21 無理でした…
ソレは神への冒涜です。例え神が許したとしても…私は絶対にゆ・る・さ・んっ!!
別にすね毛が嫌いなわけじゃない。ただ、私の理想過ぎるその人にすね毛があるのが許せない…。
最早直視できなくて、書類が散らばってはいたが構わずベッドに突っ伏した。
「陛下っ!!いつまで篭っておられるのですかっ!?」
突っ伏した私の耳に野太い怒声が飛び込んできた。
まさかと思うが、あのすね毛の声だろうか…?
うん、なんとなくだけどね、股にぶら下がっている方だとは思ったけどね…。でもね、許せない…許せないんだよ私は!
「喧しい。マールに食事を与えてからだと言っただろう」
ジェイの声は、私に向けられたわけではないが、底冷えのしそうなほどの重低音だ。通常時であれば、関係なくてもビビってしまっていただろうその声に、今はなんだか背中を押されている気がする。
思い切って顔を上げ、ジェイを見る。意地でもすね毛は視界に入れてやらん!
「どうした?」
明らかに挙動不審な私なのに、さっきとは打って変わって優しい声のジェイ。その顔をじっと見つめ、私は目が潤むのを止められなかった。
そんな私を見るジェイの眉間に皺が寄る。そして、ジェイは冷気を発しながらすね毛の方を向く。
「…ごめん、ジェイ。世の中には決して許せないものがあるんだね…」
横顔のジェイを見つめながら、ジェイにそう告げると、ジェイに掴まれたみだった手を振りほどき、眼鏡を外す。
そして、すね毛を見ないようにすね毛が開け放った扉に向かって走り出す。
「マールっ!?おい、マールっ!!」
「陛下、ここはお通しできませんぞっ!!」
すね毛の脇を通り過ぎる時に一瞬ゾワッとしたが、無事に通り抜ける。背後でジェイとすね毛の攻防が聞こえたが構ってはいられない。
脳裏に焼きつく、理想に生えたすね毛…!
「ごめんなさぁぁぁあああああいっ!!私、あなたじゃ…勃ちませぇぇぇええんんんんんっ!!!!!」
私の脳内では、すね毛(♀)×私(♂)の妄想が繰り広げられ、敢え無く敗退していた。