3 私の名前は発音が難しい?
主人公の名前からして間違ってたっ((((;゜Д゜)))))))
訂正しました!
「…お前はアホなのか?それともバカなのか?」
一人ヒートアップしている私に、彼は至って冷静に聞いてくる。
おいおい、そんなに見つめるなよ!眼鏡がズレるじゃねーか♡
美形に見つめられるなんてことは、生まれてこの方、女性しかない私。例えそれが憐れみの眼差しだったとしても…、恥ずかしいんだよ!このヤロー☆
ずれた眼鏡(叫んだときにずれただけ)を直しつつ、少しだけ冷静さを取り戻す。
「私は生粋の日本人ですが。というか、ここどこですか?」
迷子になったら、現在地の把握ぐらいはすべきでしょ?成人しちゃったし、自分でできることはすべきかと。
「はぁ…。お前はアホなうえにバカなんだな。ここは聖リディール帝国帝都サージルにある皇宮内皇帝専用執務室だ」
深いため息と暴言は聞かなかったことにしといてやろう。全然知らない国名だったけど、あんたは確かに偉かったとわかったしな!皇帝専用執務室に入れるのなんて皇帝か側近か、一部の使用人ぐらいなもんだろう。こんな態度のでかい奴が使用人な訳がない!
「…ちなみに、日本もしく地球というところはご存知で?」
「知らんな」
もしかしたらと思い尋ねたことは、 ばっさりと切って捨てられる。やっぱりねと思いいつつも、落胆してしまうのは仕方ないと思う。
「そうですか…。で、私不敬罪とかで死ぬんですかね?」
刃物を突きつけられているから、最悪の想定もしてみる。別に死にたくはないが、世の中には逆らい難いものもあるし?人間諦めが肝心な気がする。
「…お前は死にたいのか?日本人」
片眉を器用に上げて奇妙に唇を歪ませる彼。て、いうか私の名前日本人じゃないし。
「ああ、申し遅れましたが私丸井まあると申します。そして、死にたくはないです。牢屋も嫌です。私は真っ当に生きて真っ当に死にたいんで」
自己紹介も兼ねて、訴えてみる。本当は三食昼寝付きの職場でも紹介して欲しいところだが我慢する。
「マーイマール?変な名だな」
フンと鼻で笑い、私の名前をバカにする。
「…変なのはあんたの発音。ま・る・いが名字でま・あ・るが名前!」
バカにされた仕返しに懇切丁寧に教えてやると、彼の眼光が鋭くなる。
「お前、誰に口を利いている」
再び、あの地を這うような声がする。微妙に寒気を感じるが気にしないでおこう☆
「誰って、あんた。私あんたの名前知らないし。自分の名前は確かにおかしいかもしれないけど、初対面の奴にバカにされたくない」
彼は偉いんだろうし、もしかしたら皇帝陛下とかいうヤツかもしれないが、日本人の私には関係のないことだ。しかも、散々名前でからかわれてきた私には名前をバカにされると我慢ができないのだ。
下から私が睨み上げ、彼が上から私を見下す。一時の間、沈黙が場を支配するがそれは彼の低い笑いで破られた。
「くくっ、お前は面白いな。まぁる?」
「違う、ま・あ・る!別に面白くともなんともないし」
笑いだしながら私の名を呼ぶが、微妙に違う。即座に訂正を入れてやり、思いっきり顔を顰めてやる。
彼はうむと頷くと、また私の名を呼んだ。
「マアール?」
「違う!!」
「マールー?」
「違う!!つか、伸ばすな」
「…マル」
「…もういい、なんとなく原因がわかったか。マールが一番近いからそれでいいよ」
どうして彼はうまく発音できないのか…。きっとこれも異世界マジックのひとつということだ。
私と彼は言葉が通じる。が、実際は違う言葉をしゃべっているという可能性でいくと、日本語の発音が外国で妙になるのと同じ原理なのではと思われる。自動的に翻訳されて聞こえるが、固有名詞についてはもとしゃべっている言葉のまま聞こえるという感じじゃなかろうか?
「何を疲れている?」
不思議そうに見下ろしてくる彼に、あんたにだよっ!という元気もなく下を向いてため息を吐く。
「なんでもない。敢えて言うなれば、カルチャーショック?…なんか違うか??」
今の気持ちを伝えようとしたものの、軽く挫折する。
仕方ないじゃないか!異世界なんて初めてだし、どう言えばいいのか全くわかんないんだから…。
だから、可哀想な目で見るな!