第八話 モンスター図鑑
「――で、コレが、さっき倒したヤツの項目♪」
「ふーん、まだ埋まってない項目だらけだな」
タクヤ達四人は、モンスター図鑑なるものを読んでいた。
『説明しよう! モンスター図鑑とは、このゲームに出てくるモンスターを記録するもので、出合って倒したモンスターが、記録されていくシステムになっている。出合って逃げたり、倒されたりしたモンスターは記録されない。全項目を埋めると、何か特別なアイテムをもらえる、というウワサがある』
「よーし、乗り掛かった舟だ。こうなったらこういうおまけ要素も完全網羅して、完全クリア目指すぞー!!」
「おー……」
「……」
タクヤの決意に、露骨にテンション低めに答えるノノと、声すら出さないタケヒコ。
「どうしたんだ? 皆」
フー、やれやれと、ため息をつきながらセルジュは言った。
「タクヤぁ、このモンスター図鑑、完璧に埋めるのって大層手間のかかるコトなんだよ?」
「俺はこのゲーム、3週間前にクリアしたけど、図鑑は7割くらいしか埋まらなかったな。色々条件が合わないと、出てくることすらないモンスターも居るんだよ、魔法石を9つ集めないといけない、とか」
付け足すようにタケヒコも口を開き、言った。
「でもよう、やるからには完璧にやりたい派なんだよ、俺は。あと、俺をハブったあの家族への復讐心が、中途半端に終える様じゃあ納まりが……ん? 何だあのスライム、前のより小さい……!」
『コスライムが現れた!』
「おいおい、またバトルかよ」
「ここはっ! 私に任せて!!(一度言ってみたかったヤツ)」
タクヤが腰を上げようとすると、意気揚々とノノがコスライムの前に立ちはだかった。
「フレイム!!」
「ボワッ」
「ぬー」
『コスライム、HP:0/10、コスライムは倒れた』
コスライムはもう1体居た。セルジュは身構える。
「やれやれ、仕方ないなぁ。では、私も♪」
「待て! 回復魔法しか使えないお前が、どうやって戦うんだ!!?」
心配するタケヒコをよそに、セルジュはコスライムの前に立ちふさがる。
「ぬっ!」
コスライムはセルジュに視線をやった。
「やめろおおおおおおおお!!!!」
「てい♪」
「ゴッ」
セルジュはコスライムを杖で叩いた。
『コスライム、HP:0/10、コスライムは倒れた』
「よし♪」
((その杖、そんな使い方があったんだー!!))
タケヒコ、ノノ、そしてタクヤは開いた口が塞がらなかった。
何はともあれ、
『勝利! タクヤ達は経験値をもらった』
「やりぃ! 何もしないで経験値もらえるとか、メシウマっしょ?」
ゲス発言を堂々とするタクヤ。テロップを注視する。
『タクヤ、Lvアップ、4→5。ノノ、Lvアップ、3→4』
「よーし、これでタケヒコと同じ、レベル5だ! やったぜ」
「パーティが同じだから、よっぽどのことがない限り、レベル抜かれないんだけどな」
タクヤはタケヒコと会話を交わす。そこへ――、
「私、やりましたよ! 私一人で、1体! しかも、一撃で!!」
ノノが大はしゃぎで声を掛けてきた。
「んぁ?」
「え?」
悪そうな顔つきでタクヤはノノに近付いて行った。
「レベル22とは言え、セルジュが杖で叩いただけでお陀仏するような敵だろ? そんな程度の敵だぜ? 雑魚を狩って嬉しいか?」
「はわぁああ!」
ガクッとノノは両ひざを地面についた。
そして――、
顔を伏せ、泣き、崩れる。
「うわぁぁああん」
「オイ、ちょっと言い過ぎだろ!? お前、昔っから冗談が過ぎるトキあったからな。ちょっと気を付けろよ」
「今のはタクヤが悪いね♪」
タケヒコとセルジュはタクヤに言い寄る。
「う……、ノノ、ゴメン」
「うわぁぁああん」
「え?」
「うわぁぁああん」
ノノは中々泣き止まなかった。
小一時間(体感時間で)後――、
「ぐすん……もう許しません。タクヤ君が瀕死になったら、私のフレイムで火葬しますからね」
「分かった、悪かった。それでいいよ」
『ノノはタクヤと謎の契約を結んだ』
――
「で、さっきのはコスライム。スライムよりは少しだけ珍しいモンスターだよ♪」
「へー、スライムでも、色々居るのな」
セルジュとタクヤはモンスター図鑑を眺めていた。
「経験値とかは、どうなってんの? モンスターとしての強さは、スライムより弱かったけど……」
「珍しいモンスターの方が、経験値は高い、つまりコスライムの方が高くなっているよ♪」
「ふーん、珍しいモンスターは出合えるだけで会っていけばいい感じだな、ん?」
セルジュと会話していたタクヤは、何かに気が付く。それは、草むらの中に輝く何かだった。
「あっ、またモンスターか何かか?」
「待って、アレは……」
『レアスライムが現れた!』
そこには、光り輝く金色のスライムが居た。
「何か、あっきらかに珍しそうなのが出てきたぞ!?」
「はわわ」
「コイツは……」
「うん! かなりのレアものだね♪」
タクヤ、ノノ、タケヒコ、そしてセルジュは、戦闘態勢に入った。
「レアスライムが出てくる確率は1/5648! 絶対倒そうね♪」
「ああ、言われなくとも! 足は遅そうだ。一気に叩くぞ!!」
セルジュとタクヤは会話を交わし、即座に『戦う』コマンドを押した。