第21話 ◆・・・ 繋がりと可能性の開拓 ② ・・・◆
アスランは、七属性の魔法陣を使えるようになってからも。
続く修行があって、同時展開が出来る所まで至った。
基礎と同じく、地道に積み重ねたもの。
修行中も繰り返された、試行錯誤も同じ。
培いながら積み上げた実力は、単一属性の魔法陣を、同時に幾つも構築展開、出来る所へ。
そこから更に、複数の属性を、これも同時に構築展開、出来る様になった後。
今となっては、異なる属性の魔法陣を幾つも作れる所へ、至らせた。
もっとも、多数の魔法陣を構築するという部分では、魔法陣を構築するだけで、マナをかなり消費する点は変わらない。
つまり、体内マナの消耗が多い点は、特にマナの枯渇にも、気を付けなければならない。
現在のアスランは単一の属性なら、それこそ、同時に数十個の魔法陣を構築できる。
その一方で、複数の属性となると、こちらは単一と比べてまだ半分に及べない。
それくらいしか構築出来ないでいる。
今も毎日が試行錯誤、というのは変わらない。
ただ、最近になって、アスランは属性による微妙な違いを感じ取った。
最初は何となくだった。
違和感の様にも感じ取ったのは、マナの流れが、属性によって異なっている。
この点は、同時に複数の属性を使うようになってから、初めて気が付いた。
魔法陣を使えるようになったばかりの頃。
アスランは、一属性ずつ七属性の魔法陣を、順に描き起こしていた。
この時は、まだ同時に七属性の魔法陣を、構築する事が出来なかった。
それこそ、二つの属性を同時に描き起こす事さえも、出来ていなかったのだ。
まぁ、日々の修行があったからこそ、今では出来るようになった、とも言える。
同時に複数の魔法陣を起こす。
今だからこそ、それも異なる属性で、しかも、同時に使えるようになった。
至ったからこそ、今度は、各属性に独特なマナの流れが在るも発見できた。
僕にとって、この発見はね、確かに新発見もそうだけどさ。
でも、基礎鍛錬に重点を置いていなかったら。
たぶん、発見も出来なかっただろうね。
マナの流れは、属性によって異なるのではないか。
流れの違いを確かめるためには、物凄く意識して集中しなければ分からない。
それ程に、違いは微細な程度とも言える。
取り組み始めたアスランにとって、この確認作業は、体内を流れるマナの流れを感じ取る。
それと比較できないくらい、集中力を必要とした。
取り組みの最中、アスランは属性ごとの微妙な流れを、『知る』から『使い熟す』ための修行へ切り替えた。
切り替えた理由は、エレンから得た知識が、同時に複数の属性を使うためには欠かせないを、理解ったからである。
加えて、魔法陣を長く維持するためにも欠かせない。
切り替えた所で、アスランにとっては、これも魔法陣を使い熟す基礎の修行には変わりない。
前向きにそう思えたからこそ、流れの違いを確かめる取り組みは、此処にさえ夢中になることが出来た。
微妙ながら属性ごとに違う、マナの流れについて。
例えば、火属性の場合、適量1で流入速度は1.5が、今の所は最適になっている。
ここで、流し込むマナの量を2倍、流す速さも2倍にした場合。
今のアスランでは、無駄が生じてしまう。
水属性では適量1に対して流入速度は1.3。
風属性では適量1に対して流入速度は2.2。
土属性では適量1に対して流入速度は1.2。
という感じで微妙に異なる。
なお、最適な状態は、可視化状態の魔法陣が放つ発光色で分かる。
エレンの話では、『一番綺麗』な状態が、最適なのだとか。
実際、アスランも意識して取り組むようになって以降。
この部分は、実感的に理解った。
■適量=例えるなら、流し込むマナが通る管の太さ。
■流入速度=管を通るマナの速度。収束速度とも比例するかもしれない。
ただ、アーツだけとか、一つの魔法陣だけなら、無駄が生じても問題はない。
無駄が生じても、アーツは発動するし、その威力は、流し込んだ総量が関わる。
ただし、総量はあくまで、適量によって加算される。
つまり、余剰分は無駄になる。
イメージで、威力や速さ等を高めるにしても。
これも、適量以上のマナは、無駄に消費されるだけ。
纏めると、威力などを大きくすることは可能。
そのために、マナを多く使う点は変わらない。
そして、無駄を生み出さないためには、適量と流入速度が最適であること。
最後、アーツの威力と速度も、『適量と流入速度が最適』な点が、密に関わっている。
一方、現在のアスランの実力では、適量の値を大きくすることが出来ない。
適量について。
何度も試して、今も値を増やすことが出来ない問題は、ただ、確証が無いだけで、アスランはこれが、基礎の積み重ねで増やせるかも知れない・・・・・
あるいは、まだ知らない何かが在る、のかも知れない。
ノートに書き込んだアスランの結論は、無駄を省けば、その分は持続時間も伸ばせる。
単純な結論だったが、これは深く追求しなくても、間違っていないだろうと思えた。
それよりも、一度に多数の魔法陣を使う場合。
こちらも例外なく、適量と流入速度が最適という部分は同じだった。
そこへアスランが『無駄』と表現したマナが、余剰分のマナが干渉し合った結果。
これが魔法陣の構築を阻害する、最もな要素であることも判明したのだ。
そのため、アスランは多数の魔法陣を、それも複数の属性を使うことも考えれば。
『無駄を省く=適量と流入速度が最適』の会得は、必須だとの考えに至っている。
この部分は、順次展開でも、同時展開でも、同じように関わってくる。
また、魔法陣の数が少なければ、無駄なマナも、ある程度は許容される。
反対に、魔法陣の数が増える度に、許容度は小さくなる。
最後に、単一属性よりも、複数の属性を使う方が、許容度は小さい。
今の時点で構わない。
理解った事をノートに書き記す。
書いた後で、更に理解れば修正する。
この繰り返し。
目標到達には、基礎の積み重ねしかない。
これだけは明確に分かっていた。
『マナ粒子発光現象の持続時間の延長=体内マナ保有総量が増える』
マナ粒子発光現象は、『魔法陣』を使って行う。
体内マナ保有総量を増やすためには、魔法陣を『増やす』必要がある。
魔法陣を増やすためには、『無駄』を省く。
無駄を省けば、『持続時間の延長』にも繋がる。
以前に経験した『マナの枯渇』も、無駄を省ければ起こし難くなる。
アスランが取り組む基礎鍛錬は、その全てが、一つに結び付いた。
体内マナ保有総量が上限に届いたら、何かあるのだろうか。
この疑問は、今も分かっていない。
一方で、自分の体内マナが、増えている自覚はちゃんとある。
修行で使う魔法陣は日々、その数を増やしていた。
複数の属性を、多数使う技術。
はっきり言って、単一属性を多数使うことと比べて、桁違いに難しい。
もっとも、難しい理由は、既に理解っている。
難しくても、使い熟せるようになれば、今よりも体内マナを、無駄なく効率良く使える。
修行に魔法陣を使うようになってからの日々が浅い点。
転じて、修行に打ち込んだ総時間で計算しても、少ない事をアスランは分かっている。
ただ、そこには習い始めた最初とは異なる。
今は課題も明確で、解決への道筋も出来ている。
全部が手探りだった時期と比べて。
現在は、修行方法も、かなり効率が良くなった。
ノートに記された軌跡はアスランへ。
この事実を、ちゃんと自覚させている。
マナを無駄なく使う。
そのために、微細なコントロールは欠かせない。
微細と言っても。
これも結局は感覚。
マナの流れを感じ取る、この感覚を研ぎ澄ます。
取り組みは、必然的に『集中力』が鍛えられる事へ、繋がっていた。
この基礎鍛錬は、魔法陣を使うようになるまで。
途中、午後の時間だけでは、修行時間が足りないと抱いた。
それが今となっては、午後の時間の内に終えられる。
アスランは、マナの枯渇に至る少し手前。
そこまでを、特に集中して修行に打ち込む。
伝わる疲労感覚で『今日はここまで』と、修行が早い時間で終わったとしても、気にしていない。
何故なら、マナを使い続けると、消耗が疲労となって現れるからだ。
筋肉の痙攣を感じるようになった段階。
ここがアスランの、『今日はここまで』の目安になっている。
それ以上すると、意識を失わなくても、身体をしばらく自由には動かせなくなるのだ。
他にも、修行の後で孤児院に帰ってからは、夕食の後からエスト先生の授業がある。
授業を受け切るくらいの余力は、絶対に必要だった。
当然だが、万が一にも居眠りなどは許されない。
集中を鈍らせるだけで、エスト先生が、眠気覚ましの鉄拳をお見舞いしてくれる。
あれは・・・・物凄く痛い。
眠気が吹っ飛ぶ以上に、記憶が飛ぶ。
意識が真っ白にもなるし、それは追い打ちの平手打ちで呼び戻されるんだけど。
そうなると、エスト先生の機嫌まで悪くなるからなぁ~・・・・・
うん。
エスト先生が機嫌良く、指導出来るように。
そのために、僕は余力に気を付けないといけない。
だって、これは僕がエスト先生にお願いして、それで先生の時間を貰っているのだから。
僕のために、時間を作ってくれたエスト先生には、絶対に失礼な事をしてはいけない。
少なとも、エストから指導を受けているアスランは、こう考えている。
そして、勉強については、指導が上手いエストへ、今も感謝している。
エストの授業を、アスランは嫌だと思ったことはない。
寧ろ、遊びを交える指導だから、楽しい一時にすらなっている。
鉄拳制裁については、勉強とは無関係な所で、怒られても仕方ない事をした時の状況を、置き換えで想像しているに過ぎない。
アスランも何度か、エストから叱られた事がある。
物を粗末にした時、食べ物を粗末にした時に叱られた痛い記憶は、痛かった以上に、何が悪いのかをエストからしっかり教えられた。
自分の時も、自分以外の誰かの時も。
だから。
エストの言い付けは、子供達がちゃんと聞いている。
アスランは、夜の時間にも勉強を教えてくれるエストに対して。
怒られて当然なことで、不機嫌にはさせない。
そう強く言い聞かせている。
他にも酷く心配させたから。
アーツの修行で、マナの枯渇を引き起こす等。
絶対出来なかった。
アーツの基礎を、もっと磨く。
言い換えれば、基礎の強化。
この中で、保有総量の上限を伸ばす部分は、『魔法陣』が使えるようになって以降。
これはアスランも、順調だと思っている。
それとは別に、『魔法陣』を多数使うために欠かせないコントロールの部分。
無駄を省く修行は今も、特に意識して集中しなければ、直ぐに乱れる。
それでも。
アスランは、この修行の仕方を、何か素振り稽古と同じで、目標に届かせるためには、もっと時間が要る。
それこそ、一日一日の積み重ね。
だから、焦らず地道に取り組めば、必ず届く筈。
素振り稽古は、その回数を300回に届かせるまでに、何ヶ月と掛かった。
だが、毎日欠かさず繰り返したからこそ、出来たのだ。
そして、今は300回以上、出来るようになっている。
現在のアスランは、素振り稽古について。
ただ、回数だけを増やそうとは、もう思っていない。
最初は確かに300回。
此処を目標にして来たし、出来るようになった後は、400回を目標にした。
事実、素振り稽古は、回数が目標だった時期は在る。
そんな捉え方が変わったのは、今年に入ってからだ。
マナ粒子発光現象で、このくらいは出来るだろう・・・・・
あの時の挫折は、素振りの仕方にさえ、強い影響を及ぼしていた。
『未熟者』
アスランは素振りでも、単に回数を増やしただけでは、『未熟者』のままだと、考えるようになった。
考えながら、自ら出した答えが、これも『質』が大事だと至る。
『一刀入魂の一振り』
これを連続で300回、出来る様になること。
新しい目標は、回数こそ最初と同じでも。
ただし、中身は全くの別物だった。
それでも、基礎が大事だと実感した、あの日以降。
アーツだけでなく、剣術にも、それは活かされた。
今までやって来た素振りに対する意識の変化は、連続300回の素振りへ。
想像以上の負荷はアスランに、稽古の難しさだけを、痛いくらい叩き込んでいる。
以前までの、回数を増やして汗を流す。
それで目標を達成できた時の充実感は、だが、これで満足したら、自分はやっぱり未熟者のままだ。
憧れの騎士王には、絶対届かない。
だから苦しくても。
一振り一振りに、神経を全部注ぐ。
これで300回くらい、軽く出来るようにならないと。
憧れには近付けない。
今の素振り稽古は、間違いなく、意識の置き所が変わった。
アスランは、これがシルビア様の言っていた基礎の素振りなんだと・・・・・
『基礎が最も大事』
アスランは、シルビア様がそう何度も言っていた本当の意味を、納得した感で抱くようになっていた。
ところが。
この時のアスランは、シルビアを以前からそうだったが、神格化し過ぎていた。
シルビア本人は、まだ4歳のアスランへ。
そんな事までは、求めてすらいない。
しっかりした型通りの素振りで、300回出来ることで十分。
ただ、これも幼いアスランには、簡単には出来ないだろう。
だから、連続300回の素振りが出来るようになれば、シルビアとしては申し分なかった。
それこそ、挫折以前のアスランがして来た程度の素振りで、シルビアは合格点を与えるつもりだったのだ。
アスランは、そうしたシルビアの思惑を超えていたのである。
素振りに対する意識は、既に一人前の騎士と同等だった。
それくらい高い意識で、今日も素振り稽古へ、汗を流していたのである。
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■マナの流入速度【メモ】
※アーツの詠唱速度とも、無関係でない感じがする。
※魔法陣を作る際、特に複数の属性を使う時には、各属性ごとの微細な調整が必須。
※ただし、単一属性だけの魔法陣なら、調整無しでも問題ない。
※けれど、体内マナを無駄に消耗させないためにも、そして、複数の属性を使い熟せるようになるためにも、絶対会得しなければならない。
今日もアスランは、ノートにペンを走らせながら、改めて実感したことを書き記す。
この日も、修行は試行錯誤を繰り返した。
最初、魔導の修行中に使っていたノートは今。
魔導器を使わずに出来るようになったアスランは、ノートに記す際、エレンに習って『アーツ』と表現するようになった。
ノートも、今となっては数冊に増えた。
その過程でアスランは、自らがエレンから学んだアーツと現代魔導。
二つは、似て非なるものだと。
此処は以前よりも、明確に位置付けた。
『現代魔導』は、魔導器とクリスタルが欠かせない。
『アーツ』は、体内マナだけで行使出来る。
この二つは、全くと言っていい程に違う。
アスランは時々、ノートを最初から読み直している。
ここからも、自身が基礎の部分で、まだまだ不十分を、それくらいもちゃんと自覚している。
尊敬するシルビア様から習った剣術でも同じこと。
『安易に小手先の技に走るようでは、自身のためになりません。反対に、一見すると地味にも映りますが、基礎を極めるくらいに積み上げた方が。実戦の場で特に活きてきます』
稽古の時間に言われた言葉は、今年に入ってからのアーツの修行で、挫折に近いショックを受けた後。
そうなってから思い出した、教えでもある。
シルビア様とエスト姉。
二人と比べて、桁違いで先生と呼ぶには?が付いてしまうエレンも・・・・・
アスランは印象に残る言葉を、思い出した時も含めて、ノートにも残すようになった。
剣術の型を見せて貰った時。
その時のシルビア様は、特に格好良かった。
勉強でペンが止まった時。
エスト姉は、自分が何処が理解らないでいるのかを、分かってくれた後。
理解るまで何度も、教えてくれた。
エレンの説明は、感覚的で抽象的過ぎる。
だから、シルビア様とエスト姉と比べると、やっぱり指導者としては、かなり疑問符がつく。
それでも。
アーツをまるで手品のように、簡単にやってみせる凄い先生なのも事実。
たぶん、エレンは天才なんだと思う。
今まで読んできた本の中にも書いてあった。
神父様も、本と同じような事を言ってた。
天才と呼ばれる人の考え方や説明というものは、それが普通の人には、理解し難いことがあるらしい。
『でも、僕だって基礎がしっかり出来ていれば。きっとそれくらいは出来るようになれるはず』
意識は前を向いている。
基礎の捉え方も、此処までに培ったものが以前よりも。
なぜ基礎が大切なのかを、実感的に理解らせている。
こうした内側の成長へ、当人は無自覚でも、周囲の大人達は異なる。
アスランを知る大人達は、殆ど一様に『子供らしくない』とか、『年の割に大人びている』等と、他の子供達より目を向けるようになっていた。
大人達から向けられる視線。
無自覚なのか鈍感なのか・・・・・
アスランは相変わらず。
今は午後の時間にも、カモフラージュではない素振りを、取り入れるようになった。
早朝稽古での素振りは、今も続けている。
それと同じ素振りを、この時間にもするのには、理由がある。
『無詠唱アーツには、外的な動作に伴う音が必要』
今の段階でも、この解釈は変わらない。
そこからアスランの思考は、素振りでも出来るのではないか?
単純に閃いた事だったが、即実践も当たり前。
そして、イメージしたアーツは、素振りの動作で・・・・・
直後、眼前で事象干渉は起きた。
その瞬間は、アスランに『想像が現実』になった感を、確かな手応えの様にも抱かせた。
ずっと想像の中に描いていた『魔法騎士』
剣を振るいながら、魔法も使う魔法騎士は、此処から現実味を強くさせた。
今日の発見と成果はその後・・・・
アスランは以降ずっと、素振りとアーツの合わせ技を、繰り返し練習するようになった。
得た成果。
アスランは、これを『魔法剣技』と呼称した。
しかし、この新技は、初めての実践において、あわや大惨事に成り兼ねない事件を起こしていた。
その結果。
アスランの修行場所は、空き地と牧草地の他、第三の場所が出来たのである。
今も、朝の素振り稽古と型稽古は、馴染んだいつもの空き地を使っている。
そこから、雑木林を抜けた先にある牧草地の少し向こう側には、大人の背丈以上の岩塊がごろごろしている岩場がある。
小さな川も流れている、その場所が、魔法剣技の修行場所になっていた。
後から魔法剣技と呼称するに至った、新技について。
アスランは閃いたそれを、最初、アーツの修行に使っていた牧草地で、特に考えも無しに。
使い慣れた火属性の『ファイア・アロー』を用いて、実践した。
問題となった事件は、この時のアスランが、『特に考えもなし』に、火属性を選択したことに起因する。
アスランが素振りの動作に合わせて唱えた『ファイア・アロー』は、イメージ通りの事象干渉を引き起こした。
木剣の刀身部分を、炎で包み込んだようなイメージは、正にその状態で起きたのだ。
そして、事件は此処から、振り下ろした途端に起きた。
まぁね、もう理解るでしょ。
そう、僕の木剣は、この時には刀身部分を、アーツで起こした炎が包んでいたんだ。
そんな、見た目からして燃え盛る剣をね。
あの時の僕は、ホント、後先考えずに振り下ろしたんだよ。
場所は、牧草地だからねぇ。
地面に火を放てば、火事が起きるくらいは当然でしょう。
はぁ~・・・・・・
牧草や地面が乾いていたら、と思うとね。
ついでに、空気がもっと乾燥していたら、とかもね。
きっと、間違いなく、秘密もばれて、大惨事も間違いなしだったね。
けれど、その時に限ってはさ、幸いにもね。
地面には、雪がしっかり積もっていたんだ。
後はエレンが、アーツで大気中の水分を収束させると、あっという間に消火してくれたんだよ。
結果。
雪が積もった地面は、炎に包まれた刀身が触れた箇所の雪を蒸発した。
さらには、雪の下に隠れていた地面と雑草も焼いた。
だが、地面の一部を黒くした程度で、辛くも済んでいる。
つまり、事件は起きたが、大惨事には至っていない。
アスランの秘密修行も、明るみにはならずに済んだ。
ただ、この焼け焦げて黒くなった地面を映すアスランは、考えなしに、安易に火属性を使ったことを、反省した。
もっとも・・・・・
この時の反省は、惨事にならずに済んだと安堵した部分。
エレンから真面目ぶった説教を聞かされて、ムカついた部分。
自らが考え無しに火属性を使った事への、反省の部分。
内訳比率は4:5:1くらい。
反省の割合が極端に少ない理由。
最たるものは、先生らしい指導を、殆どしていないにも関わらず。
なのに、こういう時だけは、偉そうに説教するエレンに、ムカついたから。
心情的事情により、結果的に割合が低くなった。
エレンの説教が無ければ、反省の比率は6割を軽く超えている・・・・・
これもアスランが胸の内に抱いた感情だった。
事件の後。
アスランは焼け焦げた地面を、事が明るみにならないように隠している。
証拠の隠滅は、枯れ葉などで覆った上から、周りの雪を被せるというもの。
挙句。
アスランは自らもアーツで雪を作って、痕跡すら消している。
最後にアスランは、原因となった部分。
自らが考えなしに火属性を使った点には、これだけは要反省として、ノートにも記録を残した。
魔法剣技は、こうして初日に事件を起こした。
ただ、翌日には新たな修行場所で、再開している。
場所は、空き地から雑木林を抜けた先の牧草地。
その牧草地の、更に向こう側にある。
移動距離は伸びたが、今度の場所は、大きな岩が沢山ある。
しかも、川まで流れている。
此処へ案内したエレンの話では、この場所も、人気は殆ど無い。
修行を再開したアスランは、魔法剣技の修行を、此処でするようになった。
流れる川の水面に対しては、火属性が使える。
一方で、自分の背丈よりも大きな岩塊。
アスランは、岩肌を相手に風の属性を使うと、修行は連日ずっと夢中になっていた。
木剣の刀身に、炎を纏わせる。
アスランは最初、これを『ファイア・アロー』で行っている。
だが、ファイア・アローは『炎の矢』だ。
それが何故?
後から抱いた、この疑問へ。
エレン先生とのやり取りは、此処からアスランへ、事象干渉の仕方は、特に『イメージ』が、強く作用するを理解らせた。
付け足すと、呼び名は、そこまで重要ではないらしい。
けれど、『イメージ』は、使う言葉。
要するに、表現と認識の一致が、深く結びつく。
例えるなら、アーツで火を起こそうとするのに、発動式に『水』を用いると、事象干渉が上手く行かない。
全く起きない可能性さえある。
これはイメージした火が、発動の際に使われた水という表現によって、崩れてしまう事に起因する。
火に対する認識。
水に対する認識。
風や土も同様。
炎の矢を起こすのに使う『ファイア・アロー』は、別に『ファイア』でも、問題ないそうだ。
火という部分は同じなのだから、という事になる。
イメージは、音を引き金に事象干渉する。
エレンとの会話は、アスランが『無詠唱アーツ』と、呼称する部分。
これと密接に繋がっていた事を、この時も理解らせた。
アスランは、これ以降の魔法剣技の修行中。
そこで、刀身に炎を纏わせる際には、『ファイア・ブレード』
同じ様に、風を纏わせる際には、『エア・ブレード』
今は、この方が認識し易い。
だから、そう唱えるようになった。
出来るようになると、そこから色々と思い付く。
刀身に風を纏わせる『エア・ブレード』は、風速を上げることで、鋭さが増す。
更に、この鋭い風を、振り下ろしに合わせて撃ち出すイメージは、現実の動作の中で、刀身から真空の刃を撃ち出すに至った。
魔法剣技は他に、魔法陣の様なコントロールを必要としない。
ただ、これも今の時点ではと、補足が付く。
感触としては、込めた分だけ威力が増す。
何というか、やり易い?もあった。
それでも、アスランはこれも、エレンに尋ねている。
『何度も言うけどぉ~。アーツは自由で無限なんだからぁ~。そんなに難しく考えなくても、良いんだよぉ~~~♪』
たぶん、こういう風には返されるだろう。
今回も、アスランの予想は外れなかった。
そして、結局は自分で納得のいく答えを、見つけないといけない。
これも結論は、此処へ帰結した。
漏れた溜息の後で、苦笑いもそう。
空笑いにも見える表情の内側で、勉強を見てくれるエスト先生が、いかに偉大な存在なのか・・・・・
エストと比べるアスランは、だから、呆れ笑うしかなかったのだ。
2018.5.24 誤字の修正などを行いました。




