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第48話 ◆・・・ お守りにまつわる夜会 ・・・◆


我が名は、ミーミル。

剣しか能の無いレーヴァテインと、一番最初に盟約を結んだ程度で、今も我が君の隣を占有するティルフィングとも異なる。


叡智と謳われし我が師(メイティス)の、その唯一無二の教え子。

それが賢神を冠する私、ミーミルです。


そんな私の務めは、我が君が求め欲する、あらゆる知識を授けること。

ですが、それは務めの一つに過ぎません。


ただ、今は未だ幼い我が君が、どの様に成長なされるのかを。

私は、それを務めとは関係なく。


愛しいからこそ。

傍近くで、我が君の歩む正道を見守りたいと。


私自身、我が君にお仕えできる事は、正に至福と言えましょう。


-----


あの日、私の予てからな思惑は、そうして我が君が、錬金術と刻印術式への興味と関心を抱きました。


まぁ、意図して。

そうなる様に導いたのですから当然でしょう。


あぁ、この部分は秘密ですよ。

露見すれば間違いなく。

我が師とリザイア様から、殺されてしまいますから。


あれから未だ、いいえ、そろそろ一年と言ったくらいでしょうか。


ただ、そうですね。

今だからこそ、これは誤算だったと。

私が誤算と明言もする部分。


それは、我が君がエイレーネシア姫から授かった創生刻印です。

そもそも、私が我が君へ教え授けようとした錬金術と刻印術式とは、人間が、その研鑽によって到達した極みに近き(すべ)

太古の、その時代にのみ存在した術を、私は故あって、我が君へ教え授けようと抱いていました。


ですが、エイレーネシア姫が我が君へ授けてしまった創生刻印。

創生刻印という名すらも後から知った事ですが。


私が、我が君へ教え授けようとしたものとは、似て非なるものだったのです。

それ故、エイレーネシア姫がなされた件では、リザイア様がこれ以上ない程お怒りになられた。

当然、私も、その時には巻き込まれましたが。


しかし、これも後になって、リザイア様から聞き知った事が、なるほど激昂するくらいは当然だと。


分かりやすく言いますと。

太古の時代、我が君が超文明とも呼ぶその時代に生み出された、錬金術と刻印術式には、制限も在れば制約も在るのです。


要するに、万能ではないという事です。


反対に、エイレーネシア姫が授けた創生刻印には、研鑽次第で全能にさえ至れる。

それ程の可能性が含まれています。


創生刻印と関連して、だいぶ以前になりますが。


私もまた、アーツについては、リザイア様から教えを頂きました。

大いなる力の一つ。

ですが、この一つは、全てへ繋がる。

そういう一つなのです。


そろそろ気付いたでしょう。


エイレーネシア姫が、我が君へ授けた創生刻印とは、アーツと並ぶ、いいえ。

アーツが無限と呼ばれる、その故となる一つなのです。


リザイア様は、我が君を故に恐れています。

より正確には、我が君の心が世界の破滅を望んでしまう事を。

そうなってしまう事を恐れているのです。


人の心とは、それが美しければ美しい程。

脆く砕け散りやすいのです。


私は、その事を。

未だ人であった頃に経験しています。


そうして、どれほど己を責めた所で。

取り返しのつかない後悔を刻んだのです。


-----


暗い話をしたい訳ではありませんので。

それと、女性の過去は、暴かないのが世の理ですからね♪


ヴァルバースとの戦い。

その最中に我が君へお仕えした私は、ですが、それよりも前。

私を呼び出したユミナ様から、先に輪廻の双竜(ウロボロス)が動き始めた事を、そこは私も予期していましたが。

ただ、この時のユミナ様からは、はっきりと告げられたのです。


『ミーミル。ウロボロスの狙いは、未だ脆弱なアスランです。どうか守ってあげてください』


ユミナ様は、かつての臣下である私へ、頭を下げて頼まれました。

守るだけでなく。

ウロボロスと対抗できるだけの、確かな実力を伴わせるためにと。


『アスランには、貴女も知っての様に。私の妹が剣を指導しています。ですがアーツは勿論、魔法さえも使えない不器用な妹です。ミーミル。貴女には、妹では教えられない部分。同時に、アスランへは知識を授けながら。自制を養わせて欲しいと思っています』


賢神である私は、魔法を使えるだけで。

アーツを使える訳ではない。


ただ、我が君は今でも時折、私の使う魔法をアーツだと勘違いされることもある。

アーツと魔法は、一見すると似ている所が多い。

ただし、アーツには制限の様なものが無く。

魔法には、限界が存在するのです。



我が君は、よくエイレーネシア姫を馬鹿だと口にしますが。

アーツが持つ危険な面を、それを理解(わか)っていない様なエイレーネシア姫は、その意味では確かに馬鹿なのでしょうね。


おかげで。

我が君へ知識を授ける私は、同時に自制心を養えるように。

何事に関しても、負の側面が在るを強調して指導せねば・・・ならないのですからね。


ただ、あのティルフィングが選んだだけはあります。

我が君の心根は、だから私も守りたいのです。


-----


ユミナ様の頼みを受けて。

私は、それで此処から我が君へ仕えました。


これは、事実です。

ですが、そういう発端を用意されたユミナ様へは、やはり感謝しかありません。


邪推な事をされても迷惑なので言って置きますが。

我が君への忠誠には、一点の曇りもありません。


――― 常世の安寧のために ―――


この誓いが在るからこそ。

ただ、あの時は、未だ早いとも抱いていたのです。


私は、あのティルフィングが初めて剣を捧げた我が君へ。

仕える時期にだけ、迷いを抱えていました。


そんな私の背中を、ユミナ様は、頭を下げて押してくれたのです。



ですから、ユミナ様。

我が君へお仕えして、未だ二年余りですが。

私は、とっても幸せな時間を過ごせていますよ。


-----


園遊会が終わり、我が君もつい先程には眠りに就かれた。


我が君の傍には、ティルフィングとコールブランド。

それと、ティルフィングからの報せもあった故。

今はレーヴァテインも警戒へ就いている。


私は今、ユミナ様とリザイア様との三人で。

場所は、私が我が君への勉学の場にも提供する、権能の世界へと来ている。


「ユミナ様も、それとリザイア様も。ティルフィングからの報せ。やはり、以前から睨んでいたこの地(ヘイムダル)には」

「えぇ、なんともまぁ、忌々しいことか。ウロボロスも発祥の地には。何かと縁があるのでしょうね」


私が用意したクリスタルで出来た小さな円卓を、今は三人で囲みながら。

ユミナ様は、椅子の背に重心を傾けられると、紅茶で満たしたカップを片手にして。

ただ、表情も声も。

それは穏やかさを損なっていない様に見えた。


「戦力に余裕が在れば。それこそ、この時にも追跡をしているのですが。今の少な過ぎる戦力では、アスランを守るだけでも。いいえ、それすらも心許ないでしょう」

「ユミナ様。我が君は何故、召喚を行使されないのでしょうか。今の我が君であれば」

「そうですね。ゲイボルグやグングニール。サジタリウスやミストルテインも。今のアスランになら、力を貸してくれる筈です。もっとも、当のアスランが欲しない以上は。それで盟約すらも交せなければ。皆、此処には来れませんからね」


現状を考えれば、我が君には進言してでも臣下を増やすべきだと。

恐らく、その点はユミナ様の方も、理解(わか)っている筈。


「アスランは、そうですね。盟約について、と言うよりも。ティアに対して思う所が在るからこそ。それが結果として。本来なら既に集っていた筈の者達を遠ざけてしまった。そういう面もあるでしょう」


ユミナ様の思わせ振りな声は、そこで一度、紅茶を口に運んだ後。


「ですが、ティアが悪い訳ではありません。寧ろ、寵愛だとか。平等にだとか。真面目なアスランに芳しくない性教育などもそうです。リザイアと貴女も悪戯に揶揄(からか)ったせいで。私の可愛い後継ぎは、その真面目さが。ティアに対して一層義理立てしてしまった面もあるのですよ」


ユミナ様は、ご自身の所業だけは棚に上げた様な口ぶりでしたが。


「ユミユミだって揶揄って楽しんださね」


ですよねぇ~リザイア様。

そうもっと、もっと言ってやってくださいよ。


「ユミユミなんかさぁ。処女のティルフィングじゃあ上手く出来ないとかどうとか。そう言って揶揄いもしたじゃん。んで、経験豊富な自分がぁとか。まぁ、そこは遊び尽くした様なミーミルもだけど♪ 」

「リザイア様!? ユミナ様はともかく。私はその様な女ではありません」


私は、突然の事へ。

即座の反論は、当然でしょう。


まぁ、そこそこ・・・並程度の経験しかないのですから。


「へぇ~・・・ミーミルぅ。あたしゃ知っているんだぞぉ。あんたが何人とヤッたのか・・・とかもねぇ。どんなプレイが好きとかもぉ♪ 」

「リ、リザイア様!? ・・・・そもそも、今はその様な話ではなく。ウロボロスの件もそうですが。先に我が君が作ったアレに絡んで。だからこそ、リザイア様へのご相談をと」


私は話題を変える事へ全力を注いだ。


当然でしょう。

ユミナ様までが悪ふざけの笑みを浮かべているのです。


目の前の二人とも、こういう事に関しては意気投合もすれば、大暴走もお構いなしですからね。



そうして私は、話題を我が君が作り出したお守り(● ● ●)へと強引に切り替えた。


じゃないと、根掘り葉掘りほじくり返されて大変なんですからね。


-----


テーブルの上には、我が君がアリサという名の、人間の子供のために作り出した。

しかし、この世の何処にも存在しない魔導器が一つ置かれている。


我が君は、私から学んだ知識を活かして。

お守りという名の魔導器を、それもこの時代では他にない唯一のものを生み出した。


我が君は何と素晴らしい逸材である事か。


それもまた今回もそう。

思い付きから始まると、途端に、あの様な品を作ってしまいました。


ただ、このままですと。

ですからこうして、私はリザイア様と協議せねばならないのです。



はっきり言って。

ユミナ様が此処におられるのは、オマケの様なものですよ。


-----


そうですね。

我が君が思い付きで、世に生み出した傑作については。


ただ、その前に。


太古の時代、当時の人間が生み出した秘奥。

錬金術と刻印術式については、我が師が自らの手で、完全に消去(● ●)もした(すべ)の一つ。

よって、この時代はおろか、私とユミナ様が人として生きた時代ですら。


何一つ存在しなかった(すべ)なのです。


錬金術とは、理性と欲の天秤。

その均衡を欲の側へ僅かに崩しただけで、心を惑わすと腐らせる猛毒。


私の師であるメイティス様は、故に時代が一つ滅んだのだとも。

ただ、秘奥だけを消去させた所で。

魔導が存在した時代は、その結末が滅びだった。


『それが人の心の限界であり。同時に人の世の運命(さだめ)なのでしょうね』


あの言葉を、何処か寂しそうな面持ちなメイティス様が、私の記憶には焼き付いている。



ですが、何れ来る輪廻の双竜(ウロボロス)との対決。

確実に、世界の命運さえも左右すると。

はっきり分かる将来の聖戦へ向けた、故に今からの備え。


私は我が君へ。

未来の我が君の下へ集うだろう数多の者達が、奴等とも対抗出来得る存在となれる様に。


否、私は愛しい我が君の、優しい御心が悲しみと絶望で壊れない様にするために。

その為になら。


メイティス様から禁とされた術さえも。

奴等が動き出した今となっては。

将来の憂いへの備え。


私は我が君の、決して壊れてはならない御心を守るために。


錬金術ともう一つ。

錬金武装を作るためにも必要となる。

そのための、刻印術式を教授しました。


-----


錬金術と刻印術式とは、事実、禁術です。


ですから、師からは誰にも教えちゃダメだと。

なので、師を最も恐れる私の方から。

率先して教える等はしません。


えぇ、此処だけは本当ですよ。


ただ、我が君は、興味と関心の向くことに対して。

とっても、知りたがり屋さんでした。


ほんの僅か、私の方から『そうですねぇ。我が君が遺跡を探索して知り得たいと話しておられた。(いにしえ)の超文明についても。そこには石ころを金に変えてしまう技術も在ったのですよ』と、ですね。


途端。

我が君ときたら、もう、私を押し倒して最後まで、あぁぁああああ~~アンっ・・・・となってしまう様な姿勢がです。


我が君からの、あれだけ強い熱情をぶつけられましては、忠臣たる私に抗う等が、それこそ不忠の誹りを免れ得ないことが許されるでしょうか。


いいえ、そんな事は許されません!!


それに、我が君からは『えぇ、だってミーミルはさぁ。何でも知っている賢神なんだよねぇ』と、ですよ。


ですから、我が君の事などは知りもしないメイティス師匠様。


貴女様の唯一無二な教え子にして。

我が君との幸福な未来を想う(わたくし)、賢神ミーミルは。

故に、逆らってはならない勅によってですよ。


止む無く授けてしまった訳です。



なのでメイティス様♪

私は一切、悪くありません。


-----

 

さてと、錬金術と刻印術式に絡んでですが。

此処からが重要だというのに。

かなりの寄り道をしてしまいましたね。


我が君が、この世の誰にも生み出せない品を。

ただの思い付きだけで生み出した事実に関しては、そこは賢神たる私が、機密の部分を省いて。


あとは適当に、ご説明いたしましょう。


先ず、我が君が作ったお守り(● ● ●)についてです。

あぁ、退屈なら寝ていて構いませんよ。

寧ろその方が、適当にしか話す気の無い私も楽ですし。


反対に、興味があるなら。

あの美しく聡明な賢神様からの、その声が聞けるだけで、もう死んでも良いでぇ~すってくらい感激しなさい。


では、話を進めます。


我が君がアリサ・・・さんへ贈られる。

そのために作った魔導器ですが。


私の懸念と、だからこそ、リザイア様へも相談した部分。


それは、我が君が護身の刻印を施したクリスタルにあります。

そうして、このクリスタルですが。

我が君も理解っている様に、後はマナさえ在れば事象干渉を起こせるのです。


ただ、この点は、使い手自身が自らの体内マナを、自在にコントロール出来てこそなのですが。


ですが、我が君は何と素晴らしいことか。

このお守りという名の魔導器は使い手の、ある種の突発的な感情によってのみ、事象干渉する様になっているのです。


事象干渉の鍵は、危険に晒された際に起こる強い生存本能です。


要するに、強く死にたくないとでも思えば、この魔導器は、事象干渉を起こします。

もう一つ。


ただ、その前に。

今さら理解(わか)っていると思いますが、念のため。


魔導とは、魔導器とマナ、そこへ発動に必要な式が無ければ、事象干渉を起こしません。

そんな事は、当然です。


此処までを聞いたなら、分かっていると思いますが。

我が君が作り出した護身の術式を刻んだクリスタルは、これだけで魔導器を成すと、必要な式も刻まれています。


事象干渉への残る問題は、マナです。

そして、アリサさんは我が君の様に、体内マナを自在に扱う等できません。


ですから、このままですと。

幾ら死にたくないと思った所で、事象干渉も起こせません。


本当、クリスタルだけをプレゼントしたくらいなら・・・・あぁ、否。

護身の術式も、かなり物騒でしたので。


まぁ、それも一旦置いておいて。


あんな魔導器を作り出した我が君は、アリサさんが体内マナを自在に扱えないことを理解った上でです。

この問題を、魔法金属(ミスリル)を用いることで解決させてしまいました。


この世に在る金属の内、銀、金、白金の三種類には、マナを取り込む性質が備わっています。

しかも、魔法金属には、この性質が桁違いに備わっているのです。


つまり、我が君が作ったミスリル製の騎士章と、そこに収められたクリスタルは、贈られたアリサさんが咄嗟に『死にたくない』と強く抱いた瞬間。

事象干渉を起こす状態に仕上がったのです。


もう察したでしょう。

この世の何処にも、今の時点で此処まで小さな魔導器など。

他に存在しないのですよ。


我が君のそれは、事実、偉業と言えましょう。


-----


リザイアは、しかし、今はミーミルがテーブルへと置いた小さな魔導器へ。

手に取って顔へ近付けながら、確認するかのようにまじまじと見つめていた。


「ミーミル。このクリスタルだけはダメさね」

「やはり、リザイア様もそう思いましたか」

「当り前さね。アスランにはあれ程、誰にでも扱えるものはダメだと。念押ししたんだけどねぇ」

「いいえ、我が君は術式を刻む際ですが。アリサさん以外には使えない様に施したと」

「あぁ、それが不完全。というか欠陥でもあるんさね。個人の名前を刻んだ所で、同名なら使えてしまうんよ。付け足しで性別が女という部分もそうさね。アスランは特定の誰かにしか使えない(すべ)。此処がまだまだ理解っていない様さね」


我が君は術式を刻む際、使い手の条件として、『アリサ:女』の二つを施した。

しかし、リザイア様からは、このままだと世界中に居るアリサという名の女性なら使えてしまう。


まぁ、これだけでも十分に、条件付きではあると思うのですが。

世の中にアリサという名の女が千人も居れば。

つまりは、それだけで十分『誰にでも』の要件となってしまうらしい。


「ミーミル。このクリスタルだけ。これだけはダメさね。ただ、アスランがお守りを贈りたいって。その気持ちだけは汲んでもやりたいさね」


それから間もなく。

私は眠っているアリサさんの髪の毛を一本と、ティルフィングを伴って戻って来た。

同時にリザイア様は、我が君が作ったものと寸分違わない。

未だ何も刻まれていないクリスタルを、一つ用意して待っていた。


リザイア様は、私が連れて来たティルフィングの掌へ。

クリスタルとアリサさんの髪の毛を乗せると、軽くで良いから握る様に。


「ティルフィング。あんたもアスランが作ったお守りのことは、一先ず分かっているさね」

「はい、それは勿論」

「だけどね。あのクリスタルは物騒過ぎる。発動した途端、障壁を展開するだけじゃなく。脅威の対象を全て炭にでも変える気なのかって。ホント、極端なくらい物騒なんよ」

「その様な術式を。まさかマイロードが」

「あぁ、たぶんね。あの子はそこまでの予測が出来ていなかったと思うんよ。咄嗟の状況で生まれる感情の強さ。この部分を低く見積もり過ぎたのさ。だから、アスランの中じゃあ。精々失神する程度の感電・・・くらいだと思うさね」

「なるほど、理解りました」

「だからね。あれじゃ、お守りじゃなくて。単なる殺戮兵器と変わらない。そこで、クリスタルだけを交換しようとね。で、ティルフィングに来て貰ったんよ」


そこからのリザイア様の説明によると。

光を宿す私の加護を、リザイア様がアリサさんの髪の毛を触媒に用いて、クリスタルへ付与する。


「まぁ、こうする事でだ。あのアリサという女の子だけには、ティルフィングの加護が分け与えられる。その辺で売っている効果の不確かな幸運のお守りとは違う。こっちは肌身離さず持っている限り。必ず幸運を招く効果のある。そういう確かなお守りになるさね。妥協できるのは此処までだよ」


マイロードに仕える私には、リザイア様の言いたい所は理解るつもりだ。

私とアリサさんの間には、繋がりなど存在しない。

にも拘らず、リザイア様は限定的とはいえ。

その繋がりを作ったのだ。


幸運を招く。

とは言え、この時の私が掌に握ったものへ込めた願い。

それは、アリサさんの今後へ。

せめて、身の危険に晒されるような事がありません様に・・・・と。


その願い、と言うか思いを。

リザイア様はクリスタルへ付与したのだ。



この御方は、真実、神の格に在って一段以上は高い所に座している。


ですが、マイロードのアリサさんを想う心には、応えて頂けた様です。


こうして。

アリサさんだけにしか効果の無いお守りは、完成したのでした。


2018.08.25 誤字や脱字などの修正を行いました。

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