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聖剣の守り人  作者: しーまん
第一章
1/15

1

アップ方法を改定しました。


ここではない、どこか。

今ではない、いつか。

この物語は、そんな世界で暮らす、一人の少年と、一人の少女の物語。

そんな物語の始まりは、学園都市外れにある、古い児童福祉施設から始まる。


「ん~。よく寝た。」


窓の外の太陽を眩しそうに見つめながら、少年が目覚めた。


「今日は、洗濯日和か。」


よっと、ベットから出て、服を着替える。

洗面所に行き、顔を洗い、鏡を見る。

そこには、寝癖ついたサラサラの黒髪に、幼い顔立ちの少年がいた。

少年の名は、御剣(みつるぎ) 守人(もりと)

物心ついたときから、この児童福祉施設で、暮らしている少年だ。

顔を洗い、なかなか戻らなかった寝癖との格闘を何とか制した守人は、洗濯機に向かう。


「今日で、この洗濯機ともお別れだな…。ありがとう…洗濯機ちゃん」


などと、少し涙目でぶつぶつ言いながら、子供の下着、洋服等の洗濯物を洗濯機に入れていき、洗濯開始のボタンを押す。


「洗濯物はとりあえずOKだな。っと、次は朝飯か。」


次に台所へ向かった。

守人は、児童福祉の最年長であり、家事全般を施設長と分担し行っている。

守人が6歳のときに、施設長が過労で倒れたことがあった。

それから、守人は家事を手伝うようになり、今では、ベテラン級の家事レベルになったのだ。


「…守人お兄ちゃん。もう起きてたの?」


眠そうな目をこすりながら、少女が守人に声をかけた。


「おぉ。ゆり。早いな。飯ができたら、起こしてやるから、もう少し寝てていいぞ。」


「ううん。私も手伝よ。着替えてくるからちょっと待っててね。」


少女の名は、ゆり。守人より3歳ほど年下の、施設一番のしっかり者少女だ。

守人や、施設長の家事の手伝いをしてくれている。


「おぅ。そんなに急がなくっていいからな。」


バタバタと、急いで自室に戻っていくゆりに、声をかける守人。

少しすると、着替えを終えたゆりが、台所へ戻ってきた。


「お待たせ。」


相当あわてていたのか、寝癖でボサボサになっている長い髪の毛を、ゴムで強引に結んでいる。


「あぁ…。急いでくれて…ありがとな。」


「いいよ。そんなことより、何すればいいかな?」


二人は、料理の支度を続けた。


「さて、朝飯の準備はOKだな。ゆり、みんなを起こしてきてくれ。」


「わかった。」


そう言って、ゆりは、各部屋へ目覚ましコールをしに行った。


「さて、洗濯物でも干しとくか。」


先ほどの洗濯物を洗濯機から取り出し、庭に出ると、桜がきれいに咲いていた。

温かな風が吹き、桜の花弁がひらひらと舞っている。

庭に設置してある物干し竿に、器用に洗濯物を干していく。

その姿は、10年母親をやっている人にも引けを取らない貫禄がにじみ出ていた。

洗濯物を干していると、後ろから、声がした。


「今日で、その姿が見えなくなるとさびしいね。」


その声に振り返る守人


「あぁ。ばーちゃん。起きたのか。明日からは、ゆりが、俺の後を引き継いでくれるさ。」


「あの子は、あんたに似て、面倒見もいいからね…。」


少しの沈黙が流れ、施設長が、守人に尋ねた。


「あんた、ここ(施設)に気を使って無いだろうね。」


「え?」


守人は少し考えたふりをして、答えた。


「あぁ。俺が学園都市に行くことか?別に気を使ってることは無いよ。俺の力を世界に役立てたいだけだ。」


「なら、いいんだけどね。いつでも帰ってきていいんだよ。ここは、あんたの家なんだから。」


「あぁ。大丈夫。」


そんな会話をしていると、子供達が、やってきた。


「守人にいちゃん。早くご飯食べよ。先生も早く。」


「先生と一緒に先に行っててくれ。これ干したらすぐ行くから。」


「うん!」


元気に返事をして、子供たちは、施設長の腕を引いて、リビングに向かっていった。

みんなで、最後の朝食を済ませ、守人は荷物が入った大きなバックを肩にかけ、玄関へ向かった。


「ばーちゃん。みんな、ちょっと行ってくるな。」


ゆりをはじめ、子供たち全員、涙をこらえ、無理やり笑っている。

みんなを代表するように、施設長が守人に話した。


「気をつけて行ってきなよ。何かあったらすぐに戻ってきなさい。それから、それから」


涙をこらえていた先生が、こらえきれずに、泣き始めてしまった。

先生が泣いたことで、今まで我慢していた子供たちも一斉に泣き始めた。


「おい、おい。赤紙届いて戦争に行くわけじゃないんだから。大丈夫。心配するな。」


守人は、そう言うと、ゆりに向かって言った。


「ゆり、よろしくな。お前がいれば、大丈夫だ。」


「う…。うん。」


ゆりは、声にならない声で、返事をする。

そして、守人は、施設長に向かって言った。


「ばーちゃん。今まで、育ててくれてありがとう。感謝している。ここは俺の家だ。何かあったら、すぐ戻ってくる。だから…」


泣きそうな自分に活を入れ、最後に守人は元気いっぱいに言った。


「行ってきます!!」


そう言って、10年以上住んだ施設を出て行った。

読みやすいよう、章だてを変えました。


一章は、前回アップした内容と一緒です。

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