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第10話 ◆・・・ 憶測だけが招くもの ② ・・・◆


クルツの口調へは、事実、変だと思う。

だが、言葉が理解(わか)らない訳でもなければ。

こいつが嘘を言っている気配も感じられない。


もっとも。

クルツが嘘を口にすれば。


風紀委員もだし、外野連中からも声が上がるだろう。


「お前の身の上話は、まぁ、だいたい分かった。じゃあ、此処からが本題だ。あいつらの言う通り。お前は痴漢行為を働いたのか」


尋ねた途端。

正座をしているクルツは、背筋も真っ直ぐに首を分かり易いくらい横に振った。


「わい。女への興味は旺盛やけどな。女神様に誓って、痴漢はしておらへん!! 」

「けど、向こうはな。お前が痴漢をしたと。それで事実、殺そうとしたんだ」

「わい・・・先月に風邪を引いて。そんで、ろくにバイトが出来ひんかったんや。何とか学費は納められたけどな。そんでも、事務のカチュアさんには。病院代とか建て替えもしてもろうたんや。今月は、それも返して学費も稼がなあかん。せやから、食費を限界までケチってな。グラウンドで試験の説明を聞いた後。そこから此処へ来る途中。なんや景色がぐらぁ~ってなってなぁ。んで、後はぶっ倒れとった」

「お前の主張を聞くに。意識朦朧の最中で倒れた。ただ、恐らくはその時だ。お前は、その時に誰かと接触しなかったか」

「いや。よう憶えとらん。せやけど、倒れた後で。なんやバカスカと蹴飛ばされた。わい、空腹やったし。もう立つ気力も残っておらんかった。ついでにな。まぁ、王立学院じゃ。随時入学の人間なんざ・・・人間扱いされんのが普通なんや」



互いの主張には隔たりがある。

ただし、クルツが風邪を引いた事と、それでカチュアさんから金を立て替えて貰った事の二つ。

そこは外野の中から、言っている事は嘘じゃない。

何人かの男子が、クルツの証言は正しいを声にしていた。


なんだ、クルツにも友達が居るんじゃないか。

けど、だったら最初から庇ってやれよ。


「まぁ、カチュアさんから立て替えて貰った部分は。それはカチュアさんから聞けば。直ぐに証明できるだろう」


俺は意識の中でコルナを呼ぶと、クルツへの食事。

購買で買える総菜パンや、フィッシュ&チップス等で構わない。

付け足しでペットボトルのドリンクも付けてくれと。


約束は約束だからな。


問題は・・・と、俺は後ろからの露骨と言うか馬鹿正直と言うべきか。

怒りと殺意とが交じり合った気配へ。

クルツには、もう立って良いと告げてから振り返った。


「待たせて悪かった。えっと、風紀委員の・・・・あぁ、縦巻きロール。クルツの証言を含めて。互いの主張には隔たりが在る様だな」


名前・・・言われた気もするけど。

まぁ・・・いいや。


「風紀委員として、クルツは処断します。それと、私の名前はミュリア・ゴルペール。6学年の3席です。私たち風紀委員は、同じ風紀委員の初等科7学年8席。メイナ・モランシーさんへ。彼女の正当な行為に対して、暴力行為に及んだ貴方も処断します」

「俺のことはいい。だが、クルツに着せられた冤罪の可能性が拭えない痴漢の証拠について。お前等は何を以って証拠と成したのか。立証責任を果たして貰うぞ」

「その必要はありません」

「必要が無いと断言する理由。その根拠が何処にあるのかを説明して貰おうか」

「良いですか、よく聞きなさい。被害者側の複数人の証言により。私たち風紀委員が、クルツの痴漢行為を認定した。よって私たち風紀委員は、当然の処断を行使するのです。それから、もう一つ。処分権限を与えられた風紀委員の、その正当な行為へ。敵対姿勢を示した貴方へも。王立学院の秩序を、在るべき正義を掲げる私達は。だから処断します」


なんとも・・・まぁ、一歩通行な理屈だねぇ。

ホント、此処の理事長がフェリシアの婆ちゃんなのかって。

俺は、それを疑いたくなったよ。


等と思っている間にも。

縦巻きロールは、握るスティックの先端を俺に向けたし。

それに合わせて他の6人の風紀委員たちまでが、距離を取って俺とクルツを半包囲。


そこへ、俺が最初に蹴飛ばした女子生徒。

クルツと会話をしている間。

その間に手当てを受けたらしい彼女も。

今は立ち上がると、覚束(おぼつか)ない足取りでよろよろと近付いて来た。


ったく、そのまま寝てれば良いのにさ。

参戦するなら・・・仕方ない。


「あ、あんさん。わいら、このままやと」

「なにビビってんだよ。それと言って置くぞ。国際条約機構が定めた容疑者へ対する推定無罪の原則。風紀委員会(● ● ● ● ●)は先ず。ここを踏み躙った」


・・・・・!!・・・・・・


俺の言っている事は、それを理解(わか)った者達が少しは居た様だ。

俺達を半包囲した風紀委員の中にも。

露骨に動揺を見せた奴もいる。


と言うか。

俺の目には、そこに一人。

漠然とだったが、見覚えのある様に感じた女子生徒が映っていた。


その女子生徒は、ただ、とんがり帽子を、顔を隠すように深くかぶっていた。

やや下を向いた様な顔は、唇くらいからの輪郭しか映せなかったが。

それだけでも、俺は、何か似ている気がしたんだ。


「確固たる証拠も無しに。それで死刑さえも当然だと主張する風紀委員の諸君。君達がそういう姿勢なら。俺にも言いたい事がある」


俺が視線を突き刺した先で。

縦巻きロールは、余計怖い顔になっていた。


こいつもまぁ、何というか・・・・負けず嫌いな性格なんだろうな。


「今さら、何が言いたいのでしょうか」

「現在の条約機構において。その議長職に在る人物。そいつは聖女を。二百万人以上が住んでいた王都ごと屠ってでも。そうまでして議長職が欲しかった、腐れ外道なんだよ」


「「「「「 !!!! 」」」」」


場の空気が、洒落にならない事を声高に言い放った俺へ向けて。

有り得ない、信じられない・・・etc.


そうだよ。

言った俺でさえ、毛ほどにも信じてなんか居ないんだ。

フェリシアの婆ちゃんが、どんな人なのか。

俺は、本人から肉を焼いて貰った事もあるんだぞ。

それに、シルビア様がフェリシア様のことを、お母さんの様に思って見習って来た・・・・・・・



全部分かっていて。

けど、風紀委員の、縦巻きロールの過ちを正すために。


俺は今だけ。

(わざ)とフェリシア女王を、縦巻きロールが犯した過ちを用いて。


憶測だけで(● ● ● ● ●)、犯罪者に仕立て上げたんだからな。


-----


予定なら、とっくに実技試験は始まっている。

実際、他所のグラウンドでは、既に試験が始まっていた。


そんな中で此処だけは、それも俺の発言が。

フェリシア女王が、シャルフィの女王を、王都ごと屠った等と。



もう、この空気を今さら冗談でした・・・・では全然、済ませられないだろうね。

まぁ、それでも。



最後には、『そんなの全部、嘘に決まっているだろ』って、感じに終わらせるけどな。



「貴方は・・・自分が今何を言ったのか。王立学院の生徒が。女王陛下への死罪の他は無い非礼を犯すなど。証拠は在るのですか!! 」


怒りに震えた・・・も分かり易い。

縦巻きロールの声は、それが露骨な怒りを孕んでいたくらい。

最後の叫び声だけでも、十分に伝わったよ。


「証拠を提示する必要なんか。そんなもの、在る訳ないだろ」

「なんですって。じゃあ、貴方は。根も葉もない暴言を吐いたと。そういう事ですか!! 」

「条約機構の定めた法を踏み躙った貴様に。俺が掴んでいる証拠を。それを見せる必要はない。だが、第一王子のウィリアム。ウィリアム王子の奥方であるイザベラ。彼女の実家は、ヘイムダル帝国の内戦で討伐された。あのオスカル皇子の母親の実家でもあるんだよ」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


俺はフェリシア女王を、故意に犯罪者へ仕立て上げながら。

半面で、嘘ではない事実を持ち出しての。

ホント、カーラさんが作ってくれた特製の資料には、頭が下がるね。


「そもそも、条約機構の議長職には。聖女シルビアが不信任を表明するまで。それまではヘイムダル帝国が議長職へ就いていた。だが、不信任決議が多数決で可決された結果。ヘイムダル帝国は議長職から解かれたんだ」


俺がしている事は、よく言えば、状況証拠の積み上げ。

まぁ、噓も方便だけどな。


けれど、風紀委員や外野も含めて。

一言も発せない程、黙らせられるだけの事実は、一先ず並べても見せられた。


「ヘイムダル帝国とローランディア王国。否、もっと限定して言えば。皇帝と女王との間で。次の議長職を巡る裏取引が在った。議長選挙の前。2087年の獅子旗杯では。そこでローランディア王国からフェリシア女王が、自ら赴いている。そうして、帰国までの間に。女王は皇帝との間で。幾度も会談の機会を持っていた。獅子旗杯でも、二人は貴賓室で言葉を交わしていた。その事実は、当時の教会総本部の広報からも発信された筈だ。勿論、この事実を証明する証拠が。大図書館には在る」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


あぁ、事実、教会総本部の広報が発行した機関紙には。

当時の、シレジアの学生達が人質に取られた件もだし。

ヘイムダル帝国へ赴いたシルビア様やフェリシア様達が、皇帝との間で会談を設けた事も。

その辺りは全部、総本部の広報が発行した機関紙にも載っているんだ。


そして、大図書館には、この機関紙が全て揃っている。

俺も王立学院へ入学した後で、全部に目を通したからな。


「事実。議長選挙においては。不信任決議ではヘイムダル帝国へ不信任票を投じたローランディア王国へ。そのローランディア王国が立候補すると。ヘイムダル帝国は、ローランディア王国へ票を投じている。裏取引の内容についても。両国間ではアナハイム(● ● ● ● ●)事案(● ●)が招いたパキア事件も起きている。にも拘らず。不可解だとは思えないか。そこで、これが当時の不信任から始まる議長選挙までの間で。何かしらの裏取引でもなければと。その程度の疑念くらいは馬鹿でも抱ける」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「メティスとアナハイムは、組織の頂点に代々の国王が就く。更にZCFは、国の管轄下に置かれている組織だ。フェリシア女王であれば、噴進弾と呼ばれる古代遺産くらい。実は噴進弾の出所がアナハイムで、使える状態に仕上げたのがZCFであっても。そうして、噴進弾は女王から皇帝へと流れた後。そこからオスカル皇子へと預けられた」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「皇帝からオスカル皇子へと。だが、恐らくは女王からイザベラ皇女とその実家を経て。そうして獅子皇女と対立するオスカル皇子へと届けられた。当時の帝国は、皇帝が獅子皇女を後継者へ示した時期でもある。放っておいても、オスカル皇子が反逆を企てたくらいも容易に伺える情勢で。皇帝と女王の裏取引きを。何一つ知らないオスカル皇子は、噴進弾を使って聖女シルビアを。シャルフィの王都ごと葬った。要するに、皇帝はオスカル皇子を生贄にしたのさ」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「俺が腐れ外道だと言った部分は。事件の後でのうのうと議長になったフェリシア女王への、当然の評価に過ぎない。同時に、こんな途方もない事件は。女王に支配された王立学院やZCFだから成し遂げられた。まぁ・・・機密を知る女王と極一握りの他は。何一つ知らなくても不思議じゃないんだけどな」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


そうそう。

俺の嘘話で、そうやって今だけは踊るがいいさ。

お前等が滑稽に踊ってしまえるのは、憶測情報の中に含まれた、確かな事実と、機密というワードが与える強い疑念。


ちょっとした心理操作・・・・否、誘導だろうな。



さてと、もう一押し行って見ますか。


「女王と皇帝との間に交わされた裏取引き。だがな、取引きの詳細は見えず分からずとも。お前等のちっぽけな脳みそでさえ、至れる部分もあるんだ」


そうだよ。

トップシークレットなんて、極一握り以外には、見ることも出来なければ、知ることも出来ないのが当然。

付け足しで、存在の有無さえもだな。


全体をパッと見た感じ。

此処は、思惑通りに肯定して貰えたようだ。


では、その肯定してしまった心理へ。

湧いた筈の関心には、憶測を理解できる事実を並べた・・・・・

そういう納得に至れる種を蒔いてやろう。



「イザベラ皇女を妻にした事で。王太子になれないウィリアム王子の件。この話題は。しかし、ローランディア王国が議長国になった後。そこからはヘイムダル帝国の圧力を受けなくなった時期とも重なる筈だ。もっとも、或いは。此処にこそ、本命と呼べる確かな密約が。事実、在るのではないか」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「ウィリアム王子とイザベラ皇女との間には。フローラ王女が生まれた。そこで、此処に居る人間の中には。王宮の事情に詳しい方も居るかと思う。ウィリアム王子とイザベラ皇女のご結婚の前。ただ、当時のウィリアム王子には。先に別の女性が居た事を。その女性の名はフェリス。だが、彼女は一人娘を。自らの命と引き換えにして生んだ後で。女王の手で存在ごと葬られた」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


うん。

露骨な反応を見る限り。

この情報は、一定程度には知られている感じだな。


「つまり、イザベラ皇女と結婚する前には。当のウィリアム王子の方に。自分の血を引く王女がもう一人いた訳だが。ただ、生後間もない王女は、血の繋がりが無いイザベラ皇女を。真実、母だと抱いて育ってきた。当然だろう。そう仕向けたのもまた、他ならないフェリシア女王なのだからな」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「フェリシア女王は、王女の周囲で。フェリスという女性の事を。勅命を行使するという手段を使ってでも。存在ごと消したのだ。この王立学院でも生徒達へは勿論、関わる全ての人間に対して。例えば入学前には、この件での口外無用を言い渡されたと思う。或いは、この件に絡んだ誓約書への署名なども。学院へ籍を置く間、噂の一つも許さないと。代わりに、何かしらの便宜が提供された筈だ。一方で女王が王女の件では、何故そこまでしたのか・・・それは恐らく。高貴な家柄や血筋であれば。そこではよくある御家事情と大差ない筈だ」


あっ・・・・大きく頷いた奴等が結構居るなぁ。

あいつらの中には貴族・・・も当然いるんだろうな。

そうだよ。

貴族に生まれたなら・・・・知っているけど知らない振りを通す。

そういう御家事情なんかには、作法としての心得もあるだろう。


まぁ、我ながら・・・ツッコミ所はいっぱいあるんだけどさ。

煽って誘導したせいか。

こいつらの思考が、そこへ気付けないのは・・・未熟者と叱ってやろう。


それでも。

俺には、クローフィリア王女との思い出がある。

裸を見た件は、流石に正体もバレるから・・・・そんな事と関係なく言えませんけどね。


オーランドでは、二人で楽しい会話もした記憶が残っているよ。

その時の、クローフィリア王女から聞いた話。


俺は本人の口から、王立学院への入学前の生活も聞いている。


彼女の生活は、殆ど王宮内だったくらいを。

後は王家の別荘地や離宮などには行った事もある。


それでも。

王女は王宮の外にある一般の生活社会へは、一歩も足を踏み入れていなかったんだ。


この事実を、オーランドで本人から聞いた時には、逆に、俺が過ごした孤児院の生活へ。

クローフィリア王女は、何か強い関心を持っていた様に感じたんだ。


「不憫なのは実の母を知らずに。そうして、血の繋がりが無い女性を母だと思って育った王女の方だ。可哀想に。その王女は、女王の腐れ外道で。だから何も知らないまま。遂には王立学院へと、入学させられた」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


お前等が一先ず、馬鹿じゃないのなら。

俺が作った嘘話で。

けれど、此処までに敷いた事実が。


そろそろ、『まさか』を抱ける想像も出来るだろう。

だから、今回の事が終わったなら。

よく肝に銘じて置くんだな。


憶測だけの怖さは、それで無実の人間を、正義という名の妄想で、罪悪の感情を抱かずに、殺してしまえる所に在るんだ。


「俺がフェリシア女王とヘイムダル帝国との間で。何かしらが在るを疑う理由の一つ。それがイザベラ皇女とは血の繋がりが無いクローフィリア王女だけを。授業によっては命も落とす危険のある。この王立学院へ入学させた事にある。一方で、血の繋がりが在るフローラ王女だけは。王宮で何不自由無く過ごしている点へは。故に疑いを抱くくらい必然だろう」


「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」


「真実、クローフィリア王女が目障りになっている点。この学院で王女と親しい関係にある者達になら。王女が王宮へ年に一度しか帰省出来ない事実。それも一晩だけ泊った翌日には。家族からの見送りが無いまま、再び此処へ帰って来る事を知っている筈だ。また、王女の護衛役についても。護衛役が二人しかいない点。しかも、肝心の護衛役が。普段は学院の外に居る部分。普通に考えれば、王女を守る存在を。何故、日頃から王女の傍に置かせないのか。貴方がたは、この点に何の疑問も抱かないで居たのかと」


「「「「「 !!!!! 」」」」」


俺は、此処でも王女自身と、フェリシア女王からも聞いた事のある情報を含ませた。

付け足すと、魂の世界でシルビア様から。

クローフィリア王女の生い立ちを教えられた後。

シルビア様は、俺にクローフィリア王女を、彼女に危険が迫ったら守って欲しい・・・・・・


まぁ、今回は、全然守っていないけどな。

寧ろ、苛めだろう。


「故に、ウィリアム王子も、王子のままで。そうしてフローラ王女。そう、フローラ王女が相応しい時期に達した時にだ。女王はフローラ王女を。公に王太女にするのではないか。実際、そうなった時には。ローランディア王国とヘイムダル帝国とは。互いの血による確かな同盟関係にも至れる」



ホント、この時の俺は、証拠の立証が無い疑いだけで処断を下す恐ろしさを。

此処を理解(わか)って欲しかっただけなんだ。


けど、効果は予想以上にあった。

と言うか、あり過ぎた。


まさか、こんな所で。

しかも、敵対している様な状況で会うなんてさ。



俺の噓八百は、風紀委員の中に居た一人の女の子が。

彼女はペタリと地面に崩れると、両手は頬を押さえながら。

気でも狂ったかのような悲鳴、否、奇声の様な叫び声を上げたんだ。


その子が首を左右に強く振って、だから、とんがり帽子が外れた瞬間。



俺とクローフィリアの再会は、少なくとも。

俺にとっては予期もしなければ、こんな形で彼女を巻き込んだ事へ。


クローフィリアさんは、一人、酷く錯乱した様にしか見えなかった。

そんな彼女を見つめる俺の胸内は、ただ、今は後味の悪い感情だけがぐるぐるしていたよ。


2019.05.07 表現の一部を修正しました。

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