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親愛なるパパへ

作者: 向田 日向

拙い文章です。でも読んだって下さい。

長い年月に中で、彼は、私は、なにを得て、何をなくして、何がしたかったんだろう。

これは私達の物語。



私は生まれた頃から父親がずっと近くいた記憶がない。

幼稚園のころは父親は時々しか帰ってこないものだと思っていた。皆そうなんだって。

だけど、友達の話しを聞いているとみんなのお父さんはちゃんと毎晩帰ってきてるんだね。

そうして、うちの家だけがおかしいんだな。って知った。

友達が「夜ね、お父さん帰ってきてからね、遊んで貰おうと思ったのにすぐ寝ちゃったんだよう」って言ったから、友達にうちのお父さんは毎晩帰ってこないよ。って言ってみた。


たら、変なのーって、おまえんち変なのーって、言われたんだ。



ねぇ、パパ?なんでママとパパは一緒に住んでないの?



父親は時々帰ってきた。夜遅くにお酒のにおいぷんぷんさせて帰ってきた。

それと少しの香水と。

それでも、小さい私は何にもわかんないから

パパーって、ママに怒られるのを覚悟で夜遅いのにベットから抜け出して玄関に走っていったんだ。

ママが父親に困った顔で追い返そうとしてたけど、そんなの小さい私はわかんなくて、ママを通り越して父親に抱きついたんだ。

父親は嬉しそうな顔して、しゃがんで、両手広げて、抱きしめてくれた。

私はちゃんとわかってたよ。この温もりがちゃんとした愛情だって。



パパ?どうして朝になるといなくなってるの?夢だったのかなぁ?



少し大きくなって小学生になった。父親は遠くで病院の院長やってるらしい。だから一緒に住めないんだって、思った。

お兄ちゃんとお姉ちゃんとは年がちょうど7歳と6歳離れてたから、私だけすごい年の差だったから、私が小学校に上がったらお姉ちゃんが小学校卒業しちゃったんだ。

一度でいいから一緒に学校通ってみたかったなぁって、ずっと思ってた。

お兄ちゃんは7歳年上だったから、私が幼稚園の時、遠くの中学校で寮生活始めちゃったから、お兄ちゃんにもなかなか会えなかった。

淋しかったのに、お姉ちゃんまでお兄ちゃんと同じように遠くの中学校に寮生活しちゃったんだ。

お兄ちゃんとお姉ちゃんは違う学校に通ってたけど、同じ土地だったから時々、ママと2人でその土地に旅行に行ったんだ。



楽しかったよ、お兄ちゃんお姉ちゃん元気そうだったよ、よかったねぇ。

なんでパパ行かないの?楽しいのに…。



小学校1年になったばかりのゴールデンウィーク。

お姉ちゃんが帰ってきた。久しぶりに一緒の部屋で寝てたら、トイレに行ったお姉ちゃんが帰ってきて、「パパとママがりこんしちゃう!!」

りこんって何?まだまだ私は幼くて、わからなかった。

ただお姉ちゃんと一緒にりこんしないでっていう手紙を書いて、真夜中に2人でソファに座って真剣な表情でなにかしゃべってた所に行って手紙を渡した。

それの手紙がママをどれだけ苦しめたのかは、わからない。



ねぇ、パパ、ママとパパが夫婦でいなくなるとどうなるの?



小2にはちゃんとわかっていた。ママが苦しいことに、パパが家に帰ってこない理由に、別居してた理由も。

夏、ママが泣いてる所を初めて見た。

ごめんね。ごめんね。涙と一緒に零れ落ちてた。

私も泣いた。まだ小さくて、嫌だ嫌だって、馬鹿みたい。

いや馬鹿。

ママゴメンね。

苦しませて、ゴメンね。



ねぇ、パパ?なんでママが泣いてるの?



離婚と共に引っ越した。

新しくて、戸惑ったけど、楽しくてすぐ馴れた。新しい学校でも友達がたくさんできた。

転校も悪いもんじゃない。

私の初恋はここで終わったけどね。

幸せだったなぁ。

ママの笑顔も増えた。ママが趣味でアロマテラピストの資格取ったり、のんびり温泉旅行に行ったり、楽しかったなぁ。

父親とも月一で面会っていって、2人で遊びにもいけた。

ママは絶対に父親には会わなかったけど。

楽しかったなぁ。幸せだったなぁ充実ってこのことだ。って思った。

小3までの秋。



パパ!!今のほうがパパと会う回数増えたね!!今すごい楽しいよ! パパは?楽しい?



小3の秋。ママが肩の病気になった。

肩や背中に釘が打ち込まれてるみたいなんだって言って、ママが苦しそうだった。

ママの介護をはじめてやった。

ママ看護婦やって働いてたけど、仕事が出来ないくらい痛みが酷くて仕事やめちゃった。

兄姉は寮生だから帰って来れないし、私なりに一人で頑張った。

だけど小3で何ができるって言うんだ。

学費は父親が払うっていう約束だから、兄姉私に学費は大丈夫。

しかも兄姉は寮生活だから生活費も父親が払ってた。

でも私はまだ小3でママと生活してて、生活費はママ持ちだった。

働けないママにどうしろと言うんだろう。



パパ。なんでママが病気って知ってたのに、私の学校で使う運動靴買ってくれないの?



ママの貯金が私が昔からお年玉をずっーと貯めてた貯金を下回った。

10万円卸せてきてくれる?

そうママ言われて銀行に走った。

何でだろう。8万しか卸せなかった。ゴメン、ゴメンねママ。

私の貯金で生活を始めました。



パパ!!お小遣いちょーだい!!


自分の猫なで声なんて大嫌い。



通院の毎日。少しよくなったママがやっと仕事を始められるようになった。

無理しないでね。ママ。今まで大変だったね。これからも大変かもだけど、一生に頑張ろうね。


嗚呼もう中学生になる。

私も寮生活がしたかった。ママに楽させたいのもあったし、何より兄姉の寮生活が楽しそうだった。

お兄ちゃんは私が小6の時大学受験した。

父親は医学部に行けって、でもね、お兄ちゃんは本が大好きなんだよ。

無理やり文学部を受けた。

父親は文学部落ちても知らないぞって、見放すぞって、金払わないぞって。

なのに国立しか受けちゃダメなんだって。

お兄ちゃんは頭いいからきっと入れる。そう信じてる。でも一応手作りのお守りを作って渡した。


受かったんだ。うれしかったなぁ。

これもまた少し遠いけど、有名な大学の文学部。ドイツ文学選考したんだって。

ブランドに十分だった。

父親も満足したらしい。学費は勿論、一人暮らしの生活費まで払ってくれた。

兄弟みんな甘え上手になった。

それぞれのやり方で。

例えるなら、お兄ちゃんは100点のテストを見せてお小遣いをねだった。

お姉ちゃんはひたすら我が儘を言った。昔からそうだったから父親は少し甘くて最後には折れることが多かった。

私は、なるべく物を欲しがらない、お姉ちゃんとは反対に、大人しくしていた。それで時々願うんだ。欲しいものを。



パパ?パパは私達にお金以外何をくれましたか?



ついに私の中学校受験、お姉ちゃんが通っていた学校に通いたくて勉強した。

中学高校とつながっていたからエスカレーター式で高校までいける。

今ココで頑張ればいいんだ。

お姉ちゃんも大学受験が待ってた。

お姉ちゃんは医学部へ行くと決めた。

それ以外は受けないという条件で、もし落ちたら予備校に行かせて貰う約束をした。


私は受かった。泣いて喜んだなぁ。だって小学校のころから憧れてたから。


でも、お姉ちゃんは落ちてしまった。

父親がね、突然やっぱ予備校行かせないって、お姉ちゃんは道を、医学部以外の道を断たれた代わりに予備校に行くはずなのに。



ねぇパパ、なんで?



ママは4年ぶりに父親と電話で直接話した。

ママは強くて冷静な人で、しっかり者だけど。

その時だけは本気で怒って、泣きながら電話してた。


「なんで彼女の道を断たせたのにっ、なんで残された道まで断とうとするんですかっ!!!」


ママが電話で泣きながら抗議している時、お姉ちゃんも泣いてた。自分が不甲斐なくて泣いてた。

私も泣いてた。なんでだろう。



父親は再婚するんだってさ。



私が中一の冬。

お姉ちゃんはママの抗議のかいあって予備校に行かせてもらえた。

一生懸命勉強してた。

突然の再婚だった。



ねぇ、パパなんでセンター試験の朝、お姉ちゃんにそれを言ったの?



ママは父親を、私の父親を、あの人って言ってた。

私もそう呼ぶことが多くなった。あの人なんて大嫌い。


お姉ちゃんは凄いよ。

こんなにぐちゃぐちゃで、色んなことがあるのに受かったんだ。

医学部。一人暮らしだよ。

父親が、あの人が生活費を払ってくれた。



継母は絵に描いたような人だったよ。

子連れでね、あの人の前ではニコニコ、ようは金が欲しいだけ。

私達とあの人との縁を、いやただの縁じゃない、金の縁を切らせたがってた。

私の寮生活で必要なお小遣いをストップさせようとしてね。頑張ってたよ。



パパ?なんであんな人と結婚したの?わたしたちはもういらない?



中1の12月私のお小遣いがストップされた。

継母がお小遣いやるなって言ったんだって。



でも知ってるよ。パパの愛情。だって11月に何故かいつもの倍お金入ってたもんね。



裁判起こしたんだって。

継母の意見で。

私の親権を、あの人が、ママに返す裁判。

淋しかった。

子供を何だと思ってるのか。って思った。

ただの道具かって、ブランドなのかって、邪魔になったら捨てるのかって。



パパ。淋しいよ。私は本当はパパが大好きなんだね。



こんなの異例だって、裁判所の人が言ったってさ。

「親権を取り返すのはよくあるけど、譲るのは早々ない」って



そうなんだってさ、パパ。   継母じゃなくてパパはどうしたい?





中3で、初めてあの人と喧嘩した。

寮の中、電話口で口論したね。

大嫌いって何度も言った。

「じゃあ、なんで再婚なんかしたんだよ!!」

怒りに任せて言った。

「パパだって淋しかったんだよ!!」



なぁんだ。パパだってそうなんじゃん。早く言ってよ。




パパ、ゴメンね。やっぱりほんとは大好きなんだ。


いろんな家庭があります。

たまたま取り上げて書いたのが、こんな風な家庭であっただけ。

こんな頼りないお父さんはいます。

きっとどうしようもないお母さんもいます。

感謝の出来ない子どももいます。

幸福過ぎて、貪欲になり過ぎて我が儘になってしまった人もいます。

皮肉になってしまって、幸せに気付けない人もきっといます。

でも

誇れるお父さんもいます。

頼もしいお母さんもいます。

親孝行出来る子どももいます。


いろんな人がいます。



でも実は

頼りないお父さんと、やる時はやれる誇れるお父さんは同一人物かも知れない。

知らない面なんてごまんとあるんです。


ただ、子どもの私たちはそんなに視野は広くない。


家庭という狭い中からしか見れない。

父親らしさ、母親らしさが嫌だと思う時もあるのに、一人の人間としての親を見ると、それも嫌。

年が経てば理解出来る日が来るかも知れない。


ただ、ただまだ見えないんです。

だから誇れるお父さんであって欲しい。

頼もしいお母さんであって欲しい。


そしていつか教えてください。

皆大変で理解してて、でも伝わらなくて、苦しくて。


いつかきっと分かります、親の本当の強さが。



だからお願いです。

かっこいい後ろ姿を、笑顔を見せてください。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私偶然にも同じ道をたどるかもしれない予備軍かも ストーリー上のパパと違うところは お酒飲んで帰ってくる事や女性関係、遊びも浮気もないこと。でももう結婚して9年 別居は6、7年続いてますね 子…
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