第46話 ◆・・・ プレゼント作りと 秘奥にまつわるetc ・・・◆
今回は暴力的な表現が出て来ます。
また、『獅子旗杯7』に出て来た秘奥技術について。
次話と合わせて説明臭い文章となっています。
説明臭さを何とかしようと自分なりに頑張りましたが。
次章以降の展開にも密接するため、そのための設定話として流して頂けたらと思います。
午前中の会談は、昼を過ぎた頃に終わった。
まぁ、昼食会もあったからね。
それと、今夜はまた園遊会がある。
なので、あと5、6時間も経てば。
今日は再び、皇帝とまた顔も合わせるんだけどさ。
ただ、僕達は明日、帰国の途に就く。
何というか。
今になって、明日には帝都を離れるんだと。
そう思うとね。
この半月は、色々あって、あっという間だった、かな。
シルビア様の事では、事実、襲撃事件もあった。
けれど、貴賓室を襲った犯行集団について。
シルビア様だけを狙ったとは言い切れない。
あの時の貴賓室には、皇帝も各国の代表も揃っていたんだ。
だから。
扱い的には、何かを目論んだテロ集団。
今は未だ、そういう事になっているよ。
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今日は七月十五日。
時計の針は、午後の五時を少し過ぎた頃。
滞在先のサンスーシ宮殿の庭園では、既に準備も整うと、園遊会の開会を待つばかりの状況だ。
そこへ、一時間も前からは、フォーマル姿の身形の良さそうな人達が、徐々に集まり始めた。
僕も見知っているタキシード姿の男性も居たし。
それとは違う、けれど、正装だと思える人も居た。
肩や胸元の開いたドレス姿の女性も。
ただ、フォーマルだと、もう少し露出は控えめにするんだけど。
帝国だと違うのかな。
けど恐らく、みんな貴族だと思うよ。
今夜は獅子旗杯の優勝者を祝う・・・・なので、僕も参加しないといけない。
僕以外の招待客も、少し前から徐々に集まり始めているそうだ。
開会は六時からだと聞いているので。
その前には、園遊会を主催する皇帝もやって来る。
なのに。
僕は今頃になって起きた事件へ、さっきからずっと頭を抱えていた。
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『ねぇ、アスラン。明日帰国するのは聞いたけど。明後日は私の誕生日なのよ。だから、プレゼントは用意しなさいよね』
事件の発端は、パンプキン・プリンセスからの、この一言だ。
丁度、シルビア様やフェリシア様がね。
園遊会に向けて着替えとか。
そういう支度に入る、ちょっと前だった。
アリサとイサドラも、シルビア様とフェリシア様と一緒に支度へ入る。
そこは、まぁ、聞いていたし。
別に、それ自体は朝食の時にも聞いていたからね。
でだ。
僕がその事を、アリサから言われたのが。
今から二十分くらい前。
最初、午後はお土産も買いに行ったルネッサンスへ。
急いで行けば、開会にギリギリ間に合うか。
等との思惑は、しかしだ。
サンスーシ宮殿へ至る、一本しかない道路を埋め尽くしたような渋滞を見れば。
ダメもとで、近くに居たメイドさんへ尋ねもしたけど。
答えは予想を裏切らなかった。
明日は朝食の後で直ぐ、空港へ向かう。
と言うかさ。
午後は僕がルネッサンスへ、土産を買いに行った時も。
アリサは付いて来たんだぞ。
しかも、また服を一着買わされたんだ。
普通、此処までしたらさぁ。
誕生日のプレゼントを、改めて要求なんてしないよね。
なのに。
時間的に、もう無理も分かっている状況で。
シルビア様がね。
『アスラン。別に買いに行かずとも。プレゼントになりそうなものを。それを貴方は、持っているでしょう』
ナニそれ。
全然分かりません。
こうして、僕は時計の針だけが進むなか。
未だに、プレゼントを用意することが出来ないでいた。
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えぇ・・・僕は今、ティアリスに頼んで。
そうして、異世界へと身を置いています。
「プレゼント。シルビア様は、あぁ言っていたけど。それらしいものを持って来た記憶も無いよ」
異世界へ来る前。
僕は自分の荷物とか、全部ね。
だけど、それらしい何かは見つからなかった。
「マイロード。であれば、いっそのこと。アーツで作るというのは如何でしょうか」
「プレゼントをアーツで作る? ティアリスには何か案が在るの」
「マイロードは、ミーミルとエイレーネシア姫から。錬金術を学んだのではありませんか」
あっ!?
この瞬間、僕はプレゼントの確かな手掛かりを掴んだ。
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此処は引き続き、異世界の中です。
そこで僕は、さっきからずっとミスリルの生成に取り掛かっています。
アーツによる魔法金属の錬成は、そこで先ず、元になる金属が必要です。
細かな説明は省きますが。
ミスリルを生成するだけなら。
元になる金属は何でも構いません。
なので、今回は帝国の通貨を、百バリス銀貨を使っています。
工程は以下の通りです。
◆工程その一、錬金術に使う魔法陣を起こす。
◆工程その二、起こした魔法陣の中心に、元になる金属を置く。
※元になる金属を転化した結果の、そこで生成されたミスリルの量は、元となった金属の量と一致します。
なので、仮にミスリルを百グラム生成するのであれば。
必要な金属も百グラムという事です。
◆工程その三、魔法陣へひたすらマナを流し込んで錬成する。
大雑把に、こんな感じで生成出来ます。
生成されたミスリルですが。
見た目は、磨き上げたプラチナが近いです。
余談ですが。
僕が生成したミスリルは、指導に携わってくれたミーミルに言わせると。
限りなくオリハルコンに近い。
そう評価できるくらいの、つまりは質の良いミスリルなんだそうです。
まぁ、最初は元の金属を、錬成途中で消滅させてばっかりだったし。
原因は、流し込むマナのコントロール。
で、その最適な値を掴むのに、ざっと一万回くらいは練習したんだぞ。
そこから更に一万回くらい。
理解った事は、流し込むマナが最適の極みに近ければ近いほど。
生成したミスリルの品質も上がる。
反対だと、消滅するけどね。
ただ、その修行と研鑽の賜物。
こうして僕は、一度の錬成で、アリサへのプレゼントを作るために必要なミスリルを生成した。
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まだまだ異世界に身を置いています。
僕は今、生成したミスリルを、それを装飾品へと加工するべく勤しんでいます。
因みに、ミスリルは今さら言うまでも無く、魔法金属です。
そんなミスリルの金属としての強度ですが。
僕が把握している範囲で、手に入る鉱石や金属、或いは合金でも。
ミスリルには傷一つ付けられません。
ダイヤモンドでも、反対にダイヤモンドがゴリゴリと削られました。
ですが、それくらいの強度を持つミスリルは、これも簡単に言えば、ちょっとコツの要る特殊なマナを使う事で。
まるで粘土を捏ねる様に加工が出来るのです。
そうして、僕はアリサへの誕生日プレゼント。
ミスリル製のアクセサリーは、先に僕の騎士章で作った型を使って。
一先ず形だけは出来上がりました。
因みに、型の方も、材質はミスリルです。
手持ちの百バリス銀貨は、半分くらいに減りましたけどね。
完成したアクセサリーですが。
まぁ、このまま渡しても、それで十分に価値あるプレゼントにはなるでしょう。
なにせ、ミスリルですからね。
この時代では、製法も理論も失われている。
価値がいくらになるのかなんて、想像も出来ません。
と言うか、想像・・・した事もありませんね。
僕は一先ず、形になったプレゼントへ。
そう、此処からが重要なんです。
だって、そのために。
だから、ミスリルを生成したんだし。
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次に用意したのは、今回とは関係ない所で。
けど、今も続けている錬金術の練習。
そこで作った後は放置していたクリスタル・・・・の山。
因みに、クリスタルの錬成は、その材料がマナだけです。
簡単に言えば、起こした魔法陣の中で、マナを圧縮して結晶化させるだけ。
魔法陣を維持しつつ。
同時に結晶化させるだけのマナの圧縮と。
ですが、まぁ・・・一度に多数の魔法陣を扱える僕にとっては、こっちは簡単でしたね。
売れば一儲けも考えられるけど。
別にそんな事をしなくてもさ。
僕の生活は、王宮に住むようになってからは特にね。
毎日が贅沢だって思っているくらいだし。
等と、そんな事に関係なく。
実は、このクリスタルの山。
だけど、別にゴミという訳でもないんだ。
山になったクリスタルは、それもね。
そこそこ使える様になった刻印術式を、更に使える様にするための練習に使っています。
――― 刻印術式 ―――
今現在で、僕が理解っている事は、以下の通りです。
◆錬金術においては、物質を転化する際、錬成のために流し込む体内マナへ。
その体内マナに予め、生成される物質を構成するための、必須な術式を付与(刻印)することも、刻印術式という。
◆刻印術式は更に、魔法金属や白金、金、銀へ対しても刻むことが出来る。
ただし、刻める内容は非常に限定される。
◆魔力結晶石へ、特定の事象干渉を起こす魔法式と発動式を刻む術もまた、刻印術式という。
まぁ、以下、僕がやっているクリスタルへの刻印術式は・・・・簡単にしか説明出来ませんのであしからず。
詠唱式、または魔法式と呼ばれる部分を、言葉ではなく、一つ或いは複数の魔法陣(紋章)に置き換えて、その魔法陣をクリスタルに刻印する。
この技も秘奥の一つで、魔紋刻印と呼ばれる術です。
そこで、ファイア・アローの魔法式だけを刻印されたクリスタル。
このクリスタルを使っての事象干渉は、マナさえあれば可能なのです。
ただし、体内マナを自在にコントロール出来る事が必須ですが。
なので、誰にでも扱える。
或いは、特定の誰かにしか使えない等。
そういった条件を織り交ぜた発動式までを刻んで。
後は魔紋刻印と呼ばれる秘奥も含めて。
これが今時点で理解っている、僕が使える魔力結晶石への刻印術式となります。
まぁ、僕も未だ完全には会得していないので。
刻印術式に関する、定義や解釈を一つには出来ていません。
僕が未だ発見していない刻印術式の可能性は、恐らくもっと在る筈ですから。
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僕はもう一年ほども前ですが。
エレンから、刻印術式の起点とも言える、創生刻印を焼き付けして貰いました。
けど、創生刻印のことはね。
最初、僕はミーミル先生の座学から時間をかけて、そうやって自分の手で習得する。
本当は、こっちだったんですよ。
ミーミル先生も、そのつもりだったしさ。
うん・・・・あの時はねぇ。
僕もミーミル先生から、秘奥なんて聞いたからさ。
もう絶対、会得しようって燃えていたんだよ。
それこそ、その日は会得するまで異世界から戻るつもりも無かったし。
なんだけどねぇ・・・・・
その時にも居たエレンからね。
『ん? アスランさぁ。錬金術と刻印術式がやりたいの? で、だからつまんない本をいっぱい読まないといけないんだ。ねぇ、そんなことしなくてもさぁ。エレンが魔法陣の時みたいにぃ♪ パパっと教えてあげようか♪ 』
えぇ、もう此処から先はですね。
僕とエレンの相変わらずな流れですよ。
アーツの時もそうだった。
僕の興味津々は、エレンが簡単に見せてくれたんだ。
で、エレンが僕に教えていなかっただけで。
それも魔法陣だぁ~とかなんとか・・・・・・・
最後、エレンからは、大人になったら僕の子供を産ませるのを条件に。
まぁ、エレンがずっと僕の子供を産みたいって。
それはもう口癖みたいなものでしたしね。
なので、まぁ・・・良いかなと。
一応、僕が大人になるまでは待っててくれるって、そこは聞いてくれたし。
だから当時の僕は、それで後は何も迷わなかったんだ。
ところが、この時のエレンから、創生刻印を焼き付けして貰った直後。
突然姿を現したリザイア様が、それはもう鬼の形相と言うべきか。
エレンは、リザイア様から半殺し・・・・な、お仕置きをされました。
容赦なく、娘の顔にグーですからね。
それもいっぱい。
リザイア様の拳が、エレンの血でぐっちゃぐちゃですよ。
はい、もう赤黒く染まってました。
しかも、ぐったりしたエレンの髪の毛を掴んで。
腹や胸への膝蹴りもいっぱい・・・・青痣なんか軽く通り越して骨の折れるというか、潰れるというか、砕ける音がホント、恐ろしかった。
詐欺師リザイアは、実は物凄く怖くて強かった。
あの光景を、一緒に叱られた僕は、エレンへのお仕置きが終わるまで。
ガクガク震えながら正座で見届けました。
何処かで生きている僕のお母さん・・・・リザイア様じゃなくて良かったぁ。
エレンが虫の息になった後。
怖い顔が収まらないリザイア様から。
僕は、ゾッとする声で『誰でも使えるのは世界が滅ぶからダメ』だと。
・・・・・アンタが誰でも使えるものを一個でも作って見な。それが発端となって。この世界は滅ぶさね・・・・・
あんな恐ろしいリザイア様は初めてです。
僕は『絶対作りません』と、早口で何度も。
途中、舌を噛んでも『絶対作りません』を繰り返した。
もう首だって必死に縦へ振りましたよ。
リザイア様は、しばらくじっと睨んでいたけど。
それからフンッて鼻を鳴らしたよ。
『じゃあ、死にかけているバカ娘。アレ、あんたが治してやりな』
本当、エレンが死にかけている所なんて。
治癒の後で、全快したエレンは、だけど、途端に僕にしがみ付くと全然離れなくなった。
もう、ガクガクブルブル震えると、歯もね・・・カタカタがずっと聞こえていたんだ。
付け足し。
幻じゃない本物のミーミル先生までが・・・・えぇ、巻き込まれましたよ。
余りも惨たらしい姿になったので。
ただ、それ以上はミーミルの尊厳にも関わるので、控えさせて頂きます。
けどまぁ、そういう経緯もあったから、という訳でもないのですが。
第一、僕も、誰でも使えるものなんてさぁ。
言われるまでも無く、危なっかしいから作る気も無いよ。
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そうそう。
刻印術式の、超がいっぱい付くくらいの劣化版。
と言うか、あっちは銀板への刻印なんだけどさ。
何がって?
そんなの、ものぐさフリーダムな婆ちゃんが作った魔導器に決まってるじゃん。
婆ちゃんの作った魔導器は、内部に在る銀板に。
もう、突っ込みどころが満載の刻印がね。
でも、まぁ・・・あれで一応、と言うかギリギリ、辛うじて? 魔導が使えるんだよ。
刻印された古代文字は、えぇ・・・全滅なほど誤字だらけです。
見た瞬間、はぁっ!?ってなりましたよ。
そだね。
円環と、そこから繋がる線、と言うかマナの循環路は繋がっていたので。
他にも、流石にこれは大丈夫だったかと思える、大きくて簡単な紋も・・・だって菱形だし。
婆ちゃんの作った魔導器は、厚さ1センチ程の銀板に、円環と、その内側に菱形の紋。
菱形の紋は、中心部分の凹みに、クリスタルを設置出来る様になっている。
大きな菱形の紋は、そこに誤字百パーセントの古代文字・・・・そこが全部正しかったら。
僕でも使えた筈なんだ。
何が悲しくて。
誤字百パーセントにしたんだよ。
だけど。
円環と菱形の紋。
そこだけは合っていたから。
クリスタルさえ在れば。
そんな婆ちゃんの魔導器は、スイッチをオンにすると、先ず銀板に刻まれた刻印が、術者の体内マナを取り込みます。
取り込まれた体内マナは、そこからセットされたクリスタルを触媒にして、属性色を伴うマナ粒子発光現象を起こします。
なお、ミーミル先生は、欠陥品の詳細な説明はしたくないのか。
たぶん。
そのくらいは、自分で答えに辿り着けって・・・・何となくだけどね。
だって、リザイア様もさ。
『あんたさぁ。全部、手取り足取りなんて。それじゃあ、勉強の意味がないじゃん』
フンッ、こんな風に言われたらね。
えぇ、僕だってこのくらい。
独力で解き明かして見せますよ。
・・・・申し訳ありません。
話を戻して、纏めます。
要するに、僕は今も続けている錬金術の練習で。
そこでは、ミスリルの生成もしていますが。
それとは別に、体内マナだけを使うクリスタルの生成。
今も体内マナの総量を増やす修行は続けていますので。
寧ろ、クリスタルの生成は、その修行に打って付け。
で、そうして作り出されたクリスタルを。
今度は、刻印術式の練習用の材料として使っている訳です。
まぁ、クリスタルの純度によって。
刻める量が変わりますし。
純度が高い方が、多く刻めます。
後は、刻む際に使う文字。
古代文字でも良いんだけど。
エレンたちが使う、なので此方も一先ず精霊文字とでも言いましょうか。
精霊文字(仮称)の方が、刻印術式との相性が良い。
此処はミーミル先生が教えてくれました。
代わりに、概念の異なる文字なので、勉強も困難でした。
特にエレンからは、『そんなの、言葉が通じるんだからさぁ。勉強する必要ないじゃん♪ エレンも使わないよ♪ 』とね。
あいつは、やっぱりバカでした。
なので、僕は精霊文字を、リザイア様から習っています。
最初、ダメかなぁ・・・って、思っていたのですが。
リザイア様は二つ返事で、それで今も、分からない所は教えてくれます。
『まぁ、あれさね。アンタはバカ娘の夫なんだ。で、アタシの旦那へ手紙も書く日が来るだろうさね。そんで代筆も考えたけどねぇ。面倒だし、自分で書きな。っつう訳だから、文字は教えてやるさね』
思う所は在りますが。
まぁ、エレンなんか比べられない程。
リザイア様からの指導は、理解りやすいです。
こうして僕は、習った精霊文字を使った刻印術式の実践。
魔力結晶石へ魔紋を刻む練習を続けています。
我ながら、無駄の無い利用方法ですね。
まぁ、山になった刻印付きのクリスタルは、そのうち土にでも返しますよ。
補足を一つ。
刻印されたクリスタルですが。
一度刻むと、書き換えも、消去も・・・・全く出来ませんでした。
なので、万が一を考えると。
だから、土に変えた後で土に返すんですよ。
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まぁ・・・・あれだね。
まだまだ修行中で、けど、そこにもエピソードがある秘奥技術。
僕は、そんな秘奥技術を使って。
誕生日プレゼントを要求したアリサへ。
見た目は騎士章と酷似している、だけど、実用性の高いお守りを贈ろうと思ったんです。
何だかんだで、誘拐もされたしさ。
僕の目が届くところに居れば、その時には守ることも助けることも出来るけど。
シャルフィへ帰国した後は、それに、アリサも故郷のアメリアへ帰るんだし。
だからね。
護身の術式を刻んだ金色のクリスタルを、大きさは直径 二ミリくらい。
金色と言っても、不純物が混ざっていないので。
何処までも透き通った感のある綺麗なクリスタルですよ。
それを、ミスリルで作った騎士章の中心。
カミツレを模した花の中央に、丸く小さなクリスタルを埋め込んだ後。
クリスタルが抜け落ちない様に。
三分の二くらい埋め込んで、縁をミスリルで隙間なく埋めて押さえました。
仕上げに装飾の細かな部分を整えて。
これで、僕の手掛けたお守りは、ようやく完成です。
この時の僕は、自分はアリサの身を守るお守りを作って贈ったに過ぎない。
しかし、傍目には騎士章を贈ったかにも映る今回のプレゼントへ。
後の僕は、まさか、そんな意味合いが含まれていたなどと。
知った時にはもう後の祭りでしたよ。