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怪異探偵事務所   作者: 夜乃桜
置き忘れた想い
5/7

迷惑な甥

ノックもなしに、部屋に入ってきたのは一人の男性。


(誰だ?)


ふくよかな体型で恰幅の良い、いかにも高級品だとわかる金の腕時計をした40代ぐらいの男性。

男性は仁をじろじろと不躾に、珍しい色と整った容姿をした玲奈に一瞬見惚れて、舐めるようにみていた。玲奈はそんな視線に慣れているのか、気にせずに紅茶を飲む。


「まぁ、修さん」

「こんにちは、伯母さん」


声をかける祥子に、男性は素っ気ない挨拶。視線は玲奈に向いていて、仁はそっと男性の視線から玲奈を隠した。不愉快だったのだ。


「紹介するわ。玲奈さん、橘さん。こちらはわたくしの甥の野崎(のざき)(おさむ)さん。修さん、こちらはこの家の異変を調べてもらうために来てもらった……」

「伯母さん、いい加減にしてください。警察が言っていたじゃないですか、何も問題ないって」


修は祥子の言葉を遮る。


「でも……」

「異変なんて伯母さんの気のせいですよ。そんなに心配ならこの家を手放せばいいじゃないですか」


仁と玲奈を無視して、苛立ちまじりに修は言う。


「手放すなんて……それは出来ないわ。ここはわたくしの大切な家ですもの」


祥子は首を横に振る。無くなった夫との思い出がある家を、手放すことはできない。


「また、そんなわがままを言って。伯父さんが亡くなって、伯母さん一人ではこの家の管理は大変でしょう。たかが家の一つぐらい、売ってしまってもいいじゃないですか」


やれやれと呆れる様子の修に、祥子は悲しそうな顔をする。祥子のことを考えていない、不躾な修を、仁と玲奈は不快に感じた。


「なので、部外者は帰ってもらいましょうか」


修は、仁と玲奈を追い出そうとする。特に、仁に対してはあからさまだ。

困ったことになった。依頼を引き受けたなら最後まで調査をする。それが、亡き養父の決めた『橘探偵事務所』の方針だ。今回は他人によって引き受けさせられた依頼だが。

修の不躾な態度には、腹がたつ。しかし、依頼の身内である彼と、問題を起こすのはよくない。どうするか、仁が思った矢先に、玲奈が立ち上がる。


「失礼」


不躾な修の態度に、不愉快な顔をしていた玲奈が切り替えて、人当たりの良さそうな笑顔をみせる。


(……眼が笑ってない)


仁は引きつった顔で、戸惑う祥子と共に、玲奈と修の成り行きを見守る。


「なんですか?私には今後の予定があるんですよ。早くしてくれませんか」


玲奈の美貌に見惚れながらも、修を迷惑そうに言う。


「そう言われましても、しばらく祥子さんの家に滞在する予定なのですよ」

「滞在するまでもありません。家には異変など起きていませんので、調べても無駄ですのでお引き取りを」

「そういう訳にはいきません。私どもは、祖父の友人である祥子さんの相談を受けて、祥子さんのお力になろうと来ました」

「そうですか。それでしたら、私がいますので問題ありません」

「失礼ですが、あなたには荷が重いかと」


玲奈が、フッと鼻で笑う。様になっていた。


「なっ、あんたには関係ないことだろ!部外者はひっこんでろ!」


カッとなった修が、玲奈に怒鳴りつける。わかりやすい男だ。

怒鳴られても玲奈の笑顔は崩れなかった。ただ笑っていなかった眼が、研ぎ澄まされた刃のように鋭くなっていく。玲奈の美貌と真紅の瞳の鋭さに、修は後ずさる。


「すでに祥子さんの許可は貰っています。なので、祥子さんの家に滞在します。よろしいですよね?」

「し、しかし……」

()()()()滞在してもよろしいですね」

「ハ…ハイ……」


玲奈の迫力に負けた修が呆然と返事。仁が口をはさむスキがない。


「それでは、失礼させてもらいます。それでは祥子さん、また後で」


玲奈はにっこりと笑顔で挨拶。そして、仁の腕を掴んで部屋を出る。仁はされるがままである。


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