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謎の少女ニーナとは一体何者だ?
長くなるので、一旦分けます…。
「こんなもんね。」
木の上で、手をパンパンと叩きながら、自慢げな顔で、紗綾が言った。
「どんなもんだぁ!!」
紐でぐるぐる巻きに体を巻かれ、木にぶら下がっている守人が、怒鳴る。
「カッカ。面白い眺めじゃの。」
木の枝に腰かけ、ニーナが笑った。
「ちょっと待て。いや待ってください。」
守人が冷静に、疑問を投げかける。
「いくら、作戦とはいえ、俺が木に吊るされる必要性があるのか…?」
「大ありよ。いい?」
紗綾は、守人に向い、人差し指を立てて説明を始める。
「今からここに、敵が2人来るでしょ?敵があんたを見つけるでしょ?あんたがボコボコになるでしょ?ボコボコになったの見計らって、私が登場するでしょ?で、敵を倒して、衣服を強奪b」
説明を終えた紗綾は、守人へ満面の笑みで言った。
「完璧b」
「bじゃね!!ボコボコになる前に助けろ!!ってか、木につるす意味が今の説明にあったのか!?」
紗綾のめちゃくちゃな説明に、怒りながらも、焦る守人。
「いや、ない。あんた、細かいのよ。」
満面の笑みから一変、冷たい目線に変わった紗綾。
「そもそも、ここに2人、ちゃんと来るんでしょうね?」
更に、守人のサーチ魔法を疑い始める紗綾に、深いため息をつき、守人が返答する。
「間違いない。2人の進路からして、15分程度で、ここを通過する。…で、意味ないんなら、おろしやがれぇー!!」
説明の最後で、涙目で訴える守人を無視し、紗綾はニーナに質問する。
「ねぇ。今更だけど、転送魔法でここへ来たんなら、転送魔法で帰れないの?」
「無理じゃの。」
紗綾の質問に即答するニーナ。
「何で無理ってわかるのよ?やってみなきゃ…」
紗綾が、反論するが、話を最後まで聞かずに、説明を始めるニーナ。
「娘。空にかかっている、薄い魔法陣が見えるじゃろ?」
そう言ってニーナは、空にうっすらと浮かび上がっている魔法陣を指差す。
紗綾は、ニーナが指差す方向を見ると、そこには、薄らと、大きな魔法陣が描かれている。
その魔法陣は、ノースト王国を包みこむほどの大きさだった。
「…でかっ!!」
さすがの紗綾も、空の魔法陣の大きさには驚いた。
「凄腕の魔術師が、大勢で作り上げた結界じゃよ。この、結界の外に出ない限り、転送魔法は無理じゃの。」
「じゃーその結界をブチ抜きゃいいってこね!!」
「カッカ。威勢がいいのう。」
紗綾の発言に、笑うニーナは、何かに気がついたのか、遠くを見つめ言った。
「…話は、後じゃな。」
ニーナの見つめる先には、空を飛び、高速で近づいてくる、2人組の学生魔術師がいた。
「説明の前に、お主らにワシの力を見せておこうかの。」
そう言ってニーナは、ピョンっと木を降りた。
「お主らは、そこで見ておれ。」
ニーナは、スタスタと、学生魔術師達のもとへ歩いて行く。
紗綾と、守人はニーナの後ろ姿を黙って見ていた。
次回、ニーナの力が明らかに!!