温泉
サイズを測らなかったのは良かったのか悪かったのか……。
男の視線からいうと眼福かもしれないが、女性陣からするとかなり不味い物になったと思う。
測らせない方が悪いのだが見ると申し訳なく感じる。
まず胸当て? だが、盛の少ないエリザは革があまりまくって背中まで覆っている。なんか、ビスチェ? のようになってしまった。
逆にスタイルのよい、と言うか出過ぎなミコは紐が結構ギリギリで、縦の面積は足りたのだが横の面積が少し足りなかった。横脇の下乳が少し見えそうで見えない危うい状態だ。ミコより胸の大きいティアはかなり不味い状況じゃなかろうか。見栄を張ったエルファは現実だとエリザのお仲間だがこちらではティアのお仲間だ。サイズがちゃんと出来なかったのはエルファが原因なので文句を言って欲しくないが、エルファの性格的に確実に文句を言ってくるはずだ。全くもって理不尽だ。
続いてトランクスだが、サイズを間違えたようだ。
他の皆がどんなトランクスを穿いているか分からないが、俺は少々ゆったりした物を好む。なのでその感覚で作ったのは不味かった。
まず第一に女性陣の足は俺より細い。ということは太もも辺りがかなり隙間が増える。しかも革製なのでゴワゴワしているため、形が変わりにくい。そのため作ったトランクスを穿いて座ると……手で押さえていないと隙間が広く中が丸見え状態だった。
しつこいようだが、サイズを測らせなかったエルファが悪い。が、トランクスを穿いた二人を見ると、全面的に俺が悪いように思える。
一応穿いた状態であまったところを抓んでもらい、少し縫い直したがそれでも隙間がかなり出来る。最初よりマシだが……。
それでも二人は文句も言わず、気にしないように言ってくれた。ええ子達や~。エルファだったらこうは行くまい。一応二人にエルファに説明して、原因がエルファにも有るということを理解させて俺だけに矛先が向かないように頼んでおいた。
まあ、色々あったがとにかく温泉、である。
縫い直しなどやって時間は食ったが、それでも一時間もたっていない。一番早いキーヴでも予想だと後一時間はかかるだろうからゆっくりと浸かっていられるだろう。
俺とエリザとミコは例の水着モドキを着て早速温泉に浸かることにした。
「あ~……気持ちい」
ついおっさんの様な声がでた。
少しはなれて二人も浸かっている。笑いながら談笑をしている。ミコが馴染むかどうか分からなかったけど、今までの様子を見る限り皆と打ち解けているようで安心した。
「兄さん、少し泳いでもいいですか?」
しばらくしてミコがそんなことを言ってきた。
この温泉、実は意外と広い。対岸が見えない程広い、なんて事はないが、それでも湯気が多くハッキリとは見えない。
ぐるっと一周してみて分かったが、この温泉の源泉は脇から流れてきているのではなく、どうやら湯の中の何処からか湧いてでているらしい。
「……深いとこがどれだけ深いかも分からないし、湧きでているとこの温度も分からないからな~。危ないから今回は我慢しな」
もし深すぎて足が付かない場合、最悪パニックになることもあるかもしれない。最高温度も分からないし、大火傷をしたらとんでもないので止めておく。
しかしミコが少し不満そうだったので、俺が少し歩き、安全を確認した狭い範囲でなら、と言う条件付で許可した。探った結果、どうやら温泉の中心に行くほど深く、そして温度も高くなっていた。なので源泉はこの温泉の中心あたりから湧いているのだろう。
許可を得たミコは最初はバシャバシャと泳いでいたがすぐに飽きたのかゆっくり浮かぶだけになった。
一時間ほど温泉に浸かったり、出て涼んだりを繰り返したが、流石にのぼせてきたので出ることにした。エリザとミコものぼせたのか一緒に上がった。
温泉から上がって五時間。未だに誰も帰ってこない。ミコとエリザと交互にペアを組んで狩をしたり、訓練したりと時間を潰しているが、人を待つというのはやたらと時間が気になる。それにそろそろ日が傾きだす頃だった。エルファとティアはともかくキーヴまで遅いとは……。
そんなことを思っていたらなにやら近づいてくる気配が幾つか在った。今まで周りにいた雑魚の気配よりは強い感じがする。最近少し気配の強弱がわかる様になってきたようだ。ハッキリとはしないが少し気配が大きい気がする。
ここの周りにいたのはリザードマン種と山羊種。後はジャイアントバット達くらいだと思っていた。ミコやエリザの気配よりは弱いので、そんなに強いものじゃないのは分かったが、それでも警戒はした方がいいだろう。
「ミコ、エリザ」
声をかけると、二人とも俺が少し警戒を強めたのが分かったのかなにも言わずに警戒態勢に入った。
数は少しずつ増え、固まっているので正確ではないが恐らく十を超えている。
徐々に近づいてきたその姿は……




