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さて、学園生活スタートのカギを握る振り分け試験!!
どうなる事やら…。
温かな太陽の下、アパートの前で掃除をしている女性がいた。
その女性は、長い黒髪をゴム止めで結んでおり、スラリとした体形に、大きな胸が強調されている。
女性の名は、神原響子。
この、アパートの管理人さんだ。
「今日もいい天気ねぇ~」
響子は、太陽に話しかける様に言った。
そんな、平和な日常をブチ壊すかのように、少女の怒鳴り声が、響き渡った。
「ったく!何で、時計が壊れていること早く言わないの!!」
朝から元気に怒鳴るこの少女、名は、三日月紗綾。
150cm以下の小さい身長が特徴的であり、目はパチリと大きく、つり上がっており、ブロンズ色のウェーブがかったくせ毛は、背中くらいまで伸びている。
いつも通り、腰には、木刀が差さっている。
紗綾は、アパートの202号室の扉を行きよい良く開け、階段をピョンッと跳ねる様に、降りて行った。
紗綾の後に続くように少年の声がする。
「いや、知ってりゃもっと早く言ってたって!!気付いたのは今さっきだ!!」
紗綾の尻に引かれているこの少年、名は御剣守人。
サラサラの黒髪に、幼い顔立ちをしている。
守人は、言い訳をしながら、紗綾の後に続き階段を下り始めた。
「あら。おはようございます。賑やかな登校ね。」
ニコニコしながら、響子が言う。
「バカ守人のせいよ!!行ってきます。」
そう言って、紗綾は、響子の前を颯爽と通り過ぎた。
後に続いていた守人が、響子の前で立ち止り。
「いや。あわただしい子ですよね。あっ。おはようございます、響子ざ…!!」
守人が、響子に話している途中で、脇腹に衝撃が走った。
「うっさい。早くしないと、間に合わないだろうが!!」
「いてて…。」と、その声の主に視線を合わせる守人。
そこには、木刀を腰に差し、腕を組んだ紗綾が、立っていた。
「おい!不意打ちで蹴るとは、何事だ!!」
守人は、紗綾に文句を言うが、その言葉を無視するように、紗綾は、走って行ってしまった。
「ったく!!」と、呆れている守人に、ほほ笑みながら、響子が話しかける。
「あらあら。大変ね、守人君」
守人は、むくりと立ち上がり、響子に返事をする。
「はい…。では、行ってきます。」
守人は、そう言って、紗綾の後を追いかける様に走って行った。
先に行ってしまった紗綾に、何とか追いついた頃には、ルーキス学園へ到着していた守人。
「なんだ。全然余裕じゃないか。」
ハァハァ、と息切を吐きながら、紗綾に話しかける守人。
「あら。以外に早かったじゃない。」
守人に比べて、全然息を切らしていない紗綾に、守人が言う。
「何とか、追いついたが、早すぎるぞ。」
「は?軟弱ね。いいから行くわよ。」
「く…苦しい…。」
紗綾は、守人の襟首を乱暴に掴み、ひっぱりながら、ルーキス学園の門をくぐった。
紗綾に引きずられながら、目的地へ向かう守人が、紗綾に話しかけた。
「ちょいちょい。紗綾さん…」
苦しそうな守人に、めんどくさそうに視線を向ける紗綾。
「そろそろ…。息が…死にそうです…。」
襟首を掴んでいる手に視線を向け紗綾が言った。
「あら、やだ。居たの?」
そう言って、襟首を掴んでいた手を離した瞬間、守人は、一呼吸置いた後、水を得た魚のごとく、紗綾に文句を行った。
「居ます。居ました。むしろ、引きずってただろ!!朝の件と良い、わざとか?わざとだろ?殺す気だろ?」
若干涙目になりながら紗綾に、まくしたてて言う守人。
守人が言っている、『朝の件』とは、今から1時間ほど前に遡る。
▼▼▼▼▼▼1時間程前▼▼▼▼▼▼
朝ごはんの支度を終えた守人は、紗綾が起きているか確認するため、202号室の扉をノックしながら、紗綾に呼び掛ける。
「お~い。朝だぞ?」
「…」
この呼びかけには、応答せず、1回目より大きめにノックをし、呼び掛ける守人。
「お~い!朝飯、食うのか?さ~や~!!」
「…ガタ」
この呼びかけに反応するように、扉の向こうで物音がした。
最後にもう一度と、先ほどより大きめにノックをし、呼び掛ける守人。
「お~い。早くしないと、朝飯っ食っち…」
その瞬間ドガァ!!っと物凄い勢いで開かれた扉を、避ける事のできなかった守人は、顔面で思いっきり扉を受け止めた。
その衝撃で、扉の前で倒れこむ守人。
開かれた扉の前には、パジャマ姿の紗綾が眠そうに眼を擦りながら、立っていた。
「うぅ…?朝ごはん…?たべゆ…。」
寝起だからであろう。思考回路がゆったりとしおり、舌も回っていない紗綾だった。
「…あれ?」
開けた扉の前に誰も立っていない事に気付き、キョロキョロと、辺りを見回す紗綾の耳に、「うぅぅぅ。」と唸り声が聞こえた。
唸り声の方へ視線を向けると、そこには、ノックアウトされた守人が倒れこんでいた。
「…。何?あんた。まだ寝てるの?寝ぼけてるの?バカなの?死ねよ。」
冷たい視線で、守人を見つめ、冷たい言葉を浴びせる紗綾に、半泣き状態で紗綾に言い返す守人。
「寝てねぇーし。ねぼけてねぇーし。バカじゃねーし。まだ、生きたいです…。」
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こんな事があり、その時のうっ憤も含め、この場を借りて紗綾に文句を言っていた。
守人の文句に完全無視を決め込んだ紗綾は、「行くわよ。バカ。」と、振り分け試験会場へ向かって行った。
ため息をつきながら、紗綾の後に連れて歩き始める守人だった。
振り分け試験集合場所は、入学式を行った、闘技場となっている。
ルーキス学園の振り分け試験は、毎年違う試験を行う。
これは、各生徒に公平に試験を受けてもらうための学園側からの配慮がされている為である。
闘技場に入る二人。
「おぉ。スッゲー魔法陣。闘技場全体に書かれているんだな。」
そう言った守人の足元には、闘技場全体に書かれている魔法陣の一部が、書かれていた。
「…あっちね。行くわよ!」
感動している守人と打って変わって、無関心の紗綾が、冷めたように言う。
闘技場に入り、次に向かった先は、受付場所だった。
受付場所へ着くなり、ルーキス学園のマークが記されたペンダントを受け取り、試験開始まで待つ二人。
しばらく待っていると、闘技場前方に用意された台へ上る生徒会長の姿があった。
「…テスト、テスト…。」
その言葉と同時に、全生徒が、生徒会長を注目する。
「え~。それでは、これより振り分け試験を開始いたします。」
生徒会長が、話し始める。
「まず初めに、ルール説明をいたします。」
そう言うと、ルール用紙を読みながら、ルール説明を始める。
そのルールとは次の通りである。
■■■■■ルール説明■■■■■
・各生徒は、討議会場より、ウルボスの森へと転送される。
・ウルボスの森へ転送された後に、各パートナーと共に、先ほど配られたペンダントを奪い合ってもらう。
・時間制限は、12時間で、終了時のペンダントの数で、評価される。
・ペンダントには、ポイントが有、自分のペンダントの場合は、100PT、自分以外のペンダントは10PTとなる。
・あくまで、ペンダントの数での評価となる為、どの様な手段を使ったのかは、評価の対象とはならない。
■■■■■■■■■■■■■■■
「以上が、大まかな、ルールと説明になります。詳しい内容は、ルール説明に記載されていますので、そちらを参照してください。それでは、国に恥じない、学園生活をお送りください。 生徒会長からは、以上です。」
そう言うと、生徒会長は、台を下りて行った。
「なぁ~。あれ、テンプレ?テンプレだよな?」
守人は、入学式の日の説明内容と、部分的にしか変わっていない、生徒会長の発言に、疑問を投げかけていると
ピカァァァ!!!
っと、まばゆい光を放つ魔法陣。
各生徒が、まばらに、シュンっと消えていき、ウルボスの森へ転送されていく。
そんな定か、守人と紗綾の足元にバシュン!!と、音が鳴る。
「えっ!魔法効果が消えた…!?」
守人が、呟いた瞬間、今度は、二人を囲うように、魔法陣が浮き上がってきた。
「まずい!紗綾ここから離れろ!!」
紗綾の腕を掴み魔法陣から離れようとした守人だったが、バシュン!!という、音と共に、闘技場から姿を消した。
振り分け試験はどうするんだww…ほんと、どうしよう。