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New Life  作者: basi
11/69

牧場

作者は無計画です

色々大目にみてください

 ログアウトしてしっかり半日寝た俺は(もう夕方ですよ)空腹を満たし、情報収集を行っていた。

 実はゲーム内でネット掲示板がないのだ。運営の中途半端な現実重視という名目で。

 なので今の時間を使って調べるのさ。《刀術》《二刀術》《体術》にスキルがない訳を。


 わかったのは《刀術》は基本アビリティでスキルといえるものは『構え』とそこからの『一閃』のみらしい。『上段』『正眼』『下段』『八相』『脇構え』『無位』それらを使いこなし、初めて《刀術》から《日本刀術》《西洋刀術》《抜刀術》と派生するらしい。ちなみにこのゲームでの西洋刀と剣の違いは片刃か両刃かで分けているらしい。ちなみに50センチ以下のものを短剣、それ以上を刀や剣としている。 《二刀術》と《体術》も同じで《双刀術》と《武術》になるらしい。《双刀術》は前提として《日本刀術》《西洋刀術》が必要らしい。余談だが《双剣術》には《片手剣術》《短剣術》が必要だとか。


「詳しいスキル構成とかちゃんと調べてから始めるべきだったのかな。チカが怒るのも当然か……。まぁいいや。今日もインするか」

 さて、今日も楽しもう。



 インしたのはログアウトした樹の上。今日の予定は牧場へ行くこと。と思ったのだが、樹から下りた俺は動けなかった。

 一人の女性が樹の下で寝ていたのだ。 アクティブモンスターの多い森で寝ているのだ。よく今まで襲われなかったものだ。

 しばらく起きるまで待とうとしたが起きる気配がない。

「おい、あんた。起きろ。おい、起きろって。死にたくないなら起きろってんだ!」

 ゆさゆさ揺すってみるが起きない。叩き起こそうかとも思ったが何となく止めた。可哀想だし。

 かといって、放って置いたら多分死ぬだろうし。どうしようか。


 あれから何度か起こしたが起きる気配はまるでなく、仕方ないので担いできた。

 平原ならアクティブモンスターは居ないし、このゲームでは女性に悪戯は出来ないしPK率もかなり低い。なので平原の街の近くにおろした。

「やれやれ。何やってんだろうね、俺は」

 普段ならこんなことはしないのだが。

 まあいい。と気持ちを切り替え、ゲームを楽しむために牧場へと走ったのだ。


 牧場には多くの馬と羊がいた。

 このゲームでは馬などの騎獣を移動手段とできる。世界を開拓するのには必要なものである。

「すいません、馬に乗りたいんですが」

 牧場主に声をかけると1000ガルだと言われた。

 支払ったら馬を引っ張ってきて渡された。乗れということだろうか?

 すると何も言わずに牧場主は何処かへ行ってしまった。

 何とも無愛想なNPCだろうか。乗り方のレクチャーも何もなしだ。

 何とかよじ登って跨がることに成功したが、さて此からどうするのか。

「……なあ、お前乗り方教えてくれないか?」

 馬の背をポンポンと叩いて聞いてみる。馬に話しかけるとか傍目に見たらどうなんだろう。

 でも無茶して暴走でもされると困る。

 悩んでいると馬が此方を見て「ブフン」とため息をついた。馬にも飽きられてしまったのかと思うと泣きたくなる。

 落ち込んでいると馬が首を「やれやれ」といった風にふると歩き出した。

「うぅ……どう見てもバカにされてる」

 ゆっくりかっぽかっぽと歩いているが俺が動かしている訳じゃない。

「なぁ、お前のご主人の所に行ってくれないか? 乗り方とか聞きたいんだ。頼むよ」

 もう開き直って話しかける。すると「フン」と息をつくと、向きを変えて歩き出した。

 言うことを聞いてくれたのだろう。しかし言葉がわかるのか? ファンタジーだ。

「悪いね。ありがとう」

 ポンポンと背中を叩くと、「ヒッヒッヒ~ン」と鳴いた。



 馬の案内で牧場主の所に行くと驚いた顔で出迎えられた。

「……どうやってここへ来た」

「いや、こいつに頼んだら連れてきてくれた」

 正直に言う俺に眼を丸くする。そしてニヤリと笑ったのだ。

「珍しく筋がいい。それで俺に何の用だ?」

 無愛想だった牧場主が話しかけてくる。これはイベントの発生か?

「いや、馬の乗り方とか教えてほしいんだけど」

「ふん。いいだろ。少し教えてやる」

 そう言うと乗馬指導が始まった。


「良いか? 馬をただの乗り物だとか思うなよ。コイツらは友だ。一緒に旅をする戦友なんだよ。鞭や手綱でどうにかしよう何てやつらは駄目だ。あれじゃあただの移動手段にしかならん」

 ペイドと名乗った牧場主の目が鋭くなる。

「あんな奴等に乗られる馬が可哀想だぜ。良いか? 戦闘で馬が言うことを聞かない奴等は馬に乗ってるんじゃない、馬が乗せてるんだ。馬が乗ってる奴を信用してないから戦闘では言うことを聞かない」

 ニヤリと笑って俺の肩をバシバシ叩く。

「お前はアスに、ああ、アスってのはお前が乗ってた馬だ。アスに少しだけ信用された。だからここにこれた。しばらくここに居てコイツらと仲良くなれ。そしたら乗り方から何から教えてやる」

 それから俺の牧場生活が始まった。

 仲良くしろと言われたが何をしていいのか分からず、取り敢えず戯れた。

 ブラシかけたり、散歩したり水浴びしたり。馬だけでなく羊も一緒に戯れた。

「ペイドさん。こいつの毛刈っていい?」

「そいつに聞け。そいつがいいと言えばいちいち俺に許可取らなくていい」

 ペイドさんにとっては牧場の動物達の意志が優先順位が高いらしい。

「なあ刈らせてくれよ。ほら、こっちに来て」

 来い来いと手招きするとひょこひょこと寄ってきた。捕まえてゴロンと転がすと、転がったまま此方を見て「ンメェ~」と鳴いて大人しくなった。

「おぉ、サンキュー」

 毛をわしわしと撫でてやると耳をピクピクさせて「ェ~」と小さく鳴いた。

「……意外と可愛い」


《ピンポン。アビリティ《テンプテーション》《獣達の相棒》を取得》


 新しいアビリティだ。《獣達の相棒》は……予想通り、動物や比較的大人しい魔獣と心を通わせ使役できるようになる、というもの。

 そして俺は《テンプテーション》の説明を見たときこれは駄目だろうと思った。

 

《テンプテーション。誘惑。動物や異性を誘惑し、自分の言うことを聞かせやすくする。野生動物や魔獣の捕獲に必須。稀に同性にも効果がある。本人の魅力が影響。《自制心》の取得者には効果が薄い》


 これって駄目じゃない? 人間相手に効いたらいろいろ危ないだろう。しかも同性に効果があるとか嫌過ぎる。

 そんな思いとは裏腹に動物達と戯れ、テンプテーションは徐々にレベルを増していったのだ。


「そろそろよさそうだな。馬の乗り方を教えてやる」

 牧場生活六日目。ようやくペイドさんに乗馬を教えてもらえるらしい。

「いいか、一番大事なのは前も言ったが心を通わせろ。戦友なんだ。対等に扱えよ? 乗ったときに重要なのは姿勢だ。猫背も駄目だ。前のめりにも後ろにも反らず姿勢を正せ。それと鞍に座るんじゃねぇ、腰を落とすだけだ。馬は股で挟んでで体を固定して中腰が基本だ。出発するときは手綱を緩めて軽く腹を蹴れ。止まるときは腹を足でしっかり挟んで手綱を引け。後は慣れだな。ちゃんと乗れるようになるまでアスを貸してやるよ。自由に乗りな」

 それだけ言うと尻をぱしんと叩き仕事に戻っていった。

「さて。アス、よろしく頼むよ」

「ブフン」

 それから一週間、乗馬の日々が続いた。

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