覚悟
ちょっと悩みながらもいったん投稿です。
色々思うところもありますが、今のレベルではいじるとダメになりそうなので……
エリザとミコの案内で着いた村は鉄の臭いと何かが焼けたような臭いが充満していた。
「……うぷ」
魔物達の解体などで死体には慣れているはずだが、さすがに喉をこみ上げてくるものがある。
「酷いな」
村の入り口からして人が倒れている。もちろん生きてはいない。村の中は未だに火が消えず、何軒か建物が焼けている。
「エリザ、生きている人はいなかったんだな?」
そう問うと、恐らく、と頷き返してくる。……よくこの中に二人で入って行ったもんだ。
「これ、どう思う?」
顔をしかめる皆にも意見を聞く。
「今まで見たこと無いわね。でも、もしかしたら何かイベントかも」
「そう、だね。前に地図で見たときにここはまだ未開地だったはずだよ。だからたぶんプレイヤーがこれをやったって事はないと思うよ」
エルファとティアはそう判断したようだ。キーヴとミコもその意見に同意のようだ。
「しかし、イベントって言ったってこれじゃ何が何だか分からないな。何か手がかりを探そう」
手分けをして何か手がかりがないか探すことにした。
「エリザ達が見たとき何かあったか?」
一応周囲の警戒は最大限にしているが何もかからない。そう言えば、気配消してる奴には会ったことないけど、何処まで感知出来るんだろうか。
「いえ……。あまり長くいなかったので」
まぁ、長く居たい場所じゃないな。となると、見落としもあるだろう。入り口から近いとこからしらみつぶしにして行くか。
人間ってよく出来ているもんだと思う。こんな状況なのに、もう体が適応してきているのか、血の臭いにも人の焼けた臭いにも慣れてきて、すでに感じなくなった。麻痺しただけかも知れないけどな。
「ユル、気づいた?」
村の中も半分以上見た頃、エルファが聞いてきた。
「……一つだけ」
たぶんエルファの気づいた事も同じだと思う。
「若い女の人の死体が無いね」
「ああ。あるのは男と、年寄りだけだ」
どうやら皆も気づいたらしい。若い男はいるのに若い女がいないのだ。
「またこの類いかよ。……どうするさ?」
キーヴが足を止め皆に問いかけた。それにはミコが答えた。
「なにがです?」
「こりゃ夜盗か何かだ。たぶんだが狙いは女と金だな。女を救うにしろ、原因を突き止めるにしろ、このまま行けば対人戦だぞ」
キーヴの言うことは皆も分かっているはずだ。いや、言われなくても分かっている。イベントだろうがなんだろうが、このまま行けばどうなるか。
「俺は一度経験してるからな。一応言っておくと、ここで別れてでも俺は行くぜ」
「…………行くわ」
一番先に言ったのはエルファだった。
「私だって対人戦なら経験もあるわよ。ただ、今までこういった事に遭遇しなかったから少し戸惑ってただけよ。それに、こんなことする奴はNPCだろうが絶対許さない」
「私も行くよ。私も対人戦は経験してるし」
「私もです」
「同じく、ですね」
ティアとエリザも続く。更にはミコも。はぁ、経験者は違うね……。でも――
「俺も、行くぞ」
覚悟、決めますか。
「いいのか?」
皆が視線で問いかけてくる。
「正直戸惑ってるけど……。でも、最近俺はこの世界も現実だと思うんだよ。今、俺はここに生きてる。なら、逃げる訳には行かない、かな?」
たかがゲーム。そこまでしなくても良いとも思うけど、何故開発者がここまでリアリティにこだわったのか最近少し分かってきた気もする。
「もし、これからもこういうことから逃げるなら、このゲームをやる必要は無いよ」
そうだ。ゲームだからって遊びじゃない。ネットの中の繋がりも、本物だ。なら、この選択も、現実の選択と同じだ。だから……
「逃げないさ」




