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「私が最期に植えた花」  作者: 夜影 月雨
9/40

敬語。そしてタメ語

 美華「ちょっと...!あそこのベンチに座ってる人、海さんじゃない?」

彼女は私の耳元でそう囁いた。


 昨日は昼間にいたが、今日は朝。

昨日見た時と変わらず、テンションが低そうな雰囲気だった。


 まさか彼がいるとは思わず、急な出来事で頭が真っ白になり、何も動けない私。

 

その様子を見ていた彼女は、私に言った。

 

 美華「私まだ走りたい気分だから、せっかくだし話しておいでよっ!」

そお言って肩をポンッと軽く叩き、彼女はその場を離れていった。


 その場に取り残された私。


なぜだろう。始めは何も気にすることなく話せていたはずなのに、緊張してしまう。


 "でも話したい"


その気持ちが少しずつ強くなり、気づけば足が軽くなっていた。


彼に少しずつ近づいていく...。


すると、またあの香りがしてきた。


甘く、優しい香り。


そう、ミモザの香り。


彼の香水の香り。


 その香りがしてきたと同時に、彼が私に気づき、目が合った。


 海「あっ。おはようございます!」

彼は私の顔を見上げながら軽く会釈をした。


 唯愛「おは...おはようございます!」

彼の声を久しぶりに聞いたからか、なぜか心臓の鼓動が早くなる私。


だがなぜか、自然と彼の座っているベンチについ座ってしまった私がいたのだ。


それから何事もなく自然に会話が進む。


 海「久しぶりですね。ちゃんと毎日走られてたんですね」


 唯愛「はっはい...」


 海「僕はしばらく休んでました...。その間病院にも行ってきました」


 唯愛「膝どうでした?」


 海「やっぱりこの歳で急に走るもんじゃないって言われたよ」


 唯愛「やっぱり」


 海「だから、ずっとお礼が言いたくてね」


 唯愛「お礼なんてそんな...私あの時つい怒っちゃったから」


気づけば自然と敬語がなくなる2人。


 海「いやいや。僕はなんでも面倒くさがりだから、あの時言ってくれて本当に助かったよ」


 唯愛「でも、親でも友達でもない人にそんな事言われたら腹立つでしょ?」


 海「そうなのかもね。でも君に言われたときはなぜか腹が立たなかったな。本当にありがとう」

意識して言ってるのかさりげなく口説かれているのか、彼の一言一言が気になってしまう。


 唯愛「いっいえ...私の方こそすみませんでした」

少し動揺していたが、やっと謝ることができた私。

彼は怒ってないと言っていたが、自分の中でずっと気になっていたのだ。


 海「そおいえば...名前聞いてなかったね。君って言うの普段使わないから違和感あって...」


 唯愛「私も少し違和感がありました。」


 唯愛「七瀬...七瀬唯愛と言います!」

改めて名前を聞かれると、落ちついたはずの鼓動がまた再発した。


 海「七瀬さん...ね。今日は会えてよかったよ。また今度ね」

そお言いながら彼は立ち上がり、ニコッとして帰っていった。


 七瀬さん...。で一瞬止まったのはなんだったのだろう。


 それに会えてよかったって言われると自然とこっちも嬉しくなる。


 そしてあの笑顔。


 元々目が細く、優しそうな顔なのに、さらに目が細くなり垂れ目になって...。



 彼との会話を1つ1つ振り返りながら少し気持ちが浮かれていた私。


話しかける前の、切なそうにしていた彼を...


私は忘れてしまっていた...

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