のんびり移動
説明話にしようかとも思ったのですが、今まで以上の矛盾点がワサワサ出てきたので気持ち触れるだけにしました。
思いつきの設定に後付けの理由はつけない方が良いですね……と言うか思いつきの設定を追加をするな、って話かもしれませんが。
バイクを飛ばし、じっとりと汗ばんだ身体をシャワーで流した。
バイクで飛ばしたのとシャワーを浴びたのとで少し冷静になれたので、少し調べて見た。
どうやらVRの技術は脳からの信号を各運動神経等に伝達するのを途中で妨害し、電気パルスとして読み取り仮想の身体を動かすため、現実の身体を動かす反応をするらしい。そのため、ゲーム内での成長(もちろん経験などのみ)はそのまま現実へと反映され、ゲーム内での反射神経の成長や反応、経験が現実でもフィートバックされるらしい。そして、そのままリアルに戻ると、今まで接ながらなかった神経にゲーム内で動いていたイメージが伝わり、体が反応する事があるらしい。バーチャルとリアルの差に慣れると症状は緩和されるとの事だった。
「なんだ、そんなこともあるのね。そのうち慣れるならいいや」
少し落ち着いた。
「あ~、それにアイツは蹴られても仕方ないだろう。しつこいし、きっと腹が立ったんだろう。大体、綺麗に決まったっぽいけど感触からしても大した事無かったし」
うん、とそう決め付けてまだ少し早いが俺はログインした。
ログインした先にはエルファとキーヴが待っていた。時刻は五時過ぎ。空も一部が白くなってきている。
「およ? えらく早いな」
「ああ、まぁ。俺が早いと言うよりお前らが遅かった気もするがね。しかし、お前等も起きるの早いな。それとも二人で見張り?」
「いや、エルファが珍しく早く眼が覚めたんだと。温泉が楽しみだったんじゃねぇの? 小学生かよ」
「違うわ! たまたまよ」
ぺし、っとキーヴの頭を叩く。ん……、何か落ち着くわ。
「ふふ」
「なによ?」
おっと、笑ってしまった。
「別に、なんでもないよ」
何か最近はこっちの世界の方が落ち着くな。
「まだ少し早いし、ちょっと運動してくるわ」
俺は二人に伝えて身体を動かしに行った。
八割程度の能力を使用して、型の基本など素振りをしたりしたからか、良い感じに汗をかいた様な気がする。時間も二時間近く経っている。久しぶりに全力に近い感覚で動いたのですごくスッキリした。
そろそろ皆起きたかなと思い戻って見ると、ミコやエリザも戻ってきていて、今は朝食の準備等をしているところだった。
「ユル君遅いぞ~」
「ユルさん、お帰りなさい」
ティアが料理を、エリザが野営の片付けをしていた。エルファは足湯でのんびりしている。おい、何か仕事しろ。ミコとキーヴはいつもの様に気功の訓練だ。
「悪い、遅くなった」
軽く謝っておくと、ティアも起きたのはついさっきであると言う。謝り損だった。
食事が終わるとすぐにエルファが「温泉~」と騒ぎ出し、すぐさま例の水着モドキの調整をした。自分でサイズを測らせないと言ったくせに、着心地が悪いだの何だの言ってきた。エリザ達に説明及び説得を頼んでおいたはずだが、効果なかったようだ。なのでサイズを測れないならもう作らないと言っておいた。。すると、
「変態! サイズを測るって言って、ただ触りたいだけでしょ」
なんて事を言ってくる。そういやそうだった。
「ならティアに頼むわ。ティア、何か作るときにはサイズを測っといてくれ。俺としてはサイズが分かるならどうでもいいから」
最初からそう言えば良かったのか、と今更ながらに気が付いた。そりゃサイズ測らせろって言ったらだめだよな。
偽乳エルファとティアの水着モドキ姿は結構きわどい物となった。縦と横が少しずつ足りない。脇と下乳がちょっと出てる。紐は元々首の後ろと背中の二箇所で結ぶ予定だったが、首の後ろだと下乳がやばい事になるので、両方背中で結ぶ事になったようだ。二人とも盛りがあるので意外にズレ無いらしい。すげぇな。神秘です。
一時間ほど温泉でまったりし、少し早めのお昼を食べて漸く下山になった。
少し進んで気付いたが、山のこちら側は敵の気配が少ない。居ない訳じゃないが、平地や草原と同じく街道より離れた所に敵が多く、移動中の警戒は少しゆるめですんだ。
そのため、山の麓に降りるまでの戦闘は僅か二回しかなく、二日目の夕方には山を下りてしまった。
今日ものんびりとした時間が過ぎ、警戒を一応しているが近くにいる敵は暴走山羊くらいしかおらず、強敵が少ないのでミコとキーヴに任せている。この二人もなかなかに成長しているが、キーヴはティアに届かず、ミコもエルファには程遠い。まぁ、エルファはアタックマジシャン、ミコはサポートマジシャンという感じなので別にいいのだが、キーヴはもう少し頑張って欲しい。
ミコはヒールや支援バフだけならエルファを越えたので、今のエルファは攻撃のみに集中している。しかし、キーヴはティアにステータスが届いていないのだ。せめて攻撃力ぐらい上回って欲しかった。
「こっちの国は街道が整備されてるのか、楽でいいねぇ~」
ティアがのんびりと料理をしながら言う。
温泉以降は基本的に、俺とティアが料理、エルファとエリザが野営準備やら雑用、キーヴとミコはしばらくは警戒しながら修行という感じである。
「だなぁ。でも何だか鈍りそう。最近まともに戦闘して無いし。訓練だけだしな」
とか言った所で最近は戦闘も苦労が少ないのだけども。敵が弱い気がする……。
「まぁ、今は敵を探したりするより移動がメインだからね~。戦闘になっても街道から逸れて無いから敵も弱いもんね」
ティアも同じ事を感じていたらしい。なんか会話だけだとバトルジャンキーっぽいな。
「ま、さっさと移動完了して、マップ埋めたら色々探索しようさ」
俺もティアも同意見だね。でも探索の前にのんびりしたい気もする。
「あ~……、街までどれくらいかしら」
そう呟くのはエルファ。
「そろそろ着かないと少しめんどくさいぞ」
頷き、後を続けるキーヴ。
「敵が少ないから楽だけどなぁ」
戦闘が少ない分、移動は早い。
「も~。そろそろ落ちなきゃじゃんさ~」
馬上で膨れっ面のティア。ティアの言葉通りそろそろ三日経つのだ。
「落ちるのヤダー。もっと居~た~い~」
駄々っ子のように嫌々をするティア。その様子に流石に三人とも苦笑する。あ、今はエリザとミコはいませんよ? 先行して様子見に行って貰ってるからね。
「たしかにさ、落ちるのめんどいよな。やっぱりこっちの方が居心地いいって言うか」
俺の言葉に激しく頷くティア。しかし、
「でも落ちないと栄養取れないじゃんさ。仕方ないじゃんね~」
続けた言葉でガックリとする。ま、こればっかりはね。どうにもならんぜよ。
「お、ユルよ。エリザ達がいるぞ」
キーヴの指す方向にエリザ達がいた。二人とも馬から降りている。何かあったのかな?
俺達は馬車を引く馬を少し急がせ、駆け寄った。
「どうした、何かあったか?」
「あー……、それが」
エリザは、村を見つけたと、そう告げた。しかし――
「――村人は誰一人生きてませんでした」




