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雨宿り指標
彼女は、馬鹿だ。
「馬鹿は風邪引かないんだってー」
どしゃ降りの中、屋根のあるベンチの上に座っていた俺に彼女はピンクの水玉模様の傘を差し出した。
当然その肩は、髪は雨粒に打たれて湿っていく。
「わたしの家、近いからさあ」
走ればすぐだから、ね。
有無を言わせる前に空いていた俺の左手に開いたままの傘の柄を握らせると背を向けて走り出した。途中、転けそうになりながら。
「校区から考えるとそうとう遠いんだが」
いま通っている中学校は二つの小学校からの生徒からなる。彼女は俺とは違うので必然的に逆方向だ。まだこちらのほうが近いといえる。
「馬鹿だな」
まだほのかに温かい傘と濡れて震える温かい小さな毛玉を片手に呟く。
「夏風邪は馬鹿が引くんだが」
次の日、彼女は学校を休んだ。
その次の日、俺も学校を休んだ。
馬鹿は風邪を引かないんだそうだ。




