仲間に手を……
すみませぬ
今回は繋ぎ的なものと思ってくださいまし
次回には場面を進めまするのでご容赦くだされ
殺す。
キーヴを地面に押し付け、ニヤ付いている男を。
《アビリティ《バーサーカー》発動》
殺す。
ティアを下着一枚にして引きずっている男を。
《固有スキル《殺戮マシーン化》発動》
殺す。
ミコやエリザ達の服を破り捨てて脱がしている男たちを。
《スキル効果により、状態異常侵蝕率低下。思考制限、行動の単純化。リミッター制限の自動解除》
仲間に、手を、出した奴らを。
《ターゲットを設定完了。スキル解除条件『ターゲットの殲滅、及び自己の死亡』》
赦さない。
《リンク。脳波・精神・思想から潜在アビリティ《理性からの開放》覚醒》
「……殺す」
《潜在アビリティ《理性からの開放》覚醒により《殺戮マシーン化》時の思考放棄。スキル解除まで使用者の殺戮本能に行動を依存》
身体が動く。これは非常に素晴らしいことだ。これで思う存分に……奴らを殺すことが出来る。
引き摺られるのは結構痛い。
しかも私はパンツしか今は身につけていないから。そのパンツももう破れると思う。さっきからズレていってる気がする。身体動かないから確かめられないけど。
辛うじて動く視界には擦れて血が出てる足が見える。
「ご、ぽぷ」
人の声みたいなのと何かが泡立つような音がしたと思ったら引き摺られていた手が離れて、頭が地面に落とされたよ。……かなり痛い。
(あ……)
落ちた時に顔が横向きに落ちたみたいで、ちょうどエルファ達の方が視界に入った。
男達が邪魔であまり見えないけど、三人とも動かない。そして男たちは動かない三人の服を破り捨てて脱がしている。
これはゲームではあるけれど……。
(あいつら、絶対殺すから)
自分は嫌だけど、初めてじゃないし、我慢も出来るかもしれない。でも私の記憶が確かならエリザもエルファも初めてのはず。
(……ユル君)
せめてエルファの初めてはユル君が良いな。
そんな事を考えてると視界で動きがあった。
エルファがいきなり地面に倒れた。と、思ったら血飛沫が上がった。
(!! エルファ!)
エルファが殺された、と思ったら、今度はその隣でまた血飛沫が上がる。
(? え、あれは……ユル君!?)
かなりの速度で動いているみたい。普段ユル君と練習してる私でも追えない。遠くで離れて見てて見えない程速いから、リミッター外してるのかな?
時々動きが遅くなるから、はっきりした。ユル君だ。でも何で今頃になって?
疑問に思ってたら、
(! ユル君! 怪我してる。大丈夫なの!?)
血を吐いて蹲ってしまった。でもそれも一瞬で、また違うところで血飛沫が上がる。
(……ユル君大丈夫かな? でも、これで皆助かるね)
服とかは破られたけど、皆大丈夫そうで良かった。
「ティア」
キーヴ君の声が聞こえたな、と思ったら視界がぐるんと回った。あ、空が、
「大丈夫か? とりあえずコレ飲め」
見えたと思ったらすぐにキーヴ君の顔になった。
キーヴ君は私の口を開かせて瓶を突っ込んできた。
(!! ぐ、んぐ……ぶ、は、鼻に)
一気に瓶を傾けたキーヴ君。おかげで鼻に少し入って、口からもいくらか漏れた。
(ちょ、ちょっとま、んぐ……ぐ)
一本飲んだらまた次を突っ込んでくる。ちょっと! 苦しいって。
(待って、まっん……ぐぅ)
し、死ぬ。
「止め、ちょっとま……あ。声、出る」
声だけじゃなくキーヴ君の手を止めるべく私の手がキーヴ君に伸びている。
身体動くよ~!
「治った……から、もう飲ませないで。死ぬかと、思ったじゃん」
「わ、悪い。夢中だったから。でも治って良かった」
そう言って、自分の治療に取りかかった見たい。私も何時までも寝てないで起きなきゃ。
「く、うぅ~」
力が、入らない。生まれたての子鹿の様に手足をプルプルさせて四つんばいの私。
それでもなんとか立ちあが……
「んご! ぶふぉ! げほ、びゅ、ユル!」
キーヴ君が盛大に咽た。見ると鼻からも盛大に回復薬が出ている。汚いよキーヴ君。
でもキーヴ君はそんなことお構いなしに立ちあがって走り出した。ヨタヨタしてるけど。
で、キーヴ君の先には、
「ゆ、ユル君!?」
ついさっきまで無双してたユル君が座り込んで、地面に刺した刀を支えにしてた。でもその支えも虚しくユル君が崩れ落ちてく。
そう言えば無双中にも血を吐いてた。もしかしてかなりの大怪我!?
急いでエルファを……いや、回復とかならミコちゃんの方がいいかも。
未だにカクカクと力の入りきらない足に鞭打って必死にミコちゃんの元へ。
ミコちゃんのとこに着いたのは良いけど、キーヴ君は私に何飲ませたのか全く分からんよ~。
「ん~、とりあえずこれを片っ端から飲んでって」
皆同じ薬を持っているからどれかが当たりのはず。一本目、二本目、三本目。それでもミコちゃんは起きない。
「み、ミコちゃん! 何でもいいから起きて! ユル君が、ユル君が」
五本目を飲ませようと思ったらミコちゃんが動き出した。
「て、てぃ、あさん。苦しい、です」
「ごめん。でもそれどころじゃないから」
私はそれだけ言うとミコちゃんを抱えて走り出した。




