世話係
今回は視点を変えております。
そのため、ひっじょ~~~~に短いです
ユルの世話係を受けたのは二人の少女だった。イリナとトロア。イリナは商家、トロアは元冒険者同士の間に生まれた子である。
イリナの両親はイリナに留守を任せ王都に行商へ。トロアの両親はその護衛としてちょうど出かけており村での惨劇から逃れていたため、弔いなどの必要がなかった。
イリナは店の事もあったが、恐らくめぼしい物は奪われた後だろうと残る事に決めた。トロアも家に戻ったところで大した物も無く、両親も完全装備で出発したため、無事に合流できれば問題ないと思い、残る事にした。二人は親同士がよく一緒に王都へ行くため昔からよく二人で行動していたというのも残った理由の一つである。
「じゃ、二人はユル君の傍に付いて居て。何かあったらすぐに呼んでね」
ティアにそう言われ、二人は病人の世話だと聞いていたので、桶に水を準備し、自分達の服の布の一部を破り、簡易な手拭いとした。ティア達に言えば持っていただろうが、助けてくれた人達にあまり甘えないようにとの思いと、トロアが両親から聞いていた知識からの行動である。
二人が準備を終え、ユルの休んでいるテントへ近づくと、そこへミコが声をかけた。
「もう少ししたらスープが出来ます。それまで休ませていてください。かなり衰弱していますから負担をかけないように」
「わかりました」
「お願いしますね」
「……失礼します」
トロアが小さな声で言いながらテントに入る。外から見ても分かることだが、結構な広さのテントである。トロアが両親と一緒に何度か王都に行った時にもテントを利用したが、サイズがまるで違う。イリアも今までに扱った事のないサイズのテントに緊張した面持ちである。
入ってすぐに幕が張ってあり、幕を潜って奥へ行くと更に幕で囲まれた部分があった。これは気休め程度でもと、ユルが再び眠りに付いた時に張った物である。
その幕も潜ると二人の前に布団の中で浅い息を繰り返している人物が見えた。ユルである。
二人は初めて見るユルに暫し眼を奪われた。外に居た他のメンバーもかなりの美形ではあるが、布団の中で苦しそうにしているユルは二人には別格に見えた。
二人は世話係に決まった時に、世話をして欲しい相手は男だとしつこいほどに念押しされている。確かに男にも見えるのだが、言われていなければまず美しい女性だと思っていただろう。
熱が出ているのだろう。美しい銀の髪が額に張り付いて乱れている。さらに、浅い息に混じるか細い呻き声。それらが美貌と相俟ってなんともいえない色気を漂わせている。
眼を奪われていた二人だが、ユルが苦しげな表情と共に咳き込んだ事で我に帰えり動き出した。
しかし、ユルが寝ている今、する事はほとんどない。静かに傍に腰を降ろし、顔の汗を拭き取り様子を見守った。
しばらくすると、ミコがスープを持ってやってきた。
「様子はどうです?」
小声での問いかけに小声で反す。
「時々咳き込みますが、特に変わりは無いです」
「そうですか。何かお腹に入れてもらった方がいいんでしょうが、今は休ませましょう。すいませんが起きたらこれを。冷めてしまったら新しいのを取りに来てください」
「わかりました」
イリアがスープを受け取り、ミコはテントを出て行った。
「早く良くなってくださいね」
トロアはユルの汗を拭いながら耳元で囁いた。




