再会
一話一話が短いですね。そしてその割にペース遅いですね。すいません。
ところで前回の乗馬法ですがかなり適当です。流鏑馬してるひとに少し聞いただけなので、信用せずにいてもらえると助かります。
サブタイトルに関してもいい加減なので話の大筋と全く関係なかったりもします。大目に見てやってください。
地味ながら閲覧回数が増えていくのが嬉しく励みになります。
これからも楽しんで読んでいただけるよう頑張ります
今回も説明が多い回です。サクサク進めと思われるかもしれませんが、長い目で見ていただけると幸いです。
「せい! ハッ、ハァッ」
馬上で二振りの刀を操る。振り下ろし、横に薙ぎ払い、馬と共に疾走していく。
《人馬一体》。《乗馬術》《騎馬術》と修得し、六日目の昨日に漸く修得したこのアビリティ。手綱を引かずとも俺の意思を汲んで駆けてくれるアス。騎馬術の時にはまだ手綱を握らないとならず、右で振るう刀は当然左側面に隙を作った。しかし、人馬一体となった今では両手で刀を操り、弓を引く。もはや隙など感じさせない。
「なかなかやるじゃないか。もう馬で旅に出ても問題ないだろう」
七日目の今日、ペイドさんからお墨付きを貰った。まぁ寝るとき以外の時間をほとんど馬の上で過ごしたのだ。現実じゃ出来ないことだね。バーチャル万歳だ。
「これでユルも一人前だ。記念に馬を一頭、と言いたいとこだがあいにく此処の馬は全部国の管理になっててな。俺が勝手にやるわけにはいかんのさ。ミルスの街では馬は扱ってるとこはないからな」
ペイドさんの言葉で少しがっかりした。折角ここまで乗れるようになったのに意味ないじゃないか。
「じゃあどうすればいいんですか? せっかく乗れるようになったのに」
「そうだな、方法は二つ。ミルスから南西に三日歩いたところにカヴァーロって村がある。そこに行けば馬が買えるはずだ。もう一つはそのカヴァーロから西の森に野生の馬が集まる泉がある。そこで捕まえるかだ」
「カヴァーロですか、わかりました。じゃあそこで馬を手に入れます」
「おう、そうしな。ただ、人に飼われてた奴より野生の奴の方が脚も強いからな。俺としちゃ捕まえるのをお薦めするぞ。噂じゃ、どこかの森にはスレイプニルって奴が居るらしい。ありゃあ最高級の軍馬だ。是非ともお目にかかりたいもんだ」
やっぱり野生の方がランクが上なのか。なら捕まえるにこしたことはない。
「色々ありがとうございます。じゃあ俺は準備してから行ってみますね」
「おう。もし、いつかスレイプニルに乗れたら是非見せに来てくれ」
「もちろんです」
そうして俺は牧場を後にした。街で準備を整えて脱初心者、そしていざ冒険へ。
街に戻って思ったけど、最初の街にしては結構人が多い。
街道沿いに露店が並び冒険者で溢れている。 素材から加工品まで様々だ。
「あれ? ユル? 何か買い物?」
露店を見てた俺に後ろから声をかけたのはエルファだった。
「てかあんた、少しは連絡しなさいよね。キーヴはマメに連絡してくるのに」
「あぁ、悪い。特に用とかも無かったし、色々やってたからさ」
「はぁ……まあいいわ。」
「ところでエルファはここで何してるの? 初めの街にしては人多いし、ここって何かある?」
「私はここに素材を売りに来てるのよ。それにまだこの国は二割も開拓されてないのよ。世界全体でみてもまだ一割にも満たない。転移ができる大きな街もまだ一ヶ所だけだしね。だからまだ此処を拠点にしてるプレイヤーが多いのよ。自然と露店も集中するわけよ」
なるほど、と思ったが一つ気になることが。
「半年も経ってるのにまだそんななのか?」
そう、現実で半年。ということはここでは既に一年半が経っていることになる。なのに未だ全世界の一割以下という。
「なら聞くけど、一日中歩きでモンスターと戦いながらどれだけの距離を進めるの? もし仮に日本くらいの土地面積の国を一年半でどれだけまわれるのかしら? 人が多く行き来する町や村しかちゃんとした道がないこの国で」
半分据わった目付きでずいっと詰め寄られた。怖い。
「悪い、ごめん。すいませんでした!」
もう謝るしかない。
「……なんて、私も実際に旅してみるまでチョロいと思ってたのよ。正直なめてたわ。それにこのゲーム作った奴、現実感出しすぎ。あんた初心者のエリア行った? 東門のやつ」
「行ったよ。こっちの時間で十三日位かな? 籠ってた」
「……あんたそんなに何やってたのよ。まあいいわ。あんた徹夜した?」
「ほとんど牧場にいたよ。徹夜もしたし」
「ほとんど牧場って……アホだわ」
肩を落として呆れている。俺としては結構することあると思うのだが。
「兎に角、徹夜ができるのは街や村の中とあの初心者エリアだけよ。正確にはゲーム中の時間で夜に活動できるのは限られた場所だけよ」
「はい? どう言うこと?」
「どういうわけか街などの特定の場所は負担がカットされるみたいなの。現実に脳が活動できる限界まで遊べるみたい。でもその特定の場所から出ると、ゲーム内の活動範囲で疲労が溜まるのよ。そして眠気もくるわ。特に何もしなくても夜になって個人差はあるけど十一時には眠くなるわね」
ゲーム作った奴ホント凝りすぎ、と愚痴りながら続ける。
「そのせいで夜は休まないといけないし、モンスターとかもいるから見張りがいるし、そうなるとソロじゃ無理だからパーティーかキャラバン組まないとだし。ほんと開拓進まないわ」
初めて聞いた。エルファも最初は知らなかった口ぶりだし、公式に載ってないのかも。
「それはなんというか、すごいな?」
しかしエルファは笑いながら続ける。
「ええ、すごく大変。でもすごく楽しい。まるで現実なのよ。他のゲームにはこんなリアリティー無いわ。時々これがゲームだって忘れてしまう。此処に現実がある。そしてそこで生きてる。ホントに《new life》よ。もう一つの世界、もう一つの私の人生」
そう言って笑っている。すごく生き生きと。




