8
お話の都合上、一部修正しました。
例の少女が登場します。
いったい誰なのか…。
「全く獲物がいないじゃない!!」
イライラしながら、守人に八つ当たりをする紗綾。
「だから…、ここはウルボスの森じゃねえっての。この先に、町があるから、そこで情報…」
全く信用していない紗綾に、何度も説明している守人が、言葉を止める。
「…まずい。なんか接近してくるぞ。」
前を歩いている紗綾にそう伝えると、紗綾は、めんどくさそうに、守人の方へ向く。
「あぁ?…わぁ!」
紗綾が、守人の方へ向いた途端、ガシッと、腕を掴まれ、木の茂みへと引っ張り込まれた。
「ちょっと!そんなに殺され…」
守人の急な行動に、文句を言いかけた紗綾だったが、守人に手で口をふさがれてしまった。
「しっ!誰かが通る。」
もごもごと、暴れそうな紗綾に小声で説明する守人。
すると、今まで守人達がいた場所へ、何人かの人が集まってきた。
守人の位置からは、顔までは確認できないが、服装は、確認できた。
服装は、守人達が来ている学生服に似ており、複数人が同じ服装をしていることから、学生だと、守人は判断した。
「確かに、この場所の近くに居るはずだ。」
男性が話している。
「もう少し、ここら辺を入念し探しましょう。バルサ様が言うんだから、間違いないはずよ。」
今度は、女性が話しているようだ。
「あの紋章…。」
守人は、学生服についている紋章を見て、気がついた。
「そうじゃ。あれは、ノースト王国の紋章じゃな。」
「やっぱり。ってか、お前詳しいな。」
「まぁーのう。」
「ん?…なんだ?お前、しゃべり方変わったか?」
声に、違和感を感じ、声する方向へ視線を向けると、知らない女の子が守人の隣に居た。
その少女は、目の瞳は赤く、髪の色は金色で、肩位まで伸びていた。
「そんなことは、ないぞ。昔からじゃ。」
当たり前のように話す、謎の女の子。
「…誰?…。ってか、紗綾は!!」
今まで、守人に抑えられていた紗綾が居なくなっている事に気がつく。
「あの娘の事か?」
謎の少女はそう言って、指をさす。
その指の先を目で追う守人。
「さぁ。始めましょうか。」
腕を組んで、複数人にメンチ切っているアホな少女がそこには…居た。
「あぁ?なんだこいつは?」
男子生徒が紗綾に向かって言うと、女子生徒が、あることに気がついた。
「この制服…。間違いないわ!!バルサ様が探していた少女…ってことは、もう一人居るはず!」
女子生徒の声に反応するように、ぞろぞろと、生徒が集まってきた。
「グダグダ言ってないで、全員まとめてブチ抜い…」
紗綾が、威勢の言い台詞を吐き終わる前に、守人が、その間に割って入った。
「失礼しました!!」
そう言うと、右手には、謎の少女、左手には紗綾を抱へ、呪文を唱えた。
「ウィング!!」
守人が呪文を唱えた瞬間、足に薄い羽根の様な物が現れた。
「では!!」
そう言うと、風を蹴るように、物凄いスピードでその場を後にする。
「待て!!」と、追いかけてくる学生たちだが、どんどん守人達との距離は離れて行った。
「さてっ。ここまでくれば。」
そう言って守人は、地上に降りる。
「で、何で邪魔したの!!せっかくの獲物を!!。」
「いやいや、紗綾さん…。制服ちゃんと見ましたか?」
「あぁ。私たちの来ていた制服と少しばっかり違ってたわね…。で?」
「で?じゃねぇ!だから、何度も言うように、これは試験じゃない。」
「じゃ~なによ?」
「…分からん。けど、ノースト王国に転送された事は分かった。」
「何で私らが、敵対国に飛ばされんのよ?」
「…わからん。なんでだ?お前は何か知っているんだろ?」
他人事のように、二人の話を聞いている謎の少女に守人は、話を振る。
「ん~?何でじゃろうな?まぁノースト王国は、各国の強い学生をさらっている…なんて噂もあるからの。」
守人の問いに対し、興味なさそうに答える謎の少女。
「俺ら高等部1年目の新人をか…?あまり考えられんが…。」
謎の少女の答えに納得のいっていない守人は、次に、謎の少女の事について聞く。
「で、君は、何者なんだ?追われているっぽいけど…。」
「ワシの名は、ニーナじゃ。詳しい話は…そうじゃの。とりあえず、近くの町へ行くかの。お主たちも、そのつもりだったのじゃろ?」
町へ行くことを提案するニーナに、紗綾が、反論する。
「とはいっても、私たち追われているんでしょ?町行って大丈夫なの?」
その問いに対して、守人が答えた。
「あぁ。多分俺らを追っているのは、学園の誰かだ。国は関わっちゃいない。」
「何で言いきれるのよ?」
「国を挙げて、俺ら違う国の学生を捉えようとすれば、国が黙っちゃいない。戦争レベルまで発展する。
けど、学生同士であれば、ただの喧嘩どまりだろ?国が学園都市ってのを設けているのも、国ではできない問題を解決する為ってのが大きな理由の一つだ。」
「…なるほど。」
そう守人が説明すると、素直に納得する紗綾。
「まあ。大体そんなところじゃ。が、その格好では、ちょいと無理じゃな。」
ニーナは、そう言って二人の服を指差す。
ニーナの服装は、ピンク色のワンピースにピンク色のカーディガンをはおり、サンダル姿。
一見、町娘にしか見えないが、それに対し、守人、紗綾の服装は、『アステマ王国から、来ました。』と言わんばかりの、学生服だ。
「じゃー。とりあえず狩りね。」
そう言って、ニヤリと笑う紗綾に、乗っかるように、ニーナが言う。
「じゃな。」
「…血の気の多い子たちだこと…。」
そう言って、項垂れる守人だった。
ニーナと名乗る謎の少女の正体は、次回明らかに…?