知っている反面で、だから他所では全くと言えるほど、知られていなかった事もある。
一方で、こうした獣道を使って山中に入る村人たちは、雪が解けた後から雪の降り始め頃まで。
暮らしに欠かせない狩猟や山菜採りに間々利用しているらしい。
始め砦へ至る山道は、麓の村の一つから伸びているものだけだと思われていた。
そして、この一つしかない山道は地図にも山道が記されている。
つまり、それ以外の獣道などは一切と言って良いほど、存在の認知がされていなかったのだ。
ただし、認知されていない幾つもの獣道は、これも利用して来た者達の証言によると、ほぼ全部が山頂へ至ることが判明した。
砦のある山頂付近は、此処も山を知る者達から得た証言で、木々が殆ど無い見通しの良い地形をしているらしい。
傾斜もなだらかで日当たりが良く春と秋には山菜が多く採れる。
付け足すと、獣は常に安全な所を歩く習性があるため。
よって、この獣たちが歩いて作った道は、整備された道が存在しない山中においても比較的安全な通り道として利用する事が出来る。
付近で暮らす村人たちは、この知識を親から子へ当然と語り継いでいた。
――― 大掛かりな陽動 ―――
本作戦における本隊は、傭兵団イグレジアスが立て籠もる砦に向けて、同時に四ヶ所の山道から兵を進める。
四ヶ所の山道、もとい獣道は、当然だが雪が深く積もっている。
よって、先ずは道を作る所から始まる。
夜陰の中を気付かれないように先発した各隊五百の兵達は、夜明け前に所定の村へ着いた後。
昼の間は完全な休息を取ると、日が沈んで暗くなった辺りから道作りに取り掛かる。
そこへ同日の日の入り後に本陣から進発した後続の戦力は、先行した五百の兵が作った道を登って砦へ向かう主攻を担う。
同時に四ヶ所から攻め上る点について。
これは、狭い山道を登る味方の運用効率を考えた他。
迎撃して来るだろう敵戦力を一ヶ所に集めさせては、地形上の不利と集中した戦力からの攻撃に晒される味方の被害が、悪戯に増える事も容易に予想できる。
けれど、敵戦力は多く見積もっても六百を超えない程度。
よって、此方が四ヶ所から攻め寄せれば。
迎撃する側も戦力を割り振らねば対応出来なくなる。
練り上げた作戦では、四ヶ所から攻め上がる各隊は砦の手前で合流する。
狙いはつまり、迎撃する側は必ず四ヶ所へ戦力を割かなければ、容易に側面や背後を取られる危惧に晒される。
補足的に、敵が戦力を均等に割かなくとも。
逆に此方は手薄な所から側面、あるいは背後へ回って戦況を優位に運びやすく出来る。
仮に敵が迎撃を行わず最初から砦に完全に立て籠もった場合には、此処からは別動隊との連携もあるが。
最終的には夜陰の内に、火攻めを以て砦ごと完全に焼き払って終わらせる。
しかしながら。
此方が掴んだ情報によると敵の武装は脅威なれど、それを十全に活かせるだけの物資が補給を受けられずに不足している。
更には、金銭で仕事を請け負う傭兵が、そんな状況下で全滅しか先の無い籠城策を選ぶ可能性は限りなく低いも推測できる。
故に、本作戦の検討段階において。
既に此方は絶対的な優位を掌中に収めている。
ただし、本隊の主目的は、あくまで敵の注意を引き付けるための陽動である。
陽動は、当然だが本命を隠すために在る。
――― 少数精鋭による奇襲 ―――
大規模な戦力を囮にして敵の注意を引き付けながら。
迎撃に出払って手薄になった砦には、精鋭部隊を以って敵将の捕縛、あるいは殺害を敢行する。
敵将を殺害した場合。
機密文書や背後を掴める証拠の類を捜索回収する。
同時に、攫われたとされる民間人の捜索と保護を遂行する。
そう。
これが本作戦においての本命である。
――― 絶対厳守事項 ―――
当該の作戦行動地域は、地図で見ても分かる通り。
ヘイムダル帝国との国境が間近に在る。
そのため、逃亡する敵戦力が国境を超えた場合には、遺憾ながら国境を越えての追撃を固く禁じるものとする。
補足的に、国境付近での戦闘はこれを可能な限りにおいて速やかに終結させる。
国境越えは公王の許可も得ていない上に、先ず領土権を持つヘイムダル帝国の了承さえも得ていない。
よって、作戦の検討段階の最中。
この点だけは代官のヨシミツが怖いを隠さない声で念を押すと、それこそ徹底を申し付けていた。
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山頂を包み込んだ強い風と吹雪いていた雪は、夜陰の中でいつしか止んでいた。
あの後でもう一度ブラムを呼び出したヴェンデルは、補給の目途が立たない事と、物資の残りが少ないを理由に明日の撤収を告げた。
既に時間が経ち過ぎている。
先の作戦で消耗した此方は更に消費するばかりで、反対に公国側は準備を整えている筈だと。
『夜が明けたら。セペタまで行くのに必要な装備と食料だけを持って速やかに行動する』
セペタとは山脈街道を帝国側に出た先にある五千人程が営む町のこと。
指示を出したヴェンデルは、食料の残りを考えても数日以内に動かなければ動きが取れないまま底をつく。
その上で、食料に未だ余裕を残す今の内に雪が覆う山脈を踏破する。
胸騒ぎは、それで夜陰の中での撤収も考えた。
だが、昼の間に確認出来た麓からの報せも。
直近の見張りからの報せでも異常がないを受けた事で、ブラムと相談して明るくなった所で行動を起こす。
出した指示は、撤収の準備が整った所で一度休んで構わないも付け足すと、ヴェンデル自身は機密に当たる文書などを全て灰にした。
万が一にでも公国側の手に渡れば、契約主との関係にも響く。
否、傭兵が契約主と交わした詳細事項を漏らす等は、二度と傭兵としてやって行けなくなるくらいの信用問題にさえなり得るのだ。
念には念を入れて確認したヴェンデルは、そして、荷造りは部下達がしている事で仮眠に入った。
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――― ヴェンデルが仮眠に入った約二時間後 ―――
迫る異常事態へ一番に気付いた数人の傭兵は、しかし、見張りではなかった。
その傭兵たちはブラムの指示で、ライトを片手に麓に潜んでいる仲間へ撤収を報せようと砦の外に出た直後。
瞳が百や二百などではない無数の灯を映した瞬間、歩く足が地面へ張り付いた様に止まった。
外に出た全員が、何故・・・と、先ずは思った。
一人が振り返って、そして、見張り台の戸板が完全に閉じているのを映して怒声を上げるまでは僅か数秒足らず。
此処から映す麓一帯は、無数の灯で埋め尽くされたかに見えた。
しかも、麓一帯を埋め尽くした灯りは、そこから此方へ向かって徐々に伸びている。
直後、まるでこのタイミングを計ったかのように太く高い音が幾つも鳴り響くと、続けて今度は金属を打ち鳴らした甲高い音が山頂側に居る傭兵たちへ間違いない敵襲を抱かせた。
仕事をサボった見張りに対して怒鳴った仲間は、そのまま砦の中へ駆け込むと、大声で敵襲を叫びながら走った。
その後ろから続くように仲間達も声を大にして敵襲を叫ぶと、砦は瞬く間に混乱を孕んだ慌ただしい空気で満たされた。
「ヴェンデル!! 敵襲だ!!」
バァンとドアを開けて駆け込んだブラムの叫ぶ声へ、既に着替えも済ませたヴェンデルも押し殺した様な声で分かっているを返すと、ただ、やはり表情は強張りを隠せない険しさで包まれていた。
「状況は」
「公国軍の兵が迫っている。だが、数が多過ぎる」
「どれくらい来ているのだ」
「あの灯りの数だと・・・軽く見積もって一万以上だ」
「そんな大兵力を一体何処から」
口にしながら今度は思案の色を浮かべたヴェンデルには、しかし、ブラムは無言で首だけを分り易いくらい横に振った。
「報せだと公国の兵は四ヶ所から此処へ向かって山を登って来ている。しかも、見張りがサボったせいで。俺達はそう遠くない所まで奴等の接近を許した」
気の緩みが取り返しのつかない事態を招く。
こんな事も、だが、これも傭兵なら当然な事なのだが。
「分かった。直ちに荷物を持てるだけ持って逃げるぞ」
せめてもの救いは、明日の撤収に備えて食料などの残りを荷物に纏めたこと。
異常が無かったから夜明けを待っての撤収は、故に今直ぐでも実行できる。
「了解だ。だが、麓の奴等はどうする」
「既に捕まっているか殺されているか・・・・でなければ、先に逃げている筈だ」
ブラムが気にしているのは、情報を集めるために行かせていた仲間のこと。
だが、駆け出すと一気に砦の裏へ上ったヴェンデルは、ここで自らも映した全体の状況へ。
口にはしなかったが、先の発言がそう外れていない・・・・・
眼前に映った砦の中では、そこかしこで「撤収」を叫ぶ声が幾つも響くと、混乱したのか着の身着のままで逃げ惑う者が幾人もいる。
確かに大軍がここへ向かって攻め上がっているのは事実。
それでも。
・・・・・近くまで迫っているとはいえ。この距離ならまだ余裕を持って逃げられる・・・・・
ヴェンデルは自分の直ぐ後ろを駆けて来た普段から小間使いの若い傭兵へ。
山頂から向こう側。
自分達の退路の安全確認を任せて走らせた後。
再び戻した視線は、一万の兵力もあながち嘘ではない・・・・・
麓から此処へ向かって徐々に伸びている四本の灯は、それだけも、数の多さで数千の兵力が攻め上がっているくらいは見て分かる。
疑問は、これだけの兵力を、何故こちらは察知する事が出来なかったのか。
だが、ヴェンデルは抱いた疑問を、それ以上は深く考えなかった。
そんな事は此処を切り抜けた後で幾らでも考えられる。
そして、今この瞬間の最優先事項は、とにかく逃げ延びる事にある。
そう。
自分達の直ぐ後ろには国境が在るのだ。
ヴェンデル自身、此処から全力で走れば二十秒と掛からずに越えられる。
耳に届いた自分を呼ぶ叫ぶような声へ。
振り返ったヴェンデルの瞳は、退路の確認で先に行かせた部下が自分へ向けてライトを大きく振って安全を報せている。
ヴェンデルの口は即座、腹筋が硬くなる程の大声を、声枯れで喉が痛んでも叫んだ。
「手に持てる装備と荷物だけを持って国境を越えるんだ!!奴等は国境を越えて追っては来れない!!まだ距離もあるのだ。焦らず速やかに撤収しろ!!」
叫び声の指示も、既に浮足立った仲間達は、中でも経験の浅い者達の醜態が顕著過ぎた。
そうした中で、すぐ手前まで人五倍は荷物を背負ったブラムを映したヴェンデルの瞳は、だが次の瞬間。
ドォガァッン!!
轟音は、一帯の大気が生暖かさを肌で感じられる程、ただし激しく振るわせた。
直後の信じ難い眼前の光景へ。
呆然としてしまったヴェンデルの見開いた瞳は、見張り台よりも遥かに大きな火球が、それで見張り台へ横から一直線に飛んでくると直撃して爆発したまでを焼き付けられた。
反射的に「あれは何だ!?」と、叫んだヴェンデルの大きく見開いた瞳は、ただし、直撃して爆散した火球が、それまで在った筈の見張り台を跡形も無く消し飛ばしただけでなく。
爆発した感で弾けるように飛び散った無数の炎の塊は、太い丸太で組み上げた柵や建物にまで火を点けると、付近はもはや炎が高く柱や壁を造っている様すら映る。
たった一撃で砦内のあちこちが火の手を上げる状況は、未だ残っている仲間達が完全に浮足立つ最悪の事態へ至らせるのに十分過ぎた。
更に、巨大な火球が飛んで来た方向からは、それも柵の切れ目から内部に侵入して来た者達が、既にパニック状態の仲間達へ、怒涛の勢いで襲い掛かっていた。
「ヴェンデル!!突っ立っていないで走れ!!お前が捕まったらイグレジアスまで潰れるぞ!!」
相棒の怒声は反応する間もなかった。
ヴェンデルは首の後ろを力任せに引っ張られるようにして。
未だ多くの仲間達が残っている砦から無理やり遠ざけられた。
そこから先、ヴェンデルのおぼろげな記憶は真っ暗闇の中で国境を越えると、ブラムの声を頼りにひたすら走った。
途中で転ぶと雪の中を勢いそのまま何処までも転げ落ちた感覚も。
そのせいで身体中が軋む様に痛みを訴え悲鳴を上げても。
ヴェンデルは耳に届くブラムの声を頼りに真っ暗闇の中を、ただひたすら逃げ落ちた。
暗闇の中で、どれくらいの仲間が一緒なのか。
自分達が今はどの辺りに居るのか。
夜が明けて、そこで分かった事は、五百人以上いた筈の仲間達が・・・・今は百人にも満たない。
そして、満身創痍の自分達は、此処がどの辺りなのかを知る由もない現実だった。
愕然と力なく両膝を着いたヴェンデルは、ここもブラムの叱責でどうにか正気を取り戻せた後。
ポケットからコンパスを取り出すと、一帯全部が雪に覆われたアイーダ山脈を北へ向かって・・・・・
ヴェンデルと共に逃げ落ちたイグレジアスの面々は、そのまま雪景色の中へと消え去った。
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傭兵団イグレジアスの討伐からは、既に十日が過ぎていた。
捕らえた者達は、討伐に先駆けて麓に潜んでいた密偵達の他。
砦での戦闘の際にも降伏した十名余りの傭兵を捕縛するに至った。
戦闘が終わった後。
確認出来た死体の数だけで三百十九名の傭兵を討ち取った戦果も、見分の結果は団長も副団長も見当たらない。
まぁ、レーヴァテインが派手な一撃をぶっ放したせいで・・・・・
それが原因で真っ先に逃げられた。
あくまで、ミーミルだけの主張である。
別動隊が砦を奇襲した最中、そこでアスランがした事は、悪い傭兵たちを相手に双剣を振るっての大活躍・・・・・等でなく。
現実は、ど派手な一撃をぶっ放して悪戯に大火災だけを引き起こしたバカの尻拭い。
アスランはミーミルと二人で、それこそ味方さえ危険に晒した大火災の延焼を食い止めるべく。
兎にも角にも魔法で水を作ると、最後はエレンとリザイア様まで呼んで鎮火へ全力を注いでいたに過ぎない。
炎を司る剣神が行使した炎は、それでいて、容易には消火させてくれなかった事が、だから、アスランにエレンとリザイア様までを呼び出させる羽目に至らせた。
よって当然。
鎮火に意識を傾ける主を守るのは1番の存在と叱られたもう一人だった。
――― レーヴァテインの先制攻撃の後 ―――
マサカゲさんは刀を抜くと先頭に立って一番に突入した。
そのマサカゲさんに続いてグラディエス元団長と侍たちが斬り込んだ砦は、ただ、敵は完全に浮足立っていた。
二人とも何か競っている感じは、片っ端から傭兵達を殺しまくった。
はっきり言って、問答無用だったね。
二人とそれに続く五十人くらいの侍たちが、砦に残っていた傭兵達や逃げようとしていた傭兵達を相手に殺し合いを繰り広げる最中。
打ち合わせの通りカズマさんが引き連れた二十人くらいの侍たちは、攫われた女性達を探し出すと無事に保護していた。
全部が終わった後で。
一番大暴れしたのはグラディエス元団長。
で、何か張り合っていたマサカゲさんの二人ともが同じ感想を口にしている。
傭兵たちは、その個々人は丸っ切りの雑魚だった。
しかも最初から完全な逃げ腰。
ただ、逃げ腰だったのは、砦も燃えていたからで余計にそうなったのだろう。
この辺りの感想は、二人揃って露骨に不完全燃焼なのがよく伝わって来た。
手応えが無さ過ぎるとか。
張り合いが無さ過ぎてつまらなかったとか・・・・・
あれだけ殺しておいて、ホント、よく言ったもんだね。
結果的にだけど。
レーヴァテインがぶっ放した一撃は、それで味方は犠牲を殆ど出さずに済んだ。
それで悪い傭兵たちを三百人以上、討ち取った。
だから。
「レーヴァテイン。次はもう少し考えて加減するようにね」
炎を司る神様だけあって。
馬鹿みたいに水を使わせた消火は、エレンとリザイア様が来てくれなかったら・・・・・
それが在るからミーミルは分り易いくらいムッとしていたけどさ。
ティアリスは「酌むべきところもありました」って、これもあるから僕もレーヴァテインを叱らなかった。
まぁ、僕なんてさ・・・・・
ただ消火作業をしただけだしね。
見せ場なんて何処にも無かったよ。
終わった後でも色々あったけど。
だけど、シルビア様が待っている公都のアヅチに着くのは明日くらい・・・かな。
カグツチから公都アヅチまでの帰り道。
公都が近付くにつれて辺りを彩るそこかしこが、今も空気の暖かさを伴うと春の訪れを告げていた。




