裏側で
お待たせです。
このお話は当初、唯一あったプロットの一部です。
本来は『第一解放』のころに入る予定でした。
今回は会話メインであります
この物語はご都合主義であり、思い付きを書いてしまいたくなる作者の気まぐれ成分が多分に溢れて漏れています。
そんな物語ですがご愛読いただいて嬉しくあります。
これからも頑張りまする
カリカリと音を立てるハードディスクが並ぶ部屋で、パソコンのディスプレイを眺めていた男は深いため息を吐いた。
「漸くここまで来たのか」
その呟きは小さなものであったが、部屋の中の全員に聞こえていた。
「思ったよりもかかりましたね」
男の呟きに最初に答えたのはやや疲れた表情の女性だった。
「ゲーム好きの人が多い国ですからもっと早いかと思ってました」
始まった会話に今まで部屋で作業していた六人は全員手を止め、本格的に会話を続ける。
「ちとリアルに過ぎたかの? しかし必要なことじゃてなぁ」
「ゲーム感覚でプレイする人が多かったよね。あと趣味に走る人とか」
「他の国で探しても良かったんじゃないですか?」
「駄目だな。他国は宗教や人種での区別が強すぎる。時間の無駄になる可能性が高すぎる」
「ま、この国は無節操すぎるというかなんと言うか」
「ですが優秀な人たちが多いのも事実ですよ」
「じゃが倫理観などが高すぎる。何度潰されかけたか」
「あ~……。誘導、何度もやってたよなぁ」
今までも『New Life』の自由度の高さでマスメディアを利用して批判も高かったが、年齢制限等を導入しているため、そこまで深刻ではなかった。しかし、奴隷導入あたりからさらに厳しくなっていた。そろそろ行政機関も動こうとしている。
「これ以上だとこっちで制限されたワシの誘導じゃちと無理じゃったわ」
発達したメディアを介して能力を使い続けたことを思い出し、ショートカットのやや小柄な女が遠くを見つめため息をついた。
「お疲れさん。それも今日で終わりだし、やっと戻れるんだし、元気出せって」
そう言って小柄な女を小突くのは七三分けの中年男性。突かれた女は眉をひそめる。
「いつも言っておるが、お前さんはもう少し年上に敬意を払え」
「まぁ、今はその格好ですし。少し難しいですがね」
答えたのは小突いた中年ではなく、ぴしっとしたスーツを着たツンツンヘアの青年。
「翁には世話になった。……おっとそろそろ時間が近いな」
最初に呟いた男が会話を続けようとしたところに設定したアラームが鳴り響いた。その音により会話は終わり、各自作業にに戻った。
「選定結果は何人だ?」
「候補は三千人弱。…………選定結果は千三十二人だ」
「意外と多いな。肉体の準備はいいか?」
「大丈夫ですね。性能の面も複写終わってます。いつでも行けます」
「情報操作の方は?」
「問題ないじゃろ。こっちの管理者がやるとも言っておる」
「ならいい。ダミーサーバの撤収とメインサーバの改編はいいか?」
「問題ありません。ダミーサーバの情報は完全消去しました。メインサーバの情報も統制しました」
「よし。こっちも情報の更新終了だ」
「サーバ稼働します。ログイン制限解除しました」
「選定者の送り先はどうする?」
「……適当でいいだろう、と言いたいが。一応チームを組んでいる者はまとめておけ。その方が安心だろう。送り先は巫女のいる場所の近くがいいな。神託で巫女にも伝えておけ」
「どのように伝えますか?」
「規則に触れない程度に大雑把でいい。どちらにしろ送ってしまえばどうにもならんのだ。なら最初から世話を焼くこともない」
「わかりました。選定者のログイン確認。…………現在三百二十八人の選定者を確保」
「存在情報が消えたのを確認したぞい。上々じゃな」
「よし。では順次向こうへ送れ」
「……最後の選定者が往きました」
「御苦労」
「漸く終わったの」
「我々も戻りましょう」
「この体ともおさらばだな」
「では」
部屋にはカリカリと音が響き、その中で六人の男女が気絶していた。




