第27話 ◆・・・ 獅子旗杯 ⑨ ・・・◆
僕は当面だけど、イサドラの上司となった。
その結果、何故かパンプキン・プリンセスは面白くないを露骨にしている。
厄介事を抱えてうんざりな僕と、そんな僕に目を座らせるパンプキン・プリンセス。
女性って、ホント、意味不明です。
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獅子旗杯はベスト16が出揃った。
抽選は明日。
それともう二つ。
一つは、明日から決勝まで、皇帝が見に来るそうだ。
もう一つは、帝国正規軍によるデモンストレーションがあるらしい。
まぁ、皇帝が主催する獅子旗杯なんだしさ。
今まで見に来ていなかった事の方が、寧ろ問題だったと思うよ。
で、正規軍の示威行動もね。
あれでしょ。
帝国最強~~~~とか言いたいんでしょ。
けどまぁ、正規軍のイベントのおかげでね。
抽選は正午で、試合開始も午後から。
僕は午前中を使って。
光剣の所有者登録。
その手続きをして来ます。
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「それでは、アーティファクトの所有者変更について。必要な手続きは完了しました。こちらが控えになります。」
帝都にある大聖堂で、今から約一時間前。
僕とイサドラは、神父様も伴うと。
イサドラが持つ光剣。
その所有者登録の変更手続きを行った。
と言っても。
窓口で担当の方から渡された書類へ、僕とイサドラが必要事項を記入するのと。
後は事務手数料として、一万五千バリスを支払うだけ。
うわぁ・・・・事務手数料、高過ぎ。
なんて思っていたら。
後から神父様がね。
『事務手数料の半分は、大聖堂への寄付金のようなものですよ』
あぁ、なるほどね・・・・って。
それでも高くないですか。
ただ、光剣は無事、僕の所有物になりました。
余談ですが。
この件については、レーバテインから、僕には既に多くの剣がある。
なのに、また増やして。
全部使えるのかと。
だよねぇ~~~・・・・・・どうしよ。
今はティルフィングを腰から下げているけど。
それで、コルナとコルキナも、普段は金属の柄なので、かさばらないし。
カリバーンはね。
獅子旗杯が始まってからは、ティルフィングを装備しているだけで。
いつもは装備しているんだよ。
まぁ、それでティアリスが、僕の隣に姿を見せているんだし。
レーバテインは、稽古なら剣としても使っているけどさ。
普段は装備もしていないんだよね。
だって本人が、『あたしは王様にね♪ 何時でも何処でも合体していたいから』って。
ただ、何時でも何処でもは無理なので。
僕は休憩時間中。
必ず一度は、抱き人形にされています。
と言うか、剣なのに装備もしないレーバテインには、だから、これくらいの事は許しているんです。
ミーミルは僕の腕から離れないしさ。
ティルフィングは、カリバーンもあるから装備しないことも多いけど。
でも、ティアリスには毎日の様に膝枕をして貰っているからね。
要するにスキンシップ・・・・で、良いんだろうね。
僕の一番はティアリスだけど。
そんな事に関係なく。
出来るだけ皆をね。
平等にはを、意識しているんだよ。
しかし、こんなに剣ばかり増やして。
百花繚乱もあるのにね。
僕、全部を一度には、無理だろうなぁ・・・・・・
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コロッセオへ到着した後。
僕とイサドラは、先ず神父様を貴賓室へと送り届けた。
まぁ、こんな所での襲撃とかはね。
そういうのは、神父様も無いって思ってたけどさ。
だからと言って、護衛を付けないのは、これも不味いんだよね。
今日からは皇帝も見に来るせいか。
貴賓室は、昨日よりも大きな部屋へ。
僕とイサドラが、神父様を送り届けた時には、皇帝とシルビア様達が楽しそうな雰囲気で。
耳に入った会話は、声が弾んでいたよ。
ただ、部屋を後にしようとしたら。
パンプキン・プリンセスが小走りに近付いて。
『今日は貴方と一緒に居るから』
試合は午後からだというのに。
僕は、厄介事と面倒事を、その両方を同伴することになりました。
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選手控室へ顔を出した僕を、まぁ・・・・このオッサン。
二人を見たら、間違いなく、何か言うだろうとは思っていた。
「おぅ、今日は両手に花じゃねぇか」
「挨拶無しで。いきなりそれですか」
「まぁ、イサドラの方はな。そっちは昨日の内に聞いていたからな。そんで、似合いのお嬢様の方は誰なんだ」
「ルーレック社のご令嬢ですよ」
「へぇ、その可愛い子がねぇ」
「ただの知り合いなので。手を出したければどうぞ」
「お前。今ので睨まれているぞ。その嬢ちゃん。どう見てもお前に一途じゃねぇか。無下にするんじゃねぇ」
睨まれていると言われて。
それで視線を向ければ。
何故か今度は、真っ赤になって俯いているし。
で、アリサの隣にいるイサドラがね。
まぁた、何か企んでいそうな。
そんな悪徳な笑みを浮かべていたよ。
こいつはホント、狡く計算高い女だからね。
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ステージの上では、帝国正規軍による派手なデモンストレーションが続いている。
でも、素手による軍隊式格闘術と、剣や槍を使った演武とか。
練度が高いのは、互いの息の合った打ち込みを見ればね。
毎日欠かさず鍛えているくらいも分かったよ。
そうそう。
背が高いだけじゃなく、身体そのものが大きいというか厚いというか。
帝国正規軍の元帥で、ハルバートンという軍人さんの演武。
その人は、両手で扱う大剣なんかよりもずっと大きい剣で。
自分に向かって進んでくる戦車を、正面から縦に真っ二つにしたんだよ。
もう、コロッセオは大盛り上がりでさ。
見ていた僕も、化け物って思ったくらい。
それくらい凄かったんだけど・・・・ね。
隣のアリサが、『あの戦車。確かゼータⅣだったと思うけど。一両で六億バリスはするのよねぇ。勿体無いと思わないのかしら』って・・・・えっ!?
レートがあるから正確には異なるんだけどさ。
それでも、六億ドルだと思えば・・・・・カーラさんの怖い顔が目に浮かんだね。
そんな帝国正規軍による贅沢なデモンストレーションですが。
指揮を執っているのが、あのヒョウ柄皇女様。
もとい、獅子皇女と名高いユフィーリア皇女殿下なんだよな。
付け足しで、皇女様は右手に鞭を握るとね。
もう、ステージの上で打たれる兵隊さんが何人も・・・・なのに、観客席はさ。
その一部・・・・だと思いたい。
打たれる音が鳴るたびに、凄~く盛り上がるんだ。
カシューさんまで、『あれはもう、ご褒美だな』とかね。
こいつら・・・・揃いも揃って、変態だったよ。
僕はそれをね。
今日もテイクアウトのフライドポテト。
そこへ、今日は今からビーフステーキ串も付け足して。
口へ運びながら、変態なカシューさんの隣で観戦していたよ。
専用ベンチと化したそこは、僕の隣がアリサで、その隣にイサドラが。
アリサは僕と同じフライドポテトを、イサドラはポップコーンとフィッシュ&チップスをね。
因みに、代金は全て。
僕の財布です。
『貴方は私の騎士なんだから。それくらいは普通でしょ』
『私ってば無償も言ったしさぁ。そんな訳で養って♡』
七歳の子供の財布を当てにするなんて。
てめぇら・・・・マジ最悪。
僕さぁ。
給金はシルビア様が管理しているし。
でも、その事は良いんだよ。
お小遣い貰ってるし。
だけど。
君ら二人のせいで。
お土産を買うお金まで消えそうだよ。
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どうしてこうなった。
僕は今、帝国軍の新型らしい戦車というか機動兵器だったかな。
まぁ、それを正面に一人ね。
こうしてステージの上に立っているよ。
現在の状況を説明すると、先ず、今も帝国正規軍によるデモンストレーションが続いています。
それを少し前まで見物していた僕ですが。
此処からでも、ステージはよく見えるんだ。
けどさぁ。
それって、逆も言えるんだよね。
獅子皇女と目が合った途端。
あの糞ババぁ。
『そうだ。私は今!! このコロッセオへ足を運んだ諸君らへ。諸君らも更に楽しめるであろう余興を思いついた。我が副将ハルバートンが披露した技。それを大陸最強と謳われしシャルフィの騎士殿にな。まぁ、シャルフィの騎士ともなればだ。この程度は目を閉じても出来るであろうが・・・・諸君らも。見たくはないか!!』
はぁっ?
お前・・・ナニ言ってんだよ。
えぇ、ですがね。
あの糞ババぁ皇女が煽ったせいで。
もう、観客席が凄いことになったんだよ。
二十万人以上の大合唱&ウェーブって・・・・・ホント、お祭り好きだねぇ。
コロッセオを、悪意に満ちた糞ババぁが、やたらと煽って。
その糞ババぁは僕へ。
今度は恥をかかせてやる・・・・・ってか。
あんな唇の動きだとさ。
たぶん。
そんな感じで馬鹿にしてくれたんだよ。
だから。
本当は、どうしてこうなった・・・・じゃあ、ないんだよな。
僕は、あの糞ババぁの挑発へ。
『まぁ、これだけの衆目の前でだ。良いのだぞ、今は試合だけに集中したいとな・・・・逃げて構わんぞ』
此処まで言われたらさぁ。
いくら僕でもね。
あぁ、それくらい楽勝に決まってんだろ・・・・ってね。
要は、売られた喧嘩を買ったんだ。
そうして僕は、此処に立っているのさ。
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カシューさんは、『せっかくの祭りだ。盛り上げてこい』って、グッジョブで見送ってくれた。
アリサは僕を心配しているのか、不安そうな顔をしていた。
イサドラは、『あたしさぁ。ヒョウ柄皇女を見たいかも』なんて、勝手に浮かれていたよ。
「ほぅ・・・逃げずに出て来たか」
「そうですね。またヒョウ柄を晒したいなんて。大サービスな皇女殿下のご要望。ですが、私の技は安くないんですよ。代金として、そうですね・・・・一兆バリス。今この場で支払えるのなら。ご要望を叶えてあげますよ」
僕の技は安くないんだよ。
タダで披露するわけないだろうが。
付け足すと、売られた喧嘩へは、万倍返しくらいの反撃もね。
金額を馬鹿みたいに大きくしたのは、まぁ、そういう狙いもあるんだよ。
オマケは、言い終わりに鼻で笑ってやる。
「よし、良いだろう。ハルバートン!! 今直ぐ此処へ、ヒルメラークを呼んで来い」
へっ・・・!?
「おい、何を呆けた顔をしているのだ。私は気前の良い女だからな。貴様の技ならば、十兆くらい。ポンっと払ってやるわ」
肩透かしも喰らった様な僕をね。
してやったとばかりな、不敵に笑った糞ババぁの後ろ側。
向こう側の出入り口から、スーツ姿のオジサンが一人、ハルバートンさんの後ろを歩いて来た。
演武も見たからだけど。
近くで映すと大柄だけでなく、胸板とか肩回りが凄く分厚く見えるハルバートンさんと比べるとね。
普通の背丈くらいなのに、余計に小さくも見えたよ。
でもまぁ、見た目はね。
もう普通に何処にでも居そうな、真面目なサラリーマンが近いかな。
「帝国財務省で事務次官をしております。ヒルメラークと申します」
僕は、ヒルメラークと名乗ったオジサンから、ご丁寧に名刺も貰いました。
「話を既に受けておりますので。ですが、大金を全て此処へ運ぶのは難しく。代わりに此方で、ご確認をお願いします」
ヒルメラークさんは、そう言いながら僕へ、持っていた革製のバインダーを渡してくれた。
受け取ったバインダーを開いた僕は、そこに収められた一枚の紙。
紙に記された内容へ、先ず視線を走らせた。
「見た感じ、帝国の財務省が発行した証書で。簡単に言えば、十兆バリスの小切手なんでしょうね」
「えぇ、その通りです」
「一つ尋ねたいのですが。シャルフィの通貨へ両替をする際の銀行は、何処でも良いのでしょうか」
「額面が大き過ぎますので、我が帝国はおろか、シャルフィにあるメガバンクでも。これの取り扱いは不可と言えるほど困難でしょう。ですが、シレジアにあるIBS(シレジア国際銀行)であれば。そこでしたら問題なく取り扱えます」
「分かりました。ありがとうございます」
糞ババぁはともかく。
このヒルメラークさんという人は、ムカつく印象も無いし。
僕も礼儀正しく御礼を返した。
「そうですね。こちらの証書に関してですが。エクストラ・テリオン殿が所有権者となった際にです。宜しければ此方で、IBSに口座の開設と入金などの手続きを致しましょうか」
「良いんですか」
「えぇ、それであれば現物としての通貨を運ぶ必要もありません。IBSと此方で必要な書類を交わすだけですし。その方が事務的には楽ですからね」
この人、僕が帝国に来てからだけど。
シュターデンさんに続く二人目に良い人だ。
「では、その時には宜しくお願い致します」
「はい。ではその際には。此方で手続きをさせて頂きます」
僕はまた御礼を伝えると、気持ち深めに頭も下げた。
「さてと、話は纏まったな。観客も待たせている故、さっさと始めようか」
糞ババぁはそう言いながらもね。
僕だって気付いていたよ。
僕とヒルメラークさんのやり取りの間にも。
糞ババぁの方は準備を進めていたのだし。
ただね。
なんかさぁ、キャタピラの音がね・・・・・・・
それで一両じゃなかったんだ。
と言うか、あれも戦車なの?
僕の疑問は、一両だけ戦車にしては背が高い。
あれだけが、人間みたいに胴体と両腕があって。
頭みたいなものまで付いている。
上半身が人間みたいな機械で。
下半身が戦車。
観察する僕へ、糞ババぁはね。
「あれはな。我が帝国軍の最新鋭兵器にして、汎用型機動戦車。一先ずベータと呼ばれている」
何か意味深に言ってくれるけど。
「それで、私はそのベータとかいうあれも。目隠しした上で、細切れにすれば良いんですか」
この糞ババぁは、僕を、ずっと上から目線で見下ろしているからね。
だから先に、僕からフンって鼻も鳴らしてやったよ。
「やれるものならやってみろ。もっとも、その前にだが。鼻持ちならない糞ガキのミンチ肉が出来るかも知れんがな」
こうしてね。
僕はゼータⅣを二両と、ベータとかいうへんてこな戦車の計三両を相手に。
どうやら、ハルバートンさんがした演武以上をね。
出来るものならやってみろと。
ただ、僕は糞ババぁの不敵な空気。
まだ、何かあるんじゃないかなぁ。
でも、悪いけど。
せっかくだから、お小遣い稼ぎをさせて貰うよ。
活動報告も定期的に更新しています。
感想は、誤字や脱字を指摘したものでも嬉しいです。(後から読み直していますが、それでも見落としがあったので)
それとブックマークが付くと、やっぱり励みになりますね。
最後に、0章を未だ途中までですが、手直し作業をしています。
此方は一話ごとに、直し作業が終わり次第、日付を記しています。
※直し作業は、誤字や脱字は勿論、少しでも読みやすくなればを心掛けています。