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第13話 ◆・・・ 教師エストとエレン先生?から学ぶ日々 ⑥ ・・・◆


季節が風が冷たさを感じさせるようになった頃。

この頃のアスランは、アーツの修行で『マナ粒子発光現象』を出来るようになったことが、特に色々な事を試すようになってきた。


まぁね。

アーツの授業は、エレン先生?の抽象的過ぎる表現が当たり前も、慣れ切ったよ。

説明は相変わらず、理解り難いの一言に尽きるね。


そんな訳だから、僕はとにかく色々試したよ。

で、今もノートと実践の繰り返しだね。


それでも、マナ粒子発光現象が出来るようになった後から。

アスランの創意工夫とも言える実践方法は、当人が遊ぶような感覚で楽しんでいる。


色々試して、得た結果から次を考える。

それが面白い。

思い付くままを試す楽しい時間は、傍にいるエレンも一緒になって盛り上がっていた。

気付けば午後の自由時間は、あっという間に帰りの時間になっている。

それくらい夢中になっていた。


そうした日々の中で。

空き地に様子を見に来たエストが、そこにアスランが居なかったことを酷く心配した事件が起きている。

ただ、アスランは心配を掛けた事を、素直に謝った。

そして、何処に行っていたのか。

この当然の質問へ。


『身体を鍛えようと思って。それで王都へ行く道を走っていました。門の所で折り返して、また空き地に戻る感じです。今の目標は10周くらいにしています。それと、これからも毎日継続するので。もし空き地に居なかったとしても、心配しないで下さい』


実際には時々、それも精々2周くらいしか走っていない。

ただ、この時のアスランの話は、聞いていたエストよりも、傍にいたスレイン神父を笑わせた。


エストも心配したのは事実。

でも、王都へ続く道なら人通りもある。

何よりも、道が一つなので分かりやすい。

アスランが稽古に使っている空き地も、その道沿いにある。


眉間に皺が寄りはしたものの。

身体を鍛える目的で走っていた部分。

それは咎める様なものと違う。

ただ、先に知っていたら。

そういう風には抱いた。


スレイン神父が『なるほど。それで今回は行き違いになってしまった訳ですね』と、以降も走り込みは続けても構わない。

ただし、もう寒くなって夕暮れも早い。

だから、無理はしないこと。

それと、今度からは、ちゃんとその事も伝えてから出掛けるように。


そうね。

この時は神父様が、私も言いたかった事は全部、アスランに約束させていたわ。


エストは、大きな呆れの溜息を一つ。

それで、矛を収められた。


まぁ、アスランの場合は、他の子供達と違ってしっかりしているし、だから、大丈夫。

でも、今回の様な事が、またあっても困るし。

そうね、明日からは私の腕時計を貸してあげよう。

それで、帰りの時間だけ。

そこをちゃんと決めれば、ええ、問題無いわ。


エストの気持ちは、とっくに切り替わっていた。


『運動は良いことですが、頑張り過ぎて夜の勉強中に眠らないようにするのですよ♪』


素直に頷くアスランを映して。

自然、エストの表情は柔らかくなった。


あぁ、僕はこの時なんだけどさ。

女神様のように微笑むエスト姉からね。


『もし眠ったら・・・その時は痛い起こし方をしますからね♪』


何で、エスト姉は、あんな女神様のような微笑みで、こめかみに血管を浮き上がらせられるんだろう。

それで、右手は恐ろしい拳がね。

もう、ギュウってギリギリ握られていたんだよ。


ハハハハ・・・・・

エスト姉の後ろに立っている神父様ぁ、あぁ・・・全然気付いていないのね。


神父様は、エスト姉を見つめながらなのか、ずっと楽しそうに笑っていたんだ。

でもね。

僕はさぁ、もう、全然、笑えなかったよ。


うん、今夜の勉強は、ウトウトもアウトだね。

気合入れて、先にコーヒーも飲んでおかないとだね。


エスト姉の鉄拳。

それはアスランに限らず、子供達の誰もが恐れるもの。


久しぶりに、背筋が一気に冷えた。

と言うか、凍り付いた。

そういう経緯もあった事件だったのである。


この事件の後だね。

僕は、アーツの修行時間中にだけどさ。

その時には、走り込みを必ず、するようになったんだ。


まぁ、これも秘密の特訓を隠し続けるためにね。

そういう意味でも、必要となった部分はあるよ。

あそこは、多くないけど人通りはあるんだ。


要するに、僕が走っている事実を、それを周りにも見せておかないと。

こういうのを、前に読んだ推理小説では、確かアリバイ工作って言うんだよね。


僕は、一度に10周も走ったりはしなかった。

と言うか、体力が続かない。

で、自由時間の最初か真ん中くらいだね。

何方かで数周を、あの事件の翌日から今も続けているよ。


でもね、シルビア様から聞いたんだ。

幼年騎士になるためには、そこでは体力も、それなりに必要なんだ。

もう一つ。

これはエレンから聞いたんだけどね。

アーツを使って体内マナが減ると、身体にも疲労感を与える部分。

此処は体力を付けることで、その疲労感を緩和出来るらしいんだ。


そうした事情が、故に、アスランは走り込みを続けるようになった、という事でもある。


エレンからは、何かと自由にやれば良いような事で、積み重ねられた試行錯誤の日々も。

実はアスランの子供らしい感性が、その内容にも影響を与えていた。


『マナ粒子発光現象』が出来るようになって以降。

アスランは一度ごとに駆動式を唱えては、異なる属性の発光現象へ見入っていた。

だが、駆動式を唱える過程でも。

いつ頃からか自覚したのは、何かが指先へ流れこむような感覚だった。


これも、アスランはいつもの様に、気になった事をエレンへ尋ねた。

そして、『マナの流れを感じられるようになった』事を、初めて知った。


『そうだねぇ~。見えたんだしさぁ、エレンもそろそろかなぁって思ってたんだけどねぇ。うん、指先にマナの流れを感じられるならさぁ~。今度こそアーツが出来る様になるかもねぇ♪』


声の感じは、それもまぁ、いつもと変わらなかった。

でもね、エレンの言っている通りなら。

マナが見えて、今度はマナの流れも感じ取れるようになった。

だから、ファイア・アローも、今度はエレンの様に出来るかも知れない。


僕は、指先に流れ込む感覚を、もっと意識して感じ取ろう。

この感覚を、もっとはっきり感じ取れるようになれば、たぶん、出来るようになるかも知れない。


それから僕は何度も、駆動式を唱えた。

一度毎に意識して流れを感じ取ろうって、とにかく集中したよ。


この取り組みの最中。

アスランは何気に、無詠唱でこの感覚を再現出来ないか。

それこそ偶然の思い付きだった。

けれど、後はいつもの様に、先ず試しにやってみた。


実はさ。

僕も、それまでずっと詠唱を繰り返し続けた事で、喉が乾いて水が欲しくなったんだ。

で、此処からだと、少し歩けばね。

水汲みで通う小川があるんだよ。


僕は、そこへ向かって歩きながら。

思い付いた無詠唱をね、試しにやって見たんだ。


まさかね、ホントに出来るなんて、もうビックリだったよ。


試しにやった無詠唱は、それで、全く同じ現象を再現できた。

この時の驚きは勿論、けれど、アスランはまた一つ、何かを掴めた感だった。


喉を潤した後。

再び無詠唱へ取り組んだアスランは、試みの結果を、また瞳に映していた。


『マナ粒子発光現象』は、無詠唱でも出来る。


声にして駆動式を唱えなくても。

感覚を、意識の中で再現するだけで、今はこうして見ることが出来る。


大きな驚きは全身が震えるくらい。

思わず、ぶるっと振るわされた。

確証なんか無かった。

それでも。

この瞬間のアスランは、エレンのように自分も出来る。

そう言える強い手応えを掴んだ感に包まれていた。


翌日の午後。

先ずは昨日と同じことを再度試みた。

同時に、同じことを今日も出来た事実。

この実感はアスランへ。

思い付いたことを更に試させた。


今朝の素振り稽古、この時には思い付かなかったのだが、礼拝の最中で祈りを捧げながら。

ふと閃いた『素振りと一緒に出来ないか?』の発想は、朝食の時間も心此処に在らずが、それでエストから注意されていた。


この時の閃きへ。

アスランは何となくでも出来る。

素振りをしながらでも、感覚を再現できれば出来る筈だと思えた。


取り組みは最初、素振りをしながらでは、思う様な発光現象へ至らなかった。

逆に、先にマナ粒子発光現象を起こした状態での素振りは、此方は最初の発光現象を維持したままでも出来た。


自分の思い付きは、失敗ではなかった。

ただ、今の段階では何かが足りていない。

素振りをしながら発光現象もしっかり起こせる・・・・・

それが出来るようになれば。


最初の手応えが悪くなかっただけに、この時のアスランは気付いていなかった。

一方で、今も夢を膨らませている・・・・・

そんな風に感じ取ったエレンの瞳が映した、滅多に見られないニヤけた表情。

見ていて思わず、こっちが笑いたくなるアスランがそこに居た。


試みは以降ずっと、素振りをしながら粒子発光現象を行うが続けられた。

挑むアスランの中では、成し遂げられる。


日々、然して進歩していない状況も、前向きな姿勢は常にと言えるくらい、何が原因なのかを模索した。

継続は、そうして手掛かりが見えて来た・・・・・感へと至らせた。


素振りの最中、自分の手は木剣の柄を握りしめている。

この時の握る感触が、反対にマナの流れを感じ取る感覚の方を、上手く合わせられない。

それで指先にマナを集める感覚が、だから上手く再現出来ずにいる。


アスランは試しに、柄を握る時の力加減を変えてみた。

けれど、握る力を弱くすると、木剣を振った時にすっぽ抜ける。


まぁ、当然の結果だったね。


他にも指先を強く意識する程、今度は素振りが整わない等。

マナを集める感覚を意識すればするほど、反対に素振りが悪くなる。


素振りをしながら、単にマナ粒子発光現象を起こすだけなら。

初めて試した日に出来ている。

出来ているが、納得の成果じゃない。


感覚さえちゃんと出来れば・・・・・

シルビア様から褒められた素振りを崩さずに出来るはず。

ただ、今日はいつも通りの素振りをそのまま。

その中で起こした、納得に至らないマナ粒子発光現象も、一先ずこれで良し。

そして、アスランは何となく、これも思い付いた。

起きている発光現象の方を、途中で色を変えられないか。


属性を変える度に最初から起こすのではなく。

先に起こした属性色を、途中から別の属性へ変える試み。

感覚が同じなら出来るんじゃないか。


何となくでも、出来そうな予感はあった。

アスランの姿勢は、事実、『マナ粒子発光現象』を出来るようになったを起点に、明らかに変化した。

落ち込むことはあっても、諦めるという選択肢が消えたと、そう言えるくらい困難を前向きに捉えようとする。

無自覚な本人は全く分かっていないが、誰にでもは出来ない意識の変革が起き始めていた。


エレンの声が聞こえる。

その事で、アスランは過去に、居場所がない状況へ陥った。

それでも。

この時のアスランを救ったのは、シルビアとスレイン神父である。


アスランがシルビアを、母のように慕うようになったのは此処からだ。

この時も恐らくは、本能がそう縋ったのは間違いないだろう。

だが、しかし。

シルビアの方も、アスランを慈しんでいる。

目には映らない結びつきの強さが、それでアスランは精神的に支えられたのだ。


当時から根底に在る、アスランはシルビア様に理解して貰えれば、後はどうでもいい・・・・・

それこそ、周りの他の子供達が、自分だけを気味悪がっても構わない。

シルビア様さえ理解ってくれれば。

そう強く思い込むことで、状況を一纏めに受け入れたのである。


アスランはいつだって、シルビア様に褒めて貰いたい。

だから、良い行いをする。

悪口を言われても、悪口で言い返したりをしなかった。

そうする事で、シルビア様は褒めてくれたから。

神父様の教えを守っていることも。

それもシルビア様が褒めてくれるからだ。


自分の精神が未だ傷付いたままで治っていない。

アスランは、この部分を自覚さえしていない。

けれど、傍近い所で、スレイン神父だけは正しく捉えていた。


そんなスレイン神父が、アスランに願った想い。

その兆しを、アスランは無自覚の内に変え始めている。


拠り所に縋って、状況をただ受け入れるのではなく。

此処は、自らの意思で、望む結果を手にしようと前を向く姿勢へ。


礎とも呼べるそれを、目に見えない部分は、聖剣伝説物語とアーツを学ぶ日々によって。

そうして培った確かなモノが、形を作り始めていた。


-----


勉強でもアーツでも変わらない部分がある。

そのため、自分なりに理解ろうと、しっかり考えることが大切。

此処は共通している。


アスランは、エストの指導を受ける中で。

それから、アーツを習うようになって以降。

この捉え方は、いつしか軸になっていた。


アスランからすると、エストの指導は分かり易い。

毎週のテスト結果が、それを表す確かな証拠とも言い切れる。

平均点は、未だ90点を下回らないでいた。


反対に、アーツについては『自由で無限』だと、何かとエレンが口にする言葉の意味が、エストの指導方法を分かり易いと抱くアスランへ、逆に理解り難いと抱かせている。


算数の特に数字の計算では、正しく解けば正答へ至る。

こんなのは常識で、それで理に適っている。


けれどアーツは、算数のような正しい理屈とは全く異なった。

今のアスランは、そう自分なりに理解している。


エレンの説明が、抽象的過ぎるのは事実でも。

それが決して間違いだとは思えない部分。

自分なりに理解しようと努力したからこそ。


アスランはアーツについて、理屈では纏められない、感覚の部分が在る。

アーツはそこで、この感覚が、何かしらの基準になっているのではないか。


だから、理屈と組み合わせることが難しい。

逆に、アーツを感覚的な何かだと考えれば。


此処で思考は不意の納得へ。

そして、思わずの溜息だけが漏れた。


うん。

そうだね。

エレンはアーツが出来るけど、馬鹿だとしか思えない所があるし。

声しか聞こえないけど、気分屋だからね。


エレン=アーツ


至った思考はアスランへ、呆れが混ざった苦笑い・・・しか出来なかった。


それでも。

そう考えれば、不思議と納得出来る。

納得出来たら何となく、理解った感にもなれた。


遊び感覚で良い。

思い付きや閃いたこともそう。

それら全部を、先ずやって見る方が良い。

アーツはきっと。

そうやって、何かしらやらないと理解らないんだ。


今でもエレンのようには、ファイア・アローが出来ないでいる。

ただ、その原因を、理屈だけで解決しようとしたのは、恐らく間違いだったんだ。


アーツの勉強は、遊びで構わない。

勉強の部分は、試した結果等を書き残す。

それで実践は、遊ぶ感じで楽しめば良い。


間もなく、アスランはマナ粒子発光現象だけを起こした。

瞳が映したキラキラ光る幻想的な光景は、やっぱり見ているだけで幸せになれる。


焦らなくていい。

この場所には居ない筈のエストの声が、不思議とアスランには聞こえていた。


紅い輝きを見せるマナ粒子発光現象。

それを途中から、別の色へ変える試みは、しかし、この日は最後まで出来ずに終わった。


代わりに、今日の修行は楽しめた。

同時に、早く明日が来て欲しい。

続きをまたやりたい。


孤児院への帰り道。

アスランと言葉を交わすエレンもご機嫌だった。

エレンの瞳には、何処にでもいる4歳の子供らしい笑みを見せている。

そんなアスランとの会話が、エレンには堪らなく嬉しい時間を与えていた。


2018.5.12 誤字の修正などを行いました。

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