残念な話【殺人・食人】
起:
朝起きたら、自分のベッドの上で、死体が寝ていた。
承:
身元は分かっている。 僕のクラスメイトだから。
殺した覚えはないのだが、恐らく僕が犯人だろう。
昨日の記憶が曖昧だ。 床に転がった空の缶ビールを見るに、酔っ払って揉めたのだろう。
さて、どうしようか。 死体を前に、考える。
隠蔽しようにも、どうやったっていつかはばれる。
「困ったな……」
とりあえず、僕は台所に向かった。
腹が空いたから、朝食を作ろう。 何となく、肉は避けた。
目玉焼きと食パンを牛乳で胃に流し込み、僕は部屋に戻った。
といっても1K の安いアパートだから、廊下と呼びがたい短い距離を歩けばすぐそこだけど。
「オハヨウ、だーりん」
部屋に戻った途端、背後から声をかけられた。
ここは僕の部屋だ。 僕(と死体)以外誰もいないはず。
「誰だ?」
転:
振り返ると、バスルームからバスタオル一枚巻いただけの女が出てきた。
全裸の上にバスタオル一枚巻いただけの女だ。 痴女か。
「ネエだーりん、オナカガスイタワ」
痴女が僕の腕に絡みついて、豊満な胸を押しつける。
離れろ痴女め。 僕はお前の「だーりん」ではない。 というかお前に構っている暇はない。
「アレ、タベテイイヨネ?」
ベッドの上の死体を指さし、痴女が言った。
こいつは人外か。 あれは人間の死体だ。
家畜やらなんやらならまだしも、人間を食うのか。
しかし、こうも考えられる。
この痴女がこの死体を食べれば、死体は発見されない。
そうなれば、僕は助かるんじゃないか。
しかし骨が残っては困る。
さて、どうしたものか。
「ネエネエだーりんオネガイ」
見開かれた目が上目使いに僕を見る。
どうせ身が残ったって骨が残ったって一緒じゃないか。
骨だけの方が少ないし、そもそもこの痴女は人間じゃないんだ。
きっと骨まで食べられるだろう。
結:
「骨まで残さず食べてね、ハニー」