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第13話 ◆・・・ 冷めない熱の裏側で ・・・◆


一年の中で最も暑い8月の終わり。

それはシャルフィで暮らす誰もが抱く、過ごしやすい時期の到来・・・・・


ところが、暦が9月を迎えても。

今年のシャルフィを覆う日中の日差しは、そこで真夏の盛りを十二分に感じさせていた。


今日も外に出れば何もしなくとも、ただ立っているだけで汗が噴き出るように流れる酷暑は、先月の事件。

事件の名残りもそうであるように。

何方の熱も未だ冷める気配が訪れようとはしなかった。


『貴族と騎士が犯した決して赦すことの出来ない蛮行』


先月の事件は、およそ特権階級意識によって育まれた狂気の典型。

高貴な出自なら何をしても赦される。


こうした歪みは、先王の時代に大掛かりな粛清が行われて以降。

確かに鳴りを潜めた。


しかし、鳴りを潜めていただけで根絶には至っていなかった事を、それを改めて証明した事件とも言える。


一部の新聞報道は、この件で殊更強い表現を用いると、貴族と騎士の両者を激烈に糾弾した。

反面、この事件ではどの報道関係者も。

貴族と騎士の何れにも擁護的な表現を一切用いなかった。


もっとも。

その背景には、特に女王の姿勢が関わっている。


『このような蛮行を犯した者達を、私は誰一人として見逃しません。定められた法の下、最も厳しい罰を以って処する事を。女王の名において此処に約束します』


これは事件の起きた現場で、罪を犯した側の者達が近衛騎士隊によって拘束された後。

それまでずっと群がるように集まっていた民衆へ向けた女王の強い意思。


ただ、瓦礫と化した中央地区の兵舎。

此処で起きた一部始終を見た者達は、女王の宣言とは別に。

兵舎に詰めていた多数の騎士。

それも大人の騎士達を相手にたった一人で。

俄かには信じ難い光景だった・・・・・


それでも。

幼い騎士が何処となく似ている感。

見届けた者達の中には、あの琥珀色の瞳に聡明で慈しみに満ち溢れる。

そして、相手が国王であっても悪事なら毅然と敷く。

そんな亡き王妃の印象が深く重なったくらいを抱いたのである。


-----


バーダントは先月末まで兵士長だった。

あの事件を未だに新聞が何かしら蒸し返す中で、王宮側の事後処理が一段落した後。


月替わりの初日。

今日からのバーダントは、宰相が発した辞令。

たかが一介の兵士長へ、政治を取り纏める長が直々に辞令を出す等。

こんな事は前例が無い。


しかし、バーダントも自分と別格には違いないもう一件。

これだって前例も無ければ、超が幾つ付いてもおかしくない。


此方は今朝の新聞で再び。

女王が見出した未だ幼い最年少の騎士は、先月の事件から何度かトップの一面を独占した。

ただ、彼の者は貴族や騎士の家柄ではなく。

ましてや平民とも庶民とも呼ばれる身分でもない。

女王が見出す以前、その子供は孤児院で暮らしていた。


6月の終わり頃。

女王が孤児の男の子を幼年騎士にすると宣言した事は、これも王宮の広報と同時に新聞報道でも一時は世間を騒がせた。


ところが、7月に入って早々に起きた襲撃事件。

突如現れた巨大な魔獣が王都の目の前まで迫った未曾有の危機は、これが原因となって孤児から騎士になった存在を話題の外へと追いやった。


誰の記憶からも薄れた頃。

巷の話題にさえ上がることも無くなった存在は先月。

真夏の8月に起きた事件によって。

孤児という出自で騒がせた最年少の騎士は再び、世間の注目を浴びる事となった。


バーダントは今朝の新聞記事へ視線を落としながら。

8月の事件は間違いなく自分もそうだが、此処にも関わったに違いないを、半ば呆れた感で受け止めていた。


先日に行われた叙任式。

お披露目も兼ねた式典において、未だ幼い騎士は女王から近衛を任じられた。


幼年騎士が、それも叙任式に合わせて近衛隊へ配属など。

新聞は『前例の無い』や『前代未聞』などを用いて一大事件のように取り扱った。


・・・・・まぁ、俺もそれは街中どこに行っても大いに騒がれたくらいも記憶に残っているしな・・・・・


だが、事はそれだけで終わらなかった。

そう。

今朝の新聞は、だからこそ。

トップの一面に大きな写真付きで取り上げた最もな理由へ。


記事を読むバーダントは、そこに露骨な呆れ顔を隠すことも無く。

胸の内で膨らんだ憤りは『いくら何でもこれはやり過ぎだろう・・・ったく』を抱く半面。

写真では笑顔を見せている幼い騎士を、本心で不憫だと胸が締め付けられた。


女王は先月の事件の後。

国民から強い疑念を抱かれるのは当然を理由に挙げると、直ちに現在の治安維持に関わる全ての体制を解体した。


同時に治安維持の全権は、これを新体制が整うまでの期間。

女王が一先ず全権を握る事までは、王宮の広報と新聞でも知らされている。

バーダントも最初、この件には以前よりも風通しが良くなる期待を抱いた。


そこから今朝の新聞は、この治安維持に絡んで、女王が現在は空職となっている治安維持の統括責任者を任命した件。

それでトップの一面がこうなった・・・・・


新たな統括責任者は未だ5歳の子供。

子供だが、既に身分は近衛騎士。

叙任と同時に近衛となった幼い騎士は、女王の勅命によって王都の治安維持を統括する地位へ就かされた。


『此度の任命について、それで不安を抱くくらいは当然でしょう。全責任は女王である私が負います。ですが、私がアスランに求めているもの。それは、善き行いをする騎士であることだけです。先月の事件でアスランは騎士の在り様を示しました。故に、私は分不相応とは思っていません』


女王はこの件で責任を自分が負う。

んなぁ事は当然だろう。

昨日までの兵士長という身分は、それでバーダント自身。

口にはしなかったが胸の内は、だから余計に感情が逆立った。


バーダントは普段より早めに家を出た後。

通いの売店で、一番目につく所に並んでいる今朝の新聞の前に立ち止まった。

どの新聞社も揃ってこの前代未聞とか一大事と呼んでおかしくない大事件には、これも当然だろうと見出しに拘ったのが伺えた。


まぁ・・・・あれだ。

他所よりも多く売るために、それで先ず見出しには拘る。

今回は特に拘りがいもあっただろう。


見出しだけで、未だ5歳の子供が治安維持の統括を担うかのような印象。

こんな人事は普通じゃないし、はっきり言って任命した奴の神経を疑うのが当たり前だ。


だが、これも何かしら陰謀じみた部分が在る筈だと疑う俺からして見れば。

この疑いは外れていなかった。

他の新聞でも記事を読む限り。

確かに勅命で幼い騎士が治安維持の統括責任者にはされている。

ただし、よく読めば決してそうでもない部分。


王都の治安維持は、一先ず女王陛下が当面の間を直接統括する件は変わっていない。

記事では、女王が新体制の枠組み作りからして精力的に携わっているようだった。


では・・・何故?

今の時期に空職になっている統括責任者を任命したのか。


この疑問は、ただバーダントにとっては探り易かった。

要するに、あの事件で一躍時の人になった幼い騎士が今度は、失墜した騎士の名誉挽回をも担う〝マスコット”にまでされたのだと。


未だ幼い子供を、騎士になったと言っても5歳だぞ。

それを政治の道具として使うなんざ。


・・・・・騎士の権威ってのは、そこまで大事なもんなのかって。逆に聞きたいくらいだぜ・・・・・


売店を後にしての出勤途中。

バーダントは不意に思い出した人物へ。

直に言葉を交わした印象は腹黒。

何を腹に隠しているのか分からない怖さを抱いた宰相から。

直々に公の発表までは厳に口外無用を命じられたこともある。


それだけに、今朝の新聞では憤りも呆れもそう。

結果的には自分も巻き込まれた側・・・には違いない。

バーダントは自然、自身の今日からの肩書へ、呆れ混ざりの空笑いを浮かべていた。


・・・・・特務隊隊長補佐・・・・・


拒否権なんぞ在るわけもない辞令を受け取らされた自分は、それでも。

こんな肩書のせいで背中がこそばゆい。

しかも、今日は発足式なんぞのせいで支給されたワイシャツとネクタイにスラックス・・・・・

妻も娘も・・・それからさっきの売店で会った顔馴染み連中まで揃って大笑いしてくれたもんだ。


最初、この辞令を自分に届けた未だ若い近衛騎士は、こちらの疑問も当然だと頷いてくれた。

マリューと名乗る生真面目な印象の騎士様は、自分が何故と抱いた部分。


『バーダント殿を補佐役に。それを強く陛下に望まれたのは隊長を任じられたアスラン君です。王都のことをよく知っているのは勿論。街の人達から信頼されている印象を強く抱いたと・・・・』


聞いた限りではどうやら、新任の隊長様(アスラン)は俺達のことを・・・よく見ていたようだ。

まぁ、うちのかみさんなんざは何時だって『あんたね。大人よりも子供。子供の方が良く見ているんだからね』等と、口酸っぱく叱るくらいだからな。

実際、その通りだったと言うわけだ。


だから、俺とその部下達は丸ごと。

一先ず新体制とやらが出来るまで。

今日からは勉強熱心でよく見ている隊長様の部下になった。


-----


王宮の執務室。

暦が9月になった最初の日・・・だというのに。

カーラの表情は、胸の内を表したかのように目尻が吊り上がっていた。


「陛下。既に賽は投げられたのです。それに、補佐の人選は故の保険でもあります。後は、アスラン様を信じましょう」


信じる・・・等という表現へ。

敢て口にしたカーラとて、そこには拭えない不安くらいある。

もっとも、アスランを騎士にした時点でカーラの腹は決まっていた。


表向き、アスランの出自は孤児。

だから、孤児を理由とした類を含む難癖の全てに対して。

真実を知る自分が、何れ明かされるその時まで盾となる覚悟も出来ている。


なのに。

自分はこうも覚悟しているのに、このバカ母は・・・・・


「そうね。だけど、カーラ。せめて最初のしばらくは、私も傍に居た方が良いと思うのよ」


返って来た主の声は、確かに強い不安とも心配とも受け取れる雰囲気があった。

しかし、カーラの険しいままの瞳はそこで、この声色が演技でしかない。

こうなった経緯を知るだけなく、本心を全く隠せていないシルビアの表情を、だからこそ厳しく睨み付けた。


バカ母(女王)はとにかく我が子と一緒が良い。


可愛い我が子を四六時中ずっと傍に置きたい欲望。

事実、バカ母は特に私的な時間では、素性を告げていないアスラン様にべったり。


この無節操な欲望が幼年騎士の、それも初等科に未だ通ってさえいない男の子を近衛にしてしまった。

確かに、私とシルビアの間で、アスラン様を傍仕えにするプランは在った。

ただし、それも全ては必要な条件を満たした先でのこと。

それをバカ母の軽挙妄動がぶち壊した。


故に、カーラは先日の式典からずっと不機嫌だった。


バカ母のしでかした大罪。

発端は我が子の叙任式で、そこへ招待した報道関係者達への軽はずみな発言から今日の状況は出来上がった。


『先の事件では確かに。およそ騎士の在るべき姿とはかけ離れた痴れ者達が居たことは事実です。ですが、そこで身形は幼くとも、騎士の在るべき姿を示した存在。私は、アスランを誇りに思うだけでなく。騎士の範とはこうなのだと。その意味において、私はアスランを近衛へ置くことを皆様にもお知らせします』


えっ!?

あの瞬間、私は思わず品を欠いた驚きの声を上げそうになった。


今更だが、此方へ事前の相談など無かった。

それこそスタンドプレーで、バカ母の行き当たりばったりは、我が子を近衛にすると言ってしまったのだ。


腐れ縁とも言える幼馴染だからなのか。

式典の当日は朝から妙な胸騒ぎがした。

そして、この嫌な予感は今回も的中した。


先月の、およそ蛮行が相応しい事件の影響は、当事者の一人でもある。

実質一人でゴミ掃除をしてしまった幼年騎士のお披露目式は、故に注目された事が、それまでの叙任式が宮中の一室を模様替えして行われた程度を、今回だけは迎賓館の大広間を使う程の盛大さへと至らせた。


それまでの幼年騎士の叙任式は、女王と自分の他に騎士団から団長を含めて聖騎士が数人。

後はお披露目と言う理由で、少数だが報道関係者は勿論。

叙任される当事者の身内や友人くらいまでは招待された。

つまり、参加者がそれくらいだからこそ。

二十人程度が入れる部屋で事足りた。


此度の異例には違いない叙任式。

報道関係者の数だけで数十人。

陛下と私は叙任されるアスラン様のために、孤児院で共に生活して来た子供も大人も全員を招待した。

中でも子供達には、これも陛下から式典という場に相応しい服などが贈られたほど。


けれど、事件後は特に糾弾の的になった騎士団。

騎士団長からの自粛を理由とした辞退は今更でも。


それでも。

新たな騎士の叙任式へ、一人の騎士も参加しないでは流石に不味い。

結果、ここは指南役の聖騎士と補佐を務める従騎士の二人だけでも。

ただ、聖騎士(ハンス)の呼びかけは、これで彼の者を慕う騎士が多数参加してくれた。


シルビアとカーラはこの件。

命令によって騎士を参加させることも出来たが、それでは以降のアスランが一層微妙な立場に置かされる不安を、互いに強く共有した。

故に二人は、信頼出来るハンスとマリューにだけは参加して欲しいを頼んでいる。

そして、事情を理解っているハンスは自ら周囲へ呼びかけてくれた。

叙任式に百人を軽く超える騎士が参加したのは、偏にハンスの人徳によるもの。


新任の騎士が多数の先輩騎士からも祝福された式。

本心は別でも、表向きはそう映る。


にも拘らず。

だから、カーラは余計に憤った。

参加した多数の騎士には、そこにも貴族出の者達がそれなりに居た。

彼らの腹の内に何が在るくらい・・・・・

そんな事は容易く分かる筈。


だが、このバカ母は、此度も地雷原でダンスを踊ると、当然の様に踏みまくった。


形式的な叙任式は、恙なく執り行われた。

事件に直接の関係は無くとも、騎士という身分がそれで視線を集める。

参加した騎士の誰もが、この日ばかりは普段の数倍。

厳に礼節に重きを置く姿勢であったことで、式典の空気が否応なく厳かなものとなった。


ただ、そうした中でのアスラン様が述べた女王陛下への宣誓。


『・・・未だ5歳の僕の世界はとても小さいです。ですが、これからも広がる世界の中で。そこで僕自身が守りたいと思った総てを。それは人だけに限らず。文化や風習、考え方や価値観さえも。僕はそれら総てが安寧の中で在り続けられるように。そのために騎士として励みます』


気後れすることも無くしっかりした声は、幼いからこそ未だ知らない世界を自覚している。

しかし、この自覚の上でアスラン様の建てた誓いは、聞いていた者達にも大人びたくらいを抱かせた。


カーラは本心で、アスランが成人を迎える時には、その時には即位さえ兼ねて構わない。

今からは自身が直接教育に携わろう等とも・・・・・


式典の後から始まった宴席は、カーラが今朝から抱く胸騒ぎ。

シルビア恒例行事が此処で開幕した。


宴席も半ばに差し掛かった頃。

主賓のアスラン様は式でもそうだったが、此方で用意した制服ではなく。

無論、服装の件は私も陛下も認めているから構わない。

ただ、事件の折でも着ていた白地のコート姿は、これも確かに視線を集めていた。


まぁ、それとは別に。

アスラン様は、招待したエストから見るからに痛そうな拳骨を貰って余計目立った。

スレイン先生と周りにいた子供達が可笑しそうに笑っていたから騒々しくならずに済んだものの。

この時はカーラも背筋に冷たい汗を流している。


報道陣の相手をしていたシルビアまで驚くエストの拳骨は、当然の様な質問へ。

しかし、こういう時の場馴れしたシルビアは演じた様な微笑みを先ず浮かべながら。


『アスランは孤児院で暮らして来た時からですが。時に厳しく躾けも行えるエストが居たからこそ。善悪の分別をしっかり身に付けられたのです』


女王は取材を行う記者達へ。

自分は幾度も孤児院へ通ったからこそ。

そこでの子供達を見ている。

また、子供達を監督する立場にあるエストは、確かに拳骨を落とすときはある。

しかし、悪戯にそうしないからこそ。

見れば分かるくらい子供達はエストを慕っている。


一瞬、冷やりとさせたエストの拳骨を、シルビアは上手く好感触へ繋いだ。

もっとも、カーラもこれくらいは簡単だろうと・・・・・


だが、今朝からずっと続く嫌な予感。

女王と報道関係者達との会話は、此処からまたも先日の事件へ。


事件の話題は、それで正義を示した我が子が褒められる。

可愛い我が子が記者達から褒められて、バカ母はさぞ嬉しかったのだろう。

すっかり上機嫌になると乗せられるまま有頂天になってしまった・・・だけでなく。

乗せられた勢いそのままとしか言えない愚を犯した。


バカ母は、そして・・・我が子の首を絞めるに至った。


この時期にアスラン様の近衛配属などは勇み足に過ぎた。

最たる理由は、欠かすことの出来ない根回しが全くない事で、だから当然。

今となっては水面下で既に大きな反発が起きている。


故に、アスラン様の近衛配属。

全てはバカ母が引き起こした犯罪でしかない。


こんな真相・・・・・


表情では不安と心配を強く装うバカ母をギっと睨んだカーラは、睨まれた途端から硬直しているバカ母へ。

直後は大き過ぎる溜息だけが堰を切ったように吐き出ていた。


今朝の新聞で再びトップを占めた話題の背景。

原因は勿論。

息子の式典でバカ母が犯した勇み足。

こうなってしまった以上が、そこからの自暴自棄としか言えないバカ母の拗ねた感情の結末。


真相は、式典が終わった後から間もなく。

それこそ当日の午後。

近衛配属の件で、バカ母を厳しく叱責したカーラだけが知る真実。

叱られて完全に拗ねたバカ母の幼稚さが、実年齢よりもずっと大人の我が子を要職に就けさせた。


『前例が無い!?フンッ・・・だったら作っちゃえば良いのよ。良いの。この件は私の勅で行います!!』


拗ねた挙句のプッツン。

しかも、翌日は露骨に私を無視すると、昨日の発言を王権で行使。


下から慌ただしく確認を求められて初めて知ったカーラはこの時、心底ここにエレナが居たらと嘆いた。

発せられた以上。

勅命が覆ることは無い。


そして、この日のシルビアは、理解っているから終日ずっと私を無視で貫いた。


結果、行使された勅命に対して。

無視された私も当然、自身の職権を最大限行使した。


付き合いきれない。

そう幾度抱いたことか。

はっきり言って数えるのも馬鹿らしい。


それでも・・・・・

私はユリナ様と約束した。


事態発覚から1時間と経たない間で、それまでは『指南役と指南役の補佐』だった二人の騎士。

両名ともが至急の呼び出しによって、宰相の私室へ召喚されると指南役兼、補佐役兼、保護責任者を命じられるに至った。


全てはアスランを守り抜くための措置。

正式な就任までの僅かな日数を、カーラはそれこそ周囲が恐れる一面を表に打てる限りの布石を打った。


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