第四十五話 再会
「ノノぉー!! どこだー!?」
タクヤは叫びながら、森の中を進む。足にまとわりつく草木を、装備している銀のナイフで切り裂き、少しでも早く、前へ前へと進んでいった。
――、
数十分進んだだろうか。タクヤは『深き緑の森』のボス、『うごめく大樹』が居た場所へ辿り着いた。ふと、先の方へ目をやると、魔法使いらしき姿の者がしゃがみ込んでいた。
「ノノか!? おーい! ノノ!!」
タクヤは走って近付き、その姿を確認した。
「! ノノ……」
魔法使いの正体はノノだった。タクヤは安堵の表情を浮かべた。すると、
「いーんだ。私なんてどーせ足引っ張るんだ……」
「!?」
タクヤは病気にでもかかっている様な、今にも死に絶えそうなノノの表情を見て、絶句した。
「私なんて何もできなくてすぐ力尽きて終わるんだ。一人だけレベル置いてかれるんだ」
「ノノ……さん?」
「へへへへへへ。いーんだ。みーんな終わるんだ」
「おい!!」
「へへへへへ、えへへへへへへ」
「おい!! ノノ!!!!」
「ッハ!」
ノノは謎の誤動作から再起動して挙動が直ったPCの様に正気に戻った。
「ノノ、気が付いたか……?」
「タ……タクヤ君?」
「メンヘラってる場合じゃねえぞ。他の皆探して、合流だ」
「私……」
「?」
「この辺から、ゲームの難易度に圧倒され始めて……」
「? それで?」
「それで、最後までクリアできなくて……ちょっと、思い出しちゃってた」
「それについては心配するな」
「?」
「安心しろ、この俺が全クリまで導いてやるよ」
「ぷっ、何それ?」
ノノは思わず、数億年我慢してきたかの様な笑みをこぼした。
――、
「『深き緑の森』には、もう仲間が居なさそうだから、他のマップへ行くか」
タクヤの提案に、コクリと首を縦に振るノノ。
二人は、マップ『深き緑の森』から出るコトとした。そして『深き緑の森』の次のマップにあたる、『底無しの沼地』に進むコトとなった。
『底無しの沼地』にて――、
ジトッとしていて、湿度の高い蒸し暑さと、ぬかるんだ地面とが相まって、プレイヤーの体力と集中力をじわじわと奪う、そんなマップ――、そこを二人が歩いている時、
「暑いな、ノノ」
「はい……! タクヤ君! 後ろ!!」
「!?」
タクヤはノノの一声に振り返る。と、そこには口が裂けるほど大きく口を開いた毒蛇がタクヤに迫っていた。
「! ……」
タクヤは冷静だった。装備していた銀のナイフで、スパッと毒蛇を文字通り一刀両断してのけた。
『毒蛇を倒した、血清を手に入れた』
「さすが!」
「?」
タクヤは腑に落ちないというか、顔中にハテナマークを浮かべていた。ノノは不審に思い、声を掛ける。
「どうしましたか?」
「いやあ、いつもなら『俺のターン!』とかってターン制の戦闘が始まるのに、今回はそれも無く、アクションみたいに敵と対峙しただけで戦闘終わったからさあ、何でかって」
「『ステータス差における1ターンキル』、ですね」
「!? つまり……」
「はい!」
「どういうことだってばよ?」
ノノはズデッと腰を抜かしかける。
「“つまり”って言った割に分かってなかったんですね? 説明しましょう。さっきの毒蛇の様な、低レベルな敵に対し、タクヤ君のレベルは30近くあります。そこには当然と言えば当然ですが、『攻め』や『守り』等のステータスにも差が生まれます。その差が余りにも多い時には、敵にぶつかっただけで相手を倒せると、いうシステムがこのゲームにはあるのです」
「じゃあ、敵が弱かったから戦闘が始まる前に倒しちまったってコトか?」
「そうとも言えます!」
「なら、これからは敵にぶつかりまくるぞー!」
「まあ、その度にテロップ出るから、鬱陶しいって敵を避けるプレイヤーも多いんですけどね」
「それでも俺はぶつかる! アイテムが欲しいから!」
「はは……!」
タクヤと会話を交わしていたノノは、何かを見つける。
「アレは……」
「ん?」
タクヤも何かに気付いた。沼地にひっそりと落ちていた布切れ――。それはセルジュが身に付けていたマントの切れ端だった。
「セルジュ……! セルジュ、居るのか!? セルジュ――!!」
「セルジュさ――ん!!」
タクヤとノノはセルジュを手を口に当てて大声で呼んだ。
「……」
返事は返ってこない。
「くっ! 簡単には合流できないか……ノノ、二手に分かれるぞ。そうだな……セルジュを見つけたら、チャット機能を使って連絡してくれ」
「ッハ! そういう機能もありましたね。了解です、見つけたら、ここに集まりましょう。目印として、木々の枝を地面に置いていきます」
「おっ! 頭いいな、ノノ。じゃあここで、しばしの別れだ」
「はい!」
タクヤはノノと別れた場所から北東へ進むコトとした。ノノは北西へと向かう。
道中――、
バシャ……バシャ……と、タクヤはぬかるんだ道を、足をとられながらゆっくりと進んでいった。
(あちぃし、進み辛い……)
タクヤは梅雨の様な高い湿度と、ジャングルの様な道に手こずりながらも、着実に進んでいく。
と、そこで――、
「きゃあああああ!!!!」
「!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「ノノの声だ!!」
タクヤは猛ダッシュで、叫び声の方向へ進んだ。




