第37話 ◆・・・ 有能とは=私を飽きさせない玩具である ・・・◆
今回もまた、主人公は出て来ません。
ですが、サブタイトルが誰の言葉なのかを想像して頂ければと思います。
今宵の密会は、参加したエマーリンクとベイラートの二人とも。
今日はハルバートンから、普段の勤務を終えようとした頃に、突然呼び出されたのが始まりである。
指定された時間に此処へ来た俺とベイラートの二人は、そこで待っていたハルバートン様と他に二人。
何れも上官には違いないディスタード様とウォーレン様を映して。
胸内に、今宵の密会が何か底知れないを、ゾッとする寒気の様にも抱いたのだ。
それくらい、今の三人ともが、普段は見る事の無い厳しい顔をしていたことへ。
同時に、此処にこうして姿を見せている事には、直接手渡された書類へ目を通す前から。
既に悪い予感しか抱けなかったのである。
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ディスタード様から直に受け取った機密の報告書。
そこに記された内容は、俗にオスカル皇子派とでも言おうか。
オスカル皇子を抱き込んでいるボルドー宰相と、その宰相とは癒着も疑われるヴァジーナ元帥に関して。
報告書には、更に嫌な予感しかしない気になるワードが幾つもあった。
それと、オスカル皇子派が、近く何かをやろうとしている疑いが強まった。
・・・・・もしかすると、ディスタード様は。だから、軍を表向きには退役したのか? ・・・・・
俺の疑念は、突然の退役をしたディスタード様に関して。
ユフィーリア様からは、直々の極秘任務を命じられたことに絡む。
『卿には以後、この任務に関してのみ。私とハルバートンの二人以外への口外を許可しないものとする』
俺に与えられた極秘任務とは、ディスタード子爵位を継いだ。
とある元軍人男性の監視任務だった。
監視はあくまで、表向き・・・・だがな。
とは言え、そのために。
俺はディスタード子爵領の生産力から経済実態までの調査・・・・等々。
挙句はマイセンの郷にある酒場で、週末限定のバーテンダーまでしていたのだ。
今日は実家の隠し部屋で、ユフィーリア様から、此処からは手伝って貰うと。
俺は当然と頷いた後で、自然、視線は横目に友であるベイラートを映していた。
同時に、ベイラートからも横目の視線を向けられていた事に気付いた俺は、ディスタード様のことは一先ず脇へと置いた。
それよりも。
俺もベイラートも理解っている。
確実に起きるであろう厄介事へ、しかし、俺の胸中は、そこで個人的な事情が、故に大声で嘆きたい気分になっていた。
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互いに目配せの様な視線を交わした後。
先にベイラートからの小さな頷きが、理解っている俺の視線を、再びユフィーリア様へと向けさせた。
「ユフィーリア様。小官とベイラートですが。それで何をすればよろしいのでしょうか」
「うむ。だがその前に。二人とも、この報告書の事は固く唇を結べ。卿らの部下は勿論、此処に居ない他の諸将へもだ。よいな」
「「ハッ」」
俺とベイラートの揃った返事も。
だが、これではっきりした。
これから起きる厄介事へは、此方の戦力も多くは投入できないのだと。
少数精鋭・・・・等と言えば聞こえは良いのだろうが。
実態は、ユフィーリア様の部下達の中でも。
特にお気に入りの玩具達で何とかする・・・・だな。
「卿ら二人も。目を通したなら察していると思う。先の園遊会では、それでアゼルの働きがあったからこそ。オスカルを蹴落とし、ボルドーの思惑を潰せもした。だが、今の奴は宰相として一層色々と追い詰められている」
そりゃあそうだろう。
ボルドー宰相の大失態と言えば。
先ず、癒着の在るヴァジーナがやった腐れ外道な蛮行に絡んでは、数々の証拠へ全てが捏造だと擁護した事だ。
そのため条約機構の議長職へ、あの聖女から不信任を叩き付けられた挙句。
それがほぼ賛成一致で職を解かれた事実に関しては、報道へ圧力をかけるなど必死に誤魔化したのだ。
更に、領有権巡りでは合衆国との摩擦が絶えないシレジアだな。
宰相は、どうにかして自分の代で決着を付けようと。
それが、議長職を解任された件を引き金に、強硬路線へと切り替わった。
もっとも。
この春に行われた民間交流では、稚拙と言うか陳腐と言うべきか。
・・・・・教会と第三国の検査証明書付きで。それでどうやって麻薬の持ち込みが出来ると思っているのだ ・・・・・
因みに、交流事業でやって来たシレジアの学生達は、宰相の陰謀に巻き込まれた被害者としか言えまい。
これも報道機関には圧力が掛けられた。
相当焦っているのだろうが。
しかし、そうして取った人質は、返ってシレジアの大反発を生んだ。
結果。
シレジアは早々にシャルフィ王国への帰属を、正式発表したのだ。
そのシレジアは、シャルフィ王国とアルデリア法皇国との間で結ばれた新条約。
これによって、アルデリア法皇国が大使館を設置した事もある。
帝国は、シレジアに対して、今後は迂闊な行動がし難くなった。
ボルドー宰相の失態は、こうしてまたも積み上がったのだ。
報道には圧力を加えられても。
議会や、門閥貴族たちの糾弾は、それはまた別の話だ。
それでも、奴がまだ宰相でいられるのは。
一つはオスカル皇子が擁護した事。
もう一つは、皇帝に意欲が無いのか・・・・一々問わぬ等と言わせたことにある。
オスカル皇子の母親の実家が、門閥の一つであることもだが。
おかげでボルドーの奴は、宰相の地位に留まれた。
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「フッ、エマーリンク。卿はアゼルに鍛えられただけはあるな。だが、アゼル程には顔を作れぬところが。まだまだ未熟だな」
「ハッ、精進します」
俺の思考・・・・というよりも。
これはディスタード様から意識するようにと、何度も言われた。
俺はどうも、顔に出やすいらしい。
よし、此処からは一層意識して臨むぞ。
「そういえば。なぁ、アゼル。エマーリンクだが・・・・いつ挙式の報せを貰えるのだろうな。店に出ている幼馴染だったか。確か一昨日はホテルで泊まりのデートだったのだな」
「!!」
この瞬間。
俺の作り直した表情は、跡形もなく消し飛んだ。
「アゼル。お前の仕事ぶりは流石と褒めてやる。部屋に入った後で、シャワーをせがむ幼馴染をベッドに押し倒した等とな。しかし、幼馴染の方もだ・・・・中々に婀娜やかな声をしていたな」
何故それを!?
俺の反射的な視線は、それで不敵に笑う鬼畜皇女の隣・・・・・・
目が合った瞬間。
ディスタード様は、殊更わざとらしい呆れの溜息を吐いて見せた。
「エマーリンク。お前が部屋の予約を一週間も前からした。それで突き止めだけでなく。盗聴器まで仕掛ける猶予を、余裕で与えたんだ。次からは当日の三時間前に予約を取るか、後はラブホへ行け」
ハルバートン様とウォーレン様の二人とも。
聞かなかったと言わんばかりの無表情がな。
それでベイラートだけは俺に視線をくれたが。
「お前が俺に金を貸してくれと相談したのは、だからか。普段から貯蓄の癖を付けるのだな」
はははは・・・・・オワッタぜ。
そう、俺は幼馴染と付き合っている。
と言うか、店を継ぐ気の無い俺と違って。
お袋のバーテンダー姿に憧れていた幼馴染のシェルファニールは、俺が軍の士官学校へ入学した後。
それからだと聞いているが。
シェルファニールは、親父とお袋の下でバーテンダーの修行を積みながら。
今じゃすっかり看板娘的なバーテンダーとして、ファンを多く抱えているのだ。
馴れ初めは・・・・言いたくないから聞かないでくれ。
「ディスタード様・・・・可愛い部下へ対して。この仕打ち。酷いと思わないのですか」
「なぁ、エマーリンク。お前もユフィーリア様がどういう御方なのか。それは今更だろう。ただその件ではな。避妊も無しに何時間もイチャイチャし尽くした全容を聴いたユフィーリア様から。頗る楽しめたと褒美を預かっている」
ディスタード様は、そのままジャケットの胸の内側から白い封筒を一つ。
「中身はユフィーリア様からの楽しませて貰った代金だそうだ。良かったな」
封筒を受け取った俺は、雰囲気的にも今直ぐ開けろだな。
「・・・・こ、こんな大金」
中身は小切手が一枚。
額面は、俺の年収に換算して・・・・十年分はあったぞ。
さっきからもう、顔なんか作れません・・・ってくらい驚かされた俺を、ユフィーリア様だけが、楽しそうに笑っていたよ。
「エマーリンク。それだけあれば直ぐの挙式も叶うだろう。ついでに、死んだ後でも幼馴染が生活に困る事はあるまい」
「では、小官は絶対に死ねません。シルフィと二人、人生を大往生して見せます」
「おい。それよりもだ。式には勿論、私も呼んでくれるのだろうな。精々、後世へ語り継がれる祝辞を述べてやろうと思う」
すっげぇ~不敵な顔で言いやがった。
それに、あぁ・・・あの感じは、ディスタード様もやられたんだろうなぁ。
俺は、ディスタード様が向けてくれる。
憐れみとも同情とも言える顔を映して。
逃れられないを悟ったよ。
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終わった後でなんだが。
ユフィーリア様は今夜の密会で、俺を使って先ずは余計な緊張を取り除いたのだ。
まぁ最後、ユフィーリア様から余興だと。
俺にとっては罰ゲームでしかなかったがな。
俺は未だ営業中のバーで、仕事中だったシルフィへ求婚した。
と言うか、させられた。
仕事中にまさかって・・・・シルフィだって初めて見たような顔で驚いていたのだ。
けど、シルフィは驚いた後で。
もう殆ど即答だったよ。
『私は、ウォルフの妻になります。やっと言ってくれたね』
親父とお袋は、その日のカクテルを全部無料にしたくらい喜んでいた。
代わりに、シルフィを狙っていた男どもからの視線がな。
マジで、殺されそうも思ったよ。
だが、そんな状況を、これを命じたユフィーリア様が、このタイミングでハルバートン様達を引き連れての登場だ。
と言うか、狙っていたのだがな。
『エマーリンクは私の自慢できる数少ない部下でな。だが、そう遠くないうちには出兵もある可能性が浮上した。故にな。それよりも前に、はっきりして来いと背中を押したのだ。二人の婚儀は、これを私が証人となろう。近く奥方と呼ばれる可憐な恋人殿よ。こいつは人柄も明るく根が良いのはそうだが。時々無茶をしてくれるのでな。精々しっかり繋ぐか尻に敷くとよい』
はははは・・・・・
元帥府じゃ、こんな台詞を聞いたことなど・・・・一度もねぇよ!!
俺は、平伏すと涙を流して感動する両親と、平伏した後で直ぐにユフィーリア様から手を取って起こされたシルフィの、あんな幸せな顔を映して。
情報操作によって作られた、気高く美しい獅子皇女を演じるユフィーリア様の。
本心は、これを頗る楽しんでいる悪魔だとは、口が裂けても言えなかったよ。
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時間は少し遡る。
エマーリンクを揶揄って楽しんだ後。
ユフィーリアは、この場に集めた面々を前にして。
「ハルバートン。それからウォーレン。我らの敵は、その中に808が居る。この事は、もうかなり前からアゼルの内偵で判明していたのだが。故に雲隠れされたままの内は、私もアゼルへ伏せるように命じていた」
私のこの発言。
ハルバートンもウォーレンもだが。
先ずは、予想を裏切らない顔をしていた。
「エマーリンクとベイラート。卿らは808と言われても。それで何のことかと思うだろう。当然だ。奴らの存在は卿ら二人とも。たぶん未だ士官候補生となる前に葬られたのだからな」
私はそこから。
特殊作戦群と呼ばれる部隊には、コードネーム808と呼ばれた者達が居た事を。
ただ、奴らが恐ろしいまでに残忍な存在である程度を、シルビアの両親を殺した件は伏せたままで、一先ず語ってやった。
「808は、色々とやり過ぎてな。そのため、軍部の恥を晒すわけにもいかない。だから、極秘の内に葬られた・・・・筈だった」
奴らが生きている。
これは発覚後も続けられたアゼルの内偵で、より確実だと分かった。
「アゼル。此処からは貴様に説明を任せよう」
「分かりました。と言っても、現在の808が何処に拠点を置いているのか。それは未だ確定に至っていませんがね。ただ、ヴァジーナ元帥の直属で動いていると。此処までは確証が持てました」
説明を引き継いだ俺は、それで真っ先にハルバートン様から睨まれた。
「ヴァジーナは、奴は私の元部下だった。将来を有望出来る者で、私もヴァジーナの将来を期待した。だが、ヴァジーナは何処か陰のある男でもあった。同時に、現在の帝国の在り様には。特に特権階級というものを嫌っていた様にも思う」
「ハルバートン様。私にもヴァジーナ元帥の腹の奥は分かりませんが。ですが、判明した事を繋げていくと。仮にクーデターを起こすと企てても。ただ、その可能性は捨てられません」
此処に用意した俺の報告書。
ルテニアの遺跡から持ち去られた何かは、恐らく人間であった可能性がある。
調査班が回収したアーティファクトの形状と、状態等からの推測だが。
先ず、大人が一人収まる大きさで、素材などは不明だが、内側にはクッションの様な物が使われていた。
アーティファクトの外側を構成する機械の類などは、これは軍の調査班が今も調べている。
俺の部下達は、それに携わる者達の一人から、撮影された写真は勿論。
クッションに刺さる様にして付着していた一本の毛を入手した。
で、俺はそれを国外の研究機関に持ち込んで調べさせた。
結果は、人間の毛髪だった。
それも、生きていた可能性の高い毛髪だったのだ。
大陸でも此処にしかない先進の医療研究機関で。
そこで最先端の遺伝子調査までしたのだ。
そうして判明した事実。
俺達とは遺伝子の型が異なる。
詳細は機密故に伏せるが。
今の時代で確認される型とは、明らかに一致しなかった。
この事実を含めて、あくまで、俺の推測だ。
発見されたアーティファクトには、古代の人間が収められていた。
しかも、俺達の知らない技術か何かで。
ずっと生きたまま収められていた・・・・のではと。
突拍子もないのは、それは俺が一番に理解っているのだ。
話を先に進めよう。
買収した調査班の一人から得られた幾つもの情報を纏める過程で。
ルテニアの遺跡は、先ず何かの研究施設だったのではないか・・・が有力視されている。
フラスコやビーカー。
注射器から大掛かりな手術でも出来そうな設備。
発見時の状態は悪かったが、一部の修復過程で、そうした可能性が浮上しているのだ。
薬物らしいものまで在ったそうだが。
どんな薬なのかは、未だに解明できていない。
ヴァジーナ元帥は、一体なにを手にしたのだろうか。
疑念を抱く俺の、推測が多分に含まれた説明へ。
元は部下という事もあるのだろう。
ハルバートン様の表情は、険しい中に複雑が混ざっていた。
「ディスタード。ヴァジーナが仮にクーデターを企てているとして。その可能性が捨てられない理由はなんだ」
「ハルバートン様の疑念は当然だと思います。ですが、ヴァジーナの身辺を洗った私は、彼と繋がりが深い人物として。ルーレック社のラドクリフ専務が、どうやら独自の施設を複数持っている。中には兵器工廠まで在ったのですよ」
「なんだと」
「あぁ、ですがね。兵器工廠ともなれば規模は決して小さくありません。しかも、帝国では必ず認可と定期の査察が入ります」
「・・・続けてくれ」
ハルバートン様は、俺の察して欲しい所に気付いてくれた。
帝国内に軍事関連の兵器工廠を建てるためには、必要な手続きが幾つもある上。
認可を受けた後では、年に数回の査察が必ず行われるのだ。
ラドクリフが個人的に作った所で、明るみになるのは時間の問題だ。
秘密裏に作って稼働させれば、だが、それこそリスクが大き過ぎる。
もっとも。
そうであったのなら。
うちの獅子皇女様が、嬉々として機甲師団を派遣しただろうがな。
なにせ、かつては陣頭に立って帝都を強襲した前科持ちだ。
違法な秘密工廠だと判明しただけで。
嬉々として攻め込むのは明白だ。
「ラドクリフ氏を洗いながら。彼の動向を追った事で判明したのは。他所の企業が所有する兵器工廠や研究施設を、どうやら個人的に買収した上で使っている様なのです」
「なるほどな。だが、それとて容易ではないだろう」
「えぇ、ですから。オスカル皇子とボルドー宰相が関わっているんですよ」
兵器工廠の買収なんざ。
それこそ業界もだし、関係各所へ直ぐに知れ渡る。
「ラドクリフ氏は、ダミー企業を幾つも持っています。そこへ宰相とオスカル皇子ですからね。しかも、帝国内の軍需産業は、ルーレック社の一人勝ちな状況が。このままだと遠からず他所のメーカーは全滅ですよ」
そんな状況であれば、撤退を考えている所などもある。
それをラドクリフ氏のダミー企業が買い取って、手続きは宰相が通過させる流れも。
査察官の買収も考えられる上に、そうでなくとも、査察対策はしている筈だ。
「いつ頃からとは言えませんが。最近もヴァジーナ元帥が管轄に置く演習場では。そこで人型の兵器が、運用試験をしているらしい情報も掴みました。実際、それらしい兵器の存在も確認済みです」
「ディスタード。ヴァジーナに協力しているラドクリフのそれは。此処までを聞く限りで。ルーレック社とは関係ない所で行われている様に思えるのだが」
「えぇ、ただ、ラドクリフ氏が自社でしない理由は分かりませんがね。なにせ此方は深刻な人手不足のせいで。だから手が回っていません」
「分かった。クーデターの懸念も、その人型の兵器があるからだな」
「はい。情報が足りていないため。それで今回の報告書へは載せていませんが。人型の兵器に関しては、歩兵用の鎧とでも言いましょうか。ですが、装備した歩兵一人で戦車とも張り合える。一個大隊分も用意できれば・・・・帝都を陥落出来るでしょうね」
言って置くが、この部分には不確かな点が多くある。
装備品なのか、戦車や装甲車のように乗る兵器なのかも分かっていない。
全身を装甲で固めた鎧の様には見えたが。
後は背中に装備すると、肩に乗せて使用する砲も見ている。
他にもガトリング砲を内側に装着した盾もあった。
人型の足は、人間離れした高い機動性も見ている。
分かっている範囲で、時速80キロは出ていた。
ただ、これが最高速かは判明していない。
「ヴァジーナは、その様な兵器を作らせていたのか」
「恐らくは。ただ、この件は性能に関して。特に不確かな点が多かったのですよ」
別に、俺は意味深ワードを投げたつもりも無い。
だが、真っ先にユフィーリア様から鼻で笑われた。
「アゼル。貴様は私にまで何か隠しているな。その人型兵器とやら。過去形を使ったのは、何か掴んでいるからであろう」
「掴んでいるというよりも。獅子旗杯の決勝リーグからは参戦する様です。特殊作戦群の兵器開発局。そこで作られた新型の試作品としてですが。ただ、まぁ向こうの狙いは別にして。此方はその人型兵器を間近で見られる機会を得られました」
俺が掴んだ情報は、この瞬間。
ユフィーリア様を不敵な表情へ。
だが、何か新しい玩具を見つけた時の、そんなときに見せる恐ろしくも楽しい瞳をしていた。
2018.08.27 誤字と脱字などの修正を行いました。