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第0話 ◆・・・ 夏空の帰還 ・・・◆

今話から第1章へ移ります。

1章では主に王宮や王都での生活を、これも世界観を創りながら。

展開の速さですが、これまでとあまり変わらないかと・・・・今の所です。

リアルの事情、投稿予定日は設けられませんが。

出来るだけ一定の間隔で投稿出来る様に頑張ろうと思います。


騎士王の事は初めて知った時からずっと憧れていた。

騎士になりたいと思った理由にすら騎士王は在った。

文字を習いたいと思った理由もそう。

聖剣伝説物語に出て来る騎士王をもっと知りたかった。


此処(神界)へ来て本人から剣を学べる。

経緯には多少の違和感もあった。

だけど。

それ以上に。


俺は騎士王から、その騎士王の剣技を学べる事だけで。

そこへ至る過程の違和感を自主的に放り投げた。


最初はもの凄くワクワクした。

そして、ワクワクするくらい興奮した後で。

跡形もなく木端微塵になった。


ティアリスから剣を指導して貰った時もそうだった。

初めて受けた本格的な剣術の指導は、それまでのキラキラした憧れを粉々にしてくれた。


ただし、二人から習って分かった事もある。


ティアリスの方が指導は上手い。

まさか・・・・・


・・・・・エレンのような指導を剣術で受けるとは思わなかった・・・・・


-----


一瞬で後手に回った。

それをアスランが思考より早く肌で感じ取った刹那。


踏み込みによって増した勢いが、ユミナの剣速を更に押し上げる。

必中の間合いで完全に捉えた。

一瞬先に映った勝利。

ユミナは今回も勝ったと確信した。


アスランを捉えたユミナの剣。

一撃必殺の剣が待った無しで襲い掛かった。


だが、この一撃をアスランは待っていた。

待ち構えて、故にしっかり瞳に捉えた。

そこから思考は既に描いたイメージを。

これも僅かな先を、復習するかのようにもう一度だけ映していた。


まともに受けたらふっ飛ばされる。

だから、そうならないために姿勢の向きを変える。

右足を後ろへ流して。

それから左の剣を騎士王の剣へ被せるように叩き付ける。


此処で今度は騎士王に隙が生まれる筈。

俺の勝機は・・・・此処しかない!!


ユミナの一閃は、それと対峙するアスランを必中の間合いで確かに捉えていた。

勝利を確信した本人も。

この一戦ですら最初から見届けて来た周囲も。


アスランは未だ幼い。

しかし、色々と無自覚な本人よりも。

ユミナと見届ける者達は、揃ってアスランが今も驚異的な速さで実力を積み上げている事は認めていた。


それでも。

此度はこれも騎士王が勝った・・・・・・と。


何れも生前は一騎当千とも謳われた実力者達である。

だからこそ見極めは早い。


だが、致命的に映った後手のアスランの動き出しを映したティアリスは、自らの内を駆け抜けた一瞬の寒気。

不意に握る拳へ力が入る。

それくらいこの身の毛もよだつほどゾクッとする感覚に。

ティアリスは憶えがあった。


アスランの懐へ踏み込みながら繰り出されたユミナの剣は、これ以上ないくらいの絶妙な距離。

そこから突如、的を失った。

それまで剣の軌道上に在った筈のアスランが、その身のこなしによって必中の間合いから消えた・・・・・ようにすら映った刹那。

空を切ったユミナの剣が上から強く叩かれるようにして地面へ斬り刺さる。


この瞬間。

駆け抜けた強い予感が、勝ちを意識していたユミナを反射的に後ろへ。

それこそ仰け反るような姿勢で跳躍させた。


考える必要も無かった。

否、考える間さえ与えられなかった。

幾千の戦場を駆け抜けた故に培った死を抱く感覚。

それがこの瞬く間の中で、ユミナの瞳は睨むように捉えていた。


-----


身体はイメージした通りに動いてくれた。

ずっと閃光にしか見えなかった剣も。

何故か今は見えていた。

だから・・・・なのかも知れない。

剣の軌道がはっきり映って、逃げられない間合いなのに。

此処からでも躱せる・・・・・

漠然とした感覚だったけど。

不思議と出来る自信が在った。


騎士王に対して正面を向いた姿勢を、そこから右足を左足の後ろへ。

踵を浮かせ、爪先で地面を滑るように流す。

そして、騎士王の剣が途中で切り返さないように。

左の剣で確実に地面へ叩き付ける。


イメージと現実が直接繋がった感覚。

あるいは少し先の未来を現実に引き込んだように思える感覚。


身体動作に連動した左腕。

左手が握る剣は、ユミナが繰り出す袈裟懸けの軌道に合わせて強く振り下ろされた。


ティッン!!


金属を金属で叩く甲高い音が一瞬響く。

澄んだ音色の後でユミナの剣は地面を斬るように深く刺さった。

アスランの瞳は、左の剣が騎士王の剣を斬り伏せるように叩いた先までは追わなかった。


最後まで追う必要は無かった。

否、最後まで追えば得られなかった。


僅有勝機。

勝機と呼べるこの僅かな時間。

アスランは逃さず掴み取った。


騎士王は地面に斬り刺さった剣を手放さず。

引き抜くようにして間合いから離れた分、それが致命的な一瞬を作った。

ただし、戦場において自分の武器を手放す行為。

それは即ち死に直結する。

故に、騎士王は放さなかった。

間合いを取って仕切り直す。

だが、この機会。

此度はもう巡って来なかった。


間合いから逃れようと跳躍気味に地面を蹴った。

けれど、それ以上に速く。

この時のアスランはユミナの予測を上回った。


殆ど無防備でしかないそこへ。

たとえそれが僅かの間であっても。

逃さないアスランの突きが、今度は騎士王を確実に捉えた。


アスランは騎士王の後ろに下がる動きと殆ど同時に踏み込んでいた。

斬るのではなく突くという選択肢も。

意図して作ったこの一瞬の勝機を掴むため。

そして、この時のアスランの視界には無防備としか言えない。

隙だらけの騎士王が映っていた。


仕掛けの瞬間。

それまで踏ん張った足裏は、作った溜を一気に解き放つように踵を跳ね上げた。

足の指全部が地面を力いっぱい掴んで。

そうして一気に跳ね上げた踵と連動した下半身の力強い躍動は、必然して上半身を前に突き出した。

故に、アスランは間合いから逃れようとした騎士王を、最後まで射程に捉えられたのである。


『先に意図的に仕掛けさせた後。そうして作り出した隙へ。逃さず此方が本命の一撃を放つ』


それを教えたのは、何方も双剣すら使い熟す姉妹。

妹が教えていた頃には未だ完成を見なかった技だったが。


アスランが繰り出した突きの一閃。

受ける側の騎士王は、けれど、表情は既に危機感を僅かにも浮かばせていなかった。

寧ろ何処か嬉しそうな面持ちを見せている。

事実、この時のユミナは微笑んでいた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・

・・


「姉様。マイロードに最後、油断しましたね」


強い緊張が凛と響く声の中に分かり易いくらい籠っていた。

稽古はついさっき終わった。

そして、終始見届けた妹からの遠慮のない叱責の声は、それを言葉でも突き刺された姉が態とらしく視線を泳がせた。


「あそこは一撃で決められずとも。そこから更に一撃を入れる場面です。まったく・・・・姉様は相当腕が鈍りましたね。剣が錆付いています」


姉を睨みつける妹の視線も気配もだが。

はっきり言って今だけは近寄り難い。

何より、その妹が叱る姉も、今は口笛まで吹きながら視線を合わせようとしていない。


本物の騎士王ユミナ・フラウは、この態度によって。

またもアスランの煌く憧れ象を木端微塵にしてくれたのであった。


-----


「マイロード。見事な一本でした」

「やっと一回やり返せた・・・・・で、良いのかな」


時間という概念の無い世界で延々と続けられた修行。

常に死線の上で行われた修行は、数え切れない瀕死体験を積み重ねた。

そうして、ようやく。


「敵の油断を見逃さない。マイロードはそれも出来ていました。この勝利はマイロードの実力で掴み取ったものです。ですから、どうか誇ってください」

「うん。だけどさ・・・・俺の突きは結局だけど。騎士王には刺さらなかったんだよね」


緑に覆われた柔らかい地面に今は仰向けになって。

ティアリスの膝枕で休息を取りつつ。

アスランは先の一戦の検討を、今もティアリスと重ねていた。


ただ、見上げた先に映った1番の存在(ティアリス)は、本当に嬉しいのが伝わってくる。

自分の事のように誇らしい表情で褒められると、何かもうそれだけでアスランも嬉しくなれた。


「いいえ。マイロードにアーツの使用を禁止しておきながら。ですが、姉様は使ったのです。咄嗟に展開した物理障壁。それが無ければ今頃は討ち死にでした」


途端に瞳が座った。

残り火のように燻っていた怒りの感情は、そこへ再び火を灯してしまった。

等とも抱いたアスランではあったが。

直後、ティアリスはまた嬉しそうな面持ちを見せてくれた。


「油断大敵。姉様には良い薬になったでしょう」

「はは・・・・・本当、ティアリスは優しいけど厳しいよね」


嬉しい笑みだと分かるのに。

それを仰向けになって見上げていたアスランは、けれど、背筋はとても寒かった。

伝わってくる感情が表情とは全く異なっていたのである。


-----


「良いですか。アスランは私から数え切れないくらい。それこそ万にも届くくらい敗北を積み重ねた先で。このままでは流石に自信を失くしてしまう・・・・そうなっては趣旨からも外れてしまうと。故に配慮した私の慈悲だと真摯に受け止めるのですよ」


騎士王様は片手を腰に当てて、もう片方の腕は肘を折って指まで立てて一々説いている。

それこそ王様っぽい威厳たっぷりな口調で。

そして、今は受けているアスランも素直に頷く。

鉄拳ドリルを得手とする姉のような存在が此処でも被っていた。

だから。

選択肢は一つだけだった。

例え理不尽でも横暴でも。

此処は素直に頷く一択のみ。

それで此処は平穏に終われる。

これこそ無自覚に培った洞察力の賜物だった。


だが、姉のこうした態度も横槍のように妹から「姉様が勝った回数は2491回でした。つまり、マイロードは2492回目に見事な勝利を収めたのです」と、尊厳を抉られた。


姉の誇張を粉砕した妹は鼻で笑う。

見ていたアスランは、雰囲気も合わさってもの凄く格好良い仕草だと抱いた。

それこそ胸の内で『僕もティアリスと五分に剣を合わせられるくらい強くなったら。その時には真似しようかな』とさえ思ったくらい焼き付いた。


「ティア。いくら妹でも・・・・姉の尊厳を傷付けない嗜みは必要ですよ」

「そうですね。ですが、口でいくら注意しても直さない。そんな姉様だから敗れたのです」

「アスランに勝ったという自信を持たせたかった。配慮の無い妹が悪戯に自信まで根こそぎ奪ったので。姉としては本来持って構わない自信を取り戻させただけです」


一瞬、空気が凍り付いた。

姉妹は揃って無言で見つめ合っている。

だが、その間でバチバチと走った雷が幾つも弾けた。

視認出来るくらい露骨な事象干渉は、迂闊に近付けば黒焦げにされるだろう。


「錆付いたとは言っても。それでも姉様です・・・・かつての名誉へ配慮して来ましたが」

「どうやら姉として慎みのなっていない妹を此処で躾けねばならないようですね」


互いに微笑む様な優しい面持ちで交わした言葉を最後。

直後、姉妹は感情剥き出しで斬り結んだ。


-----


「アスラン様。紅茶を用意致しました」

「ありがとう。コルナ」

「アスラン様。レモンとミルクと何方がよろしいですか」

「コルキナ。じゃあ、ミルクで」


既に一時間以上。

アスランはずっと姉妹の一騎打ちを〝寛ぎながら″観戦している。

迫力満点の目が離せない一騎打ち。

こんな凄いだけでは語れない一騎打ちを観戦するアスランを、今はメイド服に身を包むコルナとコルキナ姉妹が世話をしていた。


一騎打ち(姉妹喧嘩)が始まった直後からしばらく。

アスランはそれまで呆然と、ただ視線は釘付けになっていた。

そこへ揃ってメイド服に身を包んだコルナとコルキナが現れた後。


最初の時とは服装が変わった事を尋ねたアスランは、コルナから『主であるアスラン様の身の回りのお世話をする。これはそのための最も相応しい衣装です』とは聞いている。


コルナの説明によると、主の身の回りの世話をする。

そのために、この衣装の方が相応しいのだとか。

そして、これは身の回りの世話をする者にとって唯一絶対の制服でもあるらしい。


ただ、コルナは最後に『アスラン様がこれを着て欲しい。そうしたご要望が御座いましたら。その時にはどうか遠慮なく申し付けください』と、妹のコルキナと揃って可愛らしい笑みを咲かせた。


アスランは勿論、孤児院でそうだったように。

自分の事くらいは自分で出来る。

着替えも洗顔も・・・・・包丁を使うことや竈の火の調節は子供だからという理由でエスト姉がさせてくれなかったが、一応は出来る。

あとは時々は入るお風呂も、その時には身体だけでなく髪だって自分一人で洗える。


だから、コルナの説明にも最初、『別に自分で出来るから』とは答えた。

けれど、コルナは『アスラン様は私共の主で御座います。ですから、どうか主らしい振る舞い方も。これからは覚えてください』と、此処でも懇切丁寧に主たる者の振る舞い方を教えてくれたのである。


故に、コルナは今もこうして紅茶を用意してくれる。

そして、コルキナからミルクかレモンかを尋ねられた時の受け答え方。

全てはコルナの指導によるものだった。


メイド服というものについても。

これもアスランはコルナから懇切丁寧に教えられた。


基本は黒のワンピースと純白のフリル付きエプロンの組み合わせらしい。

白いカチューシャは凝った刺繍の方が上品さを醸し出せる。

それから、ワンピースもスカートの裾は純白のシルクを使った刺繍柄の方が品が良いのだとか。

今回は足首くらいまでの短いソックスも、アスランが望むならニーソにする。

アスランはそれが何かは知らなかったが。

ニーソの後で『何でしたらガーターも履きますよ』と、付け足すような言い回しもされた。


コルナは自身の足元を指さしながら。

露骨には目立たない隠し彫り細工の施された白いソックスについて。

メイドは目立ち難い所で如何に華やかさを演出できるのか。

優れたメイドはこうした部分にも細かく拘ってこそだと教えてくれた。


コルナはアスランへ『私達はアスラン様に相応しいメイドで在り続けます。ですが、そのためにはアスラン様にも。重ねて優れた主の振る舞い方を学んで頂きたく思います』と、恭しく頭を下げた。


この時、アスランはふと思った。

ティアリスからも同じような事を言われていた。

それで自分は王様らしい振る舞い方も学ぶと言った。

それも修行の一つだと。


「僕はまだ未熟者だからさ。王様らしい振る舞い方とか。そういうのもよくは知らないんだけど。これから覚えていくから。よろしくお願いします」


ティアリスに相応しい主になるために。

それからレーヴァテインとミーミルの主としても。


王様の振る舞い方。

アスランは此処から本格的に学び始める。


コルナとコルキナの姉妹には最初、何か危険な印象も在った。

勿論、それは今も記憶に残っている。

けれど、少なくともこの件に関しては大丈夫。

何の確証も無かったが。

アスランは双子の姉妹を信用する事にしたのである。


-----


やるべきことは今も多く積まれている。

それでも、執務室の空気は概ね平常を取り戻していた。

と、今もペンを走らせながら。

自らの分は目処が付いたカーラの瞳に、そこに映った親友(シルビア)の今の姿は安心できるものがある。


此方で制御しなければ過労を危惧させるような事も無く。

此処一年の特に後半から顕著だった姿も今は無い。

先日のリーザ様の一件の後。


その時の会話で何かを感じ取ったのか。

親友は直ぐに宝物殿へ足を向けた。

一人で中へ姿を消した後。

やがて戻って来た親友は、此処から人が変わったかのように仕事をするようになった。

遅刻をせず。

ただ、昼食と前後の休憩なども取っている。

真面目に勤しんで定時に終える。


おかげで仕事は一気に捗った。

また、自らの反発勢力へも正面から対峙すると、絶対権力を当然のように使う素振りさえ平然とちらつかせている。

自分が国璽を代行した時等は露骨に反抗して来たゴキブリ共も。

今はもう鳴りを潜めた。

何れまた鬱陶しく騒ぐだろうが、今の親友であれば大丈夫。


何が在ったかまでは知らされていない。

けれど、親友ははっきり言いきった。


『近々アスランが帰って来ます。それが分かりました。私はアスランが帰って来た時に、胸を張って出迎えられるように務めを果たすだけです』


もう何の心配も要らなさそうだった。

ただし。

あくまでも『しばらくの間』とは付けておく。


-----


シャルフィ王宮の地下にある宝物殿は特殊な造りをしている。

そして、これも一言で纏めるなら『古代遺跡』に近い。

未知の技術は勿論、材質さえ特定できない金属らしきもので造られた宝物殿は、これの中へ入るための扉を開く条件が在る。


・・・・・・現に王位に在る者。次代の王位に相応しき者。其れ以外に此の宝殿の扉を開くこと叶わず・・・・・・


カーラは幾度か、この宝物殿へ入った事がある。

何れもシルビアに同伴してであり、嫁ぐ前のエレナが居た時には三人一緒で赴く事も常だった。

シルビアの話では、入れる自分が認めた者までは入れるらしい。

ただし、それでも扉を開けられるのは自分だけだと。


此処にはシャルフィ王家が初代から受け継いで来たものが在る。

それこそ、王位継承の証と伝えられたコールブランドと共に。

故に代々の国王は自らの血を受け継いだ子供達へ。

先に正体を伏せたままのコールブランドを触らせる。

そして、コールブランドは触れた末裔の中から次代の王を定める。


それまで何の変哲もない綺麗な金属の柄だったコールブランドは、自ら定めた者が触れた途端。

柄から形状を美しい剣へと変える。


国王はそれによって後継者を知ると、そこから継承へ向けた修行を課し始める。

これは概ね6~7歳くらいの頃に行われる習わしだった。


フォルスが国王だった当時。

シルビアは一人娘だった事情もある。

だが、悪戯好きのやんちゃ娘だったシルビアは、幼少の頃から『かくれんぼ』が大好きだった。

フォルスは何となく娘が後継者だというくらいは、一人娘という部分で感じ取っていたが。

ただ、自分がそうだったように。

7歳の誕生日が来るまでは触らせなくても良い・・・・・・

その時まではいっぱい遊ばせてやろう等と抱く優しい父でもあった。


だが、娘はそうとも知らず。

5歳のある日。

女官達を相手にしたかくれんぼの最中。

興味と好奇心の旺盛さによって地下の宝物殿へ近付いた。

父から『近付いてはいけない場所』として言われた宝物殿。


だが、ダメだと言われれば俄然行きたくなる。

この点、スレインなどは『正に父譲りの性格』と評した。


そして、かくれんぼを理由に此処へやって来たシルビアは、扉に触れた途端。

ただ触れただけの扉が後は勝手に開いた中で、此処でも旺盛過ぎた好奇心が脚を奥へ進めてしまう。


同じ頃、不審者が宝物殿へ近付けば反応する仕掛けによって何者かが近付いた事を知ったフォルスが血相を変えて走った。

鬼気迫る表情で剣を握って走る国王の口から不審者が現れたくらいを耳にした近衛騎士達も当然のように続いた。

けれど、地下の宝物殿まで走って来たフォルスは、此処で初めてシルビアが中で感動の声を上げている姿を映す事になる。


いっぱいの笑みで興奮を隠さない愛娘は眩しいくらい輝いて見えた。

ただ、事態が事態だけに。

一先ずホッとしたフォルスも、初めて自主的に娘を叱らなければと抱く。


だが、この時の近衛騎士隊を追う形で現場へ姿を現したグラディエス騎士団長が発した言葉。


『シルビア様は正しくフォルス様の若かりし頃。シャルフィの将来は頼もしい限りですなぁ』


この瞬間。

それまでシルビアを叱らねばと抱いたフォルスだったが。

先ずばつが悪そうな苦笑い。

間もなく呆れた感さえある面持ちで大笑いしてしまうと、後はもう叱ろうとした姿勢すら失せていた。


愛娘へはベタベタの大甘な父。

シルビアの自由奔放に振る舞う性分を育んだ原因は、しっかり者の母ではなく。

寧ろ父親の過失に近い愛情によるものだったのである。


もっとも。

この父親も愛妻(ユリナ)にはめっぽう弱い。

何せ日頃から尻に敷かれて、けれど、ベッドの中では征服者へ変わる。

その妻から先に『件の事ですが、ちゃんとシルビアを叱るのですよ』等と微笑まれれば。

本心では滝の様な涙を流して。

それを隠したまま表向きは怒って見せる。

そして、自分のフォローを察してくれるスレイン(親友)へ押し付けた。


フォルスは娘に嫌われるのが一番嫌だった。

『父様♪だ~い好き♡』と抱き着いては頬にキスしてくれる。

礼儀作法や躾の部分で、優しくも厳しい母から時々は逃げて来る。

その時の愛娘を『格好良いを演じる』父が全力で守って見せる。

フォルスは、そういう父親だった。


だから、これも親友と呼べるグラディエスから。

そう言われれば笑うしかない。

自身の黒歴史。

あるいは青春時代に刻まれた滾る情熱が走らせた若気の至り。

そう呼べる分野では懐刀でもあり、右腕でもあるグラディエスのこの言葉は特に重かった。


ただ、何にせよ。

未来の女王はこの瞬間に定まったのである。


-----


契約しているリーザ(精霊)からアスランが神界に居ることを知って。

まして、そこで騎士王から直に手解きを受けている等。

けれど、それによって幾つかの事実にも線が繋がった。


宝物殿の最奥。

思う処あって足を運んだシルビアは、自身の予感が一つ当たった事を受け止めた。

目の前の台座に刺さるように立てて在った筈の剣。

それが忽然と消えていた。


建国の祖が女神と精霊王からの祝福の証として賜った剣。

父からそう言い伝えがあることは聞いていた。


金にも銀にも映る美しい細工の施された蒼い鞘に収められた剣は、真に認められし者以外触れられず。

触れようとすればすり抜ける事で、またシルビアもこの剣には触れられなかった。


・・・・・シャルフィの真の王以外触れられず。しかし、この聖剣に認められし者が携えた時。その者こそが私の選んだ騎士の王とならん・・・・・


台座には初代の遺言が彫られている。

古代文字の類で、故にその意味は代々の王から唯一の後継者へ口伝され続けて来た。


そして、真の王が現れるその日まで。

代々の国王は代理として国を治める。

その代理を選ぶのが対の聖剣コールブランド。


シルビアも7歳の時に、その真相を教えないでいたフォルスが触らせた。

当然、コールブランドは剣へ姿を変えた。

もっとも、当時も驚くシルビアとは別にフォルスは分かり切っていた。

5歳の時に宝物殿へ踏み込んだ。

その時からもう既にこの日は決まっていた。


高等科へ入学したばかりの頃。

シルビアは初めて父の口から王家の真相を知らされた。

珍しく真面目な表情の父に呼び出されて、その父と二人だけで宝物殿へ入った。


そして。

今シルビアが立っているこの場所。

触れない剣が在った台座の目の前で、父から建国以来ずっと守られて来た王家の秘密を聞かされた。


本来は先に『選定の儀』という特別な儀式を受けて、そこで継承者として認められて初めて知る内容だと父は語った。

選定の儀はコールブランドに選ばれた唯一人しか受けられない。

18歳の誕生日に行われる習わしで、父も18歳の誕生日に受けたと語った。

ただ、儀式の内容は話さなかった。

受ける者によって異なるらしいくらいを語った父から『此処で試される』と、シルビアは何を試されるのかさえ教えて貰うことは無かった。


当時、未だ17歳だった自分へ。

父は儀式よりも先に真相を話した後で。

外交のために赴いた帝国の空で殺された。


出発前夜。

シルビアは父が片時も手放さなかったコールブランドを『今のシルビアになら預けられる』と、これよりは自分が持つようにと渡された。


その日は昼間に父と手合わせをしていた。

そして、初めて一本取る事が出来た記念になった日だった。


愛娘から一本取られた父は、負けたのに凄く嬉しい表情をしていた。

べた褒めにされて、力いっぱい抱きしめられた。


スレイン宰相と両親を見送った朝。

母はいつも通りだった。

父は『帰って来たらまた稽古を付けてやる』と、楽しそうな笑みを見せていた。


「・・・・父様はやっぱり何か感じていたのよね。母様も感の良い人だって。きっと良くない虫の知らせがあって・・・・・だから。私に遺してくれた」


瞼を閉じれば今でも。

大好きな父との場面に立つことが出来る。

無論、母との場面も同じ。


不意に胸がいっぱいに締め付けられる。

込み上げた感情が瞼を溢れさせて。

零れるように頬を伝った。


涙を拭う中で自然と瞳を閉じた。

再び瞼が開いた時。

そこに映った景色に一瞬、シルビアは何が起きたのかを理解出来なかった。


自分は宝物殿の最奥へ来ていた筈。

なのに、この景色は・・・・・・


見渡す限りの大草原は、これも見知っているカミツレが咲き誇るくらい一帯を占めている。

何処までも果ての無い碧い空と、肌を撫でる心地良い風。


「貴女にこうして会うのは選定の儀以来ですね」


背後からの声にハッとして即座に振り返る。

反射的に向きを変えたシルビアの口から、「まさかユミナ様・・・・」と漏れた声に、名を呼ばれた本人が小さく頷いた。


「コールブランドから〝色々″と聞きましたよ」


そう述べた直後。


「はぁぁぁああああ~~~~~~」


殊更呆れたと誇張し切ったような呆れの溜息が響き渡る。

無論、それはユミナがシルビアへ向けた感情の現れ。


「貴女の場合、父親もそうでしたが。ですが、父親の方はまだ王としてまともでした。まぁ、良妻と賢人が傍にいたからではありますが」


完全に目が座っていた。

少なくとも、シルビアにはそうとしか感じられなかった。


「貴女が素性を伏せている息子(アスラン)ですが、リーザから此方側に居るくらいは聞いたのでしょう」

「はい・・・その」


アスランのことを尋ねようとして。

しかし、その声はユミナが遮った。


「アスランは無事です。そして、今も己を磨いています。歳は幼くとも器が本物だからこそ、ああなのでしょう。何よりも、アスランは〝女王シルビア″を尊敬しています。相応しい騎士になるのだと、一生懸命が突き抜けるくらい努力し過ぎています」


自分の声を遮って言いたい事を言い切ったのか。

目の前のユミナ(ご先祖様)は大きく息を吐き出した。

まだ呆れているようだった。


「今のまま。貴女が今のままではアスランを帰せません」


一転して向けられた殺気すら籠った鋭い視線。

迂闊に声を発すれば斬り殺される。

そう抱くくらい受けた重圧が凄まじい。

不意に選定の儀で、この凄まじい気質を纏った騎士王と対峙した場面が甦る。

試される・・・・・よりも何とか生き延びれた。

と、シルビアは後にそう抱いた。


・・・・・あんなに命懸けの『かくれんぼ』をしたのは人生初だった・・・・・


完全に甦った記憶がシルビアを凍り付かせる。

意識しても声が出ない。

動かそうにも指先の関節一つすらピクリともしない。

更に・・・・・・・

急に空気が薄くなったのか息苦しさだけが増す。

この苦しさがシルビアの思考へ『死』を強く抱かせた。


「良いですか。一度しか告げませんからよく聞きなさい。今この瞬間から二度とサボりは許しません。事態は世界を巻き込んで闇の色合いが強くなりました。輪廻の双竜(ウロボロス)が動き出した以上。貴女はアスランを守って導かねばなりません。貴女の両親を奪い、貴女自身も狙われている。そして、ヴァルバースは間違いなくアスランを狙って顕現した筈です。闇の側に隙を見せてはなりません。そういう訳ですから。サボったらどうなるか・・・・・身を粉にして務めを果たすように!!」


最後は完全な怒鳴り声。

死ぬかも知れない恐怖に駆られたシルビアが震えながら何度も首を縦に振る。

女王の威厳?

そんなものは些末にも映らなかった。


「アスランは未だ修行中ですが。それも、もう間もなく区切りが付きます。その時までに改善が見受けられないようであれば。残念ですが、アスランはシャルフィから離されるでしょう。無事帰して欲しければ・・・・・もう理解っている筈・・・・ですよね♪」


最後に向けられた満面の笑み。

だがシルビアは一層の恐怖を刻み込まれた。

遠のく意識は間もなく。

そして完全に途切れた。


-----


暦はもう間もなく8月を迎える。

戦場となった地区の立ち入り制限は変わらず。

けれど、王都内に仮設でも用意された集合住宅は一先ず完成を見た。

また、それ以外の支援策が機能したことで、避難民の殆どは新たな生活へ舵を切っていた。


シルビアは今朝も6時半に起床した。

あの日以来、ずっと規則正しく目を覚ましている。


朝食は片手間で済ませられるものへメニューを変えて貰った。

そして、朝食の片手間にサインだけで済む簡単な仕事から着手する。


少なからず検討の要る諸問題を、途中に小休憩を挟むくらいで午前の内に片付けてから取る昼食を兼ねた昼休み。

これもあの日以降、時間割が不規則から規則正しい日々になっていた。

現地の視察を含めた外仕事は午後の後半へ置くようにして。

それ以外を午後の前半に置く。

これも休憩を挟むことで前後が明確化しつつあった。


真面目に仕事をするようになってから。

カーラが残業をしなくて済むスケジュールを組んでくれるありがたみを実感している。

無論、非常時はこの限りではない。

それは勿論、理解っている。

ただ、こうして真面目に勤しめば。

近い内に修行が一区切りつくアスランが帰って来る。


全ては愛しい我が子のため!!


そう言い聞かせながら。

この日も定時で私的な時間へ移ったシルビアは、これも翌朝に絶対寝坊をしないために。

9時半には夢の世界へ赴いたのだった。

当然、アスランが折ってしまった木剣の刀身を抱きながら。

幸せいっぱいの妄想がもたらすシーツと枕カバーを赤く染める事象干渉。

これも既に恒例行事になった。


叱られたその晩から。

他に煩過ぎる目覚まし時計も備え付けてある。

勿論、これも寝坊を回避するため自主的に行った。

そして、この目覚まし時計が在って寝坊とは無縁の朝を迎えられている。


だが・・・・・

今宵は初台から数えて17台目。

16台目は今朝、目覚めと同時に強く握った木剣の刀身によって。

感情任せに振り下ろした刀身が原型を留めさせないくらい打ち砕いた。


-----


事態は突然告げられた。

翌日、これも午前中から日課のように政務へ真面目に勤しむシルビアが休憩に一息入れていた時。

見慣れない。

と言うよりも初顔の女官が呼びもしないのに室内へ入って来た事で、シルビアは勿論。

同じく休憩を共にしていたカーラの視線が鋭くなった。


その女官はどう見ても雇っている者達より年若い。

幼くも映る面立ちからマリューより下にも感じられた。

白くも映る銀の髪は、前髪の一部が深みのあるピンクに染まっている。


ただ、瞳は真っ直ぐシルビアだけを捉えているかのように。

その足取りもまた真っ直ぐ女王の方へ向かっていた。


「ユミナ様に叱られて。どうやら些末程度には・・・・真面目に勤しむ気になったようね」


椅子の背もたれに身を預けるように寛いでいたシルビアは、その瞬間から背筋に緊張が走った。

それこそ何も知らない親友が「無礼者」と怒鳴るのを自ら声高に遮って。

咄嗟に姿勢を起こしたシルビアは、今はもう真っ直ぐ女官だけを映していた。


「フン・・・・あの躾のなっていない飼い犬は後から折檻するとして。私はユミナ様の伝言を届けに来たのよ」


女官は横目にカーラを睨み付けた。

寒気のする口調は、確かにそれだけ警戒感を此方に抱かせたのはある。

けれど、シルビアは目の前の女官の姿をした存在がユミナの名を持ち出した時点で察した。


「ユミナ様からは何と」


既に機嫌の悪い印象だけが色濃かった。

それだけにシルビアは意識して丁寧な口調で尋ねる。

女官の視線はまた真っ直ぐ自分へ突き刺さった。

纏う空気だけで喉元に剣先をピタッと突き付けられている。

そんな気がしてならなかった。


「我らが主で在らせられるアスラン様が間もなく此方側へ戻られます。故にユミナ様はこう言われました。我が子の帰還に出迎えが遅れたとあっては親の威厳も損なわれるだろうと。兆しは空へ向かって光が立ち昇る。それを捉えたならば、そこへ向かうがよい。それまでの間、間抜けにならぬように使いの者を傍に置く・・・・以上よ」


最後の方は際立って嫌そうだと感じられた。

不快感を露骨に現したかのような声からしても。

目の前の女官が快諾して此処に居る・・・・・・・

到底そうは思えなかった。


その後はもうだんまりだった。

カーラが何を尋ねても完全無視で視線さえ合わせない。

それどころか露骨に殺気立ったことで、シルビアは自らカーラを止めに入ったくらい。

この時の空気はそれくらい際立って危うかった。


女官は執務室から繋がるベランダへ出た後。

外の景色を見つめているかのように立っているだけだった。


一時間くらい経っただろうか。

その時にはもう午前の残りの仕事は全くの手付かず仕舞い。

特に急ぎの案件でもない事が、この時は救いだった。


いつになくシルビアが本気で諫めた。

それを感じ取ったカーラは、故に何か在るくらいを察して黙した。

心象を良くする要素は皆無でも。

言葉の内容までが理解らない訳ではなかった。


ベランダへ出て行ったまま立っているだけの女官を、カーラも今はシルビアと共に見つめていた。


告げられた兆し。

それは確かに見えた。

事件によって今も立ち入りを制限している地区の方角。

執務室からでもはっきり映ったキラキラした塵が密集して空へ真っ直ぐ昇る光景。


シルビアとカーラは互いに視線を交えてこの事だと抱いた。

もっとも、それをシルビアが確認するために尋ねた後。


『何をいつまで呆然と突っ立っているのですか。しかも、仕事までサボって。本来なら此処で折檻という所なのですが。さっさと行きなさい。出迎えが遅れれば更にきつく折檻です』


刹那。

振り向くこと無く言いたいだけ言ってくれた女官がパァッと光る粒子を弾けさせた感じで忽然と姿を消した。

それはまるでリーザと同じような感じでもあった事が、後からカーラにも相手が人ではない存在だと至らせる。


ただ、直後は驚きでこれも揃って固まったシルビアとカーラは、しかし、先に気を取り戻したシルビアが外へ向かって走り出した。

そして、僅かに遅れたカーラも追うように走り出していた。


間もなくシルビアの乗った馬と、カーラの乗った馬が現地へ向かって駆けたのを。

これは近衛騎士隊が追いかけていく光景が王都を行き交う者達の瞳に留まった。


-----


その頃・・・・・・・


「まさかさぁ。何週間も神界で過ごしたなんて・・・・・時間が無い概念は何処へ行ったんだよ」

「マイロード。申し訳ありません・・・・まさか、姉様がそのような悪戯をしていた等」

「ああ、別にティアリスは悪くないだろ。俺だって知ったのは今だったんだしな」

「ですが・・・・本当に申し訳ありません」


戻ったばかりなのに、直ぐ汗が滲むくらいの空気の暑さ。

見上げた空は日差しが眩しくて・・・・・

どう見ても真夏の青い空が映っていた。


「俺が焼いた土地・・・・・・改めて未熟者だからこうなったんだって。こうして立つとさ。やっぱりそれは実感するよな」

「マイロード・・・・・」

「だけど、俺は未熟者なりに頑張った。ティアリスの力を借りて、それで誰も死なずに済んだんだ。初陣としては上々・・・・で、良いよな」

「勿論です。マイロードは誇れる事を成しました」


意図して声に自信を乗せる。

勿論、これもコルナから教えられた。

俺に足りないものの一つ。

卑屈にも映るほど自信を感じられない時が間々ある。

そう指摘されて。

ティアリスからも同じことを言われていたから。

今は余計に意識している。


もうしばらく意識して続けていれば当たり前になるとは聞いている。

コルナの指導は分かり易い反面で、指導中は結構細かい時もある。

だけど、俺はティアリスに、相応しい王様になると誓った。


今はティアリスだけでなく、レーヴァテインとミーミル。

そして、コルナとコルキナの姉妹もいる。


コルナから『アスラン様は身形も孤児のボロ着のままです。ですが、身形を整えるだけで自然と意識も備わります。今からは相応しい衣装に袖を通して下さい』と、コルキナと二人。

身形についてもあれこれ世話を焼いてもらった。


伸びた髪を整え、真新しい衣服に袖を通して。

そこへ今はアストライアを着込んでいる。

腰には騎士王から貰った剣を挿して。

その時にこれが『カリバーン』だと初めて知った時は驚いたけど・・・・・

アストライアを着た後の左腕。

此処には自己主張したいのかミーミルがピタッと離れず付いている。


一応、念のために。

俺の1番は揺らぐ事無くティアリスだ。

そういう約束もしたけど。

それ以上に、俺が描く理想の『騎士王』象にティアリスが近いイメージでもある。


本物は・・・・・うん。

そうだな。

敢て教訓とするなら。


『現実は理想を平然と打ち砕く』


と、いう事にしておこう。


「それにしてもだけど。あっち(神界)の空気に慣れ切ったんだろうね。こっちで今まで暮らして来たのに何だけどさ。夏の日差しってこんなに暑くて眩しかったんだな」

「ふふ・・・・・何か感慨に浸ったかのような言い回しですね」

「そうか。素直にそう感じただけだけど」


自信を感じられる口調は勿論。

それで5歳の子供とは先ず思えない言い回し。

だからティアリスは笑みが零れる。


自信を持った振る舞い。

それを主に望んだのは自分。

主の器量と実力なら。

このくらいは寧ろ当然で。

故の願ったり叶ったりなのではあるが・・・・・・・


「私の膝枕を大好きだと言ってくれる。そんなマイロードも私は大好きですよ」


つい漏らした本心にも。

主は当然だと頷いてくれた。


「じゃあ、この膝枕のためにも。俺はもっと頑張らないとだな」


程なく遠くに映った騎馬の一団。

何も知らされていない主と異なって。

ティアリスは騎馬の一団が何者なのかを察していた。


主と並ぶ自分の後ろ。

三歩下がった位置から今の所は大人しくしている者達も。

同様に遠くに映る騎馬の一団の正体は察している筈。


ただ、姉が主の帰還を知らせた事よりも。

その使者の役を〝買って出た″存在。

率先して買って出た存在が何かしら企んでいるくらいは予測できた。


今も懸念は残っている。

だが、主へ尽くす姿勢には悪意を感じなかった。

故に、恐らく害意は無い。


此方へ近付く騎馬の一団を映しながら。

ティアリスはふと主にも相応しい騎馬と、そのための馬術の指導。

遠からずこれも教えようと抱いた。


主が雄々しい騎馬を駆った時の姿。

そこで轡を並べる自分。

想像したティアリスは、それだけで胸が高鳴った。

10年後の主であれば、その姿は間違いなく誰が見ても誇らしく映るに違いない。


かつての聖騎士団の威容。

それとさえ重ねたティアリスの瞳は、主なら絶対できると。

この瞬間から強く確信していた。


母親VS万能メイド・・・・・な感じで1話(外話)くらい余分に作ってみようかなφ(..)カキカキ

それか・・・・

『初任務はマリューさんのパンツ』編とかで入団直後のサイドストーリーも。

こうなると原文を一部は間違いなく修正になるので。

ただ、無自覚を軸に周囲の思惑を如何に絡ませるか・・・・・

一昨年くらいの原文なので、今頃になってあれこれ想像するのが実は楽しいです。

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