三人と
今回は、ちょっと進展?
ストーリーは進みませんが
おっさんに女性の気持の動き等は分かりません。賛否あるかと思いますが……
リア充め、爆ぜろ!!
引きずられることしばらく。
さっきまでいた火のそばからは大分離れたが、まだ視界に入る距離まで来た。
「さて、ユル」
エルファは掴んでいた手を離し、こちらに向き直った。何やらいつになく真剣な表情だと思う。暗いから若干般若のような気もするが。
「な、何か?」
いつになく真面目な雰囲気にどもってしまった。
「今まででここがどんな場所だと思ってる?」
エルファの問いは少し悩んだが、概ねみんなが思っているだろう答えを口にする。それは、
「多分だけど、ここはゲームじゃない。……異世界ってやつじゃないかと思う」
俺の答えは予想済みだったんだろう。軽くうなずいて口を開こうとしたが、少し躊躇したように見えた。どうかしたのかと思ったがティアに突かれて、口を開いた。
「あのね、ユル……ここが異世界で、私たちのルールが通用しない世界なら、どうすればいいと思う?」
どうする、か。どうなんだろうか? 俺たちは元の世界に戻れるんだろうか。なぜここに来たかもわからないのにどうすればいいのか。なにも思い付かない。頼りにされているんだと思うと情けない。
「ごめん、分からない。でも、ここで何が何でも生きないといけない」
異世界でこれが現実なら死んだらそれまでだ。可能な限り無理や無茶はするべきじゃない。
「私は怖いわ。ミコもエルザもティアも。みんな不安で怖いのよ」
ミコもティアも頷いている。エルザは、ここにはいないけど多分そうなんだろう。
「…………ユルは、さ。私……私たちの気持ち、気づいてる?」
エルファ達の気持ち。これ、違ってたら恥ずかしいから言うのは勇気がいるな。
「多分、ね」
俺がそう言うと三人とも一瞬固まった。
「……それで、ユルはどうしたい?」
今度は俺が固まった。これ、今決めるの?
「まだとても一人に絞るのはちょっと無理かな」
猫娘になってるティアも可愛いし、現実の時は気付かなかったけど、ゲームを始めてから徐々にエルファが俺のことを好いてるのが分かるようになってからは惹かれている。
「それって、つまり私たちのことが好きって思っていいの?」
エルファの後ろに若干隠れていたティアが聞いてきた。
「まあ、そうだね。……好きだよ」
なんだこれ。めっちゃ恥ずかしい。
「ならさ、ユル…………私達と付き合わない?」
「は? 私、たち?」
ど、どいうこと?
「ここが向こうの世界じゃない異世界なら、一夫一妻でなくてもいいんじゃないかってことよ」
「ユル君と私達のハーレムを作らないかってことなんだけど」
え、それって良いの?
「いや、分かったけど、それって良いの? その、俺は、嬉しいけど」
「良いっていうか……ユルさ。ここで生きていくのに好きな人に捨てられたまま生きていけると思う? 私には無理よ。帰れるのかどうかもわからないし。こんな状況の分からない中で一人でいるくらいなら、独占できなくてもいい。ユルと一緒にいたいわ。私は昔からユルが好きなの。だから離れたくないわ」
「私はユル君と出会ったのはゲームでだけどそれでも好きになっちゃったし。離れるのは嫌だよ」
「兄さん。私だって離れるのは嫌です」
いや、ミコ。お前は――――
「ユル。ミコも女の子よ。あなたを好きなのは一緒なの。それに、私たちは今ゲームのアバターそのものの格好よ。体も現実の時の物とは違うわ。ユルとミコが兄妹でも……」
俺が何か言う前に、エルファが口を出した。そして気付いた。
お互い、元の身体ではない。ならば、血は、つながってない。
正直言うと少しショックだ。血だけが家族のつながりではない。それでも確実にあったミコとのつながりの一つが消えた。
改めてミコを見る。妹であるという認識が消えたわけではないが、何かが消えた。そんな気がした。
「ユル君」
「ユル」
「兄さん」
三人が一歩、近づく。
「私たちはユルが好きよ。選ばなくていいわ。だから一緒に居させて」
「ユル君の隣に居たい」
「私も、見てください」
目の前の三人が俺のことを好きで、離れたくないと言う。選ばなくていいと。
なんだか、
「夢、みたいだな」
でも、夢じゃない。元の世界とは違うけど俺たちはここに生きている。改めて実感した気がした。
「エルファ」
一歩エルファに近づいた。
「昔から好きでいてくれたんだな。今まで気付かなくて悪かったよ。てか、態度があからさまになってきたのってゲーム始めてからだった気がする。昔からああだったら気付いたのに」
ちょっと愚痴も言ってしまった。
「うるさい。気付かないあんたが悪い」
やっぱり文句を言ってきた。それも楽しい。だから抱きしめた。
「ん、好きだよ」
ほっぺにキス。それだけだけどドキドキする。
「な、ななな!」
不意打ち気味にしたから驚いてる。ちょっと面白い。
「んむ!」
今度はそのままキスした。軽めだったけどエルファは眼を見開いて固まっちゃった。なので離れて今度はティアへ近づく。
「ユル君」
エルファとのを見てるからか、ティアは自分から抱きついてきた。尻尾も巻きつけてくる。
「受け入れてくれて嬉しい」
そう言ってティアからキスしてきた。エルファの時よりちょっと深め。さっきよりドキドキした。
「兄さん」
ミコが自分の番だと近づいてきたけどちょっと待って。
「ミコ、少し待ってくれ」
そういうだけで泣きそうな顔をするミコ。
「そんな顔するなよ。でもやっぱりまだ妹って意識が強いんだ」
「に、にい、さん」
ほら、もう泣きそうだ。
「その兄さんっての止めないか?」
軽く抱きしめて頭をなでてやる。
「お前が兄さんって呼ぶから余計に妹って抜けないよ」
笑いながら言ってやるとミコも少し笑う。でも名前を呼ぼうとすると今まで呼んだことがないからか、すごく恥ずかしがった。
「ゆ、りゅ、ユ、ユルさ、ま」
それを聞いたティアが「ぷっ」と吹き出した。俺も少し笑った。何がどうなってユル様になるのか。
ミコは真っ赤になって胸元に顔を押し付けてくる。いつの間にか再起動したエルファがミコの頭を撫でた。
「良いじゃないの別に。ユル様でも。慣れたら普通に呼べるわよ」
流石にユル様は少し恥ずかしいけど。まぁいいか。
「じゃあそろそろ戻ろうか。みんなが心配してもいけないし」
そう促してキャンプに戻る。
つながりが少し変わった。なんだかそれだけだけど、この世界に来たのも悪くなかったのかも、そう思えた。




