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白雪姫(coverversio黒)

作者: 篠原 藍樹

大学課題用に急ピッチで仕上げた作品。

 昔々、ある国に優れた容貌を持つ姫がいました。しかし、彼女の実母である魔女は十五歳になった姫に嫉妬し、ある時その首を締め上げて息を絶えさせてしまいます。やがて事切れた姫は森に住んでいた七人の黒い小人によって息を吹き返させてもらいーーそのまま軟禁されました。


 七人の黒い小人達は、姫が森から出て行かないように「ぐれいぷにーる」という魔法の紐を姫の首に縛り付けてから言います。「家の世話をし、料理を調え、ベッドを作り、洗濯をし、縫ったり繕ったりして、何もかもきちんと綺麗にしろ」彼らの言い分は滅茶苦茶でしたが、姫は森から逃げ出す術を持ちませんでした。


 しばらくして魔女は姫が生きていることを知りました。魔女は毒を仕込んだ櫛を作り、物売りに扮して、黒い小人の留守をねらって姫の元を訪ねました。姫は頭に櫛を突き刺され倒れますが、今度も黒い小人達に助けられます。


 今度こそ姫を始末したと上機嫌の魔女でしたが、またしても姫の生還を知ります。今度は毒を仕込んだリンゴを作り、善良なリンゴ売りに扮して姫の元を訪ねました。そして、黒い小人に軟禁され、実の母親に何度も命をねらわれているというのに、まだ人を疑うことを知らない姫はリンゴをかじり、永い眠りにつきました。


 帰ってきた黒い小人達は最初は嘆きました。ですが、すぐに姫を寝かせる棺を作り、その上に金文字で名前を彫ろうとしました。ただ、姫の名前を誰も知らなかったので「王様のお姫様」であることを書き、そのガラスの棺を丘の天辺に置きました。


 さて、姫は長い間棺の横になっていましたが、その身体は少しも朽ちず、まるで本当に眠っているようにしか見えませんでした。すると、ある日のこと、ひとりの王子様が森の中に迷い込んで、七人の黒い小人達の家に一晩だけ泊まりました。


 そしてその翌朝、王子はふと丘の上に来て、ガラスの棺に目を留めました。


 「王様のお姫様」。実に美しい少女が横たわっているのを見て、しばらく我を忘れて見とれていました。そんな様子を見て、黒い小人達は王子に言いました。「王子様。王子様。もしこの方を譲ってほしいと思っても、わたしたちはこればかりは差し上げられません」


 王子も言いました。「そうだろう。この方に代わる礼なぞあるものじゃない。敬い、決してこの方を粗末にしないように…」そうして、王子は小人達に頼み、過ぎ去ろうとしました。ところが、その様子を見て慌てた黒い小人達は棺を開けて姫に何かを飲ませました。


 すると、姫はバッチリと目を開けて、棺のふたを持ち上げて起きてきました。それを見た王子の戸惑いはたとえようもありません。黒い小人達は言いました。「王子様、王子様。この王様のお姫様は悪い魔女の手によって翻弄され、いく度も命を脅かされてきたのです」


 黒い小人達は切に王子に訴えました。この世でいちばん美しく、また可哀想な姫の手を取り、魔女に報いを与えてほしいと。王子は姫に同情し、その願いを聞き入れ、世話をしていた小人達に礼を約束しました。


 王子様は早速姫とともに城へと向かいました。魔女は姫を見て、叫び声をあげました。「おお、おお! 我が娘!」王子は姫が魔女と血縁関係があることに最初驚きました。ですが、それ以上に魔女の次なる言葉には目を白黒させないわけにはいきませんでした。


 「なんと死した身体で母の元までやってくるとは!」魔女がそういうと、姫は腐臭も傷も何一つないその美しい身体を動かし、虚ろな目に涙だけを浮かべて魔女の元まで歩きました。そして、その懐に隠していた毒のリンゴを魔女の口に押しつけました。


 魔女は長い眠りに付くように、声一つ出さずに倒れました。それと同時に、姫もまた同じく事切れたようにその上に倒れました。その様子を見ていた王子は姫を抱き上げ、あまりにも悲しい結末に大声をあげました。


 これは、美しい娘を恨んだ母と、誰も憎まなかった娘の復讐劇。



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