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第25話 ◆・・・ 獅子旗杯 ⑦ ・・・◆


対戦相手がどんな奴かくらいは、調べる癖を付けろ。


カシューさんが言っていることは、事実、その通りだ。


けれど、僕には。

カズマさんからの課題もある。


でだ。

僕は今回、事前の予習を無しにして。

そういう状況を想定した経験を積むことにした。


課題が無ければ、もっと楽に勝っていたよ。


-----


ステージ上で、こうして面と向かいながら。

対戦相手の女性は、金髪ポニーテールの・・・・二十歳くらい?


下はデニムのショートパンツ。

太股からして綺麗な脚線も、けど、運動して作り上げたくらいも見て分かる。

ホント、引き締まった良い脚してるよ。


上は深緑のタンクトップに、デニムジャケット。

背格好と胸の大きさは、たぶん、エスト姉と同じくらい。

という事は、Cカップくらいだろうか。


騎士団の女子達からは、美女の条件として、色白な肌をよく聞くけど。

そんな事は無いんじゃないかなぁ・・・とは、僕の感想。

余談だけど、中でもマリューさんの友達は、しゃべるの大好きなんだ。

で、一方的にね。

下着の種類とかサイズとかも、色々教えて貰いました。


イサドラさんは、軽く日焼けもしている感じだけど。

傭兵で、冒険者を名乗っているくらいだからね。

僕は寧ろ、イサドラさんの様な人も、格好いい美人だと思うんだ。

愛想も良さそうだしね。


彼女の武器は、腰に巻いた太い革ベルトに装着されている。

ベルトには、鞘に収まった剣の他。

金属の柄にしか見えないものが一本、それもベルトに金具で掛けてあった。


他にもありそうな気がするけど。

さすがに正面からだと見えないな。


ラルフさんの件もあるからね。

今度はもう少し、意識して警戒しようか。


等と観察しながら思っていたら。

彼女の青い瞳と視線が合った所で突然、微笑まれた。


-----


「君のことは、私も噂で園遊会の一件をね。なんでも、あの獅子皇女様を素っ裸にしたって云うコールブランド君よね」


最初、愛想の良さそうを抱いたイサドラさんだけど。

開口一番からして、あの司会役へネタを提供しやがった。


この女。

スラリとした見た目は、僕も美人だなって。

思ったりもしたけど。


中身は・・・・悪魔だね。


ただ、僕は獅子旗杯へ参加してからもそう。

面と向かって、誰かからコールブランドなんて呼ばれ方をされたのは。

それは今回が初めてだった。


まぁ、あの時はね。

それで確かにコルナとコルキナ(コールブランド)を使ったんだけどさ。


けど、何て言うのかな。

獅子皇女の時はいつもより、はっきりと技にキレがあった感覚もあるんだよ。

プッツンしていたからだろうか。


「一つだけ訂正。素っ裸じゃなくて。ヒョウ柄皇女へ変身させたんですよ」


この司会役、流石に命は惜しいんだろう。

露骨に面白ネタ、ゲット!! な、顔しやがったくせに。

一言も発しなかった。


だが、僕も訂正すべきは訂正しないとな。


「へぇ・・・・ねぇ。噂じゃあ、目にも止まらない早業(はやわざ)だって聞いたんだけど。お姉さんも・・・・どんな神業なのか見てみたいわね」

「そうですか。じゃあ、遺跡から手に入れたアーティファクト。光剣と交換なら。見せても良いですよ」


今のところはまだ、探り合いって感じだね。


「ふぅん。私の相棒が欲しいだなんて。可愛い顔して、結構言ってくれるじゃない」

「えぇ、その程度には。僕の技も安く無いですからね」


審判から試合開始の合図は、まだ出ていない。

さっき告げられた開始の時間まで。

まだ少しあるのだろう。


「カシューさんが言ってました。傭兵には傭兵の流儀があると。だから、自信があるなら賭けをしませんか」

「それは君が勝てたら。欲しいって事よね。良いわよ。でも、お姉さんが勝ったら」

「どうせ勝つのは僕ですから。だから、何でも好きなものをどうぞ」


言い終わりに鼻で笑ってやる。

これをやられると、小馬鹿にされた感でムカつくだろ。


「君って。子供のくせに、お姉さんを挑発したいらしいわね。でも、良いわ。乗ってあげる。その代わり、大人の女性を怒らせるとどうなるか。いっぱい泣かせてあげるわ」


イサドラさんの声は、徐々に不敵な感じへ変わった。

それで最後は、僕がしたように鼻で笑った。


やれるものなら、やってみろ・・・・ってか。


大人の女性を怒らせるとどうなるか。


その点はね。

ティアリスとユミナさんの姉妹喧嘩を、それこそ、数え切れないくらい見て来たからね。


あれを超えるものじゃないと。

僕は驚かないよ。


会話中、上から突き刺すような視線をくれるイサドラを、僕も真っ直ぐ映しながら。

そうして、審判から試合開始の声が発せられた。


-----


「(・・・光剣は聞いたけどさ。こんな鞭みたいな剣。初めて見た・・・)」


試合開始から数分。

戦いながら相手を観察していた僕は、それで今も躱し続けている。


ラルフさんの件もあるし。

それで、開始早々から間合いを取った僕は、だけど、イサドラはラルフさんの様な手を使ってこなかった。


先ず、彼女の左手には、試合開始前には金属の柄にしか見えなかった。

だけど、どんな仕掛けなのか。

そこは未だ分からない。


でも、その金属の柄から突然伸びた青白い刀身。

あれが光剣だったんだ。


光剣は、その刀身が振られる度に、ぶぉんぶぉん・・・って変な音がする。

もう一つ。

青白く光る刀身は、どうやら此処までを見た限り。

長さを調節できる様だね。


片手剣サイズ+五割くらい・・・・かな。

長くするのは、技を繰り出す時だけ。


最初、知らずに切っ先すれすれで躱そうとしたらさ。

突然伸びて驚いた。

まぁ、躱したけどね。


ただ、光剣の使い手がカズマさんだったらと思うと。

使い手の技量が、まぁまぁくらいで助かったよ。


問題・・・・と言うか、こっちはね。

右手が握る剣の方は、カシューさんからも聞いていなかった。


見た目は少し大きめの片手剣。

少し大きいくらいで、パッと見は普通の片手剣と何ら違いも無い・・・・様に思えた。


ところがね。

あの剣から繰り出された突きを、こっちは軌道を見切った所で、視線をイサドラへ戻したのが不味かった。

少し大きいだけの片手剣だと。

いつもの様に躱した僕は、そのまま間合いを詰めようとして。

いきなり後ろから襲われたんだよ。


僕にしか聞こえないティアリスの声がなかったら。

こっちは完全に油断だった。


はぁ・・・・明日の稽古。

絶対、もう間違いなく。

ティアリスからの説教だね。


「(・・・刀身が分裂して、鞭みたいな動きをする剣なんて。光剣もだけど、初めて見たよ・・・)」

「(・・・マイロード。あれは連接剣です。呼び方は他に蛇腹剣、鞭剣とも言いますが。私達の時代には聖教騎士団の騎士達がテンプルソードとも呼んでいました・・・)」

「(・・・世界には、僕が知らないだけで。まだまだ色んな武器がありそうだね・・・)」

「(・・・彼女の実力。剣技は然程評価に値しませんが。実戦によって培った部分。こちらは一目置く価値があります・・・)」

「(・・・今日はラルフさんもそうだったけど。戦い方とかさ。ホント驚かされてばかりだね。おかげで僕は。明日はティアリスからの説教コースだよ・・・)」

「(・・・マイロード・・・)」

「(・・・だけど、幼年騎士になってさ。それで王宮に来たばかりの頃をね。あの時のティアリスから言われた事も思い出した。この世界には僕の知らない戦い方が、まだまだいっぱいあって。変な言い方だけど、わくわくしている・・・)」

「(・・・わくわく、しているのですか・・・)」

「(・・・うん。今日は二試合ともね。驚かされたけど。でも、怖いとかは無いな。こんな事を言うと、ティアリスからは怒られるのかも知れないけど。この試合をまだまだ楽しみたいって。そう思ってる・・・)」


マイロード。

貴方を鍛えた私は、それで確かに。

説教と言われるようなことも間々ありますが。


・・・・・私は、マイロードなら。私達でもまだ届かない所へ至れると。だからどうしても。厳しく言ってしまうのです・・・・・


「(・・・ティアリス。あの連接剣だけど・・・)」

「(・・・マイロード。連接剣そのものは昔から在る武器です。ただ、当時は製造技術を含め。教会が全てを秘匿した秘剣だった筈。聖教騎士でも上位の者達しか携えていませんでした・・・)」

「(・・・なるほどな。僕は初めて見たけど。総本部の在るアルデリアでも、気付かなかっただけで。もしかすると、携えている人は居たのかもな・・・)」

「(・・・そうですね。此度のアルデリア宰相とスレイン様の護衛騎士。彼らは装備していますよ・・・)」


もっとも。

アルデリアからの要人警護の者達は、それだけではない何か。

あれは、暗躍に長けた者達とも重なる。

そういう独特な空気を、僅かですが感じられました。


「(・・・なぁ、ティアリス。連接剣だけどさ。分裂した刀身を繋ぐワイヤーみたいなものって。狙って斬っても良いのかな・・・)」

「(・・・製造方法が同じものなら。あれは特殊な鋼線です。それを斬るくらいは、マイロードなら簡単でしょう・・・)」


私の返答に、それで何か納得したのでしょう。

マイロードが何かしらを思いついて。

それが実行できるかどうかを、私へ確認したかったくらいも。


「(・・・ですが、マイロード。連接剣はともかく、光剣と呼ばれる武器への対処は。それは纏まったのですか・・・)」

「(・・・あれの原理が未だ分からない。形状変化の仕方だけ、コールブランドと似ているけど。刀身は全く別物だね。何なんだろうねぇ・・・)」

「(・・・我が君へ申し上げます・・・)」


光剣の原理だけが、未だ理解(わか)らないでいるマイロードへ。

これも教えようとした矢先。

マイロードと私の会話は、ミーミルが横槍を入れて来た。


「(・・・我が君。あの光剣と呼ばれる武器ですが。あれも言わば魔導器の一つなのです。柄の部分が魔導器で。そこから伸びる様に発生した光る刀身は。つまり、マナで形作られたものなのです・・・)」


恭しいを装う腹黒い賢神(ミーミル)は、これも私が教えようとしたことを横から。


「(・・・あれ、魔導器なんだ。へぇ、そうなのか・・・)」

「(・・・我が君。この時代に蘇った魔導器は。それは以前にも申し上げましたが。一言で欠陥品に御座います。しかしながら。私が我が君より修理を任されたものと。それと彼の者が手にする光剣。此方は超文明が残した遺産。そのオリジナルと呼べるものに御座います・・・)」

「(・・・ミーミル。刀身部分がマナって言うのは・・・)」

「(・・・あの魔導器は、使い手の体内マナを用いた魔導兵器と。そう呼べるもので御座います。使い手は魔導器内部に組み込まれたクリスタルへ、まず自らのマナを流し込みます。そうする事で、クリスタルに刻まれた刻印術式が事象干渉を起こす仕組みに御座います・・・)」

「(・・・なるほどね。それって僕がミーミルから習った魔導理論。その中にあった刻印術式を用いた魔導器ってことかな・・・)」

「(・・・左様に御座います。補足させて頂きますと、金属の柄の部分。あれはミスリルによって作られたものです・・・)」


ミーミルからミスリルと聞いて。

僕はまた、習ったことを思い出した。


錬金術によってのみ作られる魔法金属(マナメタル)は、簡潔に言って、どっちも超文明時代が生み出した秘奥技術。

残念なことに、この時代には原理も理論も残っていない。

ぶっちゃけ、失われた遺産の一つなんだ。


と言うか。

超文明時代には、秘奥技術で造られた特別な魔導器によって。

オリハルコンやミスリル等の魔法金属が製造されていたんだよ。


で、ミスリルはね。

オリハルコンには遠く及ばないだけで。

でも、これだって習った内容では、凄いの一言に尽きるんだ。


金属って、鉄でも鋼でも金でも銀でも、後は合金とか。

まぁ、何でもいいんだけどさ。

そこに分子構造が在るのは、この時代でも、中等科に進めば授業で習える。


魔法金属は、この分子構造の中に。

簡単に言えば、術式を刻んだ魔法結晶を含ませたものなんだ。


ただし、此処で言う所の術式を刻んだ魔法結晶は、僕らが目にしている宝石としても使われるクリスタルとは全く違う。

これも簡単に言えば、発光させることで目に映るマナ。

そっちのマナに、ある特殊な技法を用いて術式を刻印したものを指すんだよ。


でもまぁ、秘奥なんて。

そんな、格好良すぎる名前の付いた錬金術もね。


だから、当然。

僕はミーミル先生と、それからエレン。

エレンに理論方面を聞くのは時間の無駄。

よって、座学の方はミーミル先生から学んだよ。


エレンからはね。

魔法陣を教えて貰った時の様に。

今だから言えるけど。

刻印術式は、魔法陣の派生に当たるんだ。


でだ、僕の場合、記憶に一度焼き付ければ。

まぁ、そういう感じで。

エレンの知っている刻印術式を、それで僕の記憶にもね。

焼き付けして貰ったんだよ。


エレンからは見返りとして。

今は子供の僕が大人になったら。

その時にだけど。

エレンに僕の子供を一人生ませる。


その時は、どうせ十年は先の話だろうしね・・・・とか。

そんな事よりも、僕は今直ぐ錬金術でオリハルコンを作りたい方が断然、勝ったんだよ。

だから、二つ返事で快諾した。


錬金術も、刻印術式もね。

習ってから、まだ一年も経っていない事なのにさ。

そんな経緯もあったなぁ・・・・をね。


ついつい、笑ってしまった僕を、対戦相手は何か勘違いしたのかな。


「君ってホント、女の子みたいに可愛い顔をしているけど。躱してばかりで、随分と余裕を見せてくれるじゃない」


含んでいるくらいも分かり易い声でさ。

だけど、イサドラの目付きは更に鋭くなってたよ。


さてと、じゃあ。

お望み通り、今度は僕が仕掛けるとしますかね。


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