第49話 ◆・・・ 最後の最後の最後まで ・・・◆
半月以上も滞在した。
きっと、それもあるだろう。
サンスーシ宮殿には、何というか・・・愛着?
そうだね。
シュターデンさんやメイドさん達には、とても良くして貰えたと思う。
だからかな。
お別れの挨拶をした時には、少し、寂しかったね。
反対に、こうして空港へ向かうリムジンには、パンプキン・プリンセスと、殆ど顔も合わせなかった保護者の祖父。
アリサは今この時も、シルビア様とフェリシア様の間に座っているよ。
何も知らない人達が見たら。
アリサがお姫様にも映るかもね。
帰国の空路は、来る時と同じ。
神父様とハルムート宰相も、アルデリアの航空艦で帰国する。
けれど、サンスーシ宮殿に滞在している間。
そこで毎日の様に開かれた会談は、帰国の途中でシレジアへ寄ることになった。
そうして、シルビア様達は、シレジアで報道機関へ公開する形での会談を行う。
会談は、そこでシレジアに各国の大使館を置く。
そのための調印式もするそうだ。
因みに、サザーランドとアルデリアへは、僕らがサンスーシ宮殿へ滞在している間に。
もう既に根回しも終えているんだよ。
と言うか、僕がシルビア様から聞いた時には、既に調印式を公の場でするくらいの所まで詰めてあったそうだ。
シャルフィ王国は、友好的な関係にある各国へ。
シレジアに大使館を置いて貰う事で、東西の大国へ迂闊な行為が出来ない様に牽制したい。
狙いは此処だよ。
大使館設置の調印式には、そこで、今回は参加していない他所の国や自治州へも。
特に東西の大国がしている事を、良く思っていない国や自治州へ向けての参加を呼びかけるらしい。
最終的には、条約機構の総会をシレジアで開催する。
シルビア様達はシレジアを、将来的には帝国や合衆国の大使館も置くことで。
一年を通して、大使たちの対話が出来る場所にもしたいそうだ。
そうなれば、条約機構の総会に先立つ事前の協議が、今よりもずっと深められる。
全体の平和を考えるのなら。
対話の時間を多くするための環境作り。
ここはしっかり整えた方が良い。
ルテニアで起きた大きな戦争。
こんな悲しいことは、もう起こしてはならない。
呼びかけは、法皇になった神父様が、調印式の時にするそうだ。
とまぁ、帰国途中にも、そんなこんなが在るため。
シャルフィへの帰国。
それは少し遅くなりそうだ。
-----
空港へ到着して直ぐ。
アリサと祖父のオウギュストさんの二人は、国内線でアメリアへ。
僕らの出発よりも先になるそうだ。
「ねぇ、アスラン。私への誕生日プレゼントは」
「あぁ、そうだったね。はい、じゃあ、これで」
シルビア様達は時間に余裕があるからと、先に出発するアリサとお爺さんを見送るそうだ。
なので、僕は必然しての警護です。
因みに、アリサを見送ることも。
それを、空港まで追いかけて来た報道機関へ見せている事にも。
以後のアリサが、貴族達から何か良くない事をされない様にする。
見送りは、そのためのパフォーマンスも含まれているんだよね。
だいたい、シルビア様とフェリシア様がだよ。
追いかけて来た報道記者達へ。
二人はアリサを真ん中に並ぶと、はっきり言ったんだ。
シルビア様は、『短い期間ではありましたが。アリサさんの様な娘がいたらと。母親気分を楽しめました』ってね。
フェリシア様も、『私には血の繋がった孫娘もいますが。今回ヘイムダル帝国へ赴いて。アリサさんの様な可愛らしい女の子と。そこでの楽しい時間を過ごせたことは、かけがえのない宝物となりました。何れまた機会が在れば。その時にもアリサさんとの時間を過ごしたい。そう思っています』ってさ。
この発言には、表向きの好印象だけでなく。
しっかり牽制が含まれている。
パンプキン・プリンセス。
お前、ホント、感謝しておけよ。
そんなアリサは理解っているのだろうか。
記者の一人からコメントを求められて。
『私には、尊敬できるお母様とお婆様が出来ました。一生の宝物です。私も頑張って立派な女性になりたいと思います』
とまぁ・・・ね。
うん。
そんな事もあってか。
アリサはさっきから僕に対して。
ムカつくくらいお姫様姿勢なんだよ。
けど、仕方ない。
僕も、シルビア様から頼まれているしさ。
もう少しの間だけ、騎士役をやってやるよ。
悪い奴じゃないのは・・・まぁ、分かってる。
けど、やっぱり最初のアレがね。
棘が抜けない僕は、『はい、じゃあ、これで』なんて、余計な事を言ってしまったんだ。
ちゃんと仲直りしたいなら。
これが最後の機会なのにさ。
愛想よく出来なかった僕は、アリサから言われて、という訳でもないけど。
用意していたお守りを、それを片手を差し出したアリサの掌へ。
「気に入らなければ捨てても良いよ」
「貴方って・・・私の感動を壊さないでよ。凄く嬉しかったのに・・・・フンッ」
「そっか。悪い事を言ったね。ゴメン」
「謝るくらいなら、言わなきゃいいのに。でも、ねぇ・・・これって、騎士章っていう特別な物なのよね」
余計な事を言って、それで、此処でも不機嫌にさせて。
そうして、つい返す言葉で、お守りって言おうとした僕は、アリサが見せてくれる嬉しい表情へ。
僕の自制心は、やっと強いブレーキを働かせたよ。
「そうだよ。まぁ本来は、シルビア様から騎士として認められないと、貰えないんだぞ。僕ら騎士にとっては。自分達の身分証みたいなものでもあるんだよ」
「えぇ、それはね。先にシルビア様から教えて貰ったのよ。貴方が付けていた綺麗なアクセサリー。最初から気になっていてね。だから、教えて貰ったのよ」
「へぇ、そうだったんだ」
いつ、そんな話をしたのだろうか。
でもアリサは、シルビア様と一緒に居る時間も多かったしな。
「そうだ。その騎士章だけどさ。神父様に頼んで厄除けの加護を頂いたんだよ。また誘拐でもされたら大変だからな」
そう。
僕の作ったお守りだけど。
今朝の稽古中に、異世界の方で色々と言われたんだよ。
特にリザイア様から。
別に叱られた訳じゃないけど。
僕が刻んだ術式が不十分だったから、リザイア様がクリスタルごと交換したって。
まぁ、細々とした説明を聞くとだ。
あぁ、交換した方がいいなって。
うん、納得だった。
それに。
ティアリスがアリサの安全を祈ったクリスタルなら。
これぞ本物の御守りだなって。
それを朝食の後で、神父様に厄除けの祈りもして貰ったんだ。
だから。
何かあったとしても。
それは、パンプキン・プリンセスの自業自得だってね。
「アスラン。ありがとうね。私、一生大切にするから」
「・・・・あ、うん」
アリサのこんな嬉しいのが分かる顔。
一生大切にするなんて言われたせいか。
僕は、金縛り・・・なのかな。
とにかく、固まってしまったんだ。
「ま、まぁ・・・お守りだからな。持っていれば、ご利益もあるだろうさ」
「じゃあ、肌身離さず持っているわ」
素直だと感じたアリサは、なのに、今度は僕の調子が変になる。
あれだな。
奇襲を食らって混乱している状態。
うん、これが近いだろう。
それから少しの後。
アリサとお爺さんは搭乗手続きも終えて、船内へ向かう通路へ。
二人の後姿を、僕はシルビア様達と一緒に見送っていた。
けど、何かあったのか。
急に振り返ったアリサが、真っ直ぐこっちへ向かって走って来たんだ。
で、進入防止の柵まで走って来たアリサは、何か忘れ物でも等と思った僕へ。
「私、大きくなったらシャルフィに引っ越すから。その時はちゃんと娶りなさいよね」
はぁっ?
「だって、男の騎士が女の人に騎士章を贈るのって。プロポーズの意味があるんでしょ。シルビア様が教えてくれたんだから。私、もう受けるって決めたし。二番目以降は私と結婚した後になら・・・許してあげるわ」
はぃ~!?
ちょっと、シルビア様ぁ!?
驚きビックリな僕が、反射的に視線を向けた先で。
映ったシルビア様の、してやった感な顔が、ウィンクにグッジョブ・・・・って、おい!?
「アスラン。アリサさんの様な明るくて元気な娘。私も良いなぁって気に入ったのですよ」
「で、だから・・・僕の騎士章・・・なんですか」
「そう言えば。アスランはシャルフィの騎士なら誰でも知っている筈の慣習。異性へ騎士章を贈る意味を・・・知っていた筈ですよね♪ 」
嵌められた。
これは、最初から仕組まれた罠だったのだ。
アリサは結局だけど、大きくなったらシャルフィへ来るつもりだ。
あくまでも。
今時点の、本人の意思だけどな。
そうして、僕を罠に嵌めたシルビア様は、いいさ・・・この件は帰ったらカーラさんへ言い付けてやろう。
「アスラン。これもアリサさんを守るための措置ですよ。獅子旗杯を優勝した貴方の、その将来の相手と見られれば。危害を加えようなどと思う輩も出難くなる筈です」
アリサの姿が完全に見えなくなった所で。
シルビア様は、真顔でそう言ったよ。
あぁ・・・なるほど、そういう思惑が在っての騎士章なのね。
僕は思わず、大きな溜息を吐き出した。
「ん?・・・シルビア様。それならいっそ、アリサの事はミリィ皇女との親しい間柄だと。こっちが良かったのでは」
「付加価値は、多い方が良いのですよ」
最後、シルビア様はまた楽しそうに笑っていました。
-----
「あっ、シィルビィ~♪ やった、間に合った」
アリサを見送った後で、ブライト少将が待つ航空艦へと向かっていた途中。
後ろからの突然な声は、振り返った僕の目に映った一人の女性。
カーラさんと同じ栗色の髪と瞳で、見た感じ、シルビア様よりも・・・若い、かな?
僕は騎士なのでジッとは見ませんが。
シルビア様へ、突然の馴れ馴れしい態度な女性は、とっても胸が大きかったです。
「あら♪ エレナじゃないの♪ ホント、何年振りかしら。でも、相変わらず元気そうね♪ 」
女性をエレナと親し気に呼んだシルビア様は、けど、友達なのかな。
走って来たエレナさんと、それを出迎える様に駆け寄ったシルビア様は、僕の見ている前で嬉しそうに抱き合っていた。
「二人は、知り合いなの・・かな」
疑問は、神父様から「えぇ、アスランは憶えていないと思いますが」と、言われて首を傾げた僕へ。
「エレナは、シルビア様とカーラと幼馴染だったのです。それに、生まれたばかりの貴方を孤児院で預かった後。貴方に母乳を与えていたのも、エレナなんですよ。貴方を育てるために。エレナには孤児院に住み込んで貰った時期もあるのです」
「そう・・・だったんですか」
お母さんじゃないけど。
でも、お母さんみたいな人だった。
「そうですよ。それに、幼馴染の三人は、私の教え子でもあります。その意味では、アスランの先輩にもなるでしょうね」
「ですね。神父様の声の感じだと。良い人なんだと。そのくらいは分かりました」
「えぇ、エレナは三人の中でも。そうですね。姉の様な役回りでした。大学でも成績は優秀でしたし。三人の中では一番、家庭的な女性でした」
話を聞きながら。
僕の視界には身体を少し離すと、花が咲いたように盛り上がってる二人の姿が。
それと、エレナさんの向こう側。
やや遠く、割れた人混みの中から姿を現したのは、両手は二人の子供と手を繋ぐ男性・・・だけじゃなく。
見覚えがある。
と言うか、此方へ近付くあいつの顔は忘れない。
「シルビア。せっかくだからな。見送りに来てやった」
最後の最後、僕はまた獅子皇女の不遜顔を映していた。
-----
シルビア様とカーラさんが、あれで仲の良い友人関係でもある。
それは、幼年騎士になってからの今までで、理解っているつもりだ。
エレナさんの事は、神父様から聞いた。
ユフィーリア皇女の事も。
だから、四人は親友の間柄だった。
そして、今日はシルビア様を見送るために。
ユフィーリア皇女は、それで何故かミリィ皇女を連れて来ていた。
もう少し早かったら。
ミリィ皇女の事は、アリサとも会わせてやりたかったな。
そうそう。
ユフィーリア皇女と一緒に来た男性。
栗色の髪は、まぁ・・・何処にでもいる。
けど、深緑色に映った瞳には、一瞬でも警戒に似た緊張を感じ取った。
男性はアゼル・ディスタード。
僕が一瞬でも警戒したアゼルさんは、ただ、エレナさんの旦那さんらしい。
で、手を繋いでいた男の子と女の子。
髪と瞳は父譲り。
よく似ていると思ったら、双子だと言われた。
あぁ、なる程ね。
双子なら似て当然だね。
それと誕生日が来れば5歳になる。
へぇ、ミリィ皇女と同い年なんだ。
女の子の方は、アリア。
男の子の方は、アバン。
双子だけど、エレナさんの話では、アリアの方が姉の様な感じらしい。
そだね。
見ていると、アリアの方がアバンの面倒を見ている。
そういう印象だった。
そんな双子の姉弟とは、僕も挨拶をしたよ。
シルビア様からは、友達の子供だから仲良くしてやって欲しい。
アバンは、僕が獅子旗杯で優勝した事を『凄い凄い』って一人盛り上がっていた。
アリアも、僕が優勝した事は『おめでとうございます』って、なんか誇らしい顔をしていたね。
どっちも初対面なんだけどさ。
まぁ、新聞にも載っていたし。
やっぱり僕、有名人なんだね。
そう思う事にした。
エレナさんからも声を掛けられた僕は、なのに、いきなり抱き着かれると頬をすりすり。
「あぁ、アスランも大きくなったわねぇ♪ どぉ、憶えていないでしょ。私はね。貴方が未だ赤ちゃんだった時に。おっぱいもあげていたのよ♪ もう、一回吸い付くと、貴方ってばね。全然放してくれなかったんだから♪ 」
「そう・・・だったんですか」
「そうよ。でも、こんなに大きくなって。そうそう。カーラの手紙でね。私は貴方が騎士になった事も。それもちゃんと知っているんだから」
「エレナさんは、その・・・カーラさんとも親しかったんですよね」
「今でも大親友よ♪ 」
僕、そろそろ解放して頂きたいのですが。
こんなにぎゅうぎゅう抱き着かれると。
ちょっと・・・・辛いです。
「ねぇ、アスラン。カーラなんだけどさぁ。あの子って、未だ独身なわけ」
「あぁ、そうですね。宰相という仕事がとても大変だからでは・・・ないでしょうか」
「それは違うわね。あの子って目付きが厳しいじゃない。性格もツンツンしているしね♪」
「よく・・・ご存知ですね」
「貴方が幼年騎士になった歳よりも前からの付き合いなのよ。それに、カーラが忙しいのは。シルビィが手を焼かすからでしょ♪」
「そんな事は無い筈です。シルビア様は、僕が尊敬する立派な女王様ですよ」
抱き着かれたままの僕と、口調からして頗る楽しい感なエレナさんの会話は、此処で笑顔が怖くなったシルビア様が。
半ば強引に解放してくれました。
で、そこからなのですが。
笑顔が怖いシルビア様と、そんなシルビア様を相手にケラケラしているエレナさん。
二人の会話は、敢て聞かなかった事にします。
全てはシャルフィの体面のために
エレナさんから解放された僕は、そこからミリィ皇女に声を掛けられました。
ミリィ皇女は、獅子皇女がシルビア様を見送りに行くと聞いて、自分も行きたいと言ったそうです。
でだ。
僕は獅子皇女からね。
「おい、私のミリィが誘拐された件。そこには貴様も絡んでいるのだ」
はぁっ?
ナニそれ、今更ナニが言いたい訳ですか。
「だがな。私のミリィは寛大にも罪は問わぬ、とな。ならば、貴様も。そこは深々と感謝する所であろう」
「はぁ、まぁ・・・じゃあミリィ皇女へ。どうもありがとうございました。これで良いですね」
僕は獅子皇女の隣で、それで僕の方を真っ直ぐ見つめているミリィ皇女へ。
感謝の言葉は、騎士の作法通りの一礼も。
ところが。
「貴様は馬鹿か。ミリィの寛大な心と比べれば。土下座でも全く足りぬわ」
此処まで来ると、僕は獅子皇女とはね。
なんか因縁めいたものを感じましたよ。
「ユフィお姉様!! ミリィはその様な事を求めていません!! アスランお兄様。姉様の無礼を、どうかお許し願います」
姉には声高に叱ったミリィ皇女が、今度は僕をお兄様って・・・・頼むから止めて。
-----
なんだかんだと在りましたが。
ミリィ皇女が此処へ来た目的。
前にも聞いたからだけど。
ミリィ皇女は、獅子旗杯で活躍した僕のファンになったらしい。
で、優勝した後は、もう部屋に僕の写真なんかも置いているそうだ。
ユフィーリア皇女は、それがとにかく気に食わない。
あぁ、だから食って掛かって来たのね。
ホント、はた迷惑だよ。
「あの、アスランお兄様。その、不躾なのは分かっているのです。でも、何か一つ。お兄様が身に着けている物を。その、頂けませんか」
ミリィ皇女は、皇女殿下なのに畏まると、僕へは上目遣いな視線で。
けど、アリサの件では、確かに巻き込んでしまったしね。
仕方ない。
「ミリィ皇女。それで、皇女殿下は何が欲しいのでしょうか」
身に着けている物と言ってもね。
アストライアは無理だし。
腕輪ミーミルも無理だし。
アクセサリーなんか何も持っていないし。
まさか・・・剣!?
否、それこそ絶対無理。
僕のティアリスは、誰にも渡さないぞ。
なんて思っていたら。
その間も、もじもじと言い難そうな雰囲気で。
そうやって、何度か僕をチラチラと。
僕はこの時のミリィ皇女へ。
孤児院に居た頃のシャナを思い出すと、思わず笑ってしまった。
「ミリィ皇女。何かあるのでしたら。どうぞ遠慮なく申してください」
「そ、その。あ、あの・・・お兄様の騎士章を。ミリィは、お兄様の騎士章が欲しいです! 」
騎士章・・・って。
まさか、意味を分かって欲しがっている!?
さっきのアリサの事もある。
それで、直ぐには答えられなかった僕へ。
だけど、先にシルビア様が、「アスラン。良いではありませんか」と、反射的に視線を向けた先。
「私もユフィから聞いていました。ミリィ皇女は、獅子旗杯で活躍する貴方を。とても応援していたと。きっとファンになったのでしょう。それで身に着けている物を欲しがった。そうですね♪ ミリィ皇女」
両膝を折って目線を合わせたシルビア様の言葉に、ミリィ皇女は何度も大きく頷いた。
「そ、その通りです。シルビア様の言う通り・・・です」
「分かりました。では私からアスランへ。騎士章をプレゼントする様に言い聞かせましょう」
「ほ、本当ですか。あの、その、ありがとうございます! 」
別に、勅なんか頂かなくても。
えぇ、もう分かっていますよ。
あぁ、そう言えば。
前にハンスさんが言っていたっけな。
なるほど、これが宮仕えの悲しい所さ・・・・ってヤツなんだね。
僕はアストライアの左胸に留めていたプラチナ製の騎士章を外した後。
それを今度は、ミリィ皇女のワンピース。
その左胸の所へと留めてあげた。
なんだけどねぇ・・・・・・
この直後。
僕は、持っていた銀製の騎士章を二つ。
僕も欲しいとか、私も欲しいです・・・とか。
二つの騎士章は、こうしてアリアとアバンへのプレゼントに。
手持ちの騎士章が無くなった僕は、帰国後には直ぐにでも。
はぁ・・・・
プラチナ製の騎士章。
金額を思う僕は、航空艦に乗った後もしばらく。
カーラさんには、どう説明しようかと。
ローンが組めるのかも。
その辺りも含めて、とっても頭が痛かったのです。
最後の最後の最後。
僕は痛い支出を伴いましたとさ。