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第30話 ◆・・・ 当然と愕然 ② ・・・◆


大学へ通うようになって、もう一年になる。

何と言うか・・・・仕事もあるからさ。

単位を取るのも結構大変です。

忙しくない時は、毎日通えるんだけどねぇ。


それでも。

もう、一年が経ったんだ・・・・・・


籍を置く学科では、だから当然、政治に関わる事を専門的に学びます。

ですが、僕は叶うのなら考古学を学びたかった。

まぁ、ね・・・・・

その件は、僕の立場が関わって無理だってことも理解しているのです。

ですが、考古学の科に籍を置くのは無理でも。

考古学それ自体を学ぶのは構わない。

寧ろ、僕が学びたいと望むなら何でも学べば良い。

それくらいもシルビア様からは言われたんだよね。


僕の希望は、シルビア様とカーラさんが、専任の教師を二人も付けてくれました。

一人は教科書や歴史資料などでも魔導革命の祖と記される・・・・・・

本当は凄く偉大な人の筈なのにね。

でもさ。

現実の印象は、ものぐさフリーダムなエリザベート婆ちゃんです。

もう一人は、だから当然な・・・しっかり者のテッサ先生です。


僕は二人から・・・・と言っても。

はい、もう察してくれると思うのですが。

ええ、そうですよ。

ものぐさフリーダムな婆ちゃんは、ホント、ものぐさフリーダムなんです。


なので、考古学・・・取り分け古代文字の部分と、これが密接する魔法導力を教えてくれるのは、それでいつもと言い切ってしまえるくらいテッサ先生なんですよ。


テッサ先生の教え方は、そうだね・・・カーラさんと似ているかな。

噛み砕いて分かり易くした説明の仕方なんか、ホントそっくりかもね。


僕はエレンから習い始めて、今ではリザイア様も教えてくれるアーツ。

それと比べると、やっぱり魔導は根本から違うを、テッサ先生の授業中。

此処は、より実感的に理解しました。


それから。

魔導を習うようになって、それで僕も魔導器の使い方を指導して貰ったのですが。


一言で、僕は魔導器を使えません。

理由は、その一つに魔導器が重過ぎる。

あんな重い物を背中に背負って、重心が後ろに持って行かれる僕は、ただ真っ直ぐ立っているくらいが難しいんです。


けれど、この点は、それなら魔導器を置いて使えば良いじゃないか。

はい、その通りです。

なので、魔導器を使えない本当の理由。

それは別の所に在るんです。


エレンからアーツを習った僕は、今ではもう感覚でマナ粒子発生現象。

僕の中では駆動の部分を、そうですね・・・・呼吸と同じ様な感覚で自然とやれてしまう。


問題は、この自然と出来る感覚の部分が、それと魔導器が起こすマナ粒子発生現象とは反発してしまう・・・らしいんです。


結果、僕が当然と出来る駆動は、それで魔導器の方が動かなくなってしまう事態を引き起こす。


ものぐさフリーダムな婆ちゃんは、魔導器の方に何らかの改良が施されれば解決するだろう・・・・って。

魔導器に関わるだろう文献は、それも全容の解明なんか未だ出来ていない。

そんな事も言ってたね。


ですが、そんな婆ちゃんは僕にね。


『あたしゃね。どっちかって言えば、そんな道具なんざ無くても魔導が使える。それを証明しているアスランの方が遥かに貴重だよ。だからさね。あんたは別に魔導器なんかに頼らなくても良いと。あたしゃ、そうも思うんさね』


僕は、自分の内側にあるマナ。

体内を巡るマナを感じ取ることは普通に出来るし、感覚で指先にも集められる。


この修行をし始めた頃にはさ。

強く意識しないと上手く出来なかったりが当たり前だった時期もある。


他にも、属性は、それぞれに最適な値があって。

この部分は、婆ちゃんもテッサ先生も、波長って言ってるけどさ。


でも。

僕が出来るようになった事を、二人は『自分達には感じ取れない』って。


婆ちゃんは、属性ごとに異なる波長がある。

それを測定用に作った特殊な魔導器で見つけたそうだ。


そんな婆ちゃんは、事実、ものぐさフリーダムなんだけど。

王宮の中に用意された研究室では、今でも魔導の研究に夢中なんだよね。


あっ・・・そうだ。

研究に夢中になっている時の婆ちゃんはね。

入浴も食事も、それから睡眠もだね・・・・・

だから汚れて臭うんだよ。

付け足しで、僕から見ても子供っぽく見える時があります。

テッサ先生が手を焼くのは、そういう婆ちゃんだからもあるだろうね。


魔導とアーツの違い。

たぶん偉大な婆ちゃんと、事実、とっても物知りなテッサ先生は僕へ。

どうせなら自分で研究してみると良いって。


二人とも、アーツを使える僕の方が、この分野は適任だとも言ってたけど。

ちゃんと解明出来たら第一人者と呼ばれるようになる・・・・・・


第一人者かぁ・・・・・・うん、それもなんか良いよね。


最初は、聖剣伝説物語に出て来る騎士王に憧れて、それで僕も騎士を目指した。

そこからエレンにアーツを教えて貰うようになって。

その中で僕は、古代の文明へ興味を持ったんだ。


まだシャルフィに在る遺跡にしか行ったことは無いけどね。

それも、初めて行った遺跡以外は、遺構だけしか残っていないんだけどさ。


あとね。

発掘作業中の所も、それなりには在るんだよ。

ただ、そういう所は僕がイメージする遺跡と言うよりも、当時の人が住んでいた住居跡・・・だね。

食器の破片とか、その時代に使われた通貨らしいものは出て来るけど。

僕にとって興味のある文献なんかは出て来ないね。


だからね。

僕はさ・・・・まだ誰も行ったことが無い遺跡を見つけて一番に探検する。

この夢は、それも僕が大きくなったらエレンが案内してくれるって。

エレンは、いっぱいあるから、いっぱい冒険出来るって。


大きくなって未だ見つかっていない遺跡を、それをいっぱい探検したら。

婆ちゃんとテッサ先生が言っていた第一人者もね。

たぶんだけど、なれるんじゃないかな。


何の確証も無いけど。

僕は、そんな風にくらいは思ってます。


補足。

ミーミルからも魔導は習っているのですが。

実は、ミーミルが教えてくれる魔導と、それで二人の先生から習っている魔導。

理屈も近いし原理も・・・たぶん、そんなには違いないと思うんだ。


でもね。

これはあくまで僕だけの推測なんだけど。

二人の先生から習う魔導は、ミーミルから習うものに比べると欠点とか雑な箇所が多い。

何と無くそういう所がね。

それを二人の先生ともが、今も解明できていない部分って言う所なのかなって思ってます。


だってさ。

僕がエレンと、それからミーミルからもですが。

二人から聞いている魔導器は、僕にだって使えるものなんです。


エリザベート先生が作った魔導器は、真実、何か足りていないんだと思います。


-----


エレンを通して足裏に感じ取っているマナの感覚。

何と無くコツさえ掴めば直ぐに出来る・・・・・なんて思い込みから始まった今朝の修行も。


「そうそう。アスランだいぶ上手くなってきたじゃん♪」


今も僕の両手を引いてくれるエレンの、それも頗る楽しそうな声は、だけどね。

僕の方は意識を足の裏にばかり向けているのと、それで視線もずっと足ばかりを見ているんだ。


エレンは最初だけ、自分のマナで僕を支えてくれた。

で、今はと言うと。

足の裏に通すマナを自分で何とかしている・・・・・

イメージとしては、マナで作ったサンダルを履いているような感じ。

だけど、水面に足が触れる度にね。

水という質量の方が、マナよりも伝わる感触が強くてさ。


それで未だエレンが僕の手を引いてくれる。

ってかさ。

今の段階でエレンに手を離されたらね。

きっと確実にドボンだね。


「う~ん・・・・歩くのは未だ未だ難しいかも」


キラキラ光る湖面を、今も覚束ない足取りで歩きながら。

漏れた僕の呟きは、先ず、地面を歩く時に伝わる感覚が、此処では全く感じられないんだ。


普通、歩くときは、そこで足の裏に地面の硬さが感じられるよね。

別に地面じゃなくても。

それが床だったり階段だったりでも同じじゃない。


この『硬い』と感じる所がね。

実は、それが在るから僕等は立っている時でも座っている時でもだけど。

そこでバランスを取る感覚が自然と染み込んでいる。


で、湖面の上ではと言うと。

足裏にマナのサンダルを履いている感覚。

此処までは僕も出来るようになった気がします。


だけど、問題は此処から先なんだ。

僕は今まで水面を歩くなんて経験が無い。

騎士団の屋内施設には、そこに水泳が出来る大きなプールもあるんだけど。

僕もね。

ハンスさんの指導で浮いたり泳いだりも出来るようにはなりました。

片道100メートルのプールは、水深が5メートルから深い所で10メートル以上。

これは遊ぶための施設ではなく、訓練を目的に作られたプールだからとも聞いていますが。


初めて入った時は、危うく溺れる所でした。

ビート板・・・・君が居てくれなかったら僕は死んでいたかもね。


騎士団では遠泳訓練もあるのですが。

僕は、少しなら長く泳げるくらいなので。

今も遠泳訓練の際にはビート板が手放せません。


だってさ・・・・・

ハンスさんの作ったメニューなんだけどね。

遠泳訓練は、それで10キロも泳がされるんですよ。


付け足しで、ハンスさんは平然と20キロくらいは軽く泳げます・・・・・

しかも余裕です。


その余裕・・・なんで、事務仕事には一厘も傾けられないかなぁ。


内容が脱線しましたが。

つまり、水中を泳ぐ感覚は経験がある・・・・それを言いたかったんです。


水面を歩く経験は今朝が初めて。

それで、浮いている感覚は、足裏に安心を得られる感触が全く無い。

エレンは慣れだって簡単に言うけどさ。

一歩踏み出す度にガクンって感触には、だから、どうしても前屈気味になったり重心が後ろに傾いて倒れそうにもなるんだ。


「アスランさぁ、なんでこういう時は不器用なのかな♪」

「嬉しそうに言うなよ」


前に踏み込んだ右足が足首くらいまで水中に沈んで、僕は、エレンが支えてくれなかったらドボンも確実だった。

このフワフワしている感覚は、それで酷く不安になる。

ただ、不安と言うかさ。

今みたいに足が水の中まで潜ると、途端になんとかしないとって、必死にバランスを取ろうとするんだ。

で、そのせいで今度は後ろへ仰け反ってしまうとかね。

ホント、凄く怖いんだよ。


今朝は、これで何度目だろうか。

まぁ、ね・・・この修行は初体験だしさ。

だから、こんな事も仕方ないんだろうけど。


バランスを崩した僕の上体は、正面で手を引いてくれるエレンの胸に顔から飛び込んだ。

と言うかね。

倒れそうになる度に、エレンがわざと(かが)んで胸に抱くようにキャッチする・・・が断然、近いです。


いつの間にか空が明るくなっていた。

それくらい時間が経っていた事を、まぁね。

僕は、この修行にそれくらい夢中になって没頭していたんだよ。


だから。

桟橋やウッドテラスから僕達を見つめている幾つもの視線へ。

全然ってくらい。

気付きもしなかった。


-----


「アッスラ~ン凄~い♪エレンもビックリだよ」

「歩くのは未だ出来ないけどね。でも、これなら結構やれるかも」


修行を始めてからどれくらい経ったとか。

その辺りは腕時計もしていなかったし。

けど、水面を歩く修行中。


そこで悪戦苦闘していた僕は閃いた。


冬にやったスケート。

それと同じ事を此処でやれば、上手く行くかも知れない。

此処までは一々歩く動作で、その度に重心のバランスを保つのが難しいから難儀している。

でも。

ただ立っているくらいは出来るようにもなった。


なら、この姿勢で前後左右に滑れば良いのではないか・・・・とね。


身体を浮かす感覚は、それが空の属性でも。

動かすだけなら風を背中に当てる感じ。

まぁ、そんな事を閃きからイメージした僕は、当然、即実行に移した。


閃きは成功した。

やや爪先立ちの姿勢で、湖面すれすれに浮いている僕の身体は、風属性のマナで起こした風を受けて。

最初はゆっくりとだけど。

それでも。

イメージした通りの感じで滑る様に動いたんだ。


そこからは一気にって感じだね。

最初は風を当てて滑っていたんだけど。

エレンがね。


『それってさぁ・・・・逆にした方が速くなるんじゃない』


エレンは、風を背中に当てるよりも、逆に背中から風を放出させることで。

そっちの方が加速が付くんじゃないか。


試しにやって見た僕は、その一回目に湖へ、大きな水飛沫を上げるドボンをした。


僕は、背中から風を当てて滑る際の推進力と、逆にした時に受ける推進力とでは比較になりませんを、全身ずぶ濡れになって学びましたよ。


まぁ・・・ね。

いきなり、バタンって感じなドボンでしたので。

水もいっぱい飲んで大変でしたが。


そんな僕を、エレンはとっても面白かったんでしょうね・・・・・

僕は死ぬかと思いましたよ。


ずぶ濡れになった後。

これも、まぁね。

今となっては風を起こして熱を加える。

使うのは風と火の属性です。

どっちも駆動を強めにしたくらいですが、仕上げに水の属性も使うと良い感じに乾くんです。


これも、もうずっとやっているんですが。

最初は、エレンの髪を洗ってあげた時だね。

エレンの長い髪の毛を、それをドライヤーでだと乾くのに時間が掛かるんです。


で、その時にも僕は閃いたんですよ。

要するに温かい風を使って乾かすんですから。

これをアーツでやれば良い・・・・ってね。


その一回目はと言うと。

僕のイメージした温風は、それが風と火の二つの属性から起こしたものなんだけど。

ちゃんと乾きましたよ。

代わりに、髪の毛がバサバサになりましたけどね。


うん・・・あの長い髪の毛が全部バサバサになったエレンはね。

本人は気にもしなかったんだけどさ。

ティアリス達がねぇ・・・・それはいくら何でも無いだろうって。

で、結局はコルナとコルキナが、整髪料とかを使って元の状態に仕上げたんだよね。


バサバサの原因は、僕のイメージした温風です。

コルナからは、ある程度乾いた所で水分を少し加えて仕上げれば良いと思う。

僕はエレンで何度も練習しました。

そして、今ではコルナも納得な仕上げが出来るようになれました。


まさかね・・・・

エレンで習得した温風を、こんな時になって自分へ使うとは思いもしなかった。


放出する風を推力にして滑る試みは、その二回目。

今度は弱くし過ぎたのが原因で、ドボンはしなかったけど遅かった。

これなら歩く方が早い。


と、まぁ・・・ね。

そうやって何度も試みた結果。

今は手を離したエレンと、こうして湖面を滑る競争まで楽しんでいる所です。


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