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第12話 ◆・・・ 故に、推定無罪の原則が在る ② ・・・◆


風紀委員の姿勢も気に入らなければ、行動も気に入らなかった。


そうだな。

俺は、けれど、今回に関しても。

最後まで傍観者でいた方が、とは、後の祭りだ。


事実、介入すべきではない理由も。

最もなものは、俺自身が輪廻の双竜(ウロボロス)から狙われていることだ。

今は所在を知られるような。

そういう意味でも、目立つ行動はしたくない。

なにせ、現状の俺では、奴等と対立するための力が、絶対的に不足しているんだ。


俺個人の実力もだし。

輪廻の双竜(ウロボロス)と、事を構えられるだけの組織のような力も。

ティアリスたち・・・・だけじゃ、少な過ぎるもね。

ユミナさんや、本人たちからも、此処は増やすべきだと言われているのだしさ。


故に、こうして今も、無関係な他人を巻き込まない様にと。

王立学院での日々は、他人と極力関わらない様にしている訳だが。


今回の件は、それが正義感からの行動だったとしてもだ。


当初からの他人とは関わらない方針を。

だから、俺の行動は、陳腐とか安っぽいとか。


付け足しは、状況へ介入した後で。

まさか、俺の噓八百な話を、それで此処にクローフィリア王女まで居合わせていた等と。


俺自身の浅はかさは、こうして、計算外の事態まで引き起こしていた。




もう、全部投げても・・・・良いですか。


-----


え?

あぁ・・・それで、どうしたのかって?



まぁ・・・何と言うか、あれだ。

直後の俺は、コルナが作り出した異世界へ。

先ずは招かれた。


コルナは、そこで俺に、『主様の依頼通り。クルツなる者への食糧を調達して来ました』って。

そうして、ただし、自分が購買で直接の買い物をすると、王立学院での身分証も無い点が。

後になって、何かしらの問題を起こす要素になってはいけないも考えた末。


『・・・ですので。調達した食糧については、市街のショッピングモールで揃えました』


コルナの言い分は、聞けばこれも納得だった。

うん。

寧ろ、そこまで気を回せなかった俺の方がね。


だけど。

それで俺が、当然と頭を下げる行為を。

コルナは、『いいえ、主様。私達は、主様の意に沿うよう。此処は仕える者であれば。出来て当然のことです』って、そのまま首を横に振るんだよ。



俺の抱く王様の姿と。

コルナの考える王様の姿には。


少なくとも、俺の方が違和感って言えばいいのかな。

そういうものが在るんだよ。


でだ、王様像の違いは脇へ置いて。

俺はコルナから、頼んでいた食料品を受け取った後。

先ずは、隔離収納した。


その後で、現在の状況だな。

コルナと、今回はミーミルも出て来た。


否・・・実はねぇ。

さっきの嘘話の最中でも。

俺は、嘘を嘘じゃないと思わせる部分で。


ミーミルを傍に置くと、何度も異世界を作って貰ったのさ。

記録が残っている事実の方に、そこを誤れば。

ただでさえ、ツッコミ所の多い嘘話が。

あっという間に崩壊してしまう。



ホント、これで結構、神経も使ったんだからな。


-----


計算外だったクローフィリア王女の件。


ミーミルは俺に、『此処で今さっきまでの姿勢を裏返す行為。それは良い手とは思えません』と、更に。


『我が君の抱く後味の悪いそれには。臣である私も心が痛みます。しかしながら。先ずはお考え下さい。此度の件は、最終的に何を示すためのものだったのかを。そうして我が君は、故に。悪意を背負って構わないと』


恭しい、しかも尽くしていますを、アピールするミーミルはね。

うん、まぁ・・・こういう所も俺は分かっているしさ。

付け足しで、嫌いじゃない。


付け足しの付け足しで、姿勢じゃなく、ミーミル本人を嫌いじゃないって意味だぞ。



王立学院へ来たのは、大図書館に用が在ったからで。

事実、魔導書を手に入れた後は、最悪、いつ出て行っても良いんだよ。

もっとも、大図書館はさ。

叡智なんて呼び名も付くだけはある。

此処の蔵書は、特に専門書系は全部に目を通しておきたいかな・・・・なんて、思える所があるんだよ。



グダグダと遠回りした言い分だけど。

要するに、初志貫徹。

此処での人付き合いは、無いに等しいで構わない。

現状は、全く無しではないが。

しかし、極力少なくする・・・程度には収まっている筈だ。


と、そんな訳で。

この場を利用しての、嫌われ役を刻んで構わない。

ただし、条約機構が定めたルールは、此処だけは示す。


ふと思った。

カーラさんって。

俺はカーラさんのことを、良い人だって思っているけど。

怖くて近寄り難い・・・とかね。

そういう人達が、王宮の中にも結構いたんだよなって。



俺は、カーラさんのことは、最後まで嫌いにならないでいよう。

何となくでも、そう思った。


-----


間もなく、こちら側に戻った後。


計算外のことは起きているが。

それでも。

今回の企てには、大きな修正も必要ない。


予定通り、と言うよりも。

寧ろ、此処でクローフィリア王女の滑稽な姿さえも利用すれば・・・・とかな。


俺のは、そこでミーミル先生には未だ遠く及ばないが。

コルナとコルキナだけじゃなく。

ユミナさんからも。


王様には、それで腹黒さも必要だって。


「はぁ・・・お前さぁ。っつうかお前ら全員な。こんな嘘話にコロッと騙されるなんて。雑魚以下だな」


声には悪意を、しっかり込めた。

態度も口調も、思い付く悪人というものを露骨に演じてみた。

言った後で、馬鹿にした態度の笑いもして見せた。


上手く、悪人だと思って貰えれば。

ただ、今度からは、こういう部分の演技の仕方も勉強しよう。

俺が今後も、他人を巻き込みたくないを貫くのなら。

悪人と言うか、嫌われる人間の演技は、きっと役に立つ。



筋書き通り・・・で、良いんだろうな。

よろよろと立ち上がった後で、魔導器を稼働させたクローフィリア王女の、そこから起こした顔が。

ああ言うのを、憎悪の顔って言えばいいのかな。


あれは俺に対して、単純に怒っているを、突き抜けたに違いない。

俺、もしかして・・・・演技の才能がある?


等と思っていたら。



「氷の飛礫(つぶて)、冷気纏いて、撃ち貫け。アイス・バレット!! 」


クローフィリア王女が、握ると俺に向けたスティックの先端は、怒りも憎しみも、かな。

そういう強い感情が籠った、叫ぶような声の詠唱は、現れた氷塊が一つ。


大きさは大人の握り拳くらい。

放たれた氷塊は真っ直ぐ、俺を仕留めようと襲い掛かった。


-----


ローランディア王国の女王。

フェリシア・フォン・ルミエールは、間違いなく、私の祖母です。


ですが、薄々には感じ取っていた事があります。



イザベラお母様が、本当は、私とは血の繋がりが無いのではないか。


この事は、今も真偽を、定かには出来ていません。

もし、そうだったのなら。

そう考える度に、言い様の無い怖さが。


だから、私は・・・・不安になりたくないが。

意識して、考えない様にして来たのです。



イザベラお母様が、実は、本当の母様ではない。

それを初めて抱いたのは、去年の7月にあった定期試験の。

その時の実技試験が終わった後でした。


実技試験の決闘では、必ずと言っていい程。

命を落とす生徒がいます。


そうした中で、目の前で友人を失った一人の生徒が。

その生徒は、偶然そこに居合わせた私を映すなり睨むと、恨んでいる様な声が。


『・・・お前は王女だから首席で。それで実技試験を受けなくていい風紀委員だからな。ホント、実は母親が違うくせに。それで王宮も追い出された王女のくせに。なんで、そんなお前だけが。こんなに優遇されるんだよ』


私は最初、この方は何を言っているのだろう。

ただ、私へ、その言葉を口にした生徒の事では。

翌日も気になって、それでもう一度、話を聞きたいと足を運んだ私は、その生徒が既に死んでいる。


直ぐに抱いた何故は、それと、いつ死んだのか。

それも気になった私へは、風紀委員会の先輩から、その生徒が昨日の放課後には死亡が確認された。


死因は自殺。

校舎の屋上から身投げしたところを、それを目撃した生徒の通報で・・・・・・・



学院では、事実、自殺も無い訳ではありません。

動機も色々あります。


ただ、私は自分の母親の事で、イザベラお母様とは血の繋がりが無い。

この部分は去年の暮の帰省の折、お婆様へ、『学院で耳にした事なのですが』と、尋ねた時の雰囲気が。



まさか、本当に・・・・・・・


学院へ帰って来た後の私は、その時には確かな疑念を抱えていました。

ですが、そこで真偽を定かにした所で。


もし、イザベラお母様とは血の繋がりが無い事が、本当だったのなら。

本当だったらを抱く度に。

怖いもそうでしたが、とにかく不安で、その事を考えた日の私は、夜も眠れなかったのです。


イザベラお母様とのことは、考えない様にしよう。

そんな事よりも先ずは、しっかり進級しよう。


そういう風に言い聞かせた日々は、結果的に、今日まで何も知らない振りをして来たのです。


だから。

大図書館の住人と呼ばれる、カミーユ・ルベライトが声にするまで。




私は、本当のお母様の名前すら、知りませんでした。


-----


3月15日


今日は、学年末の進級試験の日です。

私も、去年の学年末に行われた進級試験によって。

4月からは、初等科の4学年へと進級しました。


4学年の最初の席次は、学年末の進級試験の成績によって決まります。


初等科4学年 首席 クローフィリア・フォン・ルミエール


私には、王立学院で(まか)り通る慣習へ。

籍を置く学び舎を支配する、間違っているを抱いた部分が。

そこから、やはりこのままではいけないのだと思った部分を、だから、変えたい思いがあります。


ですが、王立学院で何かを変えるためには、先ず、実力を示すことが求められるのです。


私は、所属する4学年でも。

それで、一年度を通して、首席を維持出来る様に努力しました。


もう一つ。

私は、3学年に進級した後で。

当時も首席だった私は、王立学院の風紀委員会から誘われると、風紀委員の一員になりました。


-----


ここで私も所属する、王立学院の風紀委員会を説明したいと思います。

先ず、王立学院における風紀委員会とは、学院内の治安に関して、独自の行動が許された組織です。


風紀委員会の主な仕事は、学院の治安が乱れない様に、管理監督をする事にあります。


学生寮の門限や寮内の風紀維持に関しても。

生徒同士の私闘行為へは勿論。

決闘に関しても、外部からの不正な干渉を監視もすれば、そうした行為に対する制圧も行います。


また、学院の全生徒が受ける定期試験や進級試験では、そこで行われる実技試験。

実技試験では、千人以上の生徒達を、彼等が不正を行わない様に。

此処では職員の方々と共に、風紀委員も目を光らせています。


ただ、そのため、風紀委員には、実技試験が免除されるのです。

私たち風紀委員の実技評価は、委員会の中で行われる訓練成績が、免除された実技試験の評価へ反映されます。


この事を、周囲からは公正さを著しく欠いて不透明だと。

主張は更に、到底許容できない差別だと。

私達を罵る声は、少なからずあります。


因みに、風紀委員だから免除された部分はそうですが。

そもそも、生徒同士の私闘なども起きる王立学院では、こうした違反行為を、言葉ではなく力で制圧する事が、間々あるのです。


もう分かったと思いますが。

つまり、風紀委員会とは、所属する個々人が、他者よりも強い力を持った組織なのです。


私の場合、魔導の実力も認められてのことですが。

そこへ、イリアから習っている剣術と、ティルダから習っている護身を中心とした格闘術。

これら全体を含む実力を、そこを風紀委員会から認められた事で。


誘われた私は、自身の目的を叶えるためにも。

その上で、今も風紀委員会へ所属しているのです。


-----


アイス・バレットを行使した時の私は、平静でもなければ、冷静でもありませんでした。


だから。

全てが終わった後。

私は、私の行為が事実、カミーユ・ルベライトの行為で救われていた事を。


マクガレン学院長と、お婆様から諭される中で理解しました。


-----


カミーユ・ルベライトが、私のお母様の事を話し始めてから。


本当のお母様の名前が、フェリスという事も。

そうして、実は、私を生むために亡くなった事も。

その後で直ぐ、ウィリアムお父様が、イザベラお母様と結婚していた事も。


既に、イザベラお母様とは血の繋がりが無い・・・のではを、疑いの様に抱いていた私には。

カミーユ・ルベライトの、上から目線で語る内容が。

アナハイム事案も、そこで起きたパキア事件も。


そこは間違いなく、嘘ではない事実を理解(わか)るだけに。



大図書館の住人と呼ばれる彼の言葉には最初、お婆様が、私が今でも尊敬するシルビア様を、条約機構の議長職欲しさに殺した。


そんな事は絶対に無いと、許せない怒りすら抱きました。


なのに。

彼の言葉は、私にも理解(わか)る間違っていない事実が並ぶと。

それを繋げて行った時に。


彼を許せないと怒っていた筈の私は、自分でも気付かない内にです。



――― もしかして、カミーユ・ルベライトの言っていることは。事実、伏せられた真実なのではないか ―――


母様の事では、お婆様が、私に何か隠している疑念もありました。

だから。

疑念を抱いたお婆様の事で、そこで抱いた・・・もしかしたらが。


彼が私の事を語り始めた所で。

お婆様を疑った私自身が、何の根拠も無しに信じ込んでしまったから。


私が王立学院へ入学したのは、事実、それがお婆様の命令の様なものでもあったのです。


もう、彼の言葉が、嘘だと思えなくなっていた。

いいえ、嘘だと否定しても。

カミーユ・ルベライトの、大図書館の住人と呼ばれる彼の言葉には、確かな事実の積み上げが。


そうして、私は心の中を、否定と嘘ではないとで、いっぱいに満たしてしまった。

頭の中まで、何をどう考えれば良いのか。

全部、分からない、分かりたくないで、ぐちゃぐちゃになったんです。


全身の力までが無くなって。

と言うよりも力が伝わらず、立っていることも出来なくなった私には、そこに届いた彼の言葉が。



『はぁ・・・お前さぁ。っつうかお前ら全員な。こんな嘘話にコロッと騙されるなんて。雑魚以下だな』



一瞬、えっ・・・なんて言ったの?

そこから間もなく、カミーユ・ルベライトの、誰が聞いても分かる馬鹿にした声は、全部嘘だったと。


どう反応して良いのかさえも、分からなくなった私の視界は、全部が嘘だと認めた彼の。

まるで、私達を馬鹿にし尽くした様な笑い方にも。


私の内側で、噴き出した途端に満たしたそれは、怒りを超えた『赦せない!! 』でした。


直後、強過ぎる感情に飲まれた私は、魔導器を稼働させると、握るスティックの先端を、カミーユ・ルベライトへ向けて。



「氷の飛礫(つぶて)、冷気纏いて、撃ち貫け。アイス・バレット!! 」


カミーユ・ルベライトだけは、絶対赦さない。

あの瞬間の私は、その感情だけで叫んだのです。


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