第16話 ◆・・・ 騎士と獅子の戯れ ① ・・・◆
僕は、なんでこうなった・・・・・・・
それはまぁ、後からしっかり考える事として。
今から少し前。
僕は、身勝手で横暴な、自称、美人の将来はお姫様を豪語するパンプキン・プリンセスこと、アリサ・ルーレックと取り引きを交わした。
取引きの内容は、僕が、アリサを虐げた貴族男子のレナードを躾けること。
で、見返りは、アリサとの昼間の一件。
南瓜パンツに押し倒されたアレを、それを無かった事にする。
そんな訳で、僕は今からね。
レナード君の、とっても憐れな末路を思うとさ。
執行する僕自身へ、もう同情しか・・・・ないよね。
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この件、僕はシルビア様に、許可も頂く必要があったので。
後は、アリサの証言も必要だからと、そうして連れて行ったのが三十分くらい前。
そこからの、約三十分後・・・・・・
園遊会の会場は、獅子皇女が全てを取り仕切った。
だからね。
会場に設けられた幾つものテーブルが、突然の事に慌ただしく動くメイドさん達と、帝国の衛兵さん達によって、脇へ移動させられると、そうして中央に出来上がった場所で。
審判役は、それも獅子皇女が買って出たよ。
メイドさん達がテーブルを動かしている間、一体何事だっていう周りに向かって。
獅子皇女の怒気を孕んだ呼び出しは、それでレナード君と取り巻き連中はさ。
しかも、この獅子皇女様ときたら、ホント、こいつも大概な屑だって思った。
ええ、皇女様はね。
アリサの受けた辱めを、声高に、その内容には噓八百なでっち上げの尾鰭がね。
尾鰭は全部、まぁ、それでレナード君達の尊厳が、蹂躙されたんだ。
一応、皇女のでっち上げな尾鰭だからさ。
彼等にだって、事実無根の反論くらいは、余地もあったんだ。
けど、相手が皇女では、他の貴族達もね。
見た感じ、誰も彼等を擁護しよう。
そんな空気は、微塵も無かったよ。
それどころか。
他の参加者達から突き刺さる。
そういう冷たい、と言うか、既にお前等は仲間じゃない、みたいな視線にも晒されて。
僕なんか、すっかり青ざめているレナード君達にはね。
十分以上に、これ以上の躾けって必要なの・・・・も、思ったよ。
とは言え、そんな僕もね。
仕切った獅子皇女のせいでさ。
僕は一人で、対するレナード君達は、十八人。
一対十八で躾けをしろってさ。
因みに、レナード君は、獅子皇女のアレで、最初の晒し者になった後。
そのレナード君の申し開きがね。
で、関わった全員が、芋づる式に引っ張り出されました。
と、いう次第です。
しかし、まぁ、十八人がかりで女の子一人を、もねぇ。
でも、こうも見て取れる。
パンプキン・プリンセスは、それくらい強かった。
あくまで、えぇ、あくまで仮説ですよ。
十八人は、今更だけど全員が、参加した貴族を、親に持つ子供達ですよ。
二人ほど女の子もいたけどさ。
既に、この場を支配する獅子皇女なんか。
僕にも鼻で笑うと、『リーベイア最強を謳われるシャルフィの騎士団にあって。数多の猛者を束ねる団長殿の実力であれば。この程度、遊びにもならんだろう』ってね。
ナニそれ、言い方からして馬鹿にしてるの。
僕がプッツンしたら凄いんだぞ。
たぶんね。
兎にも角にも、皇帝陛下さえ『子供同士の戯れで決闘などと。だが、まぁ。今宵の面白き座興にはなるだろう』とか、言ってくれるしさ。
一応ね
シルビア様からの許可は出ています。
ただ、こうして僕は、無駄に事を大きくした、獅子皇女を審判にして。
全くもって、全然なっていない構えで、剣を握っている。
どう見ても、雑魚にさえ遠く及ばない十八人を相手にね。
ホント、もう項垂れたいけどさ。
今さっき出された、見た感じ凄く美味しそうなデザートのケーキに辿り着くためにも。
僕は今、そのためだけに。
適当な所で片付けようを、決意したのです。
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「アスラン。あんた絶対、勝ちなさいよね」
アリサは、僕も食べたいケーキをね。
ホント、幸せそうな顔で、マジムカつく。
で、フォークに刺したケーキを片手に、あれで一応は、声援なんだろうな。
おまけに彼女は今、シルビア様とフェリシア様の間に設けられた椅子に座ると、恐れを知らないあの態度が。
お前さぁ、ホント、どうしようもないくらい、遠慮がないんだね。
僕はもう、溜息も枯れ果てそうだよ。
「おい。シャルフィの騎士団長。貴様は随分と余裕がありそうだな」
「御高名な獅子皇女様に比べれば。無いに等しいですがね」
審判のくせに、何故か僕の傍に立つ皇女様は、また鼻で笑ったよ。
「貴様のことは、シルビアと酒を交わしながら聞いている。自慢の騎士だとな」
「シルビア様の自慢、ですか。では、その期待に応えないと。いけないですね」
「あいつらは全員が、刃の付いた剣を握っている。精々殺されないようにな」
「分かりました。では僕も、精々殺さない程度に躾けますよ」
別にね。
獅子皇女には、生意気なガキくらいも思われて構わないんだ。
どうせ、滅多なことでは関わることも無いんだし。
その獅子皇女は、僕に背中を向けると、挨拶なのか鼻を鳴らしてね。
それから、ちょうど真ん中の位置へ移った。
「では諸君。そろそろ余興の幕を上げるとしようか」
立ち振る舞いも貫禄と言うか、堂々としているユフィーリア皇女の、あの威厳たっぷり増し増しな声へ。
対戦する側の子供たちの親はともかく。
他は全員が、拍手喝采もね。
きっと、こういう所も、それが貴族の慣習なんだと思う。
ユフィーリア皇女は、片手を挙げて拍手を収めると、この決闘の経緯をね。
つまりは、変態レナード君の罪状を再び、それこそ踏み躙られた尊厳に、容赦なく塩を塗り込んだ。
「・・・・・と、そういう次第であるからして。私こと帝国第一皇女、ユフィーリア元帥は。皇帝陛下より以下の事を承認頂いた。この決闘において、帝国貴族の栄誉を汚した痴れ者達だが。決闘に勝利した暁には、罪を問わぬ事とする」
ええ、僕もね。
そんな事は、シルビア様へ最初に報告した後で。
この状況は、父親からの許可も含めて。
此処まで馬鹿げた演出は、それで全部、貴女の仕組んだことじゃないですか。
そこまでして、目立ちたいんですかねぇ。
僕は少なくとも、獅子皇女の人間性には、好感を持てそうにありません。
これならまだ、アリサの方に好感を持てるも、まぁ、思ったよ。
「それでは、始めよ」
獅子皇女からの開始を告げる声は、そうだね。
数の上では圧倒的なんだし。
だから、最初から全員で畳みかける。
まぁ、これもお約束だね。
だけどさぁ・・・・・・
「うん。まぁ、この程度が群れた所で。剣を抜くまでもないね。君等、揃いも揃って弱過ぎ。ナニ、そんな程度で騎士を名乗っているの」
僕が敢て口にした、騎士の部分。
実は、変態レナード君と仲間の男子に関して。
皇女から聞いた話、彼等は事実、領主から任じられた騎士の位に在るそうだ。
シャルフィと違って、帝国では、皇帝陛下が任じた騎士とは別に。
地方領主から任じられた騎士も居る。
ただし、両者の間には、絶対的な差がある。
此処もね、それは皇女から教えて貰いました。
特に地方領主が任じる騎士の位は、お金を払って位を買うのだそうですよ。
まぁ、そういう訳でね。
今もティアリス達に鍛えて貰っている、そんな僕としてはだ。
負ける要素が、最初から全く無かったんだよ。
変態レナード君と、お仲間達はさ。
一斉に襲い掛かって来て。
そこまではさ。
まぁ、大勢で一人を仕留めるのはねぇ。
ここは定石だよ。
僕の周りには、あっと言う間にね。
もう蹲って動けないでいる・・・・・・
まぁ、全員の鳩尾へ、柄を叩き込んだ。
僕がしたのは、それだけさ。
「はぁ・・・・。この程度でシャルフィの騎士へ挑むだ等と。ヘイムダルは、余ほどシャルフィを馬鹿にしているようだね」
あと、僕は相手が女の子でも。
アリサを虐めるのに、加わっていた以上はね。
ここは男女平等に、ただし、女の子の鳩尾へ柄を叩き込むのは、それはマナーもあるしさ。
だから、握った剣を滅茶苦茶に振り回した女の子二人は、死角に入って繰り出した足払い。
それで二人とも、ドレスのスカートが大きく翻るような、そんな派手な転び方で片付けました。
まぁ、大勢が見ている所で、スカートの内側を全開だったんだ。
揃って、この辱めには、大泣きでしたよ。
けどさ。
アリサなんか、それよりも酷かったんだ。
そういう訳で、僕は同情しないよ。
うん、でもね。
二人とも、パンツは普通のだった。
水色と黄色くらいの違いだね。
南瓜パンツ。
あんなのを履くのは、アリサだけなのかも知れない。
「さてと、残ったのは、変態のレナード君だけだね」
故意に変態の部分を強調した僕は、その視界に映る、怒り心頭も分かり易い。
「貴様ぁ!!よくも高貴な身分に生まれた、この僕を。皇帝陛下の御前で、変態の汚名を叫びやがって。絶対赦さんぞ!!」
いや、別に叫んではいないし。
ただ、事実を強調しただけだよ。
「なんだ、そのすまし顔は。たかが小国の、程度の知れた騎士団風情が。だいたい、ガキを騎士団長にする国など。そんなものは、もはや国家の風下にも置けぬわ」
ははは・・・・・
この変態君も大概、ぶっちゃけるねぇ。
いいか。
君が叫んだことの方が、それこそ、外交問題になるんだぞぉ~~・・・・・
もう、呆れ果てたよ。
既に、自分だけしか残っていないレナード君はね。
えぇ、剣では勝てないと悟ったのか。
拙い弁舌を振るってましたよ。
「だいたい、なんで、この僕が。僕はただ、貴族の権利と義務を行使したに過ぎないんだよ。僕の様な高貴な家の男子はね。今の内から、夜の務めの練習も必要なんだよ。だから、僕はそれを平民の女子でしていたんだ。寧ろ、その平民の女子はね。僕の様な高貴な男子の。その相手を指名された事に。這いつくばるべきなんだよ」
僕はさ。
ヘイムダル帝国へ来てからだけど。
この国の同年代って。
男子も女子も、大概、身勝手過ぎるんだよ。
もう、嫌ってくらいにムカつくねぇ。
けど、このおバカ変態レナード君の主張は、園遊会の場をね。
完全に白けさせる効果だけは、絶大だったよ。
「長いご演説だったけど。要するに、君は、自分のした事へ。何一つ間違って等いない。それどころか。君は、自分のした行為が全部。帝国貴族として正しいものだと。そう強く主張したいんだよな」
「当然だ。貴様は馬鹿か。さっきからそう言っているだろう。同じことを何度も言わせるのはな。そいつを屑と言うんだ」
「あっそ。じゃあ、その戯言も。もう聞き飽きたしさ。サクッと終わらせるよ」
今更だけど。
変態レナード君は、言い過ぎた。
自国の皇帝陛下も聞いている前で、それに、ずっと黙っているけど。
僕には、無言でも。
獅子皇女の気配が、恐ろしく煮え滾っているくらいも、分かるんだよ。
先に動けなくなる程度に躾けた、雑魚達もそうだけど。
一番最後に残していたレナード君もね。
基本が全くなっていないからさぁ。
懐に入るのは、ホント、欠伸が出るほど簡単だったよ。
レナード君の、無駄に伸び切った姿勢だから。
僕を上から、斬り伏せ様としてもね。
そんな止まってしか見えない、程度じゃねぇ。
僕は鞘ごと抜いていた剣を、無駄にガラ空きの両足の下へ差し込むと、そこから斬り上げた。
「はぁうぁ!?」
もう分かるよね。
僕もね、これが男性にとって、一番痛いも分かるんだ。
僕の剣は、その鞘がね。
変態君の股間を、ジャストミートしたんだよ。
「今のは、今日の園遊会を心底楽しみにしていた。そんなアリサを傷付けた分だ。それから」
ぐっふぅ!?
金的の後で、完全に動きの止まったレナード君の鳩尾へ。
僕の握る剣の柄は、誰が見ても分かるくらい。
それくらい深々と突き刺さった。
「おい腐れ変態。貴様が帝国をどう罵ろうと。そこには興味も関心も無い。だがな。シルビア様とシャルフィを罵ることは。王国騎士団長の名の下に。この俺が絶対に赦さないからな。その事、肝に銘じておけ」
僕も、まだまだ未熟だね。
なにせ、僕の言葉はさ。
聞かせたい相手が、既に意識すら失くしていたんだ。
けど、まぁ・・・・
「勝者。シャルフィ王国騎士団長、エクストラ・テリオン」
獅子皇女の高らかな宣言で、僕は、やっと終わったも思った。
思う存分、剣を振るえたとか。
全力を出し切ったとか。
そういう満足感の様なものは、それは何一つ無かったけど。
それでも。
これも園遊会の習わしと言うか、作法なのか。
勝者になった僕へは、ワイングラスを高く掲げた皇帝陛下もだけど。
周りからの拍手がね。
貴族達の拍手は、此処も何か競っているような感じにしか見えなかった。
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拍手喝采の中で、僕は鞘ごと抜いていた剣を腰に差した後。
審判を務めたユフィーリア皇女へも、失礼のない一礼をして。
そうして、シルビア様達の席へ帰ろうと。
踵を返した僕の瞳には、僕も食べたかったケーキが、ホールの既に四分の三が消えていた。
だからもある。
と言うか、ここでは、それ以外の理由も無い。
早く戻ってケーキを食べようと、それで速足で歩き始めた僕は、後ろから獅子皇女の、ゾッとする声で呼び止められた。
「エクストラ・テリオン。余興は未だ終わっておらぬぞ」
僕、ケーキ食べたいんですけど。
でも、なんとなくね。
やっぱ、そうなるんじゃないかって。
変態レナード君の言い過ぎで。
僕は勝った所で、この件がとっくに収拾できないくらいも、えぇ、予測がついていましたよ。
「でしたら。次は真打登場ということで。サザーランド最強の、カズマさんにでも・・・・」
僕は振り返らずに、だって、振り返ったら。
それで直ぐに、一戦交えそうだって思ったんだ。
それくらい、獅子皇女の気配が、露骨に分かり易かった。
「カズマ殿の高名は、それは私も知っている。だが、貴様は未だ。ほざいた割に、実力を殆ど見せていないだろう」
「別に披露したいとも思ってませんけどね。そういう訳で、帰って良いですか。子供はもう寝る時間なんですよ」
あんな分かり易い気配だからさ。
僕は、それでも、聞き入れられないのを理解っていて。
付け足すと、子供だから寝る時間とかもね。
要するに、屁理屈こねても、逃げたかったのさ。
全てはケーキのために!!
「フンっ。私が貴様くらいの歳ごろの時は、半月寝なくても問題なかったぞ」
ナニ、そのデタラメな体力。
絶対、ウソでしょ。
「ユフィーリア皇女様は、獅子皇女と謳われるだけあって。体力も獅子並という事なのでしょうね。ですが、僕は人並みなので。それに今日は帝国へ来たばかりも、ありますから」
「貴様は、その実力を。そのような戯言で隠せると思っていたのか。私の眼は、節穴ではないぞ」
「いや、普通に眠いんです」
うん、本当は眠くなんか、ないんだけどさ。
でも、ここで食べたいケーキが、残り四分の一しか残っていない、もね。
ただ、それはさすがに、ちょっと子供っぽ過ぎると思ったので、口にしなかった。
だけど、そんな事よりも。
ここで、獅子皇女と剣を交えるのはね。
だって、この人、たぶん絶対、降参してくれないと思うんだよ。
なのにさ。
あの獅子皇女。
いきなり斬りかかって来たんだよ。
ちょっと、それ。
いくら何でも、礼節とか完全無視ですか。
殺気の混じった気配はそうだったけど。
背後から、いきなり斬りつけて。
僕は、横へ飛ぶようにして躱しながら。
着地の時には姿勢も返すと、視線は、地面に深く斬り込んだ剣を抜きながら。
不敵を通り越して、もう物騒なのも分かり易い。
獅子皇女とは、対峙して初めてね。
なるほど、獰猛な獅子にも映る瞳だから、獅子皇女なのかを、鳥肌が立つ殺気の中で理解したんだ。
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あれから何分経ったとか。
だけど、獅子皇女の剣は、その一撃が、受けてみると、ハンスさんと匹敵するくらい重かった。
ユフィーリア皇女の扱う剣は、僕と同じ片手剣。
両手でも扱えるオーソドックスな騎士剣です。
ですが、こんな重い一撃を、馬鹿正直に何度も受け止めたらさ。
僕の腕が壊れます。
という訳で、それも含めた僕の選択肢は、考えた末にね。
躱し続けて体力が底を尽くのを待つ、に至りました。
「おい、貴様。ちょこまか逃げるな」
皇女様の剣は、事実、威張るだけはあるよ。
実際、確かに鋭いし、それで重いんだ。
まともに喰らったら、即死だね。
ただ、そうだねぇ・・・ハンスさんが手加減して。
それも半分くらい。
うん、そのくらいの所で、獅子皇女はどうにかこうにか・・・・かなぁ。
そんな訳で、日々、ティアリスを相手に挑んでいる僕としてはだ。
本気も体験している、ティアリスの剣と比べて。
ゴメン。
その比較だと、ティアリスが不機嫌になる。
でも、レーバテインと比べてもねぇ。
そうだ。
実力考査の時に、その時のグラディエス当時は団長だけど。
あの時に、焦らず励めって言われた、今は僕の副官。
イザークさんは、あれからずっと。
ハンスさんから剣を学んで、事実、本当に強くなったよ。
剣だけなら、マリューさんよりも力強い。
と言うか、不利な状況でも、最後まで気持ちが折れなくなってきたんだ。
そのイザークさんと、そこそこ良い感じの手合わせが出来る。
少なくとも。
僕と同じ様に全然、本気を出していない。
今の見掛け倒しな殺気を放つ。
そういう獅子皇女のままなら・・・・ね。
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あれから更に、時計の針は進んでいる。
園遊会は、すっかり僕と獅子皇女の一騎打ちへ。
周りは全員、観客と化していたよ。
ケーキ、まだ残っているかなぁ・・・・・・
それだけが気になる。
しかしねぇ。
この獅子皇女様。
ホント、スタミナが切れないんですよ。
僕がユミナさんを真似したステップで、それで獅子皇女は、ずっと踊らされている、んだけど。
下半身に負担を強いる狙いは、だから、前後左右に動き回らせているのにさ。
下半身のスタミナは、その陰りも全く見えないままですよ。
はぁ・・・・ホント、面倒臭いなぁ。
と、まぁ、そんな本心も抱きつつだけどさ。
僕は、悪戯にただ躱しながら、それで、動き回っていた訳じゃない。
ちゃんと観察もしていましたよ。
でだ、うん、これだけ分かり易いと、次を探る必要も無いね。
獅子皇女の剣は、欠点と言うべきか。
皇女本人の気質が、それで気配が手に取るように分かる。
だから、斬り伏せたいのか、斬り上げたいのか。
横薙ぎか、突進しての突きかもね。
要するに、考えていることが駄々洩れなんです。
これで相手がティアリスなら。
ホント、読めないからねぇ。
それもこれもを含めて、簡潔にね。
勝つだけなら、造作ないよ。
もっとも、素直に降参も、しないと思うけど。
だけど。
僕が、それで背後から、いきなり襲い掛かられた、もあるからさ。
これで始まった一騎打ち、とは呼び難いかな。
だって、相手が皇女だから、それで、帝国の人達は誰も、何も言わないでいるけどさ。
背後から突然なんていうのは、卑怯とか姑息とか。
およそ褒められる様なやり方じゃないんだよ。
なので、僕があっさり勝つと、皇女には、不名誉だけが積み上がるんだ。
かと言って、僕が負けると、今度はシルビア様やフェリシア様。
カズマさんだって、卑怯の一言くらいはね。
で、これも結局は、子供の騎士を相手に、獅子皇女は卑怯な手を使わなければ。
勝つことが出来なかったのだと。
僕が心底、面倒臭いも思うのは、つまり、こういう部分が決定しているからなんだ。