動かない身体
様々な意見がありまして、タイトル変更です
正直文才が欲しいと、切実に思います。
ユルとキーヴが倒れたのが男達の隙間に見えた。
(ユル! キーヴ!)
叫んだはずだったのに、声にはならない。駆け寄りたかったのに、身体は動かなかった。
「…………さて、今からお前らのお仲間を眼の前で犯してやるよ。よく見てろよ?」
なんとか二人の元へ行こうとしていた私の耳に人攫い達の声が聞こえてきた。
なんと言った? 眼の前で仲間を犯す?
チラリと視線を動かすと男達がニヤニヤしながら近づいてきている。私達をユルやキーヴの前で犯すの?
(……うそ、嘘でしょ? 止めてよ。来ないで! ユル、ユル!)
動かない、声も出無い私はそれでも唯一動く視線をユルに向けた。
目が……合った気がする。でもそれは一瞬で、ユルは顔を歪めて血を吐きながらもがきだした。
(ユル!)
ユルに気を取られていたようで、いつの間にか視界に男の手が入ってきた。
(ひっ、や。嫌!)
胸元を掴まれ、身体を起こされた。ミコやエリザも同じように起こされているのが一瞬見えた。その周りを男達が囲んでいた事も。
「ん~。いいねぇ。この顔、身体。最高だなぁ。しかも怯えた目。最高にいい」
男の手が私の顔に触れる。
(やだ! 止めて)
あまりの嫌悪感に視線を逸らした。そこにはキーヴの前に引き摺られていくティアが映った。
(ティア!? ティアー!!)
ティアを見た私は涙が溢れてきた。ティアは下半身は下着、上半身はすべて脱がされていた。
更には横からも服を破る音と男達の笑いがが聞こえてきた。
(…………許さないから……。絶対に許さないから!)
ユルをあんな目に併せて、ティア達も……。身体が自由になったら絶対に殺してやるから。
視線だけで睨むけど男達は気にした風もない。一人が私の服にも手を伸ばす。
(初めてはやっぱりユルが良かった……)
悔しくて悔しくて、それでも同にもならないことが分かった。それでも……と思う。ゲームの世界だ、と言われればそうだが、私にはこの世界がただのゲームの世界とは思えない。やっぱりもう一つの現実なのだと思う。だから初めてだけはユルが良かった。
ぎゅっと目を瞑り、これから起こる事に耐えるべく、力が入るわけでも無いのに力を入れる。もちろん満足に動かない身体では目蓋も半開きとなり、視線を逸らすだけでしかなかったが。
(ユル……。ユル?)
涙で歪む視界にせめてユルを見続けようと動かした視線の先には何も無かった。さっきまでユルがいたのに。もしかして死に戻りしたの?
そう思った瞬間視界が低くなった。いや、私の頭が落ちたらしい。地面に頭を打ちつけたらしく、痛みが走った。
痛みで一瞬途切れた視界には相変わらずにやけた男の顔があった。犯すために地面に倒したのか? と思ったら全身に暖かいものが降り注いだ。しかも、やたらと……鉄臭い。
「ぎゃあぁあああぁ!」
「う、うでぇ~! 俺の腕が~」
「なんだってんでぶぉろ」
辺りで悲鳴や叫び声、何かが吹き出すような音が聞こえてきた。今までと違った騒ぎだ。
(な、何が)
どうにかこうにか視線を上げると、腕を失った男。首から上が無くなった男。腹から血や内臓を流し、それが漏れないように手で押さえるようにしたまま頭を割られた男。様々な死に様の男達が目に入った。よくよく見れば、眼の前の男の顔も首から下が無かった。
視界の届かない所でも何かが落ちる音や叫び声が聞こえるため、同じことが起こっているのだろう。
それでも理解できない。一体誰が?
すると視界隅の生き残っている男の身体から手、足、首とが離れた。そしてそこには見慣れた黒い服に銀糸。両の手には二振りの刀。
(……ユル…………?)
それは何処からどう見てもユルだった。ユルは視界から一瞬で消え、次の瞬間には別の場所で血飛沫を作っていた。
(無事、だったんだ)
血を吐き、倒れて悶えていたユルが今は男達を倒している。助かった安堵とユルの無事に再び視界が歪んだ。が、
「ごふっ」
視界の中でいきなりユルが血を吐き蹲った。しかし、それも一時で、すぐまた視界から消えた。
(ユル!? ユル無事なの?)
視界にはもうユルも生きている男達も誰もいない。それでも視界の外にはまだいるらしく、幾つかの断末魔が聞こえてきた。
「ま、まて。これが見えないのぁおあぁ! ち、ぐ、そぉっ。い、ぃいのか? 来るな! 撒いてやるからな! あひゃっ、皆死ぬんだあぁ? あ? ……あは、は、……手、てぇ、俺のぉ」
そんな声と何かが落ちる音を最後に辺りは何も聞こえなくなった。
(お、終わったの?)
視線を目一杯動かし、何か見えないかと探すと辛うじて這いずりながらティアに近づいて、何やら飲ませているキーヴが移った。何を飲ませているのか分からないが、ティアの荷物を探り、手当たり次第に飲ませていく。
するとティアがピクリと動き、ふらふらと立ち上がった。解毒に成功したらしい。良かった。
キーヴもホッとしたのか、自分の両足に刺さったナイフを引き抜き回復薬だろう、飲んでいる。
しかし、ティアがキーヴを揺すり、指差した。薬を飲みながら視線を動かしたキーヴは薬を飲みながら叫んで、咽た。
「んご! ぶふぉ! げほ、びゅ、ユル!」
鼻から口から飲んでいた薬をたらしながらキーヴ。汚い。と思ったのは一瞬で、キーヴの叫びと慌てぶりに一気に血の気が引いた。
ユルに何かあった。それしか分からないが、キーヴの慌てようからするとかなり不味いのだろう。痛む足に何度か転びながらこちらに駆け寄ってきて、視界から消えた。動かない身体が心底恨めしい。
「ユル、ユル! しっかりしろ」
ティアもふら付きながら最大限急いでいるのだろう、何度もへたり込みながらもこちらに寄ってきた。
「み、ミコちゃん! 何でもいいから起きて! ユル君が、ユル君が」
鞄をごそごそしている音が聞こえる事から何か薬を飲ませているのだろう。
(ミコなんていいから! 早く私を治して! ユルが大変なんでしょ!)
そんな事を思っていたのだけど、ティアは辛うじて動けるようになったらしいミコを抱えてユルに向かっていった。
ぼろぼろにしようかな……と思ったのですが、そう言うのはノクターンで行きたいと思ってます。
と言うか、書き出すとたぶんR指定が必須になる気がする。上手い具合にぼかして書く事が出来そうにないので。
イチャラブくらいならなんとかなりそうなので一応の方向性はそっち予定です。




