旅路7
いつも以上に短いです。ちょっと端折りすぎですかね?
一体何があったのか。
朝起きたときには普通だった。
食事中も特に変化は無かったように思えた。
しかし、いざ出発してみれば、ユルの横にはいつもティアが並んでいた。
特に戦闘らしい戦闘もなく、たまに見つけた薬草や毒消し草などを採取して進み、昼。食後の休憩で調薬をしているユルを置いてティアを少し離れた場所に連行する。見通しの良い平原だ。姿は見えるが声は聞こえないだろう。
ティアに問い詰めようとしたが、先にティアが話し出した。
「……ごめんエルファ。私」
申し訳なさそうにティアが言うその姿を見て、理解した。とはいえ元より予想してもいたことだ。ホントは聞くまでも無い。
「やっぱり、こうなった……か。いいよ。何となくわかってたし。はぁ、この分だときっとエリザも時間の問題かな」
ユルは見た目が女性的なとこを除けば、かなり整った容姿をしている。それに女性的と言っても可愛いなどではなく、大人の美女、あるいは男装の麗人の部類だ。
性格も名前の通り優しく、テンションがおかしい時と何かのスイッチが入った時以外は問題が無い。
それに重度の猫好きのユルに気に入られているのだ。スキンシップも見ている限りかなりしている。おそらくユルには相手が女性という点以上に、見た目、分類上が猫という点が上位を占めているはずだ。ティアに触れるのは女性に触れるというより猫に触れる、とそう認識しているはず。
ティアが堕ちるのが先だと思っていたが、ここまで早いとは。昨日の夜番をティアと別けておくべきだったが、今更遅いし、さっさと寝てしまった自分が悪いのだ。
「ん、ありがとう」
「いいわよ。あ、でもティア。何もしてないでしょうね?」
キッっと睨むとわたわたと手と首を振り否定してきた。
「何もしてない、してないよ。……私からは」
ちょっと。最後の方、聞こえない様に言ったつもりだろうけど、しっかり聞こえたわよ。
「聞捨てならないわね、そのセリフ。な・に・が、あったのかしら~?」
「言う言う! 言うからその手でバチバチしてるの消して!」
何やってるんだ?
エルファ達が離れていってしばらくしたら騒がしくなった。見てみるとティアにエルファが近づいていく。なにやら手の平に光りが見えるが……。
「ユルさん、出来はどうです?」
横合いからエリザがのぞき込んできた。
「ん、割と良いんじゃないかな。といっても暇つぶし程度だから物自体が低ランクだけどね」
実際に作ったものは初級ポーション。ハイポーションは作って来たのがまだ使わずにとってあるし、そもそも初級以外の材料がないしね。
「あの、それ貰ってもいいですか?」
「これを? 別にいいよ。でもエリザにはあまり意味ないような」
確かに市販の初級ポーションより効果高いけどVitが高いエリザはHP自体が高いはず。
「ポーション系の回復薬は飲まずに体にかけると徐々に回復して行くんです。初級ポーションは飲むより体にかけたほうが回復量が多いんですよ」
そうなのか、知らなかった。
「ならミドルポーションもあげようか? 結構作ってきたし」
「いえ、何故か初級以外のポーションは飲んだほうが効果が高いんです。噂だと製造系のレベル上げるのに初級作っても売る以外の需要が無いと勿体ないからじゃないか、って。実際に素材を採取しないで購入して作ると大した金額になりませんし」
「へぇ。いいよ。結構な量出来たしね。需要があるならジャンジャン使っちゃってよ」
「ありがとうございます。でも戦闘が少ないのでそんなに使えないですけどね」
「そうだね。エンカウント率って大体どんなもの?」
「そうですね、平原や荒野だと平均して二日に一回程度ですか。運が悪いと一日に三回ぐらいじゃないかと。森の中だと平均が一日二回だと思いますよ。岩場や森が近いとエンカウント率は上がりますけど。なので休憩はだいたい今みたいな平原で、もし夕方近くに森に入るようなら少し早くても平原で野営の準備をして、次の日に一気に抜けますね。ちなみにダンジョンのエンカウント率はかなり高いですよ」
「やっぱり森は多いのか」
野生の馬を捕るには森に行かないといけないから気を付けないとな。
その後も戦闘は無く、三日目の昼、森が広がり始め、その手前に小さな村が見えてきた。
カヴァーロに着いたのは夕方近くだった。




