キーヴ調教前
お待たせしました。
少し中だるみ気味かもしれません。
ちょっと気合を入れる必要がありそうです。
なるべく気をつけます。
活動報告でも書きましたが、現在簡易設定と人物の能力紹介を作成中です。
平行しながら作るので今までより更新が遅れるかもしれません。
ユルに言われて前線へ出ることになった。
「キーヴさん、頑張ってください」
俺の横で体を張ってくれるエリザ。情けないがエリザが護ってくれないと俺はほとんど力が出せない。受けに回るので手一杯になるからだ。
「おう、なるべく負担掛けないようにするわ」
とりあえず、とっとと数を減らしてエリザの負担を抑えないとな。
眼の前に現れたのはヤギの集団だ。おそらく、だが。何せデカイ。俺より少し高いくらいの所に顔がある。高さが約二メートル、全体の大きさは三メートルはあるか? 顔と頭に付いた角がなんとなくヤギっぽいのでたぶんヤギだ。
ヤギ共はこっちを見つけると一気に突進してきた。
「こっちに来なさい!」
いつもの様に《咆哮》で敵を引き付ける。いつものことなんだが、このサイズのヤギの集団を躊躇無く引き付ける度胸がすげぇ。エリザの咆哮でヤギの集団がバラけ、スキルから漏れた数匹を除き、エリザを包囲する形で突っ込むヤギ達。
「よいっせ、っと」
いつの間にかティアがアンカーを地面に打ち込み、それに繋いだロープを引っ張る。エリザに突っ込んだ集団の先頭の数匹がロープに引っかかり、転がる。そしてそれに後続が突っ込み、転がった数匹は肉塊へと変わった。
「俺も行くぜ!《ハードヒット》」
今の俺に出来ることは一匹ずつ確実に潰し、エリザに群がる奴らを減らすこと。
集団から外れ、こっちに突っ込んでくるヤギの一匹に向かいスキルを使い剣を振るう。俺の一撃は頭を潰す、と思いきやヤギの角に阻まれた。
ガギギギ!
耳障りな音を立てて止まる刃。突進の勢いと共にぶつかったのに刃先が埋まることも無い。そしてそれはヤギが頭を振るだけであっけなく弾かれる。
「ふっざけんな! ドンだけ弱えんだよ俺は」
スキルを使っても受け止めるヤギは今の俺には強敵か!?
「キーヴさん、強化してます!?」
「!! してねぇ」
エリザに聞かれて気付いた。
「アホかお前!」
ユルの怒声と共に矢が飛んできた。俺のすぐ横を通った矢を見て、まさか俺を狙ったかと思ったが、一応俺の剣を弾いたヤギの足に刺さっていた。
「危ねぇよ馬鹿」
「うるさい! さっさと倒しなさいよ馬鹿」
エルファまで罵倒してくる。にゃろうめ……
全身強化をし、もう一度スキルを使おうとしたとき、体が更に軽くなった。
「キーヴさん、遅れましたがサポート行きます」
どうやらミコがエリザへの補助魔法が掛け終わった様で、自分に次々と魔法がかかるのを感じた。
「サンキュウ、ミコ。《ハードヒット》」
狙うはさっき俺の攻撃を弾いたヤギだ。ユルの矢を前足に受け、体制を崩していた。超絶好機!
こちらの動きを察知したのか、再び角で受けようとするヤギ。だが、強化と補助を受けた剣速はさっきの比じゃないぜ!
ザク。
振りぬいた剣は左目から首に掛けてを斜めに切り落とし、確実に命を奪った。首から血を吹き出しながら倒れるヤギを横目に、エリザに群がるヤギへ向かう。
サポートを掛ける前に戦闘が始まってしまいました。正確には兄さんに戦闘が始まってから魔法を使えと言われたからですが。
兄さん曰く、戦闘中の方が熟練度が上がりやすく、レベルが上がるのが早いからだそうです。それに併せて、戦闘中でも正確に素早く補助が出来るようにならないとならないので、普段余裕がある時より戦闘中に使う方が成長にもいいとも。
「アホかお前!」
エリザさんへの補助魔法を掛け終わる頃に兄さんの罵声が聞こえました。エルファさんも叫んでいます。
「どうしたんですか?」
キーヴさんが何かやらかすのはいつもの事なのですが。
「あいつ、気功使わずに突っ込んでいやがった」
……あの人はホントに馬鹿です。
「たぶんあの様子だと、普段も使って生活して無いだろ」
会話のさなかも手を止めず、エリザさんに纏わり付くヤギの足を地面に縫い付けていく兄さん。凄いです。
「キーヴさん、遅れましたがサポート行きます」
何とかエリザさんへの補助魔法がかけ終わったのでキーヴさんの補助にまわります。
「修行でしか使ってない、てことでしょうか?」
「だろうな。もしかしたら修行も一つのことしかしてないかもだ」
「ホント、アホね。アイツ」
キーヴさん、フォローできません。
「とりあえずミコも常に発動可能スキルを使ってろ。戦闘時にEPとMP不足ってのは困るけど、自己管理も修行の内だ。寝る時以外は修行だと思っとけ」
その言葉に、はっとなる。事実、後方支援の今現在、自己強化をまったくしていないのだ。あわてて気功を使い、自身の強化をする。
「エルファさん達も常に使ってるんですか?」
ふと疑問に思ったので聞いてみる。
「ん? まぁ、私達は気功とか教わって長いし、ユルが何時も何かしてるようだったからね。私達も真似しようって思ったわけ。気づいたのはシルバと一緒に戦える様になった頃だったかしら」
そう言って馬の首をポンポンと叩くとシルバと呼ばれた馬は嬉しそうに目を細めてます。……一応戦闘中なんですが。
「そんなに気にしなくても良いわよ。ユルが異常、と言ってしまえばそれまでなんだから」
「失礼です。兄さんは異常ではなく、ただ凄いだけです」
「はいはい」
エルファさんも私と話しながら、バインドなどでエリザさんへ一度に向かう敵を減らしています。
私も負けません。
「ぐぅ、EP残量がやばいぜ」
エリザやユルのお蔭で動きの取れないヤギを一刀で切り捨てる。何時もはユル達が短時間で決着を付けるのでここまでEPを減らしたのは初めてだ。
「キーヴ君、錬気してる?」
ティアが横でディフェンスに徹してフォローしながら聞いてくるが。
「そんな余裕ねぇよ」
エーテルを使いながら、それを練るなんて器用なことが戦闘中に出来るか。
しかし、ティアはその返事に軽くため息を吐きながら、
「修行不足だねぇ。錬気とエーテル操作に自己強化。これは常に同時に出来るようにしなきゃ駄目だよ? 後でユル君にちゃんと指導してもらわないとね。強くなるためにはこれ必須。それが出来ると、こんなことも出来るの、だ!」
そう言うとティアは突っ込んでくる一匹のヤギに、短剣を構えて迎え撃つ。ヤギの角をティアの短剣が防いだ。ティアの小さい体じゃ吹き飛ばされてお仕舞いだろう、と思ったがティアは数十センチ後ろに足が滑っただけで、すべてを受け止めた。
「嘘だろ……」
重装備で身長もあるエリザなら分からなくも無いが、どう見ても軽量系の装備のティアが受けれるとは到底思えなかった。
「驚くのは、まだ早い、ぞっと!」
ティアはその状態のまま気功波を放った。その気功波は容易にヤギを弾き飛ばし、数メートルを転がしたのだ。
「自己強化で踏ん張って、全身で受け止めて、気功波で吹っ飛ばした。ただそんだけだよん」
エリザは四方八方からやられるからバインドで止めてるけどねん、と笑いながら再びキーヴのフォローに回る。
「……何じゃそりゃ」
「いや、普段はしないよ? だって一対一じゃないと使いにくいじゃん。今のはちょっとした見本? みたいなものだよ」
ドラゴンを倒した時にはそこまで気にしなかったが、今思う。このパーティはどこまで突き抜けてるんだ。
結局、エルファとユル、それにミコも加わり足止めされたヤギがキーヴに殲滅されるまで一時間かかった。
これからもダラダラとならないように頑張りたいと思います




